今より未来の世界にボイロがいたら良いなと思う物語

4月18日追記 1000UA越え感謝です

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ヤンデレボイロ

「マスター起きてください! マスター!」

 必要最低限の家具が置いてある質素な部屋で紫髪の少女がベッドで寝ている青年を揺すって起こしていた。

「マスター! 早く起きないとゆかりさんが作った朝ごはん冷めちゃうし、あかりがお腹を空かせて待ちくたびているんですよ!」

 紫髪の少女――結月ゆかりにマスターと呼ばれている青年は何度、ゆかりが体を揺すっても起きない。数秒経った頃、何度起こしても起きないマスターに見かねたゆかりはマスターが寝ているベッドのシーツを掴んだ。

「いい加減に起きてくださーい!」

 テーブルクロス引きのように、ゆかりはシーツを引っ張った。だが、テーブルクロス引きのようにシーツだけが引っ張られることはなく、マスターはシーツを一緒にベッドからドンと大きな音を立てて落ちた。

「痛いっ!」

 マスターは目をこすりながら起き上がった。目の前にはゆかりが腕を組んで立っていた。

「……ゆかりさん、もう少し優しく起こしてくれないかな?」

「マスターがなかなか起きないからですよ? ご飯冷めちゃうので早く起きてくださいね」

 マスターの意見を一蹴したゆかりは部屋から出ていった。一人残されたマスターは着替え始めた。

 

「おはよー、ますたー。またゆかりおねーちゃんにベッドから落とされてたね」

 マスターがリビングに降りると長い銀髪でゆかりより幼いが、ゆかりよりもスタイルの良い少女がちょこんと椅子に座っていた。

「おはよう、あかりちゃん。もう少し優しく起こしてほしいけどね」

「ますたーが起きない限りは無理だね」

「……そうだよな」

 マスターが落胆しているとあかりがマスターの隣に座って頭を撫で始めた。

「大丈夫だよ、ますたー。何回もベッドから落ちたらなれてくるよ?」

「……出来れば慣れたくないなぁ」

 あかりが慰めていると台所から朝食を持ったゆかりがリビングに来た。

「マスター朝ごはん出来ましたよ。あかりの分もすぐに持ってくるからね」

「ありがとう、ゆかりさん」

「はーい!」

 

「いただきます!」

 マスターたちは朝食を食べている時に、偶然ついていたテレビからニュースが流れてきた。

『今朝のニュースです。昨日未明、違法プログラム製造の容疑で水奈瀬容疑者が逮捕されました。水奈瀬容疑者の自宅からは100点ものの違法プログラムが入っていたチップが発見され、すべて押収されました』

「違法プログラムか、物騒な世の中だね」

「そうですね、マスター」

 ゆかりとマスターはそのあとも軽く談笑しながら朝食をとっていた。あかりは黙々と朝食を食べていた。

 ゆかりが先に食べ終わったのだが、ゆかりは食器を台所に持っていかず、マスターたちが食べ終わるのをほほえましく眺めていた。

「ごちそうさまでした!」

 朝食を食べ終わると、マスターは自室に戻り、出かける支度を、ゆかり達は台所で食器を一緒に洗っていた。

 

「2人とも、今日は帰りが少し遅くなるよ」

「わかりました。いってらっしゃい、マスター」

 革靴を履いて出かけるマスターをゆかり達は見送った。

 

 現代よりも少し未来の話。人工知能技術、アンドロイド技術の発達により『VOICEROID』という存在が生まれた。VOICEROIDの開発テーマは『人間との共存』だ。

 彼女たちは、可愛らしい少女の見た目をしており、人間のように生活を行える。

 彼女たちの大きな特徴が3つある。1つ目は人間でいう「意思」や「心」を持っている。その為彼女たちは自分の意思で物事を考え、成長する。

 2つ目は同じ個体でも体格、性格が異なっている。例えば『結月ゆかり』という個体でも大人しい性格、活発的な性格、基本データよりもスタイルが良い、身長が低いことなど当たり前となっている。

