テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
カタスティアの進言でダニエルに薬を渡しに行ったカオスはダニエルから『カオス=バルツィエ』の話を聞き自分のことを見てくれている人もいるのか、と少しだけ吹っ切れることができたのだった。
王都レサリナス 東北部 カーラーン教会
「………それじゃあくれぐれも私のいない間は大人しくしているのよ?
私がいない間は私も貴方達のことを守ってあげられないから…。
食事のことなら他の侍祭に任せてあるからそれを。
後は怪しい人なんかが外にいてもついていっちゃダメよ?」
「カタス、
私達はもう子供ではありませんよ?
それくらい自分達で判断できます。」
「俺達のことは心配しないでください。
カタスさんが帰ってくるまでは殺生石のことを調べて待ってますから。」
「そう?
………なんだか不安だわ。
昨日のこともあるし…。」
「昨日のことというとカオスのご友人の?」
「そうよ、
なんだかあの雰囲気じゃ私のいないうちに彼がここへ来そうで…。
彼も私が今日ダレイオスへ出発することは把握してる筈だし…。」
「………大丈夫ですよ。
ウインドラが来ても応対しないようにしますから。」
「出来るのカオス?」
「………なんとか。」
「はぁ~、やっぱり心配ね。
そうだわ!
旅立つ前に貴方達に渡したいものがあるのよ。」
「渡したいもの?」
「アローネにはこれを。」スッ
「?
これって………魔術書ですか!?」
「そうよ、その術を使いこなせば貴方も自分だけじゃなくカオス達も守ってあげられるわよ。
私が帰ってくるまでに修得しておきなさいね。」
「でもこの術………ウインドカッターなら基本的な魔術の書ですから私はもう修得していますよ?」
「魔術も極めれば色々な効果が望めるわ。
貴方が使用するウインドカッターなんて単発式でしょ?」
「そうですけど………。」
「それならこの魔術書をよく読んでから『追撃』というものを修得してみせなさい。
ウインドカッターにはそれより先の段階があるの。」
「追撃………?」
「私が手本を見せるわね。
………『火炎よ、我が手となりて敵を焼き尽くせ。ふファイヤーボール』」ボボボッ
「カタス!?
こんなところでファイヤーボールなど使ったら建物が…!?」
「………?
発射されない?」
シュボッ、シュボッ、シュボッ、シュボッ、シュボッ、シュボッ、シュボッ!
「火球が増えた!?」
「これは…!?」
「…その反応を見る限り貴方達も旅のどこかで見たことがあるようね。
これが『追撃』という術よ。」フッ
「ファイヤーボールが消えた………。」
「貴女にはウインドカッターでこれを出来るようになってもらうわ。
その本のことをしっかり理解できれば修得も可能な筈。
貴女には『クラウディア』の血が流れているのですもの。」
「………はい。」
「頑張りなさい。
カオスにはこの本ね。」スッ
「これは何の技ですか?」
「それには防御の技『粋護陣』が書かれているの。
その技が出来ればあらゆる攻撃を跳ね返すことも出来るわ。
一番狙われやすい貴方にはそれがいいわね。」
「…有り難うございます。」
「どういたしまして、
そしてタレスさんにはこのレンズを。」
「これはスキル用のレンズですか?」
「ええ、
それには『バックステップ』、『エアリアルジャンプ』というものが入ってるの。
戦闘中の機動力は大事だから貴方にはそれを渡すわ。」
「………」
「戦闘になるようなことは起こらないと思うけど一応ね。
貴方達はそれでもし戦闘になったら逃亡できる可能性が上がるわ。
無くさずに持っておきなさい。」
「なんだかカタスが本当の母のように思えてきますね。」
「長生きすると自然とこうなるわよ。
アローネもいつか私と同じようになるときがくるわ。
もう結婚できる年にもなったのですし。」
「それは………そうですけど…。」
「まぁ、私の兄や弟達との縁談は流れてしまったけど貴女は私の義妹よ。
私と同じ道を辿ることは決定しているわ。」
「なんですかそれは…。」
「ただの予言よ。
それじゃあそろそろ行ってくるわね。
気を付けるのよ?」
「それはこちらが言うセリフじゃあ…。」
「…行ってしまいましたね。」
「まぁ、すぐに帰ってくるんでしょ?
それまでは静かに作業してるかこの本のことを勉強してみようよ。」
「そうですね。
では少ししたら地下へ行きましょうか。」
王都レサリナス 東北部 カーラーン教会 地下倉庫
「………ここに来るとどうしても気が重たくなるね。」
「この量を私達だけで調べあげるのも時間がかかりますからね。」
「せめてこの本達が整理されていたらどれが必要ない本か分かるんですけど。」
「カタスさんが一人で管理してたんだしそれも出来なかったんじゃないかな。
ここが誰にも邪魔されない場所なだけマシな方だと思うよ。」
「それもそうですね。
それでは今日も始めますか。」
「………」ペラペラッ
「………」ペラペラッ
「………」ジー
「………」ペラペラッ
「………」パタンッ
「………」ジー
「………」
「………」
「………」ジー
「………アローネ何を読んでるの?」
「………え!?
