テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
サンフの洞窟 夜
「何故“精霊”の眷属だと思ったんだ…?」
「さっきまでの話でその………“化学兵器”とかいうのがゲダイアンを消滅させたんじゃないかって私も思ったんだけど………。」
「私がダンダルクの化学兵器の話をしたのはカオスのような人の許容を越えるマナの内包の話をしていたからです。
私は一言も化学兵器でゲダイアンを消滅させたとは言ってはいませんよ。
ただゲダイアンを消滅させることは可能だと言っただけです。」
「それはそうだったが………。」
「…私は化学兵器がゲダイアンに用いられた線は薄いと思います。
化学兵器核が用いられたのだとしたらその核を開発する過程で様々な工業施設を建設しなければなりません。
核を開発出来るのならこの世界のどこかでそれが可能な工業地帯が存在している筈ですが………、
ウインドラさんは心当たりがありますか?」
「………無いな………。
少なくとも工業技術レベルはダレイオスはマテオに劣る………。
そしてマテオではもっともそういった技術力があるとしたらレサリナスだが………先の件でマテオは無関係だと分かる。
バルツィエがゲダイアン関与を否定したからな。」
「…でしたら現代に化学技術が甦った線は無いでしょう…。
核自体がダンダルクでも戦場に投入した兵器の中でも格別な力を有していました。
核を開発する段階の前にもダンダルクの戦術兵器は色々な応用を利かせられる物が多数存在していて、
私達エルフが戦いに剣や魔術を駆使するのに対してダンダルクの兵士達は………、
“銃”と呼ばれる武具を使用していました。」
「ジュウ………?」
「聞いたことない武具だな………。」
「そのジュウという武具はどのようなものだったんだ?
そのジュウとやらでエルフの魔術に対抗出来たのか?」
「対抗………、
言い方としては私達エルフが対抗出来ていたという話になりますね………。
彼等ヒューマの作り出した銃は人の指程度の大きさの鉄の塊を打ち出す武具で破壊制度においてエルフの魔術に及ばないものの速度に関しては魔術を圧倒するものがありました。
彼等の銃に対抗出来ていたのは唯一ヒューマの銃に速力でも引けをとらないライトニングのみ………。」
「ライトニングのみ………。
俺ならジュウとも対等に戦えるということか………。
魔力の向上した今ならそれ以上にも…。」
「そのヒューマって人達は生まれてから死ぬまで常時魔力欠損症みたいな感じだったんだよね?
だったら魔術一発で倒せたんじゃないの…?」
「そうだよね…、
スピードだけが早くて指程度の塊を飛ばす程度の武器ならウルゴスとダンダルクって結局はウルゴスが勝っていたんじ「そうはならなかったでしょうね。」!」
「ヴェノム出現が無ければウルゴスとダンダルクの戦争はダンダルクの勝利で終わりウルゴスは植民地として吸収れていたでしょうね………。」
「…先に言っていた核の存在があったからか…?
だが核以外は特に危険な気配はしなさそうだが………。」
「鉄の塊を打ち出してくるなら同じ鉄の盾とかで防げるもんだと思うけど………。」
「理屈ではそう思うのも無理はありません………。
ですがヒューマの銃から撃ち出される弾丸は俊足で遠くの距離から弾丸が打ち出された音が聞こえた瞬間にはもう攻撃が届いているのです。
…音と言うのは一秒で約三百四十メートル程まで移動するらしいのですが彼等の銃から撃ち出された弾丸もほぼ同速………。
一秒で三百四十メートルならば三秒で一キロ………。
とても遠くの距離からでも狙撃が可能だったのです。
盾を持っていたとしても狙われていることに気付かずに殺されてしまいます。」
「「「………!?」」」
「…更に彼等には驚くべき技能もありました………。
………私達エルフが命中させたい対象に魔術を発動したとして正確に命中させることが出来る距離はおよそ視覚で確認できる距離に動かぬ対象がある場合のみ。
視覚で捉えられる限界以上の距離に対象がある場合は私達をマテオからシーモス砦まで追ってきたユーラスの部隊のように私達対象がいる方向へと当てずっぽうに魔術を発動するだけとなる筈です。
人の視覚で人を捉えられる距離は大体で三百メートルから視力の良い方でも五百メートルプラス…、
その距離以上は視覚的に人を捉えることが難しくなってきます…………。
彼等ヒューマは人が人を視認出来る距離外からの銃による弾丸攻撃をほとんど誤差なく私達エルフに撃ち込んできました………。」
「視覚外からの距離からの攻撃を正確に狙って当ててきたというのか……!?」
