テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
ダレイオス支部カーラーン教会
カオス「選んでいるようで選ばされている………?」
オサムロウがよく分からないことを口にする。だがカオスの疑問を無視してオサムロウは唐突に足元に落ちている小石を拾ってそれを、
オサムロウ「……。」
カツッ……
遠くの方に見えるカーラーン教会の柵へと投げる。小石は柵の一番端の木に辺りそのまま下へと落ちる。
ウインドラ「………オサムロウ殿、何を………?」
オサムロウ「今我が投げた小石は飛行している間ソナタ等にはどこをどう飛んでどこに当たるか予測出来たか?」
タレス「…?
まぁ大体は緩やかな弧を描いてあの柵まで飛んで行くのかくらいなら………。」
オサムロウ「正確にあの柵の一番端の上辺りに命中することは?」
アローネ「流石にそれを予測することは出来ませんよ。
貴方が投擲したのですから貴方にしかそれが分からない筈です。」
ミシガン「小石なんかどう飛ばしても一緒でしょ?」
オサムロウ以外の五人はオサムロウがどういう意図を伝えたいのかが分からず戸惑う。
小石を投げた程度の話でどのようなことが分かると言うのか………。
オサムロウ「一見するとそうなのだがな。
…実は我にもどこに飛んで当たるのか等分からなかった。
狙ったのは勿論あの柵の端だがなにぶん小石を投げたりしたのは随分と久し振りのことなのでな。
今回たまたま我が投げた小石は我の思った通りに流れて柵に当たってくれた。」
カオス「外しても何度か投げ直せば狙ったところには当たるんじゃないですか?」
ウインドラ「そうだな、
こういうことは何度も練習を積み重ねれば自然と狙い通りに当たるようになる。」
アローネ「反復こそ成功の確率を上げる方法ですからね。」
ミシガン「小石投げかぁ………。
私もやってみようかなぁ………、
………そらっ!」
ミシガンも柵に向かって小石を投げる。が今度は柵の上を飛び越えて行ってしまった。
ミシガン「外しちゃったなぁ……。」
アローネ「当てられるまで練習あるのみですよミシガン。」
タレス「あまり他人の敷地の柵に小石をぶつけるのもいけない気がするんですけど………。」
カオス「……それでオサムロウさん、
この小石を投げて当てたりすることにどんな意味があるんですか?」
オサムロウ「ソナタ等はこれを繰り返せば徐々に上達しコツを掴んでその内当てられるようになると思うであろう?」
ウインドラ「まぁそうなるよな普通は………。」
オサムロウ「そう、
小石を投げることなど人の人生では誰もが一度は経験することだ。
これに夢中になって自分の思うがままに狙いを着けて命中させることも子供の内にあったりもしたことだろう。
………今我は柵に小石は当てたな?
そしてミシガンは小石を外した。」
アローネ「……はい。」
オサムロウ「…………これらの結果は単純な回数や経験談、確率論の話では偶々小石が柵に当たるか当たらないかのことだが、
ある意味では偶然、ある意味では必然の結果となるのだ。」
カオス「小石を当てられたのが………必然?」
タレス「オサムロウさんがこれまで日常的に何か物を投げて他の物に当てたりするのが得意だったからですか?」
オサムロウ「それも半分は正解で半分は不正解だ。」
益々オサムロウの話がややこしくなる。小石を投げて当てることの何が必然だったと言うのか。
オサムロウ「ソナタ等は後悔したことは無いか?」
タレス「後悔………ですか………。」
ウインドラ「………後悔等、
エルフであるなら誰もがあるだろうに………。
あの時もっと上手く行動していたらもっと別の結果があったのではないかと………。」
ここにいる五人はそれぞれ大きな後悔を経験している。カオスは自分が殺生石の力を奪わなければミストでの事件は起きなかった筈、アローネはカオスを巻き込んでしまったことを悔いている、タレスはマテオに拉致されずに逃げ延びていればアイネフーレがどのような最期を迎えたのかを知れた。ミシガンはミストでの事件でウインドラの父を死なせてしまったことを悩み、ウインドラは力の無さを嘆きミストを飛び出した。皆が様々な想いで後悔をした結果この場所にいるのだ。後悔を経験していないわけがない………。
オサムロウ「…ではその後悔から“過去”へ戻りたいと思ったことは?」
カオス「…あります。」
アローネ「私もあります。」
タレス「ボクだって……。」
