テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~   作:モニカルビリッジ

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 村を襲った悲劇から十年、大人になったカオスは一人誰もいない旧ミストの村で生活していた。

 心配したミシガンが村に戻るようカオスを説得するが彼の決意は変わらず孤独の道を進む。

 そして森には再びヴェノムが現れるもカオスの前に倒される。


出逢い

 

お前、感染してないのか!?さ、触るな!!

 

な、何だその力は!?

 

化け物!!寄るな!!

 

それは殺生石の!?

 

お前が奪ったのか!?おまえのせいで村は!!

 

お前がいるから村はこんなふうになったんだ!!

 

出ていけ!!この疫病神!!

 

出ていけ!!

 

出ていけ!!

 

消えろ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

 あの日のことは鮮明に覚えている。

 

 今でもこうして夢に見るくらいだ。

 

 

 

 昔騎士になりたかった自分が招いたこと。

 

 あのときは弱いことが許せなかった。

 

 人より力のない自分が認められなくて。

 

 それでも僕は特別なんだとどこかで思い込む自分がいて。

 

 だから馬鹿にされながらも真面目に特訓して稽古もしていた。

 

 いつか努力したらおじいちゃんのようになれる気がして。

 

 そうして強くなって本当に騎士になれたらおじいちゃんに見てもらって誉められたかっただけの薄っぺらな子供心。

 

 

 

 僕は忘れちゃいけないんだ。

 

 あの日のことを。

 

 僕が殺した人達をいなかったことにしないためにも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秘境の村ミスト

 

 

 

「カオスはいつになったら戻ってこれるの?」

 

「それはカオスが戻りたくなったらいつでも…」

 

「そう言って、お父さんはカオスと会おうとしないじゃない!!」

 

「ミシガン、彼は自分を戒めているんだ。それを邪魔してはいけない。彼が自分を許さない限りここには戻ってこない。今は彼の気持ちが安らぐまでそっとしておいてあげなさい。」

 

「そんなの待ってたらいつになるか分からない!カオスは十年前にみんなに追い出されてから変わってない!!ずっとだよ!?カオスはずっとこのまま村のみんなのためにモンスターと一人で戦い続けるつもりなんだよ!?」

 

「…」

 

「みんな知らないと思うけどあれから何度か森でヴェノムが現れたときがあったの。その時もカオスが一人で解決したんだよ?」

 

「それは感謝しているよ…。私達にはヴェノムをどうすることもできない。本当は村のみんなも分かっているんだ。幼かったカオスには何の非もないことを。」

 

「だったら!」

 

「理性では分かっているんだ。だが一度心にしこりができると後々それがふとした拍子に出てきてしまう。今すぐカオスが村に戻ってきてもそれはきっと彼を傷付ける結果にしかならないだろう。」

 

「どうすればそのしこりは消えるの?」

 

「分からない、今はまだカオスと村人達の傷が癒えるのを待つしかないんだミシガン。時期に王都からも騎士団の使節が来て状況も変わる。封魔石とやらが届いて安全が保証されてからみんなで話し合ってカオスを迎えにいくかどうか決めよう。」

 

「……こんな村、あのときに滅びればよかったんだ!」

 

「…」

 

「そう言って村の恩人を蔑むだけ蔑んだあげくにカオスの良心を利用して一人で危険なモンスターの相手させて突き放す村の大人達なんかヴェノムに食い殺されればいいんだ!!」

 

 

バタンッ!!

 

タッタッタッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまないミシガン、私には中立を保つことしか出来ないんだ。

 

 アルバやラコース達がいなければ何もできない肩書きだけの村長でしかないんだ…。

 

 こんな臆病者な父親ではお前が呆れはてるのも無理はないな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王都の某所

 

 

 

『それで?なにか進展はあったのか?』

 

「現在調査中だっつーの!こっちもいろいろごたついてんだよ!」

 

『星砕きを見つけたのではなかったのか?』

 

「私はあくまで反応があったと言っただけだが!?」

 

『…その様子じゃ見失ったようだな。』

 

「悪いのか?ゴラァッっ!!!?

