テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
ブフランフェ道
カーラーン教会へと赴くためにカオス達六人はセレンシーアインから西のブフランフェ道を歩いていた。セレンシーアインから最短距離にあるカーラーン教会がそこにしかないらしくその後の目的地クリティア族が住まうヴィスィンまで少々遠回りな経路になる。
オサムロウ「この道をひたすら突き進んで行けばカーラーン教会の支部につく。
道案内をするとは言ったが実質ここを歩けいていけばカーラーン教会には辿り着く。
なので我は道すがら遭遇したモンスターを狩るのに撤しよう。」
カオス「そんな悪いですよ。
モンスターが出てきたら俺達も戦います。」
アローネ「オサムロウさん一人で戦い続けるのは流石に負担が大きいですよ。
モンスターは皆で倒しましょうよ。」
オサムロウ「そうしてしまうと我はヴェノムに有効手段を持たぬゆえソナタ等が我の護衛のような扱いになってしまうのだが………。」
ミシガン「そんなこと気にする程でも無いと思うけど?」
オサムロウ「緊急で付いてきた身としてはソナタ等のために何か役立つことがしたいのだが………。」
カオス「って言われてもなぁ。
オサムロウさんは強いですけど今の俺達でもここら辺のモンスターなら………!」
オサムロウの加わった隊列をどう組むか話ながら進んでいると草影からモンスターの気配を感じとる。六人は素早く臨戦態勢をとってモンスターを迎え撃つ姿勢に構える。
カオス「………?」
アローネ「出てきませんね………?」
ウインドラ「こちらの様子を伺っているのか………?」
タレス「……鎖鎌で先制を仕掛けてみます。」
そう言ったタレスが鎌を振り回してモンスターの気配のした草村へと投げる。………が、
タレス「……?
手応えを感じませんね………?」
ミシガン「当たらなかったの?」
タレス「………はい。」
ウインドラ「狙いが外れたか………?
俺もそちらの方にいると感じたんだが………。」
アローネ「私もタレスが鎌を投げた付近から気配を感じとりました。」
ミシガン「…気のせいだったのかな………。」
カオス「全員が気のせいってことあり得るの?」
ミシガン「けどモンスターがいなかったみたいじゃない。」
タレス「小型のモンスターだったんでしょうか……?
ボク達が構えをとったんで驚いて逃げ出したのですかね?」
カオス「それだったら声を挙げたりして逃げ出すと思うけど………。」
タレス「発声しない小型のモンスターだったのかも知れないですよ?」
カオス「それでも逃げたんならその後ろ姿だけでも分かるだろ。」
ウインドラ「…さっきのは小型のモンスターの気配じゃなかった。
サイズで言うなら俺達エルフと同じくらいかそれより大きいくらいのサイズのモンスターの気配………。
しかしそのサイズのモンスターであったなら俺達の視界に入ってくる筈………。
それなのに姿も見せず気配も消えた………。
………どうなっているんだ?
獲物を前にしてモンスターが忽然と消えたなど聞いたことがない。」
六人全員がモンスターの気配を察知しながらそのモンスターが一瞬のうちに気配ごと消えてしまった。まるで始めから何も無かったかのように辺りは静まり返っている。
その時不意に一陣の風が吹いた。風に靡いて辺りの草や葉が揺れる。カオス達にも風が吹きかかり一瞬五人は風が吹く方向から顔を背ける。やはりモンスターなど影も形も無い。一体今感じた気配はなんだったのだろうか?
…ふと五人が視線を戻すとオサムロウが構えの姿勢をとったまま解除せずにいることに気付く。
カオス「オサムロウさん?」
オサムロウ「………いる。」
カオス「え?」
オサムロウ「モンスターだ。」
アローネ「モンスター?」
ミシガン「確かにモンスターの気配は感じたけど………どこにもいないじゃない?」
オサムロウ「……ソナタ等………、
今のを見ていなかったのか?」
ウインドラ「………スマン、オサムロウ殿………、
何のことだ?」
オサムロウ「今の“風”のことだ。」
アローネ「風?」
ミシガン「風なんてどうやって見れば………。」
オサムロウ「言葉通りの風のことではない。
我が申しているのは今の風によって目の前で何が起こったかだ。」
カオス「風で何かが起こった………?」
ミシガン「そんなの………、
……一瞬過ぎて分からなかったわよ。
ただ風が吹いて辺りの草葉が靡いてただけじゃないの?」
オサムロウ「………そうか。」
ウインドラ「オサムロウ殿………、
一体何がいると言うのだ?
