テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~   作:モニカルビリッジ

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 騎士を目指す少年カオスは凶悪なモンスター、ヴェノムの襲撃で村が壊滅的危機に陥り1人逃げ惑う。

 しかし友の言葉により己の信条を思い出し村の人々を救うべく立ち上がる。

 だが後1歩のところでヴェノムに囲まれ窮地に追い込まれるも使うことを禁じられた魔術で皆を救おうとする。


籠城戦

 

 

『また…ヴェノムが暴れだしたようじゃな。』

 

 心の中で声がした気がした。

 

『また…ワシが屠らねばならぬのか。』

 

 心の中の声はどこか悲しげな声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カオス!起きろカオス!」

 

 村長の僕を呼ぶ声で目を覚ます。

 

「カオス!よかった無事だったんだな!?」

 

 無事?なんのことだ。

 

 ここは……森の中?

 

 何をしていたんだろう。

 

 何か懐かしい声を聞いたような……。

 

 

 

 そうだ。

 

 ヴェノムだ。

 

 今村は大変なことになっている最中だった。

 

 僕はおじいちゃん達を見つけて村から出ようとしてそれから…。

 

 

 

 僕が魔術を使った。

 

 禁止されている魔術を。

 

「そうだ、村長!あれからどうなったの!?ヴェノムは」

 

「落ち着けカオス!ここにこうしているというだけでどうなったか分かるだろう?」

 

「…。」

 

「お前の魔術がなかったら私たちは今頃あのモンスターに食い尽くされていただろう。ありがとうカオス。」

 

 どうやら僕の魔術で危機を脱せたようだ。

 

「よかった…。」

 

「全くお前は自分にもしものことがあったらどうする気だったんだ!お前のマナはギリギリで命を繋いどるというのに!」

 

 村長が僕を叱る。

 

 本当なら死んでたかもしれない。

 

 それでも構わなかった。

 

 おじいちゃん達が無事なら……。

 

 

 おじいちゃん?

 

「ねぇ、村長。おじいちゃんは?」

 

「……。」

 

「村長?」

 

「……。」

 

 村長が村の方を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故だ。

 

 僕はおじいちゃんや村長を助けたいと思って死ぬ気で魔術を撃った。

 

 なのに生きているのは意識を失った僕でおじいちゃんが……。

 

 

 

「アルバは……お前が魔術を放って意識を失った後、私たちを逃がそうとして…。」

 

 なんだそれは?

 

 そんなのどうだっていいのに。

 

 おじいちゃん達が逃げられるように僕は死のうとしたのに!

 

 おじいちゃんがいないんじゃ、僕は何のために…

 

 

 

「今頃は囮になって村の中で…。」

 

 

 

 …!

 

「村長!まだおじいちゃんは生きてるの!?」

 

「お前が開けた穴から抜け出した後はヴェノムを撒くために再び村の中を駆けずり回ると言っておった。」

 

「!!有り難う!村長ここまで運んでくれて助かったよ!」

 

「カオス!どこに行く!?そっちは村だぞ!戻れ!!」

 

「おじいちゃんを置いてはいけないよ!村長は先に森の外へ向かってて!」

 

 僕はそういって村に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの馬鹿は無茶なとこが祖父にそっくりだ!」

 

 カオスがいなくなった森の中で眠るミシガンを背中に乗せながら村長が愚痴を溢す。

 

「まぁ、あの2人なら大丈夫だと思うが。」

 

 

 

 

ガサガサッ!!

 

「今度はなんだ!?」

 

 森の茂みから音が聞こえそこから飛び出てきたのは……。

 

「お前はっ…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、ふぅ、ふぅ、…」

 

 ヴェノムに追い回されながらもなんとか紙一重でかわしていたがそろそろ体力が尽きかけている。

 

 もうそろそろカオス達も逃げきれたことだろう。

 

 アルバは村の入り口まで向かう。

 

「流石に疲れたな。こんなに魔術を使いながら駆け回るなんざ何10年ぶりだ?」

 

 肉体の限界に伴って精神もまいっているのだろう。

 

 誰に聞かせるわけでもない1人ごとがでてくる。

 

「ふぅ~、まだまだ年齢じゃぁ若い方なんだがなぁ。動かねぇと落ちちまうもんだなぁ。」

 