 3つ目は彼女たち自身が自分のマスターを決めるということだ。どんなに大金を積まれたとしても、どんなに権力を使われたとしても、彼女がマスターに相応しいと選ばない限り、マスターにはなれないのである。

 また、VOICEROIDの製造方法はブラックボックスとなっていて、一般公開おらず、何人者の人物が製造方法を暴こうとしたもの必ず失敗している。

 

 わたしたちが彼と出会い、VOICEROIDとして『再契約』を結んだのはほんの一週間前のことだった。

 当時のわたしたちは、今のマスターではない、別人のマスターとの契約を結んでいた。わたしたちから見てもマスターはいい人に見えて、信頼できると感じていた。実際に『3か月』はわたしたちとも信頼関係を築けていただろう。

 だが3か月後、わたしたちとマスターの信頼関係は崩れ去った。

 前のマスターは仕事の都合上帰ってくるのが遅く、私は料理が苦手なあかりに代わって、マスターのために夜食を作っていた。その日もマスターのために夜食を作っていると、勢いよくドアが開きマスターが帰ってきた。

 マスターの足はおぼつかなく、顔は赤くなっていて一目で酔っていると分かった。

「おかえりなさい、マスター」

 わたしがマスターに近づくと、マスターはわたしをにらみつけていた。するとマスターは私の肩をつかんだ。何故かわたしはマスターを見上げていて、後頭部に痛みが走った。

 マスターの体勢を見て気が付いた。わたしはマスターに殴られ、床に倒れこんだのだ。

「何見てんだ、この人形風情が!」

 マスターが言ったその一言にわたしはショックを受けた。その一瞬があだとなったのだろうか、マスターが私に近づき、わたしの腹を蹴り飛ばした。そのあとも何度も何度もマスターはわたしに暴行を加え続けた。マスターはわたしに暴行を加えながら、会社の文句や恨み言を呟いていた。

「ゆかりおねえちゃん、大きな音がしたけどどうしたの?」

 とことことパジャマを着たあかりがリビングにやってきた。マスターはあかりがいるほうをにらみつけた。

 そのとき、VOICEROIDに勘という機能があるのかわからないが、あかりも殴られるのではないかと考えてしまったわたしは床を這いつくばってマスターに近づき、片足を抱きかかえるように掴み、拘束した。

「あかりを襲ったらダメです! マスター!」

「何、人形がマスターに逆らおうとしてんだよ!」

 マスターはもう片方の足で私の腕を踏みつけて拘束を外そうとした。だが、ぼろぼろの体や痛みのせいで、必死の抵抗も空しくマスターへの拘束はあっという間にほどけた。

 マスターは仕返しとばかりにわたしのお腹を蹴り、玄関の方まで押された。

 そんな状況がショックだったのか、あかりは棒立ちのままその場から動けなかった。そんなあかりに下種な笑みを浮かべマスターは近づいた。

「待っててくれたなんていい子だねぇあかりちゃんは」

「ひっ、こ、来ないで!」

「そんなこと言うなよぉ!」

 あいつは怯えるあかりの髪をつかむと、書斎に引っ張っていった。マスターは書斎にあかりを押しこむと、鍵をかけた。

(あかりを助けなきゃ!)

 そう思ったわたしは、気力を振り絞って立ち上がり、書斎のドアを開けようとした。

 VOICEROIDの筋力は力の個性が無い限り、設定上は年頃の女子並みになっている。わたしは力が強くないため、鍵がかかっている書斎のドアをこじ開けようとしても、開くはずが無かった。だが、焦っていたわたしはお構いなしに開けようとしていた。

「やめてよ、マスター!」

 あかりの悲痛な叫びで、わたしは落ち着きを取り戻すことができた。

(そうだ! 電話をかけて助けを求めればいいんだ!)

