テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
やはり道中でもヴェノムが出現するようだが………。
タイヒ山道
ザァザァザァザァ………!!!!
「………水の音がする………。
近くに川があるのかな。」
「この辺りってミストの森と似てるね。」
「ミストと?
………そうかな?」
「そうだよ。
ミストの森にも川があったでしょ?」
「う~ん………?
…………外れの方にあったような無かったような………。」
「十年間駆けずり回ってたのに覚えてないの?
川に服とか洗濯しに行かなかったの?」
「旧ミストの近くに流れてる川があったからそこで洗濯は済ませてたから………。」
「そうその川だよ!
その川のこと言ってるの!」
「え?
全然場所が違うじゃん。
あの川森の中じゃないでしょ?」
「あの川が上流まで辿っていくと森の中に繋がってるんだよ。
子供の時にミストの村の川原で遊んでたでしょ?
あれ全部繋がってるよ?」
「へぇ………、
そこまで気付かなかったよ………。
あの旧ミストの川ってミストの方から流れてきてたんだなぁ………。」
「………懐かしい話をしてるな。
あの二人は………。」
「貴方も話に加われば良いのでは?
同じ里の御出身ではないですか。」
「ボクとアローネさんは三人がどう過ごしていたか知らないので少し疎外感がありますね。」
「俺も同じだよ。
あの二人の話には混ざれない。」
「?
どうしてですか?」
「お二人はミストの話をしてるんですよ?」
「あの二人が話しているのは子供の時からつい最近までの話だろう?
俺には………、
もうあまり子供の時の風景の記憶が無いんだ。
レサリナスで訓練を受けている内に仲の良かった人達のこととあの日の事件の思い出しか………。」
「たった十年で忘れるようなことでしょうか………?」
「十年は長いぞ………。
人の寿命は千年近くはあるがそれに比べれば十年は短い。
それでも十年の中にはいろいろな経験が詰まっている。
いろんな体験をしたりいろんな人と出会ったり………、
誰かを好きになったりもすれば誰かを嫌いにもなったりもする。
そんな経験を繰り返していればその過程で見た景色など二の次になって記憶の彼方へと消えていくんだ。
記憶に濃いのは誰かと何かをして遊んだかだけ。
俺にはあの二人が話す川の風景なんて覚えてはいない………。」
「そんなんでよくカオスさんとまた元通りの関係に戻れましたね。」
「カオスが俺のことを覚えてくれていおかげだ。
俺もカオスのことを忘れてなかった。
俺がレサリナスへ渡ったのもあいつとの約束事が起源だったからな。
あいつのことだけはこの先何十年経ったとしても忘れないさ。」
「カオスさん程の人は例え仲の良い友人関係じゃなくても忘れられませんよ。」
「(………記憶………?)」
………記憶………………。
私の記憶は………………、
………私の記憶は確かにこの心の奥深くにまだある………。
カオスとあの森で出会うまでの私は………、
ウルゴスでお母様やお父様、サタン義兄様、メル達と貴族としての生活を送っていた………。
………………、
………………いえ、
私の記憶の最後はもっと先………。
ウルゴスがダンダルクとの戦争が過激化する中で私は………、
公爵家クラウディアの跡取りとして成人を期にお父様の指揮する騎士隊の参謀として………、
………………、
………?
………何か………違和感が………。
私はお父様の指揮する騎士隊へ仮入隊を果たすところまでは覚えている………。
………そこから突然世界中に“ヴェノム”が出現して………………、
………ヴェノムが出現して………?
………………、
………ヴェノムが出現した経緯が思い出せない………?
ヴェノムが突然世界中に現れてからの私は………、
私は………どうしたのでしょうか………?
そこだけが………思い出せない………。
ウインドラさんのように長い時間が経過して忘れてしまった………?
………ですが私はカタス達王族が編み出した魔術術式“アブソリュート”で眠りにつく前の記憶が無いだけでそこより前の日常生活のことは覚えている………。
私の感覚ではカオスと出会うニ、三ヶ月前までは普通の生活を送っていた………。
それは分かる………。
アブソリュートは確実に私の体内時計を停止させていた。
だから私はこの星の風景が変わるほどの時間を眠っていてもウルゴスで生活していたことをついこの間のことのように思い出せる………。
思い出せるのですが………、
日常生活が激変した時期のことだけが記憶に靄をかける………。
何故私は忘れるには早すぎる時期の記憶を思い出せないのでしょうか………?
忘れるとしたらもっと昔の記憶からでしょう?
