テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
カーラーン教会に匿われることになったカオスはカタスティアの手伝いをすることに。
その間カタスティアとの話で…。
王都レサリナス 東北部 カーラーン教会
「………スミマセン、昼間から暗い話をして。」
「いいのよ。
教会に来た人の話を聞くのも私の仕事だしおかげでカオスさんのことがよく分かったわ。」
「俺も自分を見つめ直すいい機会でした。」
「人生を振り返ることもたまには必要でしょ?
これからのことを調整出来るし。」
「………と言っても今はカタス様に匿ってもらってる身ですし、この先どうすればいいのかはまだ…。」
「そこはまだ早くに決める必要はないわ。
もう少ししたら往来を出歩けるようにしてあげるから。」
「?
どうするのですか?」
「私がアレックスに面会してマテオに配布されている手配書を撤回してもらうわ。」
「!
そんなことが出来るんですか?」
「教会をあまくみちゃ駄目よ?
私はこれでもそれなりに顔がきく方なのよ。
貴方とアローネのことくらいどうとでも出来るわ。」
「………けどあの手配書は俺が騎士団を妨害したからであって。」
「そんなの貴方達をダレイオスのスパイと勘違いした騎士達が悪いのよ。
むしろこれだけ騒ぎを大きくした騎士団の失態だわ。
カオスさんは捲き込まれた被害者よ。」
「それでも…
そんなことまでしてもらうのは悪い気がしますが…。」
「ごちゃごちゃと言わないの!
子供は素直に大人の言うことを聞いてなさい!」
「俺はもう子供という年では…(汗)」
「私からしたら二十歳の貴方なんてまだまだ子供だわ。
私なんてもう貴方の百倍以上は生きているのよ。」
「え!?
そんなに若々しいのに!?」
「…ウルゴスがあった時代から数えたら数億は越えているわね。」
「あぁ、それでですか…。
………実際のところは活動していた時期換算ではおいくつなんですか?」
「こらこら、
そんなことを女性に詳しく訊くものではありませんよ?
まぁ、どうしても聞きたいというのならウルゴスで眠りにつくまでとこの国が建国された二百年前くらいから目覚めたのを足して三百前後ということだけかしらね。」
「そんなに離れているんですね………。」
「なんにしても貴方達はもう私の息子も同然よ。
アローネとは義妹のようなものだけどマテオのアルバートの家族というのなら貴方は私の子供のようなものだわ。
お母さんが絶対に貴方達を助け出して見せるわ。」
「お母さん………?」
「この教会では時々孤児院の子達も招いているのよ。
あそこはもともと私が出資しているのもあるからね。
だからここに住む子は私の子として受け入れているのよ。
カオスさん………カオスも私のことを母だと思って頼ってくれてもいいのよ?」
「カタス様がお母さん………。」
「幼いときにご両親の愛情を受けられなかったのですものね。
私が代わりになるかどうかは分からないけど貴方の心を癒せるだけの相応のもてなしはするつもりよ。
これからのことが決められないのならいつまでもここにいてくれてかまわないわ。
丁度人手が欲しかったところだし、こんなにいい子ならずっとここにいてほしいくらいだわ。」
「………ちょっとそれにはすぐには答えることが出来ません…。
タレスとは話し合ってみないと………。」
「いいのよ。
まだ騒ぎが修まってはいないし手配書の件もあるわ。
時間はまだまだかかるからそれまでゆっくり考えてね。」
「…アローネはこのことについて何か話をしました?」
「アローネにはまだ話してないわ。
けどウルゴスはもうどこにもないしあの子がここにいてくれるのなら私も嬉しい限りよ。
あの子がここに住むと言ってくれたら直ぐにでも家を用意できるわ。
勿論貴方達二人のもね。」
「そこまでしてもらわなくても………。」
「いいえ、大事なことよ?
