テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
その一件からカオスは村を発つことを決めるがミシガンと決別してしまう。
捨てられた村旧ミスト
「よし、アローネ準備は出来た?」
「えぇ、もう出来ました。ですがこれから何処へ向かうのですか?」
「村に残ってた地図を頼りに一番近い街から情報を探していこうと思うんだ。古い地図だけど二人ともこういうことに関しては初心者だから手探りでいくしかないしね。」
「そうですね。私も土地勘もないですし。」
「ここからだと……少し遠いけど森を抜けてこのムスト平原を通るとリトビアってとこにつくみたいなんだ。そこを目指そう。」
「分かりました。」
「食事とか寝るとこは野営になるんだけどアローネは平気?」
「平気ですよ。こう見えても義兄のおかげでいろいろなことを知ってるんです。」
「お義兄さん、野営とかの経験あるんだ!?」
「小さいときは屋敷から出してもらえなかったのですが私が退屈してると義兄がこっそり連れ出してくれたんです。日帰りではありましたが義兄が王都の周辺でキャンプに使っていた場所に行き野営の仕方も教えていただきました。」
「話には聞いてたけどお義兄さん、何でもやってるんだね。家庭教師とか医学とか…」
「多才な人ではあったんですよ?本当に多才な人ではあったのです…。ですがそれを認めない人が大勢いて義兄も相当な苦労をしてきたんです。」
「力があるのにそれを認めないだなんて間違った世の中だね。」
「私もそう思います。」
「じゃあ、このまま森に進んでも大丈夫そうだね。」
「えぇ、行きましょう。」
ミストの森
「ふぅ…、やはりこう要り組んだ場所ですと少々疲労を感じますね。」
「アローネはお嬢様なんだもんね。仕方ないよ。」
「屋敷では義兄と姉の教練に私も参加させてもらって魔術の勉強をしていたんですよ?体力には自信あります!」
「そうみたいだね、この間も魔術でヴェノムを撃退してたし。どのくらい使えるの?」
「基本六元素は全て使えますよ?」
「へぇ~、ウルゴスではみんな使えるの?」
「騎士団や戦闘に関係した職の方々は使えたと思いますよ。それぞれ属性に不得意があるので基本は一、二属性を極めるのが通例です。」
「そうなんだね。ミストの村では三つか四つ使えるのが普通だったよ。」
「属性は六つありますがそれぞれに攻撃系と補助回復系があるのはご存知ですか?」
「補助回復系?ファーストエイドのこと?」
「そうですね。それも補助回復系の一つです。無属性の回復魔術になりますね。」
「無属性?」
「単純に基本六元素の枠組みに当てはまらない属性のことです。」
「七番目の属性ってことだね。」
「はい、私はその中でも風の魔術が得意のようです。」
「風の魔術かぁ。後衛タイプ?」
「どちらかというとそうですが前衛も出来ますよ。カオスは両方出来ますか?」
「………僕は前衛だけかな。魔術は使えないんだ。」
「魔術が使えない?」
「そのかわり魔神剣が使えるからそこまで遠くでなければ離れた距離からも攻撃できるよ。」
ガササッ!!
「分かりました。それでは私が状況を見て両方を務めますのでカオスは前衛に従事してくださいますか。」
「あぁ、それで行こう。さっそくモンスターも来たみたいだしね!」
「「ガアアッ!」」
「こいつらは………トレントだ!僕が引き付けるからアローネは離れて魔術を!」
「はい!」
「えいやぁぁぁぁ!!」
接近して一体のトレントを斬りつける!
ザシュッ!
「…ゴアッ!?………アアアッ!」
植物系のモンスターだけあって一撃じゃ決められない。
「『烈風よ、我が手となりて敵を切り裂け』……ウインドカッター!」
ザッ!ザッ!ザッ!
仕留めそこなったトレントをアローネが空かさず追撃を加える。
「ありがとう!アローネ!」
「まだ終わってませんよ!後もう一体です!」
アローネの指摘通りもう一体が迫る。
「間に合わない!ウインドカッター!」
ザザザッ!
アローネがウインドカッターを放つが詠唱なしでは先程の威力は出ず枝を切り落とすだけで終わる。
「グアオッ!」
「…ッ!」
トレントがアローネに突進する。
「アローネ下がって!魔神剣!」
スパァンッ!!
