テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~   作:モニカルビリッジ

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 騎士を目指す少年カオスは祖父アルバの言いつけで村長の手伝いをしに村長邸宅に向かう。

 その後家に戻って騎士クレベストンを探しているうちに地下倉庫へとくる。

 いつもと違う様子に不審を感じながらも扉を開けて中に入るとそこには

 騎士クレベストンの変わり果てた姿があった。


ヴェノム

 

 

 

 まず目に入ったのは赤い色。

 

 そして水のように滴る液体。

 

 それは日常で目にすることあるもの。

 

 それを目にするさいはなんとも思わない。

 

 よくみる色だから。

 

 

 

 

 普段農機具を使うとたまに出てくる赤。

 

 それは頑張った証だから。

 

 自分が真面目に取り組んでる証だから。

 

 

 

 それが目の前にいる男から流れている。

 

 これほどまでに多く流れている光景は今までに見たことがない。

 

 

 

 

 

 

 これはこんなに多く流れ出るものだったのか。

 

 これはこんなに赤く綺麗なものだったのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これはこんなにも、怖いものだったのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クレベストン………さん?」

 

 

 

 カオスは問いかける。

 

 

 

「………。」

 

 

 

 

 男は応えない。

 

 胸には昨日のナイフが刺さっている。

 

 

 

 

 

 カオスは本能的に分かっている。

 

 男がもう応えないことを。

 

 男がもう2度と動き出すことはないただのものに変わり果ててしまったことを。

 

 

 

 生き物にはいつかこういうときが来ることは分かっている。

 

 自分も後100年もすればこんな風になってしまうことも。

 

 頭では分かってても心と体が震えることを止められない。

 

 いつも冷静を保つことに気を付けているのにこの時ばかりは冷静になろうとすればなるほど、頭で考えようとすればするほど焦る気持ちが抑えられない。

 

 目の前のものはもう身動きすらしないのに何故こんなにも恐怖が込み上げてくるのか。

 

 何故自分はここから逃げ出したいのに体は云うことを利いてくれないのか。

 

 

 

 カオスにはもうこの場でただ立ち尽くすしか出来ないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザッ。

 

 

 

 

 後ろで物音がした。

 

 その音でカオスはようやく体の自由を取り戻す。

 

 振り返るとそこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつもとは違う何処か悲しそうな顔でカオスを見つめる祖父の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お………じいちゃん……?」

 

「カオス……。」

 

 祖父が自分を呼ぶ。

 

 その声からは怒りとも悲しみともつかない感情が込められていた。

 

 

 

「見てしまったのか、カオス。」

 

「…………なんなのこれ。」

 

「なぁカオスこれは」

 

「どうしてクレベストンさんがこうなってるの!!昨日まで疲れてたけど別になんともなかったのに!!」

 

「カオス、今はここから」

 

「昨日あの後何があったの!!おじいちゃんとクレベストンさんは知り合いだったんでしょ!?それがどうしてこうなるの!?」

 

「カオス話は上で」

 

「おじいちゃんがクレベストンさんをやったの!?あんなに仲良さそうだったのに何で!?」

 

「いいからいうことを」

 

「答えてよ!!おじいちゃん!!!」

 

「カオス!!!!」

 

ビクッ

 

 

 

 

 

「カオス。」

 

「……。」

 

「落ち着ける訳ねぇが、今は聞け。」

 

「……。」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()。話はここを出てからしてやる。全部な。」

 

「……おじいちゃんはやってないの。」

 

「………。」

 

「……。」

 

「……俺がやったようなものだ。」

 

「それって……どういうこと?」

 

「クレベストンは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スクッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…。…!」

 

「おじいちゃん?」

 

「カオス!!伏せろ!!」

 

 

 

 

 突然おじいちゃんが持っていた剣を振りかぶって向かってくる。

 

「う、ウワァァァァァァァァァァ!!?」

 

「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザシュッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…。」

 

 何がおこった。

 

 おじいちゃんがいきなり剣を持って僕を…?

