GODZILLA新生 〜revival legend〜 作:悠久の刻
・アメリカ ハワイ島東部 近海
はぁ・・はぁ・・・。
耳障りなアラート音とともに荒れた息が数人分、艦内に響いていた
「敵の位置は!」
「えぇっと・・・わかりません!」
「そんなわけはないだろう!」
怒号をあげたのは、この潜水艦の艦長だった。
大勢の船員が混乱している中、一人冷静に状況を見ていた艦長補佐は落ち着いた声で艦長や、その他の船員たちに
「敵の動きが速すぎて、捕捉してもすぐに反応が消えてしまうようですね」
しかし冷静に状況を整理したところで、状況自体は何も変わらない。
「せめて、敵のサイズくらいわからんのか・・・」
そう呟く艦長の声も、慌ただしい艦内では虚しく消えていった。
「第4波、来ます!!」
数秒後には、凄まじい衝撃波が艦を襲っていた。
船体の壁が軋み、船室を巡るパイプは一つ、また一つと破裂し始める。アラート音は更に増え耳障りな重奏を奏でている。
既に三回も攻撃を受けている艦は、今にも潰れてしまいそうな悲鳴を各所からあげていた。
「あと一撃...あと一撃喰らったら...」
誰に向けられた訳でもないオペレーターの一言は、その場にいた全員を凍りつかせるのに、充分過ぎる一言だった。
この混乱の大きな原因。それは、敵の情報が全く掴めていないことだ。
少なくとも生物ではないだろう。現代の兵器にしては少し「速さ」がおかしいが、先刻の(明らかにこちらに向けて行われた)4回の爆撃が、敵が生物ではないことを表している。特に、この海域には大きいサイズのクジラすらいない。突然変異も考えられないだろう。
普通に考えれば、どこかの国が極秘で建造した新型艦だ。しかし、その結論が出たところで敵艦のスペックがわからない以上、状況に変わりはない。
沈没寸前の艦。詳細不明の敵。その条件だけで、混乱しきった船員の中には、天を仰ぎ神に祈りを捧げ始めた者や、罵倒をあげ辺りに怒りをぶつけている者もいる。
「クソっ.....。もう一度、こちらに交戦の意思はないと通信しろ。応じない場合は仕方ない、敵の動きが緩んだタイミングで攻撃する。いいな。」
艦長のその一言で、混乱こそ収まってはいないが、船員たちは自身の持ち場に戻った。
しかし・・・
「交信できません!」
分かりきってはいた事だった。再三の交信に応じなかった敵が、今まさに自壊しそうな艦に慈悲を与えるはずもない。
だが、その事実は、最後の望みをかけていた船員たちを絶望へと確実に叩き落とした。
そんな船員たちの中、冷静さを保っていたオペレーターは僅かなモニターの変化を見落としはしなかった。
「敵の動きが緩みました! モニターで反応を捉えています。攻撃をするなら今です!」
この機を逃すわけにはいかない。
そう考えた艦長の判断は素早かった。
許可する。という声とともに4発の魚雷が放たれる。既に大きな損傷を受けている艦は、それだけで崩壊しそうなほどの轟音が響いた。
「あと、200・・150・・100・・到達します!」
グォガァァァァァォォォォォォォォォォォォォォ!!
それは、突然の出来事だった。天候は悪いが、たった今聞いた音は雷鳴ではない。空気を震わせ響くのではなく、空気を割いて直接届くような轟音。ビルが崩れても、船体がなにかに衝突し轟沈しても、大陸の大地がまるごと裂けても、こんな轟音はならないだろう。
その音は人の言葉では言い表せない、体の芯に響く異様な音。
謎の唸り声とともに押し寄せてきた荒波に、押され揺れる艦内。その中で全員、何が起きたかを理解出来ずに固まっていた。
しばらくして、周りよりも少し早く放心から解けたオペレーターの
「アンノウン、海面に浮上!映像出します!」
しかし、その声とともに映し出された映像は、さらにほかの船員たちの思考を混沌に落とす、信じられないものだった。
海上に姿を現した「敵」は、明らかに生物の形をしていた。ただ、自分たちの知っているどの生物とも違う。強いて言うなら、大昔の恐竜のような姿をしていた。
そして、何よりも船員たちを混乱させていたのは、その巨体だった。海上に出ている部分だけでも、裕に50mは超えているだろう。
しかし、「ソレ」が恐竜などではない、圧倒的な存在に見えるのは巨体だけではない。
スラりと前に突き出すような顔は、まさに恐竜のそれであるはずだ。