 軽口を叩けるだけの余裕は出来てきた。

 

 後はカオスが無事なのを確認できれば…。

 

 

 

「ふんッ!死にかけギリギリのマナしかないくせに生意気にも俺達を助けようとしやがって。あの馬鹿がっ…。」

 

 口では悪く言ってても実際のところは嬉しそうなアルバ。

 

「アイツなら………カオスならこの国を変えられるかもな。俺が出来なかったことを。」

 

 

 

「おじいちゃ~ん!」

 

「!!」

 

「(この声はまさか!)」

 

 声の先にはカオスがいた。

 

 

 

 

「おじいちゃ~ん!!」

 

 必死になっておじいちゃんを捜す。

 

 まだ生きているならそう簡単にやられる筈がない。

 

 僕はおじいちゃんに生きていてほしいんだ!

 

 囮なんて馬鹿な真似するなと怒ってやる。

 

 残り90年くらいしか生きない僕よりもおじいちゃんの方が生きていた方がいいに決まっている。

 

 僕は村の中を捜し回る。

 

 

 

 

「おい!カオス!!」

 

 いた!

 

 おじいちゃんだ。

 

「おじいちゃん!!」

 

 再会を喜びたいがまず先に。

 

「「おらぁぁぁぁぁ!!!」」

 

ドゴォッ!!

 

 お互いの拳がクロスする。

 

「痛ってぇなぁ、何すんだよ!クソジジィ!!」

 

「この馬鹿が!!何のために俺が時間稼ぎしてヴェノムを引き付けてたか分からねぇだろうが!!こんなとこまで戻ってきやがって!」

 

「そんなもんおじいちゃんも一緒だろ!せっかく僕が魔術で道を開けたのにワザワザ残ってかっこつけやがって! 」

 

「お前こそあれほど魔術使うなって言ってたのに使いやがって!生きてたからよかったもののお前はもしかしたら死んでたかもしれないんだぞ!?」

 

「そんなこといちいち考えてた訳ないだろ!あのままなにもしなかったら4人とも終わってたとこなんだぞ!」

 

「「このぉぅぅぅ…!」」

 

 2人して怒声の掛け合い。

 

 やがて

 

「カオス…マナは大丈夫なのか?」

 

「マナ?とくに問題ないと思うけど。」

 

「さっきは魔術を1回使っただけで気絶したんだ。また奇跡に助けられたと思え。次はないぞ?」

 

 そういえば、魔術を使ってから体の感覚がふわふわしてる気がする。

 

 数年ぶりの魔術に体が驚いているのかな。

 

 まぁ、なんにしてもこれで

 

「おじいちゃん、とりあえずは外へ出よう!」

 

「そうだな、ここも危ない。」

 

 僕達はそういって村の入り口まで向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 入り口までたどり着いて

 

「何匹か着いてきちまったがもうこの際仕方ないだろう。こっから森を抜けるぞ!」 

 

 おじいちゃんがそう言う。

 

 もとよりそのつもりだ。

 

「分かったよ!それじゃあい……!?」

 

 

 

 

タタタタタッ!

ガササササッ!

ザッザッザッ!

 

 

 

 

 森の奥から何かがこちらに向かって走ってくる。

 

 それもたくさん。

 

「カオス!気を付けろ!」

 

「!!」

 

 そして森の奥から向かってきたもの正体は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先に逃げているはずの村人達だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!?アルバさん!!」

 

「なんだお前ら!何故戻ってきたんだ!?」

 

 戻ってきたのは僕とウインドラが最初にここに来たときにいた人達やその後助けた人たちもいる。

 

 一体何があったんだ。

 

 

 

「カオス!!」

 

 そのとき村人の中からウインドラが出てくる。

 

「ウインドラ!?何があったの!廃村はこっちじゃないよ!?」

 

「森を抜けようと皆で向かってたんだけど進んだ先の方からヴェノムが出てきたんだ!それもたくさん。」

 

 何だって!?