はい、何か言いました?」
「ずっとその本を読んでるみたいだけど…。」
「これですか?
………スミマセン、
なんだか懐かしいものを発見しましたのでつい…。」
「懐かしい?
読んだことある本だったの?」
「これは………ただの本ではありません。
この本は『思い出の記憶』です。」
「記憶?」
「………変なことを言ってスミマセン。
本当はただのアルバムなんです。
ウルゴスの………私がまだ小さいときの写真とかが載ってるものだったので。」
「へぇ~、
アローネの写真があるの?
見せてもらっていい?」
「どうぞ。」スッ
「……これは小さいときの写真?」
「はい、私がまだ世間をよく知らずにいた時期のものです。
カタスはこんなものまで大切にとっておいてくれたんですね…。」
「この一緒に写っているのはアローネのお姉さんのアルキメデスさん?
今のアローネとそんなに変わらないね。」
「そう言ってもらえると嬉しいです。
私も姉のような人になりたかったですから。」
「へぇ~、
結構沢山あるね。
家族の写真が。
こっちに写ってるのはお父さんとお母さんでしょ?
優しそうな人達だね。」
「はい、
二人とも私達のことを凄い可愛がってくれて…
本当にいい時代でした…。」
「………会いたくなった?」
「そうですねぇ…。
出来るのならもう一度あの時間を過ごしたいです。」
「そっかぁ………。
………あれ?
お姉さん急に椅子に座ってる写真が多くなったね?」
「姉はこの頃から体調を崩すようになりまして…
暫くは立つのもキツそうにしていました。」
「…今の俺達とそんなに変わらないのに………
………ん?
この一人で写っている眼鏡を掛けてる人は誰?
急にこの人の写真が出てきたけど?」
「あぁ、その人がよく私が話していた姉の夫のサタン義兄様です。」
「この人が?
………アローネ達と比べると少し地味な格好してるね?」
「この頃の義兄はまだ姉を診に来たお医者様という立場でしたから。
それに彼はハーフエルフ。
ウルゴスでは最下級の人種とされていて彼のおかれていた状況はかなり酷いものでした。
この写真では普通の方に見えますが私達には見えないところでは傷身体中傷だらけのようでした。」
「奴隷ってやつだったんだよね?」
「…その通りです。
サタン義兄様は将来的には親戚になるクラウディアのために王家から派遣された王家の奴隷でした。」
「そんな上の階級の人達から直接支配されていたら逆らうことなんて出来なかったろうなぁ。
このマテオを見てるとそのサタンさんのことも分かる気がするよ。
目の前でバルツィエの殺人が堂々と行われているのにそれに対しては誰も何も言わない…。
あれが『権力者』だって言うんだから困ったもんだよね。
そんな奴隷なんて制度作った人には…。」
「………スミマセン。」
「へ?」
「………私の家もウルゴスでは権力者でした。
それはもう王家に次ぐほどの………。」
「あ………(汗)」
「私の両親もサタン義兄様のことを知りながら遣わせていましたので同罪ですね。」
「…ゴメン、
そんなつもりで言ったんじゃないんだ…。」
「えぇ、分かっています。
サタン義兄様を慮っての言動なのですよね。」
「そうだけど………
別にクラウディア家を悪く言ってる分けではないからね?」
「はい、
カオスのことですからそこは気にしてませんよ。」
「………この辺りからアルキメデスさんベッドに寝ている姿が多くなったね。」
「この時期はメデス姉様も魔力機能障害で体が疲弊しきってましたから。
度々倒れることもありました。」
「………そんなに悪かったの?」
「メデス姉様が仰るには風邪などで熱が出たときの状態が平熱らしいです。」
「そんな状態が平熱って………。
それじゃあ立てなくなるのも無理はないな。」
「そうですよね。
それでもメデス姉様はなんとか体を動かそうとはしてました。
私達に心配をかけまいと。」
「立派なお姉さんなんだねぇ………。
………ってんん?
こっちのページではさっきの写真とはうってかわって元気になってない?
普通に立ち上がってるし、
もしかして…?」
「その頃にはサタン義兄様がメデス姉様の病状を治療し終わっていたのでそれで元気になったのですよ。」
「ここでか。
なんだかアローネ達もこの人と一緒に写る写真が増えてきたね。」
「初めの頃はメデス姉様を診に来る多くのお医者様のうちの一人とくらいしか家族もおもってませんでしたがサタン義兄様を通わさせているうちに私も家族もこの人は他のお医者様とは何か違うものを感じました。
それもそうですよね。
私の家族はそれまでの経緯でメデス姉様の症状を緩和させるだけだと思っていたのにサタン義兄様は完全に解消するつもりで姉を診ていたのですから。」
「それでその通りアルキメデス………メデスさんを治してサタンさんとアローネの家族が仲良くなったんだね?」
「お父様もサタン義兄様のことをすっかり気に入ってしまって王家に直接奴隷の権利を引き渡してもらいに行ってました。
サタン義兄様はそれほどまでに手離すのが惜しい人で、幸い王家はサタン義兄様の力を軽視していたのですんなりとことが運びました。」
「そこから後はサタンさんとメデスさんの…?」
「ここから先は二人の話になりますね。
二人が育んだひとときの愛の………。」