テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
カタスティアに言われ孤児院のダニエルに薬を届けに行ったカオスはアローネと別れて一人で図書館へと向かう。
ダニエルを見つけたカオスはそこで…。
王都レサリナス 東北部 カーラーン教会前
「………」
少し気分が晴れた気がする。
我ながら単純なものだな。
この王都に来て初めて自分がしてきたことをまともによかったと思えたな。
別に誰かに俺を見てほしくて始めた旅じゃないけどそれでも必要のない過大評価じゃない目で見てくれてる人はいたんだ。
ダニエル君の憶測は所々間違ってたけど…。
…いや、これも違うな。
俺はやっぱり誰かに見てほしかったんだ。
俺のことをちゃんと見て正当な評価が欲しかったんだ。
おじいちゃんの昔話に影響された色眼鏡でじゃなくてそのままの俺を。
随分と自分勝手だな、俺は。
昔は嘗められたくなくて人前でプライドもなにもかも捨てて色々やってたのに今は行き過ぎた評判に文句を言っている。
正しい評価なんて俺をよく知らなければできる筈ないのに。
本当はそんなものを他人に求めるのもおかしいんだよな。
自分を正しく評価出来るのはその本人しかいないのに………。
この考えもよくないな。
自分を評価しても自分で出した評価に満足したらそれ以上先には進めなくなってしまう…。
それなら自分と周りの評価を総合的に見て………。
俺って少し我が儘なのかな。
俺は俺が自分に付ける点数と周りが俺に付ける点数が同じでないといけないと思ってた。
それって大抵の人が無理なんじゃないか?
そんな当たり前のことでこの前から悩んでいたなんて俺って馬鹿だよな………。
「………やはりまだ王都から出ていなかったか。」
「!!?」
「忠告した筈だぞ。
この街から出ていけと。」
「ウインドラ………。」
「あんな目に遇わされても懲りんらしいな。
カオス。」
「………俺にはまだやらなきゃいけないことがある。
ここを今出るわけにはいかないよ。」
「…そうか、
俺もな本当なら他にやらなきゃならないことがあるんだよ。
………だが目の前に犯罪者がいるのなら先にお前を片付けないといけなくなった。」
「見逃しては……くれないようだね。
俺を探してた訳じゃないんだろ?」
「お前を探すほど俺も暇じゃないんだ。
俺の手を煩わせたくなければこの街から消えるかここで俺に大人しく捕まるかだ。」
「どっちも断ると言ったら…?」
「それに答える必要があるか?」
「………本当に変わったな。
昔の君はもうどこにもいないんだね。」
「昔の俺なんてとうにいない。」
「昔はあんなに優しくて………親友だと思ってたのに。」
「それを壊したのはお前だ。
カオス。
忘れたのかお前がしたことを。」
「忘れられるわけないじゃないか。
忘れていいことじゃない。
俺の過ちはこの先もずっと忘れたりはしない。」
「忘れないでいるだけなら誰にでも出来るぞ。」
「そうだな。
だから俺は昔の俺がしてしまったことが二度と起きないように今日まで生きてきたんだ。
殺生石の復活のために。
そして君のような人を出すことのないように。」
「俺のような………か。
そもそもお前が俺の何を知っている?」
「?」
「昔の俺を知ったように口を利くがお前は昔の俺を本当に理解していたのか?
俺が昔何を考えてお前に接していたかを?」
「………」
「…お前には分からないだろうな。
分かっていたら俺のことを親友だなどと口にはすまい………。
………お喋りはここまでにして今ここでお前を。」チャキッ
「剣を修めなさいウインドラ!」
「「!」」
「ここは神聖なるカーラーン教会の門前ですよ。
平和を象徴するこの場所で剣を抜くとは何事ですか!」
「カタスさん…。」
「カタスティア教皇………。」
「いくら有事だからといって民間人のいるこの街中で剣を抜くのは許しませんよ。
貴方はこの場に血を流させるおつもりですか?」
「教皇、この者は犯罪者です。
騎士が犯罪者を捕らえずして国の平和は保たれませんよ。」
「犯罪者だから剣を抜くのですか。
法に乗っ取った掟に従わない者には慈悲もなく切り捨てるのですか?