それなのにどうして………?
この疑問を早くに解決しなければ私はこの疑問でさえも忘却してしまう………。
どうやって思い出せば………。
「アローネ=リム!」
「……!」
「どうした?
足が止まってるぞ?」
「アローネさん………?」
「どうしたの?」
「アローネ=リムが何やら考え事をしていて歩を止めてしまったんだ。」
「考え事?」
「アローネさんどうしたって?」
「何か考え事しててぼーっとしてたみたいなんだって………。」
「何の考え事をしてたの?
アローネさん。」
「………いえ大したことでは………。」
「…お前達二人を見て昔のことを思い出してたんじゃないか?」
「昔のこと?
それってウルゴス時代の話かな?」
「あぁー!
それ私気になる!
まだ私アローネさんがそのウルゴスの時代どう過ごしてたのか聞いてないし!」
「ここだと話をするのに向かないからもう少し先に行って休憩できそうな場所を探してからにしようよ………。」
「オッケー!
しゃあちょっと先に行って休憩できそうな場所を探してくる!」タタッ!
「おい、
一人でそんなに先行すると危ないぞ!
……カオス、
ミシガンを頼めるか?」
「そうだね。
分かった!」シュンッ!
シュンッ!
ミシガンソンナニハヤクイッテモミンナガツイテコレナイヨ。
ウワァッ!?カオス!?ビックリシタ!
ソンナスピードデキュウセッキンシテコナイデヨ!オドロクジャナイ!
ミシガンガヒトリデサキニイクカラダヨ…。
「忙しないやつになったものだな。
ミシガンは………。」
「昔のミシガンさんはあの様子では無かったんですか?」
「昔のミシガンは………、
……いや、
元からあんなだったんだろうなミシガンは。
この十年で素の自分を引き出せるようになって………。
逞しくなったものだな。」
「女性に逞しいって誉め言葉になるんですかね………。」
「俺はあれでいいと思うがな。
………アローネ=リム。」
「…何でしょう………?」
「何を考えているのかは知らないが今答えを導き出せないのなら無理して答えを出す必要は無いんじゃないか?」
「答え………?」
「何か思い悩んでることでもあるんだろう?
それについて考えても進まないようなら一度忘れてしまえばいい。」
「忘れる………?
………私は忘れてしまったことを思い出そうとしているのですが………。」
「忘れたことを思い出そうとしているのか…?
…それなら何か切っ掛けがあればいつか思い出せるんじゃないか?」
「切っ掛け………ですか………?」
「俺はさっきまで昔のことを忘れていたがあのカオスとアローネを見てたら少しだけ思い出せたような気がする………。
昔三人でよく遊んでいた頃の記憶をな。」
「………」
「お前が思い出したい記憶はこれから思い出していけば良い。
何かふとした瞬間に思い出すかもしれんだろう?
カタスティア教皇とかとまた再会した時とかに。」
「カタスと………再会してですか………。」
「過去を共有する仲間がいるのならお前が忘れてしまったことも時期に思い出すさ。
俺が思い出せたのだからな。」
「カタスさんにもう一度再会できたらアローネさんが思いだしたいこともきっと思い出させてもらえますよ。
アローネさんのことをよく知ってたカタスさんのことですし。」
「………そうですね。
今はこの記憶の疑問は私の中へと仕舞っておきます。
このことだけはどうしても思い出したかったのですけど………。」
「そんなに重要なことなのか?」
「今は………、
そこまで重要なことでは無いのですが………。
これを確認しておかねば私の同胞達を発見した時に説明がしやすくなると思うのです。
………このことはきっと大切なことだから………。」
「それには先ずカタスさんを探すところからですね。」
「数ヵ月待てばレサリナスからこちらへ渡ってくると思が………。」
「…それにしてもカタスさんは今更ですけど凄いですよね。」
「カタスティア教皇が凄い?
あの人が凄いのは認めるが急にどうしたんだ?
タレス君………。」
「さっきの話に戻りますけどウインドラさんは十年前のことをよく覚えてなかったんですよね?」
「?
そうだが………。」
「ウインドラさんでさえ十年前のことをうろ覚えなのにカタスさんは話に聞くところによるとマテオが建国された当初からマテオにいるんですよね?
それって………………、
約ニ、三百年間デリス=カーラーンで多くの人達との交流があった筈なのにアローネさんのことを三百年経った後でも覚えていたなんて………、
凄い記憶力ですよね………。
ボクだったら百年以上も会うことが無かったなら名前以外の情報がが分からなくなると思いますから………。」