テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
訳あってカーラーン教会に匿われた三人は殺生石のことを調べるためカタスティアに書庫へと通される。
調べものの途中休憩しに来た三人はカタスティアと話をするトーマスと言う男に出会う。
王都レサリナス 東北部 カーラーン教会
「グー、グー………スピー…。」
「ようやく五月蝿いのが静かになったわね。」
「カタス…
今の魔術は…?」
「簡単な睡眠魔術よ。
後で教えてあげましょうか?」
「………はい、お願いします。」
「息子の次はおじいちゃん本人ときたか………。
………ハハッハハハハハッ…。」
「カオスさん?」
「カタスさん、今の彼の話は彼一人が言っていることなんですか?」
「……いえ、
彼一人だけではないわ。
バルツィエファンクラブの殆どがアルバート生存説を推しているわ。」
「その殆どってどれくらいの数なんですか?」
「アルバートがいなくなってから退会者も出たけど未だに一万は切ってないはずよ。」
「………それだけいて否定する人はいなかったんですか?」
「否定派も勿論いたけどトーマスの話した通りアルバートの生存説肯定派が抽象的にも拘わらず大多数を締めているわ。
皆本当は推理なんかじゃなくて純粋にアルバートに生きていてほしいって切望が強いのよ。
それくらい彼は偉業者にして皆の憧れの勇者だったから。」
「おじいちゃんに生きていてほしい………か。
もうおじいちゃんはいないのになぁ………。
どうして百年も立つのにそんなに多いんだよ………。」
「彼と同じ時代に生きた人は皆彼がモンスターに襲われて亡くなったなんて信じられなかったのよ。
そんなものよりも何処かで生きていて修業して強くなって帰って来たって方がアルバートとしては説得力があるわ。
それで彼のような熱狂的なファンも最近興奮していて王都が騒がしいの。
実はこの間の騒ぎでも貴方を追いかけ回していた人達は賞金稼ぎよりもうちの会員達の方が多かったのよ?
アルバートのことを確かめたいって想いでね。」
「………そんなことになっていたなんて…。
………捕まらなくてよかったよ。
捕まってたらどれだけの人を失望させていたか…。」
「…!
ごめんなさいねカオス。
うちの会員達が勝手に盛り上がってるようで…。
私も本当のことを言えればいいのだけど…。」
「いいんですよカタスさん。
ここで匿ってもらってるだけでカタスさんには苦労をお掛けしています。
カタスさんだけが真実を知っていてもらえればいいんですよ。
それにカタスさんが事情を話せば何故それが分かるのかって話になることも承知しています。
俺はこのままで大丈夫ですよ。」
「カオス…。」
「手配書のカオス=バルツィエにかけられている期待は計り知れない程にまで膨れ上がっているんですね。」
「そうねぇ。
名前が変わったのもそれが一因なの。
アルバートからバルツィエに変わったのは百年経って生まれ変わったアルバート様に追い付くため我等も生まれ変わるべきだ、と会員の幹部達で決めたことなの。
カオスファンクラブとならなかったのは否定派の幹部が本当に本人かはまだ分からなかったから本人か確認してからまた改めて名称を変更する予定なのよ。
それまでは二人に共通した名前バルツィエで通してるのよ。
皆名前が気に入らないから早く彼の詳細が判明するのを待ち望みしてるわ。
………私だけがその詳細を独り占めしてるのだけれどね。」
「………」
「それにね?
彼等がこうして活気づくのも仕方がないことなのよ。
近々何かが絶対に起こるから。」
「?
カタスは何か知らされてるのですか?」
「明明後日………
私がダレイオスに向かう次の日になんだけどね。
王国が王都民を集めて王城前で何か発表するらしいわ。
私も詳細が知らされていないことを。
恐らくダレイオスへの再戦宣言だと思うわ。」
「「!!?」」
「………」
「最近噂にもなってたのよ。
王国が武器や食料品をかき集めているって…。
十中八九戦争の準備よ。
ダレイオスが未だに原始的な方法でしかヴェノムに対応できない今、早くに体制を整えたマテオ上部は長年の仇敵にいよいよ決着を着ける気なのよ。」
「…!