「そんなのどうやって………!?」
「…カオスからすれば想像出来ない技能だよね………。
なんたってノーコンだし………。」
「…うるさいな……。」
「その銃撃による攻撃方法は私達ウルゴスのエルフが使用する魔術の破壊力以外では全ての能力が上回っていました………。
私達エルフは彼等の銃に例えるなら弾丸自体は己のマナ、己自身を使用することによって弾を撃つので使用し続ければ消耗して敵の攻撃以外の部分でも体力を消費します。
ですが銃に使用される弾丸はただの鉄の道具………、
弾丸が尽きればまた即時弾丸を補充して再度攻撃が可能なのです。
人が一日に発動できる魔術は限りがあります。
それが尽きればすなわちマナが枯渇し行動不能に陥ります。
対してヒューマの銃の弾丸は彼等いわく作るのにそこまで苦労はしないとのこと。
鉄を熱で溶かして形を加工するだけで一日に何百何千とも作れるようでした。
………そしてここまで説明しておいてなんですが彼等の銃には他にも恐ろしい面がありました。
それが………攻撃回数です。
私達エルフが満足に魔術の威力を出すには詠唱を含めての発動が必要で一度の発動で数秒から十数秒、
初撃はマナの消費が薄いため威力と発動速度も最高の制度で撃つことが可能でしょうがその次からは徐々に制度が落ちていきます。
ヒューマの銃撃はその間に敵を八人は殺せるでしょう。
銃による弾丸攻撃はほぼ一秒で一度、その次の攻撃はまたその一秒後には放てます。
早いものでは一分間に四千発もの弾丸を放てる銃もありました。」
「四千発だと………!?」
「六十秒の内に人が四千人殺せたってこと!?」
「そんな恐ろしい武器があったの!?」
「流石にそういった超高速射撃を行う武器の命中制度はかなり落ちましたがそれでもウルゴスのエルフがヒューマに旗色が悪かったのは確かでした。
彼等ヒューマは力で劣りながらも短命と言うことで世代交代の移り変わりが激しく人口もエルフの十倍程にまで膨れ上がりその鉄製品の開発力で作り出した銃をヒューマの兵士全員が所持していたようです。」
「……攻撃速度、攻撃可能範囲、遠距離からの命中制度、コストパフォーマンス、それから瞬間的な攻撃回数に次いで兵力………、
勝っていたのは攻撃可能な距離での魔術の破壊力だけか…………。
しかし………。」
「カクとか言う兵器があったんならその魔術ですら当てにならないよね………。」
「今の話通りならダンダルクのヒューマ達は絶対にウルゴスのエルフ達を寄せ付けないように戦うよね。
その方が確実に攻撃が当たらないだろうし。
それに魔術自体三百メートル辺りくらいが飛距離としては最大くらいじゃなかった?
だったらウルゴスの人達ってダンダルクに攻撃することが出来なかったんじゃ………?」
「…ダンダルクで銃が開発されるまではダンダルクを一時的に降伏させられそうなところまで追い詰めはしました。
ですが銃が投入されてからは逆にダンダルクに盛り返され互角程度にまで持ち直されました。
始めの内は銃が戦場に出てきても大きく負けるようなことは無かったのです。
鉄で出来た弾丸を飛ばしていることが分かれば鋼鉄の盾で防ぐ対策も出来たので………。
けれどもそれは長くは続きませんでした……。
段々とヒューマの銃の開発制度も上昇し銃撃による弾丸の攻撃の威力を増していきました。
仕舞いには鋼鉄の盾すらも貫通しバリアーの魔術で身を守っていた筈の兵士すら葬られていきそんな絶望的な武器の力の差を見せ付けられた後に“核ミサイル”と呼ばれる兵器にウルゴスの半分を焼き払われて………。
………その核ミサイルで多くの街が消された後に世界的にヴェノムが蔓延しだしました。
あの時代ではヴェノムの出現はダンダルクの自然を壊し尽くす行いに激怒した“神”という存在が人類に対する裁きとして“神の化身”または“天使”を人類殲滅のために遣わしたのだと言われていました。
………実際にはその“神”にはヴェノムは存在してはならないと言われていましたが………。
………ですから私はゲダイアン消滅に核ではなく唐突ではありますがカオス達の村のミストにあったような殺生石が見つかり殺生石の中にいた精霊の眷属がヴェノムの気配を感じとりゲダイアンごとヴェノムを消し飛ばしたのだと。
もし核ミサイルでゲダイアンが吹き飛んでいたのならその技術は幅広くこのダレイオスに普及していてダンダルクの兵士達が所持していたような銃もミーア族の方やスラートの方に伝わっている筈です。
それが伝わっていないのならこの現代に化学兵器が甦ったということはありません。
……これが私がゲダイアン消滅にダンダルクの技術が用いられた説を否定する根拠です。」