それならば私は非戦闘を掲げる教会の敷地内で戦闘行為を行おうとする貴殿方を止めなくてはなりませんね。」
「「!!」」
「このまま剣を修めるのなら双方不問にしましょう。
私も力で押さえ付けるようなことはしたくありません。」
「………ではこの者は手錠をかけて連行することにします。」ヂャリン
「ウインドラ、この方は私の客人です。
無礼な振る舞いは慎みなさい。
今ここで彼を連行するということは私への冒涜と見なしていいのですね?」
「!
ですがそれでは納得できません。
この者はマテオでの重犯罪者ですよ!
犯罪者の処理は騎士団で行う任務に含まれています!
それをそのように庇いだてするなど中立の立場を何だと思っているのですか!?」
「………」
「今は退きなさい。
貴方には別の任務があってここを訪れたのでしょう?
最優先に行うべきは先ずそちらの筈…。
貴方は頼まれたお使いも出来ないのですか?」
「………分かりました。
これ以上は無駄のようですね。
ここは教皇の顔を立てて退くことにします。
失礼しました。」ザッ
「………おかげで助かりました。
カタスさん。」
「いいのよ。
なんだか外で話し声が聞こえてきたから見に来ただけですもの。
それよりも大丈夫だったの?
怪我はない?」
「何か起きる前に止めてもらえたので大丈夫です。」
「そう、それは良かったわ。
こんな時に外に出すものじゃないわね。
まだ貴方達を監視している人がいるのかしら。」
「いえ………今回はたまたまだったみたいですし。」
「そう?
………でもこれで分かったでしょう?
貴方達はまだ安静にしておくべきよ。
外に出るとしたら戦争が始まって騎士達が少なくなるのを待つ他ないわ。」
「そうですね。
それまでは大人しくしておきましょう。」
「………この間も彼に通報されての騒ぎだったけどヤッパリ貴方達は知り合いだったのね。」
「カタスさんはウインドラのことを知ってるんですか?」
「昔騎士が連れてきた子だったのよ。
その時にダリントンを紹介してから頻繁に話すようになったの。
騎士団に入隊したこととか彼の故郷の話とかね。」
「ウインドラは………何か俺のことを言ってましたか?」
「…いいえ、何も聞いてないわ。
彼は一言も貴方の話題は出さなかった。」
「…!」
「貴方と彼の話を聞いたらすんなり納得はするけど
それまでは彼はミストという村でアルバートの一番弟子で修業していたこととそのアルバートが例の事件で亡くなったから師の後を継いで剣術の道を極めるために王都へと来たとしか聞かされてないのよ。
すっぱりと貴方のことだけが彼の話からは消されているの。」
「ウインドラは俺のことを恨んでるから…
俺を話に出すのも嫌だったんですね。」
「それはどうかは私にも分からない…。
彼が何を考えて貴方のことを秘密にしたのかも彼の心のうちを覗かないことにはどうにも言えないわ。」
「あいつ………。」
「今はそんなことよりも早く教会の中に入りましょう?
こんな目立つところにいたらまた他の騎士達に見付かっちゃうわよ。」
「………はい。」
ウインドラはあの時何を言おうとしたんだ?
俺はウインドラのことを親友………友達だとは思っていた。
だからミストにいたときもウインドラは俺のことを少なくとも友達だとは思ってくれていたと思ってた。
あの事件があって俺とは絶交したくなってこうなってしまったのは分かるけどあの口ぶりだと事件とは無関係に俺を友達とは思ってなかったみたいに聞こえた。
俺はウインドラに何か他にやらかしてしまったのか?
事件直前のことなんて今更思い出せないけど俺は何かウインドラに謝らなければならないことがあるんじゃないか?
それを俺は忘れてるんじゃないか?
一体何をしたんだ俺は…?
あの時なんて仕事以外ではザック達と絡む以外ではとくにケンカとかもしてなかった。
思えばウインドラとケンカなんて一度もしたことないんじゃないか?
アイツはいつも優しかったから俺の言うことを真面目に聞いてくれて………。
もしかしてそれが原因なのか?
あの頃は俺もちょっと強気な態度を取ってたからどこかでウインドラをイライラさせるようなことをしてしまったんじゃ…。
それでウインドラはずっと俺のことを心の中では嫌な奴だと思ってたのにかもしれない。
それでかな。
ウインドラがあんな風に俺のことを言ったのは。
済まないウインドラ………。
俺はずっと君のことを不快にさせてたのかな。