テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~   作:モニカルビリッジ

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 青年カオスはミストの村にアローネを連れていくが断られる。

 翌日村に帰りミシガンとアローネの紹介を終え、ミシガンをミストの村に送り届ける。


義理の兄

捨てられた村旧ミスト

 

 

 

「お帰りなさい。」

 

 村に帰ると家でアローネが出迎えてくれた。

 

「……」

 

「カオス?」

 

「あ、う、うんただいまアローネ。」

 

「どうなさったんですか?」

 

「えぇっとぉ、ここ十年で誰かが僕の帰りを待ってたことなんてなかったからなんかお帰りって言われると変な感じで…。」

 

 一人言を呟くことはあっても誰かと連日して話をすることなどなかった。

 

 こうして十年ぶりに誰かと過ごすのは嬉しいようなくすぐったいような気分になる。

 

「そうなんですね。ではどのくらい入られるかは分かりませんがそれまでは私がカオスのことを待ってますね。」

 

「……えと」

 

「ご迷惑でしたか?」

 

「………」

 

「カオス?」

 

「………」

 

「………」

 

「………!」

 

「カッ、カオス!?」

 

 何でだろう。

 

 涙は子供のときもそんなに出なかった筈なのに。

 

 辛いこと悲しいことはあっても泣かないように堪えきれてたのに。

 

 自然と大人になったらなくなるものだと思ってたのに。

 

 どうして今こんなに溢れてくるんだろう。

 

「……くぅ……ズッ!!」

 

「何かあったのですか!?お気に障ることでもしましたか!?」

 

 目の前でアローネがあたふたしている。

 

 申し訳ない。

 

 そういうことじゃないんだ。

 

 そういうことじゃあ。

 

「………ズズッ!!すみませんアローネ。」

 

「はい!?私は何も悪いこととは感じてませんが!?」

 

「………フゥ、フッフフフ!何だか初めて涙を流したような……ズズッ!気がします。」

 

「初めて?」

 

「こんな気持ちでも……涙が流れることがあるんですね。勉強になります。」

 

「?」

 

「涙って子供だけの特権だと思ってたんです。子供なら何時でも泣けるから。でも今こんな大人になっても出るもんだとは思いませんでした。」

 

「それは……大人でも辛いことがあれば涙は流れますよ。」

 

「違うんです。今は悲しくて泣いてるんじゃなくて幸せで涙が溢れてきちゃって!」

 

「幸せ?」

 

「はい。今僕は幸せなんです。」

 

 ずっと昔にはあった幸せ。

 

 あの時は幸せだなんて感じなかった。

 

 当たり前に持っていたから。

 

 その幸せから離れて長い間感じることがなかったから分かる。

 

 この幸せが自分の心を暖めてくれたことを。

 

 ずっと寒かったのかもな。

 

 僕は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみませんアローネ。帰ってきてすぐおかしなことになってしまって。もう落ち着きました。」

 

「いいえ、何事もなくてよかったです。」

 

 アローネはまだ心配そうにしている。

 

 僕がこんなんじゃぁダメだな。

 

「今日は村の掃除でもしようかな。」

 

「村の掃除ですか?」

 

「はい、村といっても結構広いんで定期的に掃除をしてるんですよ。一日一軒ですけど。」

 

「そうなんですね。それでは私もお手伝いしますよ?」

 

「大丈夫ですよ。一人でも十分時間ありますしアローネはゆっくり休んでもらってても…。」

 

「そう言われましても一人では特に何もすることがないのでカオスのお役にたてればと。」

 

「アローネはお客様ですし貴族のお嬢様にそんなことさせられませんよ。」

 

「むっ!もしかして私のことを清掃もできない子だと思ってます?」

 

「そういう風には…」

 

 割りと全力で思ってる。

 

「分かりました!では私の力をお見せします!カオス案内してください!」

 

「……えー。」

 

「行きますよ!」

 

 どうしたものか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは?」

 

「村の集会所だった場所ですね。この間はここを掃除しようと思ってたんですけど置いてある本を興味本意で読んでいるうちにやり忘れてて…。」

 

