テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
ミストの森 十年前事件当時
カオス「…………何だこの光は………?」
カオスは今までこのような光は見たことが無かった。その光は先程のスライムの化け物やそれに付随した者を次々と光に包んでは消していく。そんな光が森の奥の方から照って………、
カオスの右手に繋がっていた。
カオス「……この光………、
………僕の力なのか………?」
そうとしか考