 

 反応があった付近は探させたよ!精霊石を見付けるまでは出来たんだぞ!?だが脱け殻だったんだ!!とっくの昔にいなくなってやがる!!住人の話によると十五年前くらいかららしい!!」

 

『では他の場所に逃げられたか。』

 

「そんな筈はねぇんだよ!反応があったのは十年前だ!そのタイミングで確かにあの付近でマナ感知に引っ掛かってんだ!」

 

『…つまり「つまりぃ!!」』

 

「誰かが持ち逃げしてんだよ!それか星砕き自体がソイツに隠れてんのかもな!」

 

『……やることは分かってるだろうな?』

 

「分かってるから黙って吉報を待ってな!私に恥をかかせて逃がすわけねぇだろ?周辺の村焼き払わせてでも炙り出す!」

 

『……』

 

「そぅだ!あの女を使おう!あの女の眷属としての能力が開花すれば星砕きもなにかしら反応を示すだろう?」

 

『!……彼女には手荒なマネはするなよ。まだ目覚めてすらいないんだぞ。やるにしても護衛付きだ。』

 

「ハハッ、おいおい随分と過保護だなぁ!血の繋がった姉よりも大事なのかい!?」

 

『……お前の失態を私にぶつけるな。』

 

「なんにせよ、あの女は使わせてもらう!手っ取り早いからなぁ。安心しなよ、護衛なんか用意しなくたって死にはしねぇだろ?」

 

『ふざけるなよ?』

 

「こっちにも事情があるんだよ。掛け持ちが多すぎて手がまわらねぇんだよ。突然現れた謎の女になんて言って護衛付けるんだよ?」

 

『ではその案は却「却下しねぇぞ?」』

 

「他に具体的な代案があるんなら聞くがこれ以上の最善策でないならそれこそ却下だ!」

 

『私の部隊を送ろうか。』

 

「そしたらそっちの計画に遅れが生じるんじゃねぇのか?」

 

『……』

 

「私の案で可決のようだな。任せろ。」

 

『勝手に決め「よし!そうと決まれば」』

 

プチンッ

 

 

 

「早速眠り姫をはたき起こしにいかねぇとなぁ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

捨てられた村旧ミスト

 

 

 

「また懐かしい本が出てきたな。」

 

 一人で村を徘徊してるとたまに掘り出し物を見付ける。

 

 そのほとんどは昔読んだことのある本だ。

 

 朝目が覚めてこうして散策してから森に向かい、家に帰るのが日課である。

 

「(大樹カーラーン伝説かぁ…。無限にマナを生み出す生命の木…。)」

 

 無限のマナ。

 

 そう言われてもピンとこない。

 

 ただでさえ世界デリス・カーラーンにはマナが溢れている。

 

 そこにこの木が存在したとして何の意味があるのだろうか。

 

 生物には個体差はあるがおおよそのマナの内包する量は決まっている。

 

 マナが多い生物は寿命は長く魔力も高い。

 

 大半はその生物の肉体的な大きさに比例している。

 

 中には例外もいるが基本はその筈だ。

 

 

 

「さて他に目ぼしい物もないし今日は技の練習でもするかな。」

 

 一人言を言いながら指南書を持って森へと向かう。

 

 この指南書はミストから出る際おじいちゃんの書斎から見付けたものだ。

 

 この本には剣術についての技術について書かれていた。

 

 子供の頃は基本的な太刀筋についてしか教わらなかったがこの本はその先の技術が載せてある。

 

 主にマナを使った剣術で幼いころは先天性魔力欠損症に掛かってたと思ってたからおじいちゃんも教えられなかったのかもしれない…。

 

 そんなところでも迷惑を掛けてたと思うと申し訳ないな。

 

 指南書にはバルツィエ流剣術指南書魔神剣と書かれている。

 

 位の低い貴族様が作ったわりには綺麗に細かく記してある。

 

 恐らくは他にもいろいろあったのだろう。

 

 この一冊だけで十分賄えてるので必要なさそうだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

ミストの森

 

 

 

「魔神剣!魔神剣!魔神剣!」

 

 ただひたすらに魔神剣の練習。

 

 言葉に乗せて撃つとマナを込めやすいので魔神剣の発声も付けて行うのがいいらしい。

 

 これを魔神剣が出なくなるまで続ける。

 

 昔はこうやって一人で素振りの練習をしていたから慣れたものだ。

 

 この技はここに来てから習得したが当時はマナをかなり消費した。

 