 

 じゃぁ、

 

「それで逃げられなくて戻ってきちまったか。」

 

 表情が暗いおじいちゃん。

 

 それもそうだ。

 

「もう何処にも逃げられないよ…。」

 

 怯え出す村人達。

 

 逃げ場と思って走った先にヴェノムが待ち構えてトンボ返りだ。

 

 精神も崖っぷちまで追い詰められて今にも堕ちてしまいそうなのだろう。

 

 

 

 

 

「!?そうだおじいちゃん!ラコースさん達が隠れてる場所は?そこでヴェノムがいなくなるまで待とうよ!」

 

「……。」

 

「父さんが…?」

 

 ウインドラがラコースさんの名前に反応する。

 

「どうしたの?おじいちゃん?もしかして人数が多すぎるとか?だったら行ける「カオス」?」

 

 

 

「悪いなカオス、そんな都合のいい場所はないんだ。」

 

 

 

 

「都合のいい場所?なかった…。どういうこと?じゃあラコースさんはどこに…」

 

「ラコースは……死んだ。」

 

「!!」

 

「父さんが………死んだ?」

 

「済まないウインドラ…。」

 

「村長?」

 

「ラコースは私たちを庇ってヴェノムに触ってしまったんだ。それで感染してしまい…。」

 

「……。」

 

「私達にはどうすることも出来なかった。死にいく彼を安らかに逝かせるく「それで?」」

 

「それで誰が父さんをやったんですか?」

 

「……。」

 

「……。」

 

「わた「俺だ」」

 

 ウインドラが声のした方へと向く。

 

 おじいちゃんだ。

 

「ラコースを最期に看取ったのは俺だ。」

 

「……アルバさん。」

 

 ウインドラがゆっくりとおじいちゃんに近づく。

 

 そして

 

 

 

「今は……緊急時で逃げるの第一ですから何も聞きませんが……後でお話お聞かせ願えますか?父さんの最期を。」

 

 そういったウインドラは今にも泣き出しそうな顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「状況は最悪だな。前方にも後方にもヴェノム。引くも押すも出来ない八方塞がりだ。」

 

 人数が増えたとはいえ使える選択肢が少なすぎる。

 

「水で押し流せばなんとか抜けられるんじゃないか?」

 

「アクアエッジで飛ばすのも限界近いんじゃないか?この場にいるやつで後何人魔術が使える?」

 

 …そう言われて手をあげたのは全体の4分の1くらいだった。

 

「ダメだな。この人数をカバーするには少なすぎる。途中で力尽きるのがおちだろう。」

 

「じゃあどうすればいいんだ!?他に手立てはないんだぞ!?」

 

「……。」

 

 他の手など考え付く筈がない。

 

 ただでさえ殺生石のおかげで戦闘からは遠い村の人々。

 

 魔術をろくに使ったことがないものもいる。

 

 言うなれば武器を持っただけの素人集団だ。

 

……

 

……

 

……

 

 先ほど手をあげた人達が集まって何か話している。

 

 何か策でも考え付いたか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダダダダダッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

「まぁ、そうなるわな。」

 

 魔術を使える人達が一斉に森へと駆け出した。

 

 まさか

 

「僕達を見捨てて…!?」

 

「アイツら…。」

 

「他に手立てがないんじゃ生き残れる手を選ぶだろう。連中を恨んでやるなよ。」

 

「じゃぁ、俺たちはどうなるんだ。」

 

「……今の連中についていけばなんとかなるんじゃないか?」

 

「……!?」

 

 それを聞いて駆けていく人達。

 

 残ったのはもう走る気力さえ残ってないもの達だけだった。

 

 

 

「アルバ、どうするんだ?」

 

 村長がおじいちゃんに問う。

 

「……奴等は特性状上下の段差には不向きな体をしている。普通のスライムだったら壁に張り付いたり出来るんだろうが奴等の強力な鉄すら溶かす体質のせいで壁を登れねぇ。つまりここより下に落っことせばいいんだ。」

 

「それっておじいちゃんの!?」

 

「地下倉庫に落っことせば下に落ちた奴等は這い上がれねぇ。それで村のヴェノムはいいだろう。ヴェノムは単純な食欲しか持ってねぇから落とすのはそう難しくない筈だ。」

 

「それで行こう。後のことはそれから考えよう。」

 

 僕らはおじいちゃんの地下倉庫のある庭へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、小屋は外したな。」

 