だが、青白く輝く鋭利な稲妻型の背びれのようなもの、一つ一つが荒く研がれた剣に等しく見える凹凸の激しい表皮。太くかつ鋭い爪や、無数に並んだ犬歯状の歯。海面から少し見えている、巨体を支えるのに相応しい太い大腿部と、似つかわしくない細い両腕。
それらが全て合わさり、圧倒的畏怖感を漂わせている。
そして、生き物とは思えない冷徹な瞳。
それは、「ソレ」が自分たちの既知を超えた恐るべき存在であり、絶対にかなわない上位の存在であることを、否応なく本能に刻みつけた。
その山岳のような、鋭く黒い巨体は、迷いなく真っ直ぐに潜水艦を目指していた。
「化け物・・・いや、神か・・・」
艦長の、その言葉は虚空に消えていった。
☆☆☆☆☆
日本、成田国際空港、午後一時半
ターミナルの大きな窓からは、澄み渡る青空が見えている。雲一つない、気分まで晴れるような見事な晴天。
しかし、その空を見ながら青山は深いため息をついた。
「既に30分経ってるぞ・・・。」
『月刊Night』の新任記者である青山は、配属一日目にして(オカルト記事としては)初めての仕事を任されている。半ば無理矢理だった編集長の言葉通り、一時に成田空港へ来たのだが・・・。
「帰ってもいいよな?」
耐えきれず、そんな言葉を漏らしていた。
以前配属していた『週刊Saturday』の編集長から、人の足りないオカルト誌の手伝いをしてくれないか、という名目で異動を命じられたのが一週間前。なぜ俺が・・・という気持ちが含まれていてもおかしくはないだろう。
「いやぁ、お待たせいたしました。夕凪出版の青山さんですね?」
突然、背後から話しかけられ、青山は軽くすくんだ。
「あぁ、はい。」
「僕が、神宮寺です。神宮寺智也。考古学研究を主にしています。お話は木場さん(Night編集長)から聞いていますよ。」
その後に、お偉いさんとの話が長引いちゃって、と言うまでマシンガンのような速さで喋ってから、やっと青山が話し始めた。
「あの、今日は何をするんですか?編集長から内容を何も聞かされていなくて。」
「あぁ、それなら大丈夫だよ。今日は、まだ『こういうこと』に慣れていない君、の為にわかりやすいものを見せてやってくれって頼まれているんだ。僕に任せて。」
そういうと、神宮寺は青山に沖縄行きのチケットを渡した
☆☆☆☆☆
沖縄行き飛行機内 午後3時
改めて隣に座る男「神宮寺智也」を見てみる。とても、考古学者とは思えない見た目だ。男で考古学者と言えば、やはりインディ・ジョーンズみたいなのが浮かんでくる。しかし、隣に座っている男は背は高いが体は細く、顔は整っていて、アクティブで野蛮な感じは全くない。むしろ、どこかの御曹司のような感じすらする。
「僕の顔に何か付いているかい?」
そう言われ、青山は自分が失礼なことをしていると気がついた。
「あぁ、すいません。」
苦笑いを浮かべながら、そう答えたあと
「そういえば、沖縄ってことは今回の記事の内容は琉球王国とかの歴史に関わることですか?
もしそうなら、余程目新しいものでないと長期連載には向かないんじゃな...」
「違うよ。沖縄は通過点。そこから船に乗って、さらに南東に移動だ。」
神宮寺は、半ば青山の言葉に被るように、食い気味に言った。そして、「その質問を待っていました」と言わんばかりに嬉々とした顔の神宮寺に、言葉を遮られた青山はただ頷くことしか出来なかった。
「さぁ、そろそろ那覇に着くよ。ちょっとした冒険の始まりだ。」
神宮寺にそう促され、青山は残るひとつの疑問を胸にしまい込んで降りる準備をし始めた。
「ちなみに青山くん? 随分と少ない荷物だけど、2泊3日だよ?」
「...えっ!?」
☆☆☆☆☆
沖縄 国際通り 午後9時
「ちなみに、先程の話だと明日って野営なんですか?」
腹を満たして観光を楽しんでいた青山は、予定の確認をし始めていた。
「そうだね。現地で1泊。朝になったら帰路に着く感じかな。」
沖縄南東にある無人島。そこで長らく放置されている遺跡の調査が、今回の青山の仕事(記事の内容)だ。1度訪れたことのある神宮寺曰く、紀元前の生物について興味深い記述があるという。
「明日は朝からハードメニューだけど、景気づけに1杯 どうかな?」
既に夕食の席で1杯入っている爽やか考古学者は、上機嫌な口調で誘ってくる。これは断る訳にはいかないよな、と心の中で言い訳をして青山は
「えぇ、行きましょう。今、泡盛の美味い店を探しますね。」
☆☆☆☆☆
この時、既に歯車は狂いだしていた。極一部しか知りえない所で...