 今では大分威力を保ったままマナを抑えて撃てる。

 

 このまま夕方までしよう。

 

「魔神剣!魔神剣!魔神剣!……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔神剣!………ふぅ、こんなものか。」

 

 すっかり日が暮れてしまった。

 

 途中魔神剣を撃ってたらモンスターが出てきたので討伐する。

 

 

 

 今でこそマナを使えるようになって他の人やモンスターのマナを感じ取れるようになったが僕のマナは異質だ。

 

 普通はマナを消費するとそれにともなって体力や精神力を消費する。

 

 そこは同じだ。

 

 昔からの直らないノーコンのせいで普段は使わないがファイヤーボール等の魔術を使うとそうなる。

 

 違うのは質。

 

 

 

 どういう原理かは自分でも分からない。

 

 僕は物理的には不死身に近いヴェノムを殺すことが出来る。

 

 おまけにヴェノムに触れても感染しないどころか殺すこともある。

 

 ヴェノムはどうやら生物の持つマナに引き寄せられて行動するようだ。

 

 具体的にはその生物が持つマナに感染して増えていく。

 

 マナは生物にとってのすべての核であり源。

 

 それを根本からつくりかえてしまうヴェノム。

 

 そしてそれを殺す僕。

 

 

 

 結局僕は誰かを守るのではなく殺すことの方が得意らしい…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ帰るか。」

 

 いつもの練習を終えて戻る支度をする。

 

 そういえばミシガンが言ってたな。

 

 封魔石とかいうヴェノムを寄せ付けない殺生石の代わりになるものが届くと。

 

 そうなると僕はいよいよもってミストからは要らない存在となる。

 

 辞めるつもりはないがそうなった場合僕はどうしたらミストに償いを続けられるのだろうか。

 

「平和になるのならそれでいいのかな…。」

 

 ミストには僕が傷付けてしまった大切な人達がいる。

 

 その人達が幸せならそれで…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!」

 

 何だ?

 

 森の奥から不思議なマナを感じる。

 

 普通の人と…ヴェノム!、それと何かがいる。

 

 戦ってるのか!?

 

 まさか村の人が!

 

 何でこんな村から遠くまで!?

 

 行かなければ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ!ハァ!」

 

 遅かった。

 

 辺りにはヴェノムとゾンビ化した誰かがいた。

 

 村の人じゃない。

 

 風貌からして他所の村人だろう。

 

 

 

「ごめんなさい。」

 

 後少し早くつければ助けられたのに。

 

 …まずは

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴェノムと感染者を始末する。

 

 こうしてまた誰かを殺してしまう。 

 

「……」

 

 子供の頃自分がしたかったことを思い出す。

 

 世界中の人を守れる騎士。

 

 その夢がどれだけ困難なことか実感する。

 

 こんなに近くにいる人すら救えない。

 

 十分に手の届く距離にいた人ですら救えない。

 

 何故子供の頃は何でも出来ると思えてしまうんだろうなぁ。

 

 自分の夢もウインドラもミシガンも何もかもを強欲に手に入れられるわけないじゃないか。

 

 たかが人殺しの僕が…。

 

 

 

パァァッ

 

 

 

「!」

 

 そういえば先程感じた不思議なマナは?

 

 今倒したヴェノムのものじゃなかった。

 

 じゃあ一体…

 

 回りを見渡すと先程の人達の乗り物と思われる亀車があった。

 

「この中から?」

 

 新型のヴェノムでも現れたのかと思ったが亀車の中にあるということは違うようだ。

 

 もしや封魔石というものを運んでいたのでは?

 

 …それはなさそうだ。

 

 ヴェノムに襲われている時点で話に聞く代物じゃない。

 

「一体何が…」

 

 意を決して中を確認する。

 

 そこには一つの棺があった。

 

 その中から感じる。

 

「まさか生きた人を入れてるのか!」

 

 一体何故そんなことをするのか。

 

 いくら考えても分からないがもしかしたら誘拐か殺人が行われていようとしていたのではないか?

 

「とにかく先ずは中の確認だ。」

 

 棺の蓋を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中には

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とても美しい身分の高そうな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それでいてまた心の奥深くで何かを感じさせるような

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな女の人が眠っていた。

 

 

 

 


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