 庭についてから雨が入ってこないように建てた小屋を解体して地下への階段をむき出しにする。

 

 下を覗きこむと1匹のヴェノムが階段を登ろうとしてたが1段目と2段目が溶けていて上がれないようだ。

 

 …このヴェノムは恐らく。

 

「クレベストン、また会ったな。」

 

 おじいちゃんがしみじみと言った。

 

「クレベストンさん…。」

 

 さっきまではゾンビとはいえ人の形はしていたのに。

 

「ここに落とせばいいんだな。」

 

 他に集まっていた人が言う。

 

「あぁ、こんなときのために中は結構深く広く造ってある。村にいる分だけでも十分に入る筈だ。」

 

「よし、手分けしてヴェノムを誘い込もう。」

 

 みんな積極的に動いてくれる。

 

 もうこれしか手がないと分かると必死だ。

 

「カオス俺達も行こう!」

 

 ウインドラが駆け出していった。

 

 僕も出来ることをやらなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからみんなで動いたら結構早くに終った。

 

「もう村の中のヴェノムは粗方片付いたみたいだ。」

 

 地下倉庫はもう階段自体が溶けてなくなり階下の方にはまるで井戸の水のようにヴェノムがひしめいている。

 

「まだ結構入るな。これからどうすればいいんだ?」

 

「奴等は他にエサがなければそのうち溶けきって消える。後は時間を待つしかねぇ。今のうちに腹減ってるやつは飯でも食っとけ。」

 

 どうやら一応の安全は保てるようだ。

 

 村はどうなるかは分からないが生き残れただけでも幸いだろう。

 

 後は、

 

「森にどのくらいヴェノムがいるかが気になるな。逃げてった奴等がそのまま引き連れて逃げ延びてくれればいいが…」

 

 先に森の外へと向かった人達が今どうしてるかがこれからを左右するらしい。

 

 無事に逃げてくれればいいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウァァァァ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 調度森の人たちのことを考えてたら森の方から声がした。

 

 見れば先ほど逃げていった人達だ。

 

「…どうやら無事だったみたいだがな、ヴェノムまで連れてやがる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァハァ!!も、森に逃げたらヴェノムが…!!」

 

「お前ら!!さっきはよくも!」

 

「し、仕方ないだろ!生き残るのに必死なんだよ!」

 

「まぁ待て待て。で状況は?」

 

 おじいちゃんが冷静に聞き出す。

 

「森に逃げたら他のモンスター達が襲ってきて、なんとかかわしてきたんだけど、攻撃を受けた奴等がヴェノムにぃ…!」

 

「なるほど、ヴェノムが出たからもしやとは思ったんだがな。そこまで酷くなってたのか。」

 

「アルバさん!この森はもう…!」

 

「あぁ、言いたいことは分かる。既に奴等の縄張りになっちまってるだろ?」

 

「!!アンタまさか知っていて俺達を止めなかったのか!?」

 

「何言ってんだお前ら!お前らが勝手に逃げ出したのが悪いんだろうが!アルバさんは具体策を用意していたのに!」

 

「何だとこのぉッ!」

 

「よせ。仲間同士で割れてる場合じゃねぇだろ。責任の擦り付けあいがどんな解決策に繋がるんだよ?」

 

「「……。」」

 

「俺も全てを把握してる訳じゃねぇ。もしかしたら森に逃げたやつらがそのまま脱出出来てたらその後に続いて俺達も逃げれた筈だしな。それができなくなった。それが分かっただけでも進展だ。」

 

「ではこのあとは?」

 

「俺と一緒に残ってたやつらは分かるな?森にどれだけヴェノムがいるか分からねぇ。あとヴェノムがどのくらいいるのか判断つかねぇが落とせるだけ落とすぞ。」

 

「落とす?」

 

「アルバさんとこの倉庫に落として消えるまでやり過ごすんだよ。」

 

 

 

 凄いなおじいちゃんはさっきまでの険悪なムードからもう皆をまとめている。

 

 ブランクがあるとはいえこれが戦場で戦ってきた戦士のカリスマ性なのか。

 

 ザックに勝った程度の僕ではまだまだ遠く及ばないなぁ。

 