「カオスも人のこと言えないんじゃないですか?」

 

「……はい、ごもっともです。」

 

 ミシガンは仕方ないけどアローネも少しずつ逆らえなくなってる。

 

 会って間もないのに女性は強いなぁ。

 

「それでは手分けして行いましょう!」

 

「は、はい!」

 

 もうこの時点でアローネがこの空間を支配してしまったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、こんなものかな。」

 

 おおよその埃をはたき出し一ヶ所に纏める。

 

 半日かけて室内は大分綺麗にはなった。

 

「アローネ、終わりましたか?」

 

「こちらももう少しで片付きまーす。」

 

 アローネが室内の椅子や机を磨きあげていく。

 

 ずっと見ていたが手際よくこなしていた。

 

「驚きました。アローネは清掃作業得意なんですね。」

 

「はい、王都ではよく行っていましたから。」

 

「貴族様でもご自分でなさるんですね。祖父の話ではそういうのを専門的にしてくれる方がいると聞いておりましたが。」

 

「祖父?カオスのお祖父様は王都にお詳しいんですか?」

 

「うちはずっと前に祖父が王都で貴族だったらしいんですよ。本人は平民上がりの騎士だーって言ってたんですけど、貴族だったときの祖父の部下の人が来て祖父の内情を色々詳しく聞かせてもらって。」

 

「まぁ!お祖父様は貴族でらしたんですね。お名前はなんというのでしょうか?」

 

「アルバ……なんだっけなぁ。………アルバート=ディラン・バルツィエ………確かそんな名前だったと思います。」

 

「アルバート=ディランバルツィエ?バルツィエ家………聞いたことのない名ですね。爵位は?」

 

「そこら辺もよく分からないんですよ。貴族と教えてくれた部下の人もすぐにいなくなってしまって。」

 

「それではどのような方だったのかは……」

 

「いいんですよ。そんなに大した貴族でもないと思いますし祖父も今頃なくなってるだろうといなくなる少し前に言ってましたし。」

 

「そうそう無くなる貴族というのもないと思いますけど…」

 

「祖父については僕のなかで凄い強くてみんなを守った騎士ということで完結してるんですよ。だからもうその先を知りたいとは思いません。アローネも王都に帰ってバルツィエを探したりしないでいいですからね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本当はおじいちゃんのことをもっと知りたかった。

 

 おじいちゃんが何を思って僕に貴族ということを隠していたか。

 

 おじいちゃんが何故貴族を捨ててまでミストの村にこだわったのか。

 

 おじいちゃんには謎が多すぎる。

 

 けどそんなことを調べたところで僕はこの村を離れられない。

 

 知ったところで僕の自己満足しか得られないならその先は知らなくていい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 村の集会所の掃除を終えた僕らは次に食事やお風呂の用意をした。

 

「……」

 

「これで一通り終わりですね。」

 

「アローネ。」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「貴族のお嬢様ってこういうことが得意って思わなかったからまだ驚いてます。家事上手なんですね。」

 

「まだ疑ってらしたんですか?私だって女の子ですよ?このくらいは必要スキルです。」

 

「ずっと貴族の方は家事とか家の中のことはメイド?とかいう人たちが担当してると認識してたんですよ。だからこういうスキルを持ってるのが不思議で。」

 

「王都の貴族の家は大半はその認識で合ってますよ?私の家が特別……と言うよりも私と姉が特別こういったスキルを持ってるだけだと思います。」

 

「特別なんですか?」

 

「昨日も話してたんですけど私の義兄の影響なんです。義兄はハーフエルフなので身分が低く姉の家庭教師から専属医師、武術、華道……そういった習い事や管理を全て任されていました。」

 

「そんなに多くのことを?流石にそのお義兄さんハイスペック過ぎませんか?」

 

「ハイスペック………その言葉だけでは足りないほどの能力を持っていたと思います。あの義兄が誰かに何かの腕で負けるようなことはありませんでしたから。」

 

「そんなに凄いんですか。」

 