 

 目を開けてみると、

 

 

 

 

 

 

 おじいちゃんが立ち上がったクレベストンさんに剣を突き刺していた。

 

 

 

「おじいちゃん、何してるの?」

 

 今クレベストンさんは起き上がっていた。

 

 顔色は白く無表情だが目を開けている。

 

 まだ生きていたのだ。

 

「おじいちゃん!クレベストンさん生きてたよ!?何でまたそんなことを」

 

「コイツはもうクレベストンじゃねぇ!!別の化け物に変わっちまってるんだ!!」

 

「何をいって」

 

「クレベストンは死んだんだ!!」

 

 訳が分からない。

 

 何故おじいちゃんはクレベストンさんを殺そうとするんだ。

 

「アァァッ…」

 

「!!」

 

「おじいちゃん!クレベストンさん苦し…」

 

「下がってろ!!カオス!!」

 

 おじいちゃんがクレベストンさんから剣を引き抜き僕を引っ張って倉庫から出る。

 

 

 

ガダンッ!ザララララララララ!ガコッ!

 

 

 

 倉庫から出たおじいちゃんは急いで扉を閉めて最初に僕が外した鎖を巻き付けて再び開かないようにする。

 

 

 

「おじいちゃん!!一体何してるの!?クレベストンさんを早く手当てしないと!!」

 

「さっきも言ったろ!!アイツはクレベストンなんかじゃなくなったんだ!!」

 

「何言ってるんだよ!!現に今部屋の中で動いて」

 

「見ろ!!」

 

 おじいちゃんはそういって一緒に持ってきた剣を見せる。

 

「……黒い?」

 

 剣についていた血は……血ではなく何か黒い液体がついていた。

 

 それは見るからにネバネバしてそうな半液状のものだった。

 

「何……これ?」

 

 おじいちゃんは先程この剣をクレベストンさんに突き刺した。

 

 それを引き抜いてきたということはこの黒い粘液はクレベストンさんの体の中から出てきたということである。

 

 その正体不明の粘液を気になって触ろうとしたら

 

「触るな!!」

 

 

 

ビクッ

 

 

 

 おじいちゃんが僕から剣を遠ざける。

 

「……よく見とけ。」

 

 おじいちゃんがまた僕に剣を見せる。

 

 すると

 

 

ジュゥゥゥゥゥ!!

 

 

 剣から蒸気が湧いたと思ったら剣が溶けだす。

 

 

 

「触るなよ。強い酸性を持ってる。」

 

「!?」

 

「コイツに一滴でも触れたら終わりだと思え。」

 

「これはなんなの!?血じゃないよね!?どうしてクレベストンさんから」

 

 人の体の中にこんなものがあるなんて聞いたことがない。

 

 胃酸でもここまで剣を溶かすものなのか。

 

「クレベストンは昨日の時点でコイツが繁殖していた。」

 

「繁殖?」

 

「俺も詳しくは知らねぇ。コイツは100年前にはもうすでに世界中のあちこちにいた。モンスター図鑑でスライムって見たことあるだろ?あれの突然変異した奴だと王都の研究者は言っていたがその危険性は現存するどのスライムをも凌いで遥かに高い。」

 

「スライム!?」

 

 確かに見た目はゼリー状で図鑑で見た特色通り酸性のようだが。

 

「それが何でクレベストンさんから?」

 

「昨日お前と会う前にコイツに遭遇してたみたいでな。その時にやられたんだ。コイツは感染性繁殖魔法生物であらゆる生物に寄生してはその内側から侵食していきやがて全身をスライムに変えちまう。もちろんスライムだから分裂もするし頭なんてものもないから急所自体もねぇ。」

 

「……!」

 

「おまけに例外なく生物に寄生できることも確認済みだ。コイツのせいでいろんな村の人や家畜や森が犠牲になった。」

 