 おじいちゃんについけいけば村のみんなは大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「森の中に入るとヴェノム化してねぇゾンビにやられる!ここは奴等が出てくるだけ出てきてから誘き出せ!」

 

 僕達の長い長い籠城戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今どれくらい入った?」

 

「最初の村の中にいた両の10倍は落ちました。」

 

「あとどれくらい入る?」

 

「入っても後20体くらいが限界かとこれ以上落とすと溢れてきそうです。」

 

「そうか、多分まだ森にいる奴等、100体はいると思うんだがな。」

 

「…そんなに!?」

 

「この村なんざ森のほんの少し程度の広さしかねぇんだ。そのくらいは想定しとかねぇとあとで痛い目見るぞ?」

 

「ではどうすれば?」

 

「籠城戦は気長に待ってるだけじゃねぇよ。マナが回復してきたやつはこことおんなじように穴を掘れ。」

 

「はい!」

 

「回復しきってないやつは飯の確保と森の見張りだ。交代制なんてしてる暇はねぇからな。ファーストエイドで騙し騙しやってくぞ。」

 

「「はい!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれからどれくらいたったのだろうか。

 

「「「「「……… 。」」」」」

 

 皆はとっくに疲労が限界だ。

 

 ヴェノムは時間問わずに責めてくる。

 

 1人犠牲になるだけでその補充はとてつもなく皆にのし掛かる。

 

 それが分かっているから皆も誰も犠牲にしないよう努力はする。

 

 けどそれもそろそろ限界だ。

 

 

 

 

 

「もうそろそろいなくなったんじゃないか?」

 

 誰かがそう言った。

 

「……確かに最後にヴェノムが来てから半日はたってる。」

 

 皆ももう終わりたがってる。

 

 僕ですらそれを願っている。

 

「まだだ。この程度の筈がねぇ。」

 

「でもアルバさん!もう村にはこれ以上ヴェノムを入れられるような穴は…。」

 

「……。」

 

 ヴェノムを落とす穴は村の中に10は出来ていた。

 

 どれももう満杯まで来ている。

 

「俺が…見てきましょうか?」

 

「…まて早まるな。」

 

「でも誰かが確認しないと!」

 

「……だったら俺がいく。」

 

「アルバさんが…?」

 

「俺だったら他の連中よりかはヴェノムに精通している。奴等が何処にいるか探すんなら俺が直接行くのが効率的だろ?」

 

「そうですが…」

 

「…ちょっくら行ってくるぜ。」

 

 そう言っておじいちゃんは森に向かう。

 

「おじいちゃん!」

 

「カオス。」

 

「おじいちゃんだけだと心肺だよ!僕も行くよ!」

 

「ダメだ。」

 

「なんで!?」

 

「…後ろを見てみろ。」

 

 おじいちゃんに言われて後ろを見ると

 

「「「「「………。」」」」」

 

 村の皆が僕らを見ていた。

 

「アイツら俺達が行くと全員付いてくるぞ?お前は俺の家族だからな。」

 

「え?」

 

「俺達がそのまま逃げちまうか疑ってんだよ。お前と俺が一緒にいけばそのままふけちまうかもしれねぇからな。」

 

「……。」

 

「皆助かりてぇんだよ。誰を差し置いてもな。なら家族がいる俺がお前を置いていけば俺は戻ってこなければならない。分かるなカオス。」

 

「…でも「だったら俺が一緒に付いていくよ」」

 

「俺だったら子供だから大して村の皆からは注目されないだろう?アルバさんが心配なら代わりに俺がいくよ。」

 

 そういってかって出たのはウインドラだった。

 

「ウインドラ…。」

 

「どのみち誰かが見に行かなければならない。けど安全とはいえない森を皆で見に行って全滅を避けたい。なら確実に戻ってくる人と村の戦力外の俺なら皆も納得だしカオスもそれでいいだろ?」

 

「…。」

 

「俺がアルバさんを守るよ。だから安心して。」

 

「…分かった。」

 

「ありがとうカオス、じゃぁ行きましょうアルバさん。」

 

 そう言っておじいちゃんとウインドラは森中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅すぎないか?」

 

「森に入ってから大分たつ。何かあったか。」

 

「まさか逃げたんじゃ…」

 

「けどアルバさんとこの孫が…」

 

「魔術も使えないガキなんてほっといて逃げるだろ…」

 

 大人達が口々に好き勝手なことを言う。

 

 そんなわけないだろう。

 

 引退したとはいえおじいちゃんは騎士だ!