手配書が無くなるにしても貴方達は顔が残ると思うわ。
そうなったとき物見遊山で貴方達にちょっかいをかけに来る人達もいると思うの。
その際に住居や敷地を固定していたらそういった人達を取り締まるのに有利になるから貴方達を守る意味でも必要な措置だわ。」
「そこまで考えてくれていたんですね………。」
「物騒な世の中だからこういうルールには詳しいのよ。
私も一時期そういうのがあったから。」
「………」
「強制するつもりはないけどここに住むという件考えていてほしいわ。
ここにはウルゴスの時代の書物が多く残っているからもしかしたら貴方のその殺生石の能力についても詳しく調べることが出来るかもしれないし。」
「!
ここに殺生石について書かれている本があるんですか!?」
「私も全てを読んだ訳じゃないから分からないけど、ここにはダニエルの症状を治すことの出来るようなこの時代よりも進んだ情報があるわ。
なら殺生石についても何か近い情報が載ってある本がどこかにあると思わない?
可能性としてはこのまま宛のない旅に出るよりかはここでその力のことを調べる方が建設的だわ。」
「………!
それは確かに………。」
「私も仕事が忙しいから余り助けにはなれないけどもし時間が空いたら貴方のお手伝いをしてもいいわ。
息子の助けになれるのなら頑張って仕事も終わらせてくるから。」
「………カタス様は」
「様なんて他人行儀にしなくてもいいわ。
お母さんでもいいのよ?」
「ハハッ…、グイグイ来ますね…。」
「私は気に入った子にはそうなっちゃうのよ。」
「………ではカタスさんで…。」
「まぁ、いいでしょう…。」
「カタスさんは人と接するのが好きなんですね。」
「教会のトップを張るのだから同然よ。
世話焼きじゃなければ勤まらないわ。」
「………そんないい人にこんな質問するのも失礼になるかもしれないんですが……。」
「構わないわ、
なにかしら?」
「さっきの話を聞いてカタスさんがこの国でも偉い人なんだと分かりました。
そして人に親切なのも………。
だからこそ一つ気になることがあるんです。」
「あら私のことが気になるの?
何か変なこと言ったかしら?
長い間眠っていたとはいえこれでも普通の人のつもりなんだけど。」
「そのことについてではないです。
気になっているのは………
ダニエル君のことです。」
「ダニエル?
薬の件なら心配要らないわよ?」
「それは有り難うございます。
………ではなくてですね。
さっきカタスさんは手配書の件でこの国の王様に面会すると言ってましたよね?」
「あぁ、
アレックスとは仕事上、月に何度か顔をあわせるからねぇ。
会いに行くのなんてしょっちゅうあることなのよ。」
「………カタスさんはダニエル君の症状を治せたんじゃないですか?」
「………」
「アイオニトスはリプット鉱山で手に入れてきましたけどカタスさんならアイオニトスを手に入れることも出来たんじゃあ………。」
「そうね…。
私が一声かければ手に入ったかもしれないわね。」
「だったら「でも」」
「私にはダニエルを救うことは出来なかったの。」
「?」
「……私やアローネ、原初の民は本来このデリス=カーラーンの文明の人ではないからよ。」
「それはどういう…?」
「私達の…アインスの文明はこのデリス=カーラーン文明よりも何もかもが遥か先に進んでいたわ。
それによって戦争が拡大して滅んだ国が多くあった。
進みすぎた技術はそれだけ多くの人を殺すのよ。
私も最初は私の持つ本の知識を使っていろんな人を助けたわ。
それによってこの位まできたのだからね。
あるとき私はこのウルゴスの知識がもっと多くの人達に提供できないかと考えてマテオ建国時に身近にいた方に私の魔術本を数冊貸してあげたの。
その人こそ………
今この国を牛耳っているバルツィエの初代当主だったわ。」
「!」
「貴方のご先祖様に当たる方ね。
今はもう亡くなってしまったけども…。
彼は本の知識を使ってみるみる力を付けていった。
始めはどこにでもいる冒険者のような人だった…。
それが世代を変えるごとに別の生き物にでもなったかのように力をつけ始めとうとうこのマテオを支配下におくまでになったわ。」
「バルツィエは………カタスさんが作ったんですか!?」
