テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
ウィンドブリズ山 二週間目
ビックフット「フルル………」
カオス「(ギガント………まではいかない中型の大きさのモンスター………。
動きは遅いし外す理由はない………。
コイツになら当てて見せる!)
『氷雪よ、我が手となりて………』」
『お前が奪ったのか!?お前のせいで村は!!』
カオス「………………!!!」
俺のせいで………村が………………、
ビックフット「バァッ……。」
カオス「!」
気がつけばビックフットが大きな雪玉を転がしてきておりカオスはその中に呑み込まれる。魔術を唱えたところまではよかったがそれから昔の記憶を思い出してしまい止まってしまっていたようだ。カオスはそのままビックフットの雪玉の中で何処かへと転がされていった。
今日も失敗のようである。今日で精神の克服修行が始まって七日目。その間に発動出来た魔術は七回。大体で一日一回撃てたか撃てなかったかだ。その七回の内モンスターに魔術を当てられた回数は………、
………零だ。
こんなことでは駄目だな。もう少し一日に発動出来る回数を増やさないといけない。マナは腐るほどあるんだ。それなのに一日に一回しか撃てないとは………。これでは子供以下だ。大人でも少ない人は一日に十回から十五回くらいなら撃てると聞く。それなのに俺は………。
ウィンドブリズ山 三週間目
アイスウルフの群れ「「「ガルルッ!!」」」
カオス「(今日は多いな………。
これは流石にどう撃ってもどれかしらに魔術を当てることは出来るだろう。)」
あれから十四日、二週間が過ぎた。一週目から二週間目に入った辺りでは一日に撃てる回数が一回だったが三週間目に入る前後辺りからモンスターがいないところでなら何回か発動することが出来た。それにより一日に発動する回数が増え今日はこのアイスウルフ達に遭遇する前に三度発動出来た。おかげでこの山はすっかりと雪山から氷山へと変わってしまった。俺は平気だけどこの山の向こう側に住むクリティア族の人達は大丈夫だろうか?あんまりこの辺りを冷やしすぎるとダレイオスの北側全体の気候が氷河期に突入しそうだ。それくらいこの雪山は寒くなってきた。なんせ冷えすぎて雹が降るくらいだ。直撃してくる雹は結構痛い。その内この雹も大きな氷塊へと変わっていくのではないだろうか。そう思ってしまうほどに最初に比べて気候が激しくなった。なのにここまで寒くなっても凍えないこのアイスウルフ達には感服する。毛皮があるから平気なのか?
アイスウルフの群れ「ガウッ!!」
カオスがこんな気温でもまだ生存しているアイスウルフに感心しているとアイスウルフの群れが一斉に飛び掛かってくる。地面が氷になっているせいでスピードも早くなっている。普通のエルフであったならこの群れの連携を掻い潜るのは難しかっただろう。
但しそれは普通のエルフであった場合でカオスもアイスウルフのように氷を巧みに滑りながら攻撃を回避していく。いくら氷で早くなっていると言ってもそれはカオスも同じだ。元がアイスウルフよりも早く走れる分瞬間的な回避能力はアイスウルフの多数攻撃を全てかわしきるほどに高い。こういった複数の敵との戦闘はいりくんだミストの森にいた時に経験している。この高速化した戦闘下でも目はしっかりと付いていってる。逆にアイスウルフ達は攻撃後にカオスを見失い着地後の氷で転ぶ始末。
その隙をカオスは見過ごさなかった。
カオス「アイスニードル!!」
アイスウルフの群れ「!!?」
カオスの氷の針が一直線に、
地面の氷に放たれてまた気温が落ち込む。流石のアイスウルフもこのカオスが放った魔技から放出される超低温の空気に寒気を感じたのかカオスとの距離を空ける。アイスウルフは哺乳類で寒さに慣れているだけの生物だ。寒さに慣れている程度では生物が生存出来ないレベルの寒さにまで気温を下げられては生命活動に異変を来すだろう。
アイスウルフのリーダー格「アォォォォォォンッ!!」
アイスウルフの群れ「!」
やがて一匹のアイスウルフが遠吠えを上げると群れはその場から去っていった。これ以上の戦闘行為は凍死してしまうと察して退却したのだろう。中々引き際を弁えている狼達だった。
カオス「……やった…………やったぞ!!
遂にミストのことが頭から消えた!!
モンスター相手に魔術が使えた!!
これならカイメラを倒せる!!」
カオスはモンスターを目の前にしても過去の記憶が呼び戻されることなく魔術を放つことが出来た。このウィンドブリズ山に来て早半月。時間はかかったが漸くトラウマの克服に成功した。カオスはそう思った。これでアローネ達の元へと帰れる。これならカイメラを倒せる、世界が破壊されずに済むのだと歓喜した。
だが、
カオス「………何を浮かれているんだ俺は………。
まだ“一回成功しただけ”じゃないか………。
こんな簡単に克服できる訳ないじゃないか………。」
たった一度成功しただけでは満足出来なかった。ここに来てから何十とモンスターに遭遇して成功したのが僅か一度。それだけでは克服出来たかどうか分からない。もしこれからカイメラと戦闘を始めた時にまたフラッシュバックが起こるようなことがあればアローネ達の足を引っ張ることになる。
カオス「……もう少しだけ続けよう………。
それで何も問題無ければ山を降りてアローネ館の元へと帰ろう………。」
満身は禁物だと自分自身に促しカオスは修行を続ける。カオスは自分に自信が持てなかった。失敗の数がそれだけカオスの精神に深く突き刺さる。だからこれからはその失敗した分の半分くらいまで成功したら山を降りると決意した。
この時カオスは自身が何故このウィンドブリズ山に一人で戻ってきたかを忘れていた。何のための修行だったかを忘れてしまっていた。この場にもう一人でもいてそれを指摘すれば思い出すことも出来ただろうがカオスは、
自分が今どうしようもない思い違いをしてしまっていることにまだ気付くことが出来なかった。
???「………?」