テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
ウィンドブリズ山 ダインとの修練二日目 夜
カオス「(……でお前は何でまた話し掛けてきたんだよ?
まだお前が提示してきた期限まで三ヶ月くらいあるだろ?)」
数ヵ月振りくらいにこの殺生石とは話すが出来ればあまり関わりたくない相手である。なにせカオスにとってはこの精霊のせいで失ってはならない人々を失ってしまった。そのせいで故郷では居場所を失った。約半年に渡る旅では精霊の力で助けられた面も多々あったがそれでミストの者達が甦る訳ではない。カオスがこの精霊を赦せるとしたらミストで失った人々を失ってしまった生き返らせるくらいはしてもらわないと仲良くしようとも思わなかった。
殺生石『そうじゃな……。
お主は今日がお主等エルフの時で言うとどういった日なのかは気付いておるまい?』
カオス「(今日が?)」
カオスには殺生石の精霊が何を言いたいのか分からなかった。精霊が提示してきた期限は半年。その半分と言うのなら後十日程あった筈だが………?
殺生石『明日でお主等エルフに与えた期限が百日を切るのじゃ。』
カオス「(百日?)」
殺生石『そう百日じゃ。
お主等エルフにとってはこの星屑で過ごせる時はもう後少ししか残されておらんということじゃ。』
カオス「(……ちょっと待てよ。
何を勝手にもう終わらせる気でいるんだよ………。
俺達はちゃんとお前の言う通りにこのダレイオスからヴェノムを駆逐して回ってんだろ。
この調子でいけば百日までにヴェノムは『本当にそう思うか?』)」
殺生石『儂はお主の中で見ておるのだぞ?
お主のやっておることがこの一月と十日程何も進展しておらんことはお主の中で見させてもろうた。
こんな進みでお主は何を満足しておるのだ?』
カオス「(………)」
こいつ………、
それが言いたいがために話し掛けてきたのかよ………。
殺生石『……お主はここで何をしておるのだ?
儂はお主には秘術の一つを授けたと言うのにそれを一度も使おうとはせんで何をやり遂げようとしておるのだ?』
カオス「(秘術………?)」
何かこいつから術を渡されたか?こいつとはあまり話をしないから記憶を探しても秘術なんて一つも…………?
………と思い出してみれば何か呪文と魔術の術名みたいなものを一方的に授けられた記憶があった。セレンシーアインでの夜にこいつと一度話をしていてその最中のことだ。確かなんと言った術だったか………?生きてきた記憶の中で初めて聞く名前の術だった記憶があるが………、
殺生石『戒めの楔は深淵へと導く………。』
カオス「(そうそうそんな感じの呪文で………術名が………。)」
殺生石『グラビティ………と言うのじゃ。』
カオス「あぁ………確かに聞いた記憶があるなぁ………。
『戒めの楔は深淵へと導く………グラビティ』か………。
そんな魔術は聞いたことが…………!?」
カオスが思わず殺生石が心の声で伝えてきた呪文を復唱するとその術が発動しカオスを中心に円上の魔法陣が展開していき広がっていく。円はそこからカオス達から見えない位置にまで広がっていきウィンドブリズの氷山が揺れ出す。
ダイン「…!?
何……!?」
急に発生した地震に寝ていたダインが飛び起きる。山全体が突然揺れ出したのでダインはアタフタしてやがてウィングバッグからレアバードを出現させてカオスを掴み上空へと飛び上がる。
ダイン「カオス大丈夫…!?」
カオス「俺は平気だけど……。」
ダイン「……いったい何が起こって………?」
ダインが突然揺れ出した山を見下ろし原因を究明しようとする。二人の下には巨大な魔法陣が山全体を覆うのが見えそれはやがてうっすらと光の幕のような物で囲いウィンドブリズの山が………、
球状に展開されたグラビティの魔術に圧縮されていき最終的には山そのものが消滅してしまった………。
ダイン「なっ、何………!?
この魔術は………!?
こんな魔術見たことない………!?」
カオス「……ごめんダイン。」
ダイン「…?
どうしてカオスが謝るの……?」
カオス「………この魔術、
今俺が発動させたんだ……。」
ダイン「カオスが……?」
カオスの自白に困惑するダイン。ダインは何故急に山を消滅させたのか理解ができず訝るような目でカオスを見つめてくる。これはもうダインには精霊のことまで話さなくてはならなくなった。
カオス「………実は俺のマナが人よりも………バルツィエの連中よりも強いのは俺の中に精霊が宿っているからなんだ。」
ダイン「精霊が……カオスの中に……?」
カオス「そう………。
今の技はその精霊が俺に話し掛けてきて俺に知らない魔術を教えてきたんだよ……。
その魔術を口にしたら術が発動してこうなっちゃって………。」
ダイン「……精霊というと………、
……こんな“重力”に力を働きかけるような術は聞いたことないけど………、
………もしかして“精霊王”………?」
カオス「精霊王……?」
こいつの呼び方にそんな呼び方があったのか………?と言うよりもこいつのような存在をダインが知っていたのか?
ダイン「……それしか考えられない………。
フェデールが六の魔を極めた先にあった“重力を操る術”トラクタービーム………。
あれはデリス=カーラーンの重力を無くす術だけどこの術はその逆で重力を増加させて山を凝縮して潰した………。
重力を操る精霊………、
他の属性魔術を司る精霊がいるとされるみたいに机上の空論とされてきた七番目の精霊が………、
やっぱり精霊王はいたんだ………。」
ダインのこの反応………、
バルツィエ達はこの殺生石の精霊のことを知っていたようだな。だとしたらこいつについて俺達よりかも詳しいかもしれない………。
少し聞いてみるか………。
カオス「なぁダイ『娘………。』ン………。」
ダイン「!?
何………?
今の声………?
頭の中に誰かの声が………?」
カオス「……お前………。」
殺生石『娘よ………、
お主は儂についてどこまで知っておるのじゃ………?』
ダイン「これって……カオスの中の精霊の声………?」
カオス「………うん………。」
ダイン「そう………、
この声を伝えてきてるのが………精霊王の………、
前に理論上存在しうる精霊には更に上の存在がいるとされるってバルツィエの書庫で載ってたの見たことがある………。
貴方がその精霊の上位の存在なんだね………。
精霊が本当に存在していたなんて………。
本で知った時に何か名前があったな………、
………なんだっけ………?
確か………“マクス………”」
カオス「マクス………?」
殺生石『……!!』
ダイン「貴方はマクス………何とかさんっていう精霊なの……?」
殺生石『……儂には名など無い………。
名は無いが儂のこと知った者は儂のことを神や悪魔、精霊、大老と様々な呼び名で呼んでおった。』
ダイン「そうなの……?
じゃあやっぱり他の精霊達も本当は名前が無いの?」
殺生石『儂の眷属達のことを申しておるのならあやつ等には儂が名付けた名がある………。
水を司りし者ウンディーネ、雷を司りし者ヴォルト、風を司りし者シルフ、地を司りし者ノーム、氷を司りし者セルシウス、火を司りし者イフリートとな。』
ダイン「そっちの精霊達は世間で知られている通りの名前があるんだね……。」
………ん?
世間で知られている通りの名前………?
何でこいつの眷属達の名前は世間で知られている通りの名前なんだ………?
世間で知られている精霊の名前は確か………、
“存在することは論証されてはいたけど確認が取れた者が誰一人としていないため仮の造名という設定じゃなかったか……?”
……今現在デリス=カーラーンで伝わっている精霊達の名前は…………、
誰が世界に流したんだ………?