「そうよ…。
私が不用意に技術を提供してしまったばかりに今のバルツィエが出来上がってしまったの。
バルツィエはこれまでの歴史で世界最多と言われるほどに殺戮を繰り返している…。
バルツィエに殺された人達は皆私が殺したようなものよ………。
貴方のことを息子のように思えてくるのもそういうところからかしらね。」
「カタスさんにそんな過去が…。」
「私はダニエルを救う術は持ってはいたわ。
けどその術を安易に使ってしまうとバルツィエのような輩が生まれてしまう危険性があるの。
この時代にはない技術があることが弘まってしまうと私のところには多くの人が押し寄せてくるでしょうね。
それによりまた第二第三のバルツィエが現れてしまう可能性があるのよ。」
「……!」
「鉱山にアイオニトスを取りに行くことは出来たわ。
けど今この戦争が始まりそうな時期に戦に使う鉱石を求めれば疑いがかかるわ。
アイオニトスを何に使うのかと。
だから私がアイオニトスを手にすることは出来なかったのよ。
アイオニトスさえあればダニエルを治せるというのに…。
大元を辿ればダニエルを追い詰めたバルツィエの存在そのものが私が原因だというのに………。」
「………カタスさんも俺と同じ思いをしていたんですね…。」
「私と貴方では物心があったかの違いがあるわ。
ただ私は私の行いの終着点が見えてなかった。
情報によってもたらされる恐ろしさはウルゴスでも理解していた筈なのに…。
私は………元王族として私の生きる世界を救いたかった。
それだけだったわ。
それだけで数えきれない人がバルツィエによって殺されてしまった…。
私は一生をかけても償いきれない罪を背負っている。
単純に数を数えるのは今まで犠牲になった人に対して軽んじているみたいで嫌なのだけれど少なくとも私は貴方よりは大量に人を死なせているわ。
それも未だに増え続けている。
貴方に対してこうも世話をやいてしまうのは貴方がアローネの恩人だからというだけではないの。
貴方が私と同じ道を歩く人だからよ。
だから私は貴方を救ってあげたいの。
私と同じ境遇に至った貴方だから…。」
「カタスさん………。」
「貴方がこの街に来てくれて助かったわ。
たまたまこの街に来た人が持っていた薬でダニエルを救えた。
それならば貴方が捕まらない限り薬の所在を特定出来ない。
バルツィエのように過ぎた技術を利用しようとする不貞の輩など現れることもないわ。
貴方はダニエルを救うだけではなく新たなバルツィエが現れるのを防いだ救世主となったのよ。」
「そんな大事にしないでください。
俺はアイオニトスを持ってきただけなんですから。
薬を作れるのはカタスさんだけですし。
それにカタスさんが本当にいい人でよかった。
アローネの知り合いを疑っていた訳ではないですけど俺と同じ境遇で同じ考えを持つ人の役に立てたのならそれで満足です。」
「お互い様よ。
私はアイオニトスを調達出来なかった。
貴方はアイオニトスを調合できなかった。
私達が手を組むことで救えた人がいたのだから。」
「カタスさんは不思議な人ですね。」
「私が不思議?」
「こうして話しているとなんだか落ち着くって言うか安心出来るって言うか………。
俺も言葉に説明出来ない居心地のよさを感じます。」
「私達は似通った部分があるからかしらね。」
「それだけではないと思います。」
「他に何かあるかしら?」
「………何て言うかこう…
大人の人というか………
よく考えたら今までこうして大人の人と話す機会がなかったからかな。
他人なのに他人のような感じがしない人に会うのは初めてで言葉がまとまりませんね。」
「いいのよ無理しないで。
少しずつ馴れていけばいいわ。
私はいつまでもここにいるから。」
「言葉がまとまったらまたお話してもいいですか?」
「遠慮しなくていいのよ。
貴方はもう私の身内のようなものだから。」
「いきなりはまだちょっと…。」
「………ずっと人と距離を置いて過ごしてきたのですものね。
その心の傷が癒えないままではまだ早いようね。」
「スミマセン………。」
「そんなに畏まらなくてもいいのよ。
もうここに来て数日は経ったでしょう?
もう少し歩み寄ることも大事よ?」
「…努力はしてみます。」
「フフッ…お願いね。」