テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
ウィンドブリズ跡地 ダインとの修練最終日
カオス「ぅ………ぐっ………!」
ダイン「……ッ………!」
勢いよくレアバードから投げ出されて氷に叩き付けられる二人。レアバードはカオスのマナを吸収し高速で遠くの方まで滑っていく。
必然的な急発進ミスで二人は氷に叩き付けられた痛みでしばし悶絶する。
その間にもグリフォンは迫ってきておりカオス達に向かって突撃してきて、
押し潰さんばかりに頭上から二人をその前足で捕らえる。
カオス「うぁ…!?」
ダイン「はぅ…!?」
グリフォン「コァァァァァァァァァッ!!!」
長い追跡の果てに漸く捕らえたことが嬉しいのかグリフォンはまた甲高い声で鳴き声を上げる。ヴェノムに感染してゾンビになっているというのにまるで感情があるかのように叫ぶグリフォン。
二人にとってこの状況は正に絶体絶命のピンチであった。
カオス「(……俺が馬鹿な作戦を思い付かなければこんなことには……!!)」
カオスは心の中で後悔する。こうしてグリフォンに捕らえられたのはカオスが無理な作戦を推したからだ。もっとよく考えて行動していれば自分だけでなくダインにまで怪我をさせただけでなくグリフォンに捕まることもなかったのに………。
カオスはダインの様子を伺おうと首だけを動かしてその方向を見る。ダインは苦しそうにもがこうとするが完全にグリフォンの前足に体全体を押さえ付けられ身動き一つ取れないようだった。それでも顔と指くらいなら前足からはみ出ていたためダインはそれをカオスの方へと向けて、
ダイン「アイスニードル!!」
カオスの拘束だけは解こうとダインがアイスニードルを飛ばしてカオスを押さえているグリフォンの前足に突き刺す。ゾンビに痛みは無いのだろうが気候で強化されたアイスニードルの圧力で凍った大地に前足を滑らせてグリフォンは大きく仰け反る。それのお陰でカオスは滑らせた前足に押し出される形で拘束が解ける。拘束が解けたのなら次はダインを助け出さなければいけないが………、
グリフォン「クルル………。」
ダイン「ぐぅ……!!」
ダインを拘束していた方の足は残念ながらダインを拘束したままだった。バランスを崩したのはカオスを拘束した側だけだったのだ。
……何か手はないか………。ダインを救い出せる方法が………。このままではダインがグリフォンに捕食されてしまう。それをどうにかする手立ては………、
………とカオスが方法を模索していると先程レアバードに振り落とされた衝撃で鞘から抜けたのかダインの剣が近くに転がっていた。魔術を“発動出来ない今”、カオスにはその剣が降って湧いたような丁度よくダインを救い出せる唯一の方法に思えた。カオスはその剣を………、
ダイン「逃げ……………て、
カ…………オス……。」
カオス「……!」
カオスは剣を手に取ろうとしたがグリフォンに押さえ付けられているダインからそんな言葉を掛けられた。
………逃げろ……だって………?
カオス「…何言ってるんだよ………。
ダインを置いて逃げることなんて出来るわけないだろ!
逃げるなら一緒にだ!
今すぐそこから助け出してやるから待ってろ!!」
ダイン「大………丈夫………、
うちは……平気……だから……。」
カオス「全然平気そうになんて見えないぞ!?」
辛そうな顔で平気なんて言われても説得力に欠ける。
ダインはカオスだけを逃がしてグリフォンに………そんな心情がダインの様子から窺える。だが自分の下手な作戦のせいでダインが捕まっているというのに自分だけ逃亡を謀るのは倫理的に人としてアウトだろう。カオスは逃げるのだとしてもそれはダインを助け出してからだ。幸いにもダインの剣が手元に………、
手元に………、
手元にあってその後どうする……?また先程のように逃げ回るのか?それではずっとダインに引っ張ってもらってばかりで余計ダインを消耗させるだけではないか。
そもそも自分は何をしにここへ来た?何をしにここへ来て今まで何をしていた?この剣をとる前に自分には他に武器があっただろう?何故その武器を取らなかった?その武器を取らなかったからこそ今こうして目の前でダインがグリフォンに捕まっているのではないか。
何故自分は自らの武器で戦わず人の力や武器を当てにして戦おうとしているんだ?
………自分は………何故戦わなければならないんだ?
………………そんなこと決まっている。
大切な人達を守りたいからだ。
大切な仲間や友人を守りたいために戦っている。
そのために今日まで剣を振り続けてきた。
今自分の目の前では何が起こっている?
自分が率先して倒さなければならなかった敵とそれを相手にしている同じく敵の女………。
普通だったら敵と敵が戦っているのなら放置して逃げるのが当然だろう。
敵が潰しあっているのならこれを放置して逃げるのが得策ではないか?
そうすれば忌まわしい恐怖の記憶を呼び覚ますことなく敵が敵を喰らっている隙に自分はどこか安全な場所に避難出来るだろう。
恐らくあのグリフォンは直ぐにまた自分を見付け出すだろうが敵が一人と一羽から一羽だけに減る。
自分だけならどうにか逃げ切ることが出来るかもしれない。
態々自分が敵のために武器を振るうことなど馬鹿のやることだ………………。
……………そう、
自分は………、
俺は馬鹿なんだ。
この短い期間でダインのことをもう敵として認識出来なくなっていた。
ダインは仲間………ではないが彼女のことを親しく思えるほど俺はダインのことが人として好きになっていた。
彼女は、
なんとしても助けたい。
ダインはバルツィエだけど他のバルツィエ達とは違う。
ダインだけは……………バルツィエであっても絶対に死なせたくない!!