 

「……。」

 

 それをこいつらに言ってやりたい。

 

 

 

 言ってやりたいけど我慢だ。

 

 ここで僕が言ったところでこいつらは信じない。

 

 なら僕がおじいちゃんの信用のためにここで大人しく待っているしかない。

 

 煽ったところで暴動の誘発になるだけなら僕が我慢すればいい。

 

「カオス…。」

 

 村長が僕をよぶ。

 

「こんな子供でも立派に使命を果たそうとしてるのに…何も出来ない自分が心苦しいよ。」

 

「…。」

 

「アルバは必ず戻ってくる。今はあっちの方で休んでおけ。お前はよくやってるよ…。」

 

「…。」

 

 よくなんてやってない。

 

 僕は子供だからって逃げ出そうとした弱虫なんだから。

 

 人より出来ない僕は誰よりも頑張らなくちゃいけなかったのに!

 

 

 

 

 

 

 

 

ガサッ!

 

 

 

 

 

 

「!!何かいるぞ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その声で皆構える。

 

 そして

 

「ハァハァ…!!」

 

 出てきたのはウインドラ1人だった。

 

「ウインドラ!大丈…」

 

「待て!ソイツ感染してるかもしれないぞ!」

 

 僕はその肥を無視しウインドラに駆け寄る。

 

「ウインドラ!何があったの!?おじいちゃんは」

 

「ハァ…ハァ…アルバさんは…」

 

 なかなか息が調わない。

 

 余程急いでここまで来たようだ。

 

「ウインドラ落ち着いて!ゆっくりでいいんだ。」

 

 僕の声を聞いてウインドラが少しずつ落ち着いていく。

 

 

 

「アルバさんと2人で森の奥まで行ったんだ。そしたらそこにここよりも更に多くのヴェノムがいたんだ。俺はそれを見て驚いて逃げてきたんだけど途中アルバさんが囮になるって言ってはぐれたんだ。」

 

 

 

「何だって!?」

 

「ここより更に多いだと!?」

 

「そんな…」

 

「じゃぁ、今まで俺達がやってきたことは無駄だったのか…?」

 

「せっかくここまできたのに…まだそんなにいるのか…。」

 

 大人達が次々と絶望を吐露していく。

 

「もう無理だよ…。」

 

「マナはとっくの昔に尽きている。」

 

「俺達はあの化物に喰われるしかないのか…。」

 

「なんか虚しくなってきた…。」

 

「どうせ頑張ってもあの化物共が押し寄せてお仕舞いだよ…。」

 

 皆連日の奇襲で疲れはてている。

 

 気力も体力も限界をとうに越えている。

 

 そこに来てこの報せはあまりにも酷だった。

 

「俺……森に行くよ…。」

 

「俺も…」

 

「私も…」

 

 どうせこのまま抵抗したところで結局喰われるのなら今楽になろう。

 

 村人達からはそんな空気が漂ってきた。

 

 

 

 

 

「ウインドラ!おじいちゃんはまだ諦めてないんだろ!?」

 

「カオス…。」

 

「諦めてないんだろ!?」

 

「う、…うん。」

 

「だったら僕が諦めるわけにはいかないじゃないか!」

 

 おじいちゃんはここまで皆のために体を張って戦ってきたんだ!

 

 最初はクレベストンさんを刺したり、取り巻きを斬ったりして驚いたけど、おじいちゃんはずっと皆のためだけに動いてたんだ。

 

 今ここでコイツらを死なせたら汚れ役をかって出たおじいちゃんの努力が無駄になる!

 

 

 

「ウインドラ!僕はおじいちゃんを探しに行くよ!」

 

「か、カオス!?」

 

「ウインドラはそこのソイツら繋ぎ止めといて!」

 

 そう言って森へと駆け出す。

 

 

 

 

 

 

 

 おじいちゃんならなんとかしてくれる。

 

 おじいちゃんなら何か策をくれる。

 

 おじいちゃんは僕にとって最高の騎士だから。

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