テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
レサリナスから逃亡した一団は謀反を企てていた騎士団が何をしようとしていたかを聞き出す。
その話でレサリナスが東西に別れて貧富の差があることやカーラーン教会のカタスティアがバルツィエと仲違いして城から離れたことを知る…。
グラース国道 北西部 夜
「それで表でそうした活動をしてバルツィエに大人しく従っているフリをする連中がいて………、
裏で動かしていた奴等は具体的に何を探っていたんだ?」
「王城の西隣に国の研究機関があるのは知ってるな?」
「あぁ、
そこからワクチンをパクってきてんだからな。」
「俺とミシガンもそれに付き合わされたんだよ。」
「カオス?
貴方は本当に盗賊になってしまったのですか?」
「たっ、たまたまレイディーさんが俺を助けてくれてその後に付いていったらそういうことになってたんだ…。
俺もまさか盗みの片棒を担がされるとは思ってなかったんだよ。」
「………そういうことでしたら問い詰めはしませんが…。」
「そんで成果は上がったのか?」
「………内部に侵入することはできたがこれといった情報は掴めなかった………。
あったのは多分野に渡る医学研究資料や捕らえた虜囚達に行う人体実験の資料等ばかりだった。
肝心なヴェノム医学に関する資料は発見することはできなかった…。」
「人体実験って………、
それはそれでヤバイものだと思うけど………。」
「この国ではその程度のものを持ち出して公表したところでどうにもならない。
それほどまでにバルツィエの持つ力は広大だ。」
「擬きの言う通りだ。
奴等を出し抜こうとするのなら奴等の足を掬うようなもんじゃなくて奴等と並ぶ技術で対抗しなきゃならねぇ。
奴等のスキャンダルが発覚したところでバルツィエがワクチンを握っている以上はどんな訴えも押し黙らされるだけだ。」
「俺達もそう考えてバルツィエのゆかりのありそうな場所をくまなく調査してみたが………。」
「何もなかったんだな?
そりゃそうだ。
そんなもんがあったならアタシがとっくに調べあげてる。」
「………ワクチンがあるのならその製造方法や使っている材料がある筈なんだ。
それさえ掴めれば戦力は及ばずとも奴等の絶対的な地位を脅かすことができるんだが………。」
「レイディーアンタ前に働いてたんでしょ?
何か手掛かりでも見つけられなかったの?」
「アタシがあそこで何やらされてたか言ったろ?
アタシがやってたのは精々ヴェノムウイルスを使った動物実験くらいだ。
そこで研究してたのはどういう動物やモンスターがヴェノムの影響を受けて変化または進化するかだ。」
「進化?」
「ヴェノムウイルスに感染した生物は一見どれも同じような変化が起こっているように見えるが実は結構な個体さがある。
同じ種類の生物でもだ。
陸上生物から海洋生物にかけてたくさん実験したがヴェノムに感染してから数分でゾンビになり、そしてスライムに変化して十時間前後で死滅する。
これが実験の七割。
それより長くゾンビになるまで数時間かかってそっからまたスライムまでになるのも長い奴が二割。
これも二十時間前後で死滅。
その過程でどれも例外なく生物としての能力が知能以外は飛躍的に上昇している。
これは進化と言ってもいいほどまでにな。」
「結局ゾンビになってスライムになるのは変わらないんだね。」
「じゃあ残りの一割はどうなるのですか?」
「………」
「?
レイディーさん?」
「ごくまれにだがヴェノムに感染してもスライムにまで至らない個体がいた………。」
「「「「え!?」」」」
「それは本当か?」
「間違いじゃねぇよ。
その研究してたときはアタシが主任だったんだ。
その個体は何時間経ってもスライムに至らなかった。」
「それで!?
その個体はどうなったの!?」
「その後は試しにスライムになった別の感染個体と檻を繋げてみたんだが食われて死んじまったよ。」
「…なぁんだ………。」
「どういう名の由来かは知らねぇがそういった個体のことを何故か研究所の上層部の一部の連中が『アスラの失敗作』と呼んでいるようだ。」
「アスラ?」
「!
アスラ…?」
「原初の言葉の意味で言うと“非生物”という意味になる。
もともとヴェノムそのものがアタシらが定義している生物とかけ離れているようなもんだが何故そう分けて呼んでいるかは定かじゃねぇ。」
「非生物………、
レイディーさん、
俺達が初めて会った時のこと覚えてます?」
「ん?
トーディアのときのことか?」
「それはレイディーさんが俺達を見つけた時でしょう。
あの時は俺達はレイディーさんのこと気付きませんでしたよ。」
「そうだったな。
とするとネイサム坑道の時だな?