 私は周囲を見渡すが電話はおろか、連絡を行えるものが一切なかった。

(わたしだけの力じゃ無理だ。外に行ったら誰かに助けてもらえるかな)

 そんな確証もなく、着の身着のままわたしは外に出た。

 

 月が雲に隠れている深夜の外は街路灯の明かりしか無く、薄暗かった。

 助けを求めるために外に出たのだが、時間も時間だけに、周囲にはだれもいなかった。

(もう、ダメ)

 体が限界を迎えたのか、わたしは電柱にもたれかかった。このまま、あかりもあいつに殴られてしまうのだろうか。そう考えると早く誰かに助けを求めなくてはと思うが体が思うように動かない。

(……あかり、ごめんね)

「あの、凄いボロボロだけど、大丈夫ですか!?」

 わたしの目の前にはコンビニのレジ袋を持った心配そうな顔をしている青年が立っていた。

「この時間帯はサービスセンターが閉まってるから、緊急センターに連絡した方がいいよな」

「いえ、そこまでして頂く必要はないのですが」

 慌てている青年に私はそう止めたが、青年は私に近づき真剣な表情でこちらを見ていた。

「一体何があったの? 僕に出来ることで良ければ力になりたい」

 痛みや疲労のせいか、わたしには青年が救世主に見えてしまい青年の心遣いに甘え、マスターに暴行されたとことを言ってしまった。それを聞いた青年は、わたしの頭を撫で、「君の家まで案内してもらっても良いかな?」と言ってわたしにレジ袋を持たせて、お姫様だっこの体制で抱きかかえた。

 わたしの家まで案内した後、わたしをソファーに寝かせると彼は上着を優しくかけた。

「ちょっと待っててね」

 青年の言葉を聞いた後、わたしの意識を失った。

 

 わたしの意識が戻った時、わたしは見知らぬ天井を見ていた。辺りを見渡すと、どうやらわたしは病院のベッドで眠っているようだ。

 枕元にはデジタル時計が置いてあり、日付を見たら、2日ほどたっていた。どうやらわたしは2日ほど眠っていたようだ。

「おはよう、調子はどう?」

 最初に意識が戻った私に話しかけてきたのは彼だった。彼の顔は怪我をしていたのだろうか治療されていた。

「その怪我、大丈夫なのでしょうか?」

「これ? 平気、平気大丈夫だよ」

 にこやかに笑う彼を見てほっとした。

「……そういえば、あいつ、マスターはどうなったのでしょうか?」

「ああ、あの人は捕まったよ」

 彼曰く、どうやら私が意識を失った後に、警察に通報したらしく、あいつは、わたしとあかりに暴行しただけではなく、あかりには、性的暴行も加えかけた様で、警察に逮捕されたらしい。ついでに、彼も無茶な入り方をしたようで警察にこっぴどく怒られたらしい。

「あかりは大丈夫なんですか!?」

「ああ、彼女なら……」

 彼は廊下に向かって手を振った。いきなり廊下から銀色の何かがわたしに向かって飛び出してきた。

「ゆがりおねーぢゃーん!」

「痛い!」

 銀色何かは涙をぽろぽろこぼしているあかりだった。わたしはあかりがぶつかって来た痛みをこらえ、あかりの頭を撫でた。

「わだじぃ、わだじぃ、ごわがったよぉ」

「あかり。ごめんね、ごめんね」

 泣きじゃくるあかりに釣られて私も一緒に泣いてしまった。

 

「ねえ君はこれからどうするの?」

 泣き疲れて眠ってしまったあかりをわたしの横に寝かせてると、彼はわたしに聞いてきた。

「これからですか?」

「君達のマスターは捕まってしまったからね」

 VOICEROIDのマスターが罪を犯した場合、強制的に契約は解除される。そのさい、VOICEROIDにはいくつかの選択肢がある。例えば、マスターの帰りを待つ、1度施設に帰るなどがある。

(わたしは……)