俺達には辺りを見回してもモンスターの姿など見えないのだが………。」
タレス「さっきまではボク達もモンスターの気配を感じたんですけどそれも一瞬にして消えてしまいました。」
アローネ「教えてくださいオサムロウさん。
今の風で何が分かったのですか?」
オサムロウ「…今の風で分かったことは敵モンスターの大きさとおおよその数、位置、種類とそれからまだ我等を狩ろうと狙っているという様子くらいだ。」
カオス「そんなに分かったんですか!?
風が吹いただけで!?」
オサムロウ「風が吹いたのは偶然ではない。
奴等は得物を狩る時必ず風上から最初に奇襲をかけて来るモンスターだ。
この辺りに生息しているモンスターなら風の事情にも長けているのだろうな。
このモンスターはソナタ等のように強風に煽られて視線を外した瞬間一瞬にして風の勢いも利用して間合いを詰めて一撃で獲物を狩るモンスターだ。
油断していると敵の姿を視認しないまま殺られてしまうぞ。」
オサムロウは淡々と視線を風上に向けながら話す。オサムロウの様子を見る限り敵のモンスターは近くにはいるようだがそれでも五人は未だに敵の姿を視認出来ないでいる。そんなモンスターがどこにいると言うのだろうか…?
ミシガン「…ねぇオサムロウさん?
そんなモンスターどこにいるの?
全然姿が見えないんだけど…?」
オサムロウ「いるぞ。
すぐそこだ。
我にも姿が見えぬが確実にすぐ目の前にいる。」
姿が見えないのにモンスターがいると連呼し続けるオサムロウ。依然として何もいない方向に刀を振り抜く構えをとったまま動かない……。それを見ていたタレスが、
タレス「まさかとは思いますけど格好付けてるだけじゃないですよね?
モンスターにさっきの風で自分だけが逃げていく様子に気付けたからっていつまでも構えを解かないのは。
本当はもうモンスターは“どこかへと消えた”んじゃないですか?」
オサムロウ「………」
オサムロウはタレスの問いに応えない。じっと前を見つめたままだ。だがやがてずっと遠くの方に視線をやってから何かに気付いてゆっくりと構えを解く素振りをした。“刀”の束は離さないまま……。
オサムロウ「このモンスターはな。
どこかへと消えたのではない。
“姿を消している”モンスターなのだ。
このように………真空破斬!!」
構えの姿勢を解いて視線をカオス達に向けたオサムロウだったがそれを合図にしたかのようにまた強風が吹きオサムロウがまたモンスターがいた方向へ向き直し何も無い空中へと技をかける。刀を振り切った瞬間五人は一瞬オサムロウがとちくるったように思えたがオサムロウの振り抜いた刀に続いて聞こえてきた音に驚愕する。
「キェェェェアッ!!?」
ミシガン「エッ!?
何ッ!?」
ウインドラ「モンスターか!?
いつの間にこんなに接近していたんだ!?」
何も無いと思っていた空間から突如として大きな長い爪を持った人型の形状に似た謎のモンスターが出現する。それを見たカオス達は瞬間移動してくるようなモンスターなのかと錯覚したが、
オサムロウ「やはりいたな、“イビルリッパー”。
姿を風景に“擬態”させて風と共に奇襲を掛けてくるモンスターだがコイツ等を確認する方法は割りと簡単だ。
風が吹いた瞬間コイツ等が位置している場所の草原は不自然に何かに阻害されているかのようにそこだけ風の影響を受けない。
故に“実際に肉眼で姿を見ることは出来ないが目視なら出来る。”
覚えておけ。
野生のモンスターと言うのは遭遇すれば問答無用に襲い掛かってくるものもいればこうやって人のように知恵や特性を使った狩りをするモンスターもいる。
そう言った時何も見えないからと言って敵をいないと判断してしまうのがもっとも危険な行為だ。
モンスターはそのいないと判断した隙を狙ってくる。
ソナタ等はこのイビルリッパーよりも凶悪な魔物を倒せるが相性というのはどんな組み合わせにも必ず存在する。
そんな優れた能力があるというのにこんな詰まらんそこらのモンスターに殺られてしまうことがあってはならぬぞ。」