アローネとトレントが接触する寸前に魔神剣でトレントを斬り飛ばすことに成功する。
「これで全部片付いたね。」
「えぇ、もう安全ですが。」
「どうしたの?」
「カオスはエルブンシンボルかエルブンリングを装備していますか?」
「エルブンシンボル?とエルブンリング?」
「そのご様子では装備していないのですね。ではどうやって闘気術を…。」
「闘気術?」
「それもご存知ないのですか?」
「もしかして魔神剣のこと?そういう種類とかあるの?」
「先程のエルブンシンボルとエルブンリングは紋章や指輪の形をした装備品です。これを装備すると装備者の能力を上昇させる効果がありましてウルゴスでは皆がこれを装備していたのでカオスもかと思ったのですが。」
「僕は特に着けてないよ?」
「無装備ということですか……先程の魔神剣も?」
「え?魔神剣は昔から練習してたら出来るようになったんだけどマナを消費すれば誰でも出来るもんじゃない?ブラムさんだって使ってたし。」
「捕まってから分かったのですがあの騎士の方々は皆エルブンシンボルを装備していたので使えても不思議ではありません。」
「ってことは普通は使えないの?」
「魔術は通常ならエルブンシンボルを利用しなくても人なら誰でも使えます。ですが闘気術に関してはよほどの特殊な例でない限りエルブンシンボルやエルブンリングなしで使える例は聞いたことがありません。マナを扱うことは本来呪文や魔法陣を作ってから行うのが効率的なので時間がかかるものなのです。」
「魔神剣ってそんなに難しいものだったのか…。それが使えるってことはこれも殺生石の力なのかな。アローネもそのエルブンシンボルって言うの装備しているの?」
「えぇ、今は服の中なのでお見せできませんが装備はしています。」
「服の中?」
「肌に直接触れさせた方が効能が高まるのです。」
「ふ~ん?そういえばアローネは前衛も出来るって言ってたけど武器とかは持たないの?」
「武器ですか。実は今既に装備しているんですよ?」
「………何処にあるの?」
「これです。」
「上着?」
「はい、これは特注で大気中のマナに干渉する術式を施しています。これを装備しているだけで通常よりも魔術を効率よく使用できます。」
「通りでよく光る服だと思ったらそんな凄い服だったんだね。」
「それを言うならカオスのその木刀もかなりの業物だと思いますよ?」
「木刀が?」
「木刀がモンスターを切り裂いたり鉄の剣と斬りあえるなんて想像できませんもの。」
「おじいちゃんが木刀作ってるのを見よう見まねで作っただけの簡単なやつだよ。」
「ではこれといった特殊な加工をしているということではないんですか?」
「敵を切り裂いてるのは木刀にマナを纏わせて斬りつけてるからだよ。そうした方が威力上がるしね。」
「……簡単に言ってますがそういうことは通常戦闘用の装飾品を装備して可能なのであって素で出来る人はいませんよ。」
「アローネはお嬢様なのに戦闘に詳しいね。」
「こういうのはむしろ貴族の方が詳しくなくてはいけないのですよ。日頃から敵国だけでなく同じ国の身内同士で命を狙われたりするので。私もよく狙われました。」
「結構危ない内容だと思うんだけどさらっと言ったね。大丈夫だったの?」
「大丈夫です!困ったときは義兄に助けてもらいましたから。この魔導服も義兄の作品の一つなんですよ!」
「……最初は面倒見のいいお義兄さんの話だったんだけど何だか不憫に思えてきたよ。働きすぎでしょ。」
「言われてみれば……義兄は常に何かしら研究と私達姉妹の相手をしていましたね。」
「そんなに働きづめだと体壊したりしないか家族とかも心配だったんじゃない?」
「義兄は天涯孤独の身で家族はいませんでしたよ。いるとしたら結婚して身内となったクラウディア家のみ。」
「……聞いちゃ不味い話かな。」
「不味くはないですよ。義兄のお母様はヒューマで義兄を産んでから亡くなっています。お父様は誰なのかは知らないそうです。」
「話してよかったの?」
「私は義兄の、ハーフエルフのことをもっと世界の人に知ってほしいのです。ハーフエルフはこんなにも優秀で朗らかなのにどうして差別されなければならないのか。恐らく皆が周りに流されてよく知らないのに差別しているだけだと思うのです。私はそれを消し去りたい。」
「差別か…酷い話だね。」
「ハーフエルフを知ってもらえたらそんな意識は無くなると思います。そうしてエルフもヒューマも自分を見つめ直してみて悪いのはハーフエルフではなくその差別をする人の心だということを私は世界に伝えたいです。」
「悪いのは……人の心か。」
「カオスはハーフエルフに出逢っても優しくしてあげてくださいね。彼等は愛情に飢えていますから。」
愛情に飢えている。
そのフレーズを聞いて自分も昔はそうだったと思う。
無能な僕は人から相手にされなくなるのが怖くて何でも全力だった。
僕が真面目と言うことを知ってもらえれば周りの皆は僕のことを構ってくれるから。
それでも限界はあった。
魔術を使えば簡単に火をおこしたり、服を洗ったりと生活には便利である。
それが出来なかった。
優しいのは最初だけ。
僕が出来ないことはたくさんあった。
皆はそれが出来る。
僕が出来ることは少しだけだった。
皆はそれが出来て当たり前。
年を重ねるごとに自然と周りは少なくなる。
甘えてられたのは本当に小さい子供のときだけなんだ。
そうして僕はウインドラやおじいちゃんくらいしか相手にしてもらえなくなった。
本当はもっと多くの人に構ってほしかった。
ウインドラが誰かの相手をしてるとそれを見て嫉妬したりもした。
けど不満は漏らせなかった。
その不満をぶちまけてしまうとウインドラも僕から離れていってしまうと思った。
何故今こんなに昔の自分を思い出すのだろう。
ハーフエルフが僕に重なって聞こえるからかな。
実際のとこは僕の幼少期はそのハーフエルフよりも救いがなかった。
魔術を使えただけましだろうに。
………ダメだ、何を知らない人達に嫉妬してるんだ僕は。
こんな思考ではアローネの言う心の悪い人ではないか。
痛みを知っている僕がこんなんではいけないな。
先ずはその人達を知ってからでないと。