テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
だが彼は騎士を目指す上で必要な力を持っていなかった。
それでも彼は夢を諦めきれずただひたすらに努力を続ける。
そんなカオスは今、
騎士どころか人としての道徳を踏み外そうと、
凶器の刃を守るべき民に振り上げていた……
「痛ってぇぇぇ!あんにゃろうども散々人のこと見下しておいて5人で袋叩きかよ!タイマン張れっつーの!こちとら障害者だぞ?オラッ!!」ガスッ
結局あの後魔術で反撃され至近距離でしか攻撃を加えられないカオスはイジめッ子5人衆に鬱憤を晴らすことなく返り討ちにあい村の外れにある河原で汚れた服を洗いに来ていた。
「ったく!マナが少ねぇって言ってんだからテメーらみてーなガキの魔術喰らってもシャレにならねぇってこと何回言えばわかんだ!?あの豚どもォッ!!」
そう、マナは人エルフにとって寿命の長さであると同時に魔術的攻撃の鋭さと魔術的強度の堅さの面もあわせ持つ。
単純にマナが多ければ多いほどこの二つは高くなる。魔術的攻撃は攻撃性の密度とその範囲を拡げ、魔術的強度は敵から受ける魔術をある程度緩和出来る。
僕カオスにはそのどちらもなんら縁もない話になるが。
殺生石にマナをほとんど吹き飛ばされた僕は今や軽めの魔法一つ射つだけであの世に召されてしまう可能性すらある。
死ぬ間際のラストショット…、なかなか燃えるシチュエーションではあるが僕程度が放った魔術では村の周辺に住む小型のラビット一匹を驚かすのが関の山だろう。当然魔術攻撃も死にかける。
つくづく嫌な体質だぜ。
「また、やられたのかいカオス?君もよく熱くなるもんだねぇ。あんな連中ほっときゃいいのに。」
そう言って話しかけてきたのは同い年の幼馴染みのイケメン、ウインドラだった。
昔は体質のせいもあってなかなか周りの連中に馴染めずにいたがコイツだけは僕をバカにしないで一緒にいてくれる最高の友達だ。
たびたびひねくれた思考に陥る僕だが絶望せずに立ち上がれるのはウインドラがそばにいてくれるからだ。何よりウインドラは
「そんな有り様じゃぁ先に騎士になるのは俺の方かもなぁ」
同じ目標を持つ同志でもある。
ウインドラが騎士を目指すキッカケは僕と同じで祖父の昔話の影響だ。
仲良くなったウインドラを家に招き入れ祖父と引き合わせてからスッカリ外の世界に魅了されてしまったらしい。
閉ざされた空間だからこそ危険があると知ってても好奇心が外に向く。
この村だけがこの世界じゃない。見渡せば遠く見える山や谷の向こう、この村以外にも数多く存在する街や港、古代の遺跡後から前人未踏の地……あっ、それこの村のことだった。知らぬ間に踏破してたわ。
そして国をもしくは国民を守るため勇敢に戦う王国の騎士達!今でもウインドラとは祖父が森の木々で作ってくれた模擬刀でよく遊ぶものだ。
多分この村でも騎士になりたいと思ってるのは僕とウインドラだけだろうしね。
「まぁ、口は悪かったけどアイツらが言っていたことはついさっき十分身にしみたぜ」
この国の騎士は武術、そして魔術も磨かなければならない。
戦場では弓や魔術が広範囲にわたって飛び交うため戦闘が始まったらまず撃ち合いが始まり、そこから膠着していきお互いの進軍具合で徐々に近づいて、ようやく武術に入る。
つまるところ、カオスが武術だけで敵陣にダッシュしたら敵軍の集中砲火を浴びることになる。
軍としてもわざわざそんなやられるだけの騎士は必要としないだろう。囮専属ならともかく。
騎士は直接戦うだけが仕事ではない。後方支援として治癒術や耐性付加といった援護部隊も存在するらしい。適正によってはあらゆる仕事をこなさなければならない。
「魔術はなくても弓兵として戦場に出る道はあると思うけど。」
「それも考えたけど弓に関してはどうにも安定しなくてね。」
僕には魔術どころか魔術を使わない弓の才能もなかった。ようするにノーコンである。
戦場に出るにはあまりにもハンデを負いすぎている騎士。騎士になれたとしてもその先は長くは続かないだろう。それでも、