それがどうした?」
「あの時坑道の奥にいたガーディアントとかエレメントとかもそのアスラってのになりませんか?」
「よく気付いたな。
確かにそうなるのかもな。
だがあいつらは魔法生物であって非生物とは違うな。」
「魔法生物………?」
「あいつらは古代の人の技術で作り出された人造物だ。
マナを内包しちゃいるが生物じゃねぇ。
生物のように動くから生物って名前がついているだけなんだよ。
構成組織のほとんどが無機物だからスライム形態になることはない。
スライムに変異するのは全て生物として成長するやつだけだ。」
「………」
「だからあれらは感染と言うよりヴェノムウイルスが付着していた状態だったってだけだ。
触られたら感染もするぞ?」
「あの時はレイディーも感染していましたね。」
「まぁな。
けどワクチンですぐ治療しただろ?」
「そのままその性格も治療できればよろしかったのに………。」
「何だよ。
アタシの性格に問題があるみてぇな言い方すんなよ。」
「完全にその通りじゃない。
一度どっかでも治療してきなさいよレイディー。」
「フッ…、
それもそうだな。」
「「え?」」
「アタシもこんな猿に襲われそうになったりゴリラに頭を締め上げられたりなんかしてどっかおかしくなってるのかもしれねぇ。
本格的に医者に診てもらうのも検討しておこうか。」
「………本当に襲いますよ?」「アンタの頭のネジがブッ飛んでるから絞め直してあげてたつもりだけどまだまだ締めが甘かったみたいね。」
「よせよせって、
そんなことしたってアタシの脳細胞が握り潰されるだけだっての。」
「いっそのこと人に対してそんな暴言吐く脳細胞は一気に全部破壊しちゃった方がいいんじゃない… ?」
「暴言?
何の話だ?」
「アンタが誰か呼ぶ時の名前とか普段の言葉遣いのことよ!!」
「あれか?
アタシなりにお前らを上手く表現したニックネームだと思うんだが。」
「猿やゴリラって呼ばれる人の気持ち考えたことある?」
「あるわけねぇだろ。
アホ臭い。」
「アンタねぇ「レイディーさん。」」
「何だ坊や?」
「もう少しその………、
さっき言っていた魔法生物ってやつのこと詳しく教えていただけませんか?」
「?
まだそこが気になるのか?
そんな大した話でもないと思うんだが………。」
「…非生物とか魔法生物とかまだよく分からなくて……、
魔法生物には他にどんな種類がいるんですか?
ゴーレムやエレメントの無機物くらいしかいないんですか?」
「…大雑把な括りではな。
だがある意味じゃあ魔法生物が最もデリス=カーラーンで最多な種族と言っている奴等もいる。
とある研究者が書いた論文ではあながち間違いでもないと学会で話題になった研究がある。
そいつの論文ではそういうゴーレムに限らずアタシら人や動物、モンスターも魔法生物として数えられるのではないかとも言ってたな。」
「そっ、そんな人もいるんですね。
確かに大抵の生物は皆マナを持っていますし魔術も使えるからそうした捉え方も「それは関係ねぇよ。」」
「そんなこと言ったらデリス=カーラーンに生息する全ての生物が魔術が使えるぜ。
それだったらワザワザ『魔法生物』なんて言い方しねぇで『生物』ってだけでいいだろうが。
アタシはあながち間違いでもないと言ったんだ。
面白い論文として持ち上がったが認められた訳じゃねぇんだよそいつのそれは。」
「………じゃあどういう意味なんですか?
さっきの話は………。」
「何故この星で魔法生物が最多な種族になるか………。
それは魔法生物が今も増え続けているからだ。」
「?
誰かがエレメントとかを造り出してるってことですか?」
「そんなことはしてねぇさ。
そんなことしなくても魔法生物は勝手に増えていく。
何もしなくても自然に増えていく………。
その勢いは人類を越えて世界一。
ゆくゆくはこの世界全土を多い尽くすほどに溢れかえり世界を滅ぼす………。」
「!
その生物って………まさか!?」
「お察しの通りさ。
通常のものは無形生物に分類されるんだが奴等だけは例外だ。
なにせ突然変異のくせしてどんどん手に負えなくなるほど数を増していく異常種だ。
奴等だけが何故そうなってんのかは知らねぇがスペクタクルズで調べるとそういう体の構造をしてるらしい。
魔法生物………ヴェノム。
あいつらに感染するとどんな有機生命体も魔法生物に変えられちまう………。
アタシら人ですら魔法生物と宣った世界の黙示録を予言する頭のおかしな研究者はそういう意味で言っていたんだよ。
近い未来来るであろう終末の時のことを予見して………。」