ミシガン「私も…。」
ウインドラ「小石を投げたことがあるかどうかよりもあるに決まっている。
人は誰しも失敗したことがない者などいないのだからな。
失敗をしてしまったら必ず“あの時にあぁしておけば”と悔やむ。」
オサムロウ「…それでは仮に時間が巻き戻りソナタ等が失敗をした過去へと戻るのだとしたら………、
どうなると思う?」
「「「………?」」」
ミシガン「そんなの………一度失敗してるんだから次は二度目とは違う結果になるんじゃないの……?」
オサムロウ「果たしてそうかな?」
ミシガン「え……?」
アローネ「時間が巻き戻ると言うことはすなわちまた同じ結果を繰り返すと言うことですね?」
オサムロウの問い掛けに対してアローネ以外の四人は同じことを想像したようだがアローネだけはオサムロウの意図を理解した。
オサムロウ「ソナタはプログラムの運命を飲み込めたようだな。」
アローネ「言葉の意味は難しくて分かりませんが内容は把握できました。
つまり、物事の事象は全てがあらゆる事象の積み重なり………。
いつ、どこで、誰が、どのようなことをする時、どのような思考と、どのようなコンディション、どのような気候や、どのような背景で、どのような結果をもたらすのか………。
世界の時間軸を正確に固定して事象を繰り返して行ったところで結果は必ず同じ解を導き出す。」
オサムロウ「それで合ってる。
ある事象が起こる際には絶対にその事象が起こり得るであろう情報のエネルギーが流れて結果を叩き出す。
そのエネルギーの流れは突発的に起動を変えたりはしない。
どんな事象もそのエネルギーの量だけしか事象を起こさない。」
ミシガン「ちょちょ!?
事象だのエネルギーだの分けわかんないですけど!?」
オサムロウとアローネの二人だけにしか理解できないような話でミシガンが喚き出す。カオス、タレス、ウインドラも同様だ。
アローネ「…先程の小石で例えるのなら……真っ直ぐ投げた小石が何の影響も受けずに直角に起動を変えることがあると思いますか?」
ミシガン「直角に?
………物凄く強い風が吹いたりしたらそうなるんじゃない?」
アローネ「その風の影響も無い場合の話ですよ。」
ウインドラ「……スピンをかけて投げればあるいは………。」
オサムロウ「それも無しだ。」
カオス「俺が投げると真っ直ぐ飛ばないんだよなぁ………。」
アローネ「この際コントロールの悪さは考慮しないとしてただ真っ直ぐに投げられた小石が直角に曲がるかどうかです。」
タレス「……そんなこと超能力でも使わない限り不可能ですね。
力学的に真っ直ぐに進む小石を何の力も働かせずに直角に曲げるだなんて……。」
オサムロウ「……そういうことだ。」
「「「「え?」」」」
アローネ「そう、
不可能なのですよ。
小石が直角に曲がると言うことは。
……“後悔先に立たず”と言う言葉がありますが私達は常に過去の経験や趣向で物事を判断しています。
その人が辿ってきた人生での出来事を元にしてあらゆる判断をくだしその人が取るべき選択肢は常に決まっているのです。」
オサムロウ「“道が二つに別れている。
一度目は右に進もう。
そしてまた別れ道があった。
今度は左に”
………人の人生はずっとこのようなことの繰り返しなのだ。
一度目の体験があったからこそ二度目は違うやり方を取る。
過去に戻ったところで二度目にはならずまた一度目からのやり直しだ。
後悔したことも無かったことになり結局同じ結末を迎えることになる。」
ミシガン「仮の話なんでしょ?
記憶を引き継ぐとか出来ないの?」
オサムロウ「それこそ先程の直角に曲がらない小石の話になる。
何故現在に未来の記憶を持った者が存在するのだ。
そんなことが出来れば人は後悔などしたりはしない。」
ミシガン「でも…!
残酷すぎない……?
全てのことが決まって起こってるだなんて………。」
オサムロウ「それがカタスティア様の仰られる世界がプログラムで構成されていると言うことだ。
あらゆる事象が理由あって起こるのがこの世界なのだ。」
カオス「…もし本来進んでいた道とは違う道を辿れたらどうなるんですか…?
その世界がプログラムって言う話だと。」
アローネ「それは………。」
オサムロウ「……もしそのようなことがあれば………、
投げた小石が不自然に直角に曲がるようなことがあれば………、
“エラー”の存在によって世界が止まるか、またはエラーそのものがこの世界から弾き出されてしまうのだそうだ………。」