憧れた夢は止まらない、子供の見る夢だと笑われてもがむしゃらに努力してればいつかは報われる時が来ると信じて突き進んでみたい。
「カオスは凄いなぁ」
「急に何だよ、別に凄くないよ。」
いきなり褒められると照れるがなんなんだ。
「いや、やっぱりカオスは凄いと思うよ。自分の不得意を認めながらそうやって頑張り続けられるなんて。」
「……」
「確かに魔術は出来ないけど、その代わり剣術や武術では多分村のみんなの中では一番強いと思うよ。」
そう言われても僕にはこれしかないからこの長所で抜かされるようなら塞ぎこんで引きこもってるだろう。
「まぁ、引退したとはいえ騎士の家系だしね。じいちゃんが時々剣術稽古つけてくれるし、ウインドラも相手してくれるからだよ。そんなこと言ったらウインドラも凄いじゃないか。」
「うぅん、俺はそんなに凄くないよ。剣術じゃぁ、未だにカオスに勝ったことないし。」
「何言ってるんだよ、魔術や弓の腕前は村の中では一番じゃないか。それに剣術だって他のやつら相手にしてるから分かるけど僕にとっては一番キツイ相手だよ。」
この気さくで男前のイケメンの友ウインドラは総合的に見れば村一番の優秀なやつだと思う。女の子たちにもモテモテだし。
こんな都会から外れた村ではあるがウインドラが騎士を目指すのはみんな納得するだろうな。ウインドラ自身はみんなに公表してないけど。
「俺は弓と魔術が他の人よりほんの少し上手いだけだよ。大人になれば特に目だった長所にもならないと思う。」
相変わらず謙虚なやつだ。自分のことに自信がないようだ。村一番と評判なのに。
「こらこら、そんなこと言ったら目立つ短所を持つ僕に失礼じゃないか!」
「アッハハ、ごめん。」
「おう。」
お互いに気が合う間柄だからこそこんな会話でもなんだか居心地がいい。ウインドラがいてくれるからこそ僕は僕に絶望しないですむのかもしれない。
「そういえばウインドラは僕と同じで騎士になるんだよね?」
「うん、そのつもりだよ?」
「村長のとこのミシガンとはどうなってるの?」
「………あぁ、うん。」
ウインドラは苦い顔をする。この話題は失敗したか。
村の空間が閉鎖的だからこそ将来を見越して一部の意識の高い親たちが子供同士を作為的にくっつけようとする許嫁制度がこの村にはあったりする。
ウインドラはその制度で村長に目をつけられ村長のとこの僕たちより少し下のミシガンという娘さんと許嫁関係にある。次期村長との婚姻は凄いことだと思う。
羨ましいと思うがウインドラなら仕方ない。
「やっぱり連れていくんだろ?」
「どうかな、まだ分からないよ、先のことだし…。」
「これだから何でも出来る何でも屋は将来有望すぎて色々選べて羨ましいぜ!」
「茶化すなよ、そんなこと言われても彼女が将来俺についてきてくれるか分からないし、正直村の村長とかは俺には荷が重すぎて想像できないよ。」
「だからミシガンとは結婚しないの?」
「………………………………………………しないんじゃないかな。」
まぁ、確かに日頃の村長を見てると何でもハキハキとしてみんなを取りまとめてしまう姿は尊敬は出来るがかといってあれの次代を担うのは少し躊躇うな。いや、大分躊躇うな。
「ふぅん、そんなもんなんかなぁ?」
「そんなもんだよ、それにやっぱり俺は騎士になりたいからさ。村をいつかは出ていくよ、カオスと一緒に。」
……顔のニヤケが抑えられない!嬉しいこと言ってくれるぜ相棒!
「そっか!じゃあこのままじいちゃんとこで剣術稽古つけてもらいにいくか?」
「あぁ!!」
これが僕たちの日常。
農業仕事を手伝いながら空いた時間でしたいことをする。仲の良い友達と遊んだり親の仕事を手伝ったり。
僕たちは剣術の稽古。元騎士様から直々に修行を積ませてもらうんだ。将来のことを考えるとこの時間が楽しみで堪らない。
僕たちはそのまま祖父………もうおじいちゃんでいいや、おじいちゃんのいる僕の家へと向かった。
2話目投稿です。
書いてるとどんどん筆が進みますね。
暖かい目で読んでくれたら幸いかと。