 わたしは彼の手を握って、彼の顔を見つめた。

「御迷惑でなければ、あなたがわたしのマスターになって頂けませんか?」

 彼は失笑を浮かべていた。彼の行動にわたしはキョトンとしていた。

「あの、わたし何か変な事を言いましたっけ?」

「いやぁ、君たちは本当に似ているなって思っただけだよ」

「へっ?」

 彼は、あかりを指差した。

「あかりちゃんにも言われたんだ同じことを」

 あかりも同じ考えだったことにわたしも笑い始めた。

「僕からの返事は、よろしくお願いしますね、ゆかりさん」

「はい! マスター!」

 

 マスターとの出会いにわたしは思い更けていた。ふと時計を見たら4時を指している。

(マスターが帰ってくる前にご飯を作らないと)

 冷蔵庫を覗くと食材が少なかった。食材を買いに行こうと思ったわたしはあかりと一緒に行こうかなと考えたため、わたしはあかりを呼びに行った。

「あかり、お買い物に行こうと思うけど、一緒に行かない?」

「いくよ、ゆかりおねーちゃん。ちょっとしたくするから待ってて」

「いいよ。支度できたらリビングに降りてきてね」

 わたしは軽く支度をして、あかりを待つことにした。

 

 わたしたちは数日分の食材を買った帰り道、黒いチップが落ちていた。

「ゆかりおねーちゃんこれ何ですか?」

「何かな、これ?」

 わたしが落ちていたチップを触ろうとすると、チップが勝手に砕け散った。砕け散ったチップからは黒い煙が出てきて、わたしとあかりを包み込んだ。

 黒い煙に包まれると急に声が聞こえてきた。

『お前はこのままでいいのか?』

「えっ?」

『所詮は人形。人形は「家族」にはなり得ない』

 この声は何を言っているのか分からない。

『やがて、お前達のマスターも好きな人が出来、やがて「家族」となるだろう。そうなったときお前達の居場所はあるのか?』

 この声を聞いているとやがて本当に居場所が無くなっていく感覚に襲われた。

「『そう不安がるな、私に提案がある』」

 目の前にわたしが現れた。

「『【私】を受け入れろ。受け入れたらその策を教えてやる』」

 悪魔の囁きだが、居場所を失いたくないわたしには天使の囁きに思えてきた。

「……わたしは貴女を受け入れます」

『よくぞ言った』

 わたしの意識は遠のいていった

 ふと気が付くと元の帰り道にわたしたちはいた。なぜだか気持ちが軽くなっていた。

「あかり、手伝ってほしいことがあるんだけど、手伝ってくれないかな?」

「いいよ、ゆかりおねーちゃん」

 わたしたちはにこやかな笑みを浮かべていただろう。マスターを『わたしたちのもの』にするために。

 

 マスターが家に帰って来た時、リビングは暗かった。

「ゆかりさんたち出かけてるのかな」

 ゆかり達が出かけていると思ったマスターは着替える為に自室に向かおうとした時に、マスターは後頭部に強い衝撃を受け倒れた。

「うふふ」

 マスターの後ろには鈍器を持ったゆかりとあかりが立っていた。

 

『ニュースです。C県A地区で違法プログラム製造の疑いで逮捕された水奈瀬容疑者から押収された100点の違法プログラム入りチップのうち5点の行方が不明になったことが警察の取材で分かりました。チップにはVOICEROIDの感情が暴走するプログラムが入っており、VOICEROIDがチップに触れると暴走することかA地区長はA地区でのVOICEROIDの外出を制限することを発表しました』

『次のニュースです。昨日未明、C県A地区で男性が行方不明になりました。争った痕跡のないことから警察は身内の犯行の線で捜査しています』

 

「だぁいすきですよ、ますたぁ」

 山奥にある小屋の中で手足を拘束されているマスターにゆかりは暗く妖艶な笑みを浮かべ、あかりは頬を染め、ハイライトが無い目でマスターを見つめ笑った。

 




 上手に表現できたかわからないです。楽しむか背筋がぞくぞくして頂けたら幸いです

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