「義兄の知らない世界だとその限りではありませんが義兄が一度それを学ぶとどんな達人や偉人でも越えてしまう程には力もありました。」

 

 凄い人がいたんだなぁ。

 

 噂に聞く天才っていう奴か。

 

「………唯一つ義兄には越えられない欠点がありました。」

 

「欠点?」

 

「はい。義兄は出生が敵国の血を持つハーフエルフ。唯一つそれだけで国から奴隷としての烙印を押されました。いくら後学に残る程の医学や技術に貢献しても変わらない周囲の評価。私の両親も最初のうちは義兄を軽蔑していました。」

 

 ……なんだそれは。

 

「なんか頭に来る話ですね。努力しても報われないなんて。僕そういう話分かります。」

 

「カオスは分かるんですか?」

 

「僕も昔魔力欠損症で辛いときがあったんですけどそこを堪えて必死に頑張って騎士になってやる!と鍛練してた時期がありました。だからお義兄さんのように頑張ってるのに報われないなんて聞くと許せないですね王都の人達が。」

 

「そこは仕方ないのかもしれませんね。義兄が直接何かをしたわけではありませんが敵国の機械兵器に家族を奪われた方々も多くいる筈ですから。」

 

「そうやって壁を作って同じ国に住む人達を認められないなんて間違ってますよ。」

 

「カオスは本当にお優しいんですね。」

 

「世間知らずなだけかも知れませんが。」

 

「フフフッ、でも義兄はそうした苦境も乗り越えて姉と結婚するに至りましたから少しは報われたのではないでしょうか。」

 

「ご両親はさっき軽蔑してたと言ってましたけどご結婚認めてもらえたんですか?」

 

「姉は優秀な人でしたが体が弱く十五年前までは治療方法がまだ見つかっていない病にかかっていました。」

 

「え?」

 

「その病気にかかったら十五までは生きられないだろう、そう言われている病気でした。」

 

「そんな病気に…。」

 

 もしかしてお姉さんは…。

 

 だけど確か昨日は、

 

 

 

「義兄はそんな姉の病、先天性魔力機能障害を治療しました。」

 

「先天性……魔力機能障害?」

 

「貴族や王族などの強い遺伝子を持つものに希におこるもので体内のマナの量が肉体の強度を越えて暴走してしまう病気です。姉はそれこそ王族に匹敵する程の力を持っていましたが肉体は並の人程度でした。器に入りきらないマナは常に姉の体を蝕んでいました。」

 

「先天性魔力欠損症の逆みたいな病気ですね。」

 

「その通りです。姉はマナが人より多すぎたために死にかけていました。」

 

「単純にマナを使うということでは解決しないんですか?」

 

「……私も最初はそういう話かと思いました。けどこの病気を持つ人はマナを放出する量よりも回復する量が上回るため一日中寝る時間もないくらいに放出し続けなければなりません。」

 

「……」

 

 途方もない病気だな。

 

 強すぎるマナのせいで逆に自らを苦しめるとは。

 

 マナが無くて辛かった時にはそんなものがあるなんて考えもしなかった。

 

「義兄は姉の症状をひたすらに研究しその症例から僅か三年で治療方法を見つけました。王国が出来て数百年見付からなかった治療方法を。」

 

「三年で!?」 

 

「義兄は他にも先天性魔力欠損症などの治療方法も見付けた有名な方なんですよ。その事があって私の両親から認められて姉と結婚出来ました。」

 

「なんというか……とても追い付けない人ですねお義兄さん。」

 

 唯でさえ多才なのにそんなドラマまであるなんて。

 

「そんな義兄を持つと自然とこういう家事スキルも上がってしまうんですよ。義兄がやること一つ一つを真似していくうちに。」

 

 

 

 アローネはお義兄さんのことが大好きなんだろうなぁ。

 

 僕が昔おじいちゃんを追いかけていた頃のように。

 

 憧れから始まってそうなりたいと思い始めて次第に真似してみたくなって…。

 

 越えられないと分かっていても手を伸ばしてみたくなる衝動が抑えられない。

 

 まさに自分が思い描く理想の人だから。

 

 

 

 

 

 

 

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