「そんな生物聞いたことないよ!」

 

「コイツの凄まじいところはその不死性だ。魔法生物のくせにスライムと違って魔術を受け付けねぇ。お前が聞いたことないのも仕方がない。コイツが出た地域は基本的にまず全滅するからな。地方の村に情報は出回ることもない。未だに世界が人の社会で続いていることが奇跡だぜ。」

 

「不死性……魔法が効かない?」

 

 何だそれは。それでは一体どうやって倒せばいいというんだ。こうして武器までも溶かしてしまうのでは人が太刀打ち出きる訳が……。

 

 

 

 

ドンッ、ドンッ、ドンッ

 

 

 

 

部屋の中から扉を叩く音がする。

 

「クレベストンさんが

!?」

 

『アアア』

 

 ただでさえ胸から大量に血を流していてそれで先程おじいちゃんにも刺されたというのに扉の中からはクレベストンさんの声がする。

 

 普通の人があんな状態で扉をこうも強く叩ける筈がない。

 

 部屋の中の彼は本当に別の何かになってしまったようだ。

 

「クレベストンさんはもう助からないの?」

 

「1度ああなっちまったらもう戻れねぇ。ただひたすらに他の奴を襲って食って増えるしか能がねぇ怪物だ。完全にスライムに移り変わったらこの扉が溶けねぇで持つことを祈るばかりだ。」

 

「じゃぁクレベストンはこのまま……?」

 

「……さっき言った不死性だが物理的な攻撃で死なないってだけで殺す方法が無いわけじゃねぇ。」

 

「なんなのその方法って?」 

 

「コイツ……俺たちは【ヴェノム】って呼んでるんだが存在が不安定らしく他の生き物を襲わずに時間がたつと飢餓でくたばる。」

 

「飢餓って何も食べずにいることでしょ?どのくらいかかるの?」

 

「1日前後だ。それでヴェノムは固形化はする。この倉庫ももともとそういう理由で作った。」

 

 やけに地下深くに作った上に部屋も広いとは思ったが、この倉庫にそんな理由が隠されていたなんて…。

 

「クレベストンさん…。」

 

 昨日話してみて親しみやすいいい人だと思ってたのにこんな、あの玄関での会話が最後になるなんて思わなかった。

 

 なんとか助けてあげたいけど…。

 

「クレベストンは死んだ。アイツは既にゾンビみたいなもんだ。」

 

 ゾンビ……。前に言われたことがあったな。殺生石のおかげでこの周辺じゃ見たことなかったけどいざ目にすると体がすくんでしまう。

 

 それが知り合いであればなおさらだ。

 

 

 

 

「……!!そうだ、おじいちゃん!!殺生石は!?」

 

「……。」

 

「殺生石があるならそれでヴェノムって奴だけをさ!」

 

 都合のいい考えだとは分かってる。

 

 過去に自分も死にかけた。

 

 それまで自分以外の触れた者を確実に葬ってきた殺生石。

 

 そのヴェノムという奴がなんなのか分からないが殺生石には敵うまい。

 

 それに可能性は低くてももしかしたらクレベストンさんだけは助かるかも。

 

「クレベストンさんを殺生石のとこに!」

 

「……そのことなんだが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャアアアアア

 

ドゴォォォォォォ!!!

 

アアアアアアッ!!

 

ウウウッ

 

 

 

 

 

 地下でそのまま話し込んでたら何やら地上が騒がしい。

 

 何だ?

 

 この騒音具合からして誰かが魔術を放っている。

 

 何をしているんだ?

 

 

 

 

 

 

「!?カオス!一旦話は終わりだ!先ずは上にあがるぞ!!」

 

 おじいちゃんがそういって階段をかけ上がる。

 

「え!?おじいちゃん!」

 

 僕も慌ててついていく。

 

 

 

 

 そして地上に出たら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 村の至るところが焼けていた。

 

 

 

 

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