今ダレイオスがマテオに襲われたら………!?」
「えぇ、タレス、
その考えの通りになってしまうわ。
ダレイオスは確実に敗ける。
この戦争は既に戦う前から白旗が上がるのが見えている。」
「…ダレイオスはどうなってしまうんですか!?
マテオはダレイオスをどうするつもりなんですか!?」
「そこまではマテオがどうするかは分からない。
圧倒的火力を見せ付けて降伏勧告を言い渡すか、
………そのままその力でダレイオス人を攻め滅ぼすか………。」
「!?」
「ダレイオス人を殲滅してしまうのですか!?
マテオが!?」
「アローネはまだ知らないと思うけど今の王アレックスはそういう人よ。
言うことを聞かないものは例え自国の民でも貴族でも………バルツィエですら斬り殺す。
そんな人………。
もし戦争が始まってダレイオスが降伏勧告を突っぱねたらその時は………。」
「………ダレイオスは降伏勧告を受け入れるでしょうか?」
「…戦争が始まらないことにはどうにもね………。
ダレイオスにとっては受け入れがたいとは思うけど…。
それにこの戦争に勝つことはダレイオス人だけでなくマテオ人にも被害者が出てしまう。」
「?
戦争をするのですからそのようなことは想定の範囲内なのでは?」
「違うわ、そういう意味ではないの。
戦争をしたらヴェノム対策で守りに徹しているダレイオスはマテオに進軍出来ない。
戦争中は常時ダレイオスの地のみが戦場になるわ。
マテオには一兵も侵入することなどない。」
「それではマテオ人は逆に安全なのではないですか?」
「アローネ、
私が話しているのはその戦争に勝った後の話のことよ。
戦争に勝った場合マテオはデリス=カーラーン上、敵がいなくなる。
そうなったら事実上バルツィエが世界を征服したようなものよ。」
「!」
「ダレイオスのように多くの拮抗した部族が統合して出来た国なら下に着いたライバル部族の牽制でどうにか平均的に保つことが出来るわ。
でもこのマテオではそれがない。
バルツィエ一族のみが国を全て総轄している。
これがどういうことだかお分かり?」
「独裁政権………。」
「そう、
天敵のいない生物はどこまでも、どこまでも増長を繰り返す。
ダレイオスという目の前の障壁があるからその増長は食い止められていた………。
それももう終わりを迎えるかもしれない。」
「ですがウルゴスでもそんな独裁国家は過去にもありました!
そうした国は例外なく国民に反旗を翻される結果に終わりました!
バルツィエがいくら強くてもダレイオス国民とマテオ国民が結束すれば「今回はそうはならないわ。」!?」
「今回だけはその例とは違うの。
ただでさえ海を越えた大陸と大陸の国民同士が結束できるかどうかの問題もあるけどそれよりももっと根本的な原因があるのよ。」
「………ヴェノムですね。」
「そうよ、
この世界で初めてヴェノムに対して正面から挑める『ワクチン』の開発に成功したのもバルツィエよ。
強さと今世界を蔓延るヴェノムに対抗する手段を独占する彼等に逆らえる者は誰もいない。
その二面性が揃ったバルツィエには例え世界が彼らの思うようにされても誰も文句を言えない世界になる。
もう絶対に何があっても覆されることのない世界に。」
「………他にワクチンを開発する機関はないのですか!?」
「貴方は研究者じゃないから知らなかったのでしょうけどヴェノムはこの星の接触禁止の危険害悪生物の頂点よ。
成分を調べることなんて不可能。
ヴェノムの残り香からも有害反応が出て精神に異常をきたすと言うのがこの王都の調査できる限界よ。」
「「(レイディーさんの言っていたことその通り!)」」
「今マテオの人達は
明明後日の宣言が再戦宣言でないこと、
開戦した暁にはどうにかダレイオスに勝ってもらうか出来なくても戦争を長期化してほしいこと、
………そしてアルバートのような世界が認める救世主の登場を待ち望むことよ。
どれも願ってばかりで現実を見ていないものなのだけれどね。」