テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
スラートの地中都市シャイド 族長邸前
「………っつ!」プスッ…
「フォッフォッフォッ…、
確かにいただいたぞ。
ソナタの血液を。」
「………はい。」
「カオスの血液だけでよかったのか?
なんなら俺も血液提供ぐらいなら出来るが………。」
「十分じゃよ。
ソナタの血液は所詮は“第二世代”じゃ。
応用を利かせるには純度の高い“第一世代”の血液が必要なんじゃよ。
それに第二世代のサンプルはレイディー嬢からもいただいておるでな。」
「「第二(一)世代………?」」
「ソナタ等の力の経緯を辿ればその能力の原点はソナタが出発点なのじゃろ?
助手一号。」
「助手一号って………、
それはまぁその通りですけど………。」
「であるならソナタのDNAこそが全ての根源。
その根源を解析することこそがソナタ等の力の謎を解き明かすのに適していると言うことじゃ。」
「…カオス以外の血液では役に立たんということか……。
………それは置いておくとして………。」
「長老………、
“ツグルフルフ”とはどのような植物なのですか?」
「さっきの話に聞く感じだと薬の材料として使われていそうな植物みたいだけど………。」
「…あまり人が使用してもいいものとは言えなさそうな口振りでしたね………。
“生きた屍”………、
ヴェノムに感染したゾンビとかと同じになってしまうんですか?」
「ゾンビは自分以外の生物を襲うじゃろ?
ツグルフルフで脳が破壊された者は無害じゃから安心せい。
………もっともヴェノムによってゾンビになったものはいづれは死に絶えるじゃろうしツグルフルフを服用した者のにとってはその後同じ結末を迎えることには変わりないがのぅ。」
「脳が破壊されるって具体的にどんな症状になるんですか?」
「………呼吸以外の行動が取れなくなるのじゃよ。」
「呼吸以外?」
「ツグルフルフには生物のマナを一時的に高める力がある。
マナは生物にとっては“命”もしくは“心”じゃ。
それが高められれば精神的にも強くなるし精神につられて肉体の強度も増す。
ツグルフルフはその点だけ見れば薬の材料としては非常に優れているといってま過言ではない………。
………じゃが薬というのはどんなものにも副作用という欠点が付きまとう。
これは世にある薬全てにおいて言えることじゃ。
強すぎる効き目を持つツグルフルフは服用者を一時的に強化はするが時間が経って効果が無くなれば服用者のマナは服用前に比べ著しく低減する。
マナが低減すると言うことはつまり精神が不安定な状態になることじゃ。
ちょっとしたことで激しい苛立ちや恐怖感に刈られたりもすれば理性に負けて欲にかいた行動を起こすようにもなる。
また他人に対する配慮や物事を正常に判断できなくなったりもする。
これはもう野生の動物の思考の域じゃな。
……次第にその生物にとっての本能すらも薄れていき虚脱感や倦怠感に襲われ………、
………終いには何も考えられなくなり何の動作も起こせなくなる………。
肉体的には不自由なく動く筈なんじゃが脳が肉体を働かせようとしない。
瞼を開かせてもまばたきすらしない出来ない。
正に生きる屍じゃな。」
「「「「「……!?」」」」」
「……ツグルフルフ………、
別名“一咲きの呪いの花”………、
一度咲いたら世界のどの花よりも美しく咲く花じゃがその一度目以降は全ての力を使いきってしまい後に残るは力なき雑草のみ………。
ツグルフルフ自体は花が咲くまでは過酷な環境ですら生き抜く根強い生命力を持っておる。
しかしエルフはこの生命の花程の生き抜く力は無い。
強き生命を体内に含んだからと言ってそのままその力が得られようとは都合が良すぎたんじゃ。
本来の使用法としては戦場等の死地に赴くものが己の命を投げ捨てる覚悟を持った者のみが使用を赦される………。
とてつもない力と引き換えにして自らの心を言葉通りに殺す恐ろしい麻薬じゃ。
滅多なことでツグルフルフを使用してはならん。」
「心を失った人は………もう元には戻せないんですか?」
「不可能じゃ。
何故かこのツグルフルフは土の元気な場所よりも草木が枯れるような死んだ土地の方に根が張る傾向にある。
ヴェノムによって人もモンスターも大地も毒されてしまうこのような世界ではどこにだってツグルフルフは確認できる。
入手するのにはそう苦労はせん。
苦労しないだけに昔から長い時間をかけて研究されてきた。
研究を重ねてきて分かったのはこのツグルフルフが大変危険な成分を含んでおることと一度服用をすれば二度と正常な体には“戻れなかった”こと………、
そして“障気”を吸収して成長していることの三つだけじゃ。」
「障気………?
障気って言えば……ヴェノムが飢餓して死んだ時に発生するものなんじゃ………?」
「そのツグルフルフとはヴェノムに何か関係があるのですか………?」
「ワシ等もそう推理したがよくは分かっておらん。
障気はヴェノムが死んだ後に発生するだけでなく生物が死亡する度に発生するものじゃ。
たいていは微細なもので障気が放出されていることも感じられんがの。
そもそもツグルフルフは百年前のヴェノム大出現より以前から存在が確認されておるんじゃ。
ヴェノムが飢餓して障気を発するからと言ってそれがそのまま関係があるかと言えば………関係が無いという可能性も否定しきれん。
一つだけ言えることはソナタ等がダレイオスに持ち込んだバルツィエの作ったワクチンにツグルフルフが調合されておったことでヴェノムとツグルフルフの関係性が高まっただけじゃ。」
「…そのツグルフルフという植物がワクチンに配合されていたとして今のお話の中ではどうしてワクチンを使用するとヴェノムを倒すことが可能になるのかが不明ですね…。」
「そんなもんはな、ヴェノムが死滅する理由を追えば見えてくるぞい?
ヴェノムウイルスはな、ワシ等クリティアの間では“ジェネレイトセル”と呼んでおってな。
あれは弱いマナに取り付いて生物を強制進化させる働きがあるんじゃ。
殆どの生物がその強制進化に身体中のエネルギーを吸いとられたショックで理性と肉体が暴走するがな。
そうしてジェネレイトセルに耐えきれなかった生物はマナを使い果たして消える………。
ワクチン改めツグルフルフを服用した者は内包するマナが穢れて障気を帯びるようになる。
ヴェノムにとって障気はこの世で唯一の弱点なんじゃろうな。
何せヴェノム自体が生物の“進化の成れの果て”じゃというのに障気はその先の“生命の行き着く果て”。
生きたマナを栄養価にするヴェノムは汚れて腐りきったマナの成れの果ての障気には敵わんと言うことじゃ。
そのツグルフルフでマナが穢れた者の穢れた魔術を受ければヴェノムはたちどころにマナを失い死滅する。
只でさえ進化のために猛烈な勢いでマナを消費しておるのにツグルフルフの障気がヴェノムのマナを穢す………。
マテオのツグルフルフ服用者が今までヴェノムを相手にしてこられたのはそういうことじゃ。
ヴェノムに接触してもその身に纏った障気がウイルスから身を守り、障気を纏わせた術がヴェノムからマナを奪い殺す………。
大方こんな仕組みじゃろうがツグルフルフ服用者はその後多少なりとも人格に影響が出ておる筈じゃ。
ツグルフルフを服用して過去精神汚染から逃れられた例は一度もない。
そう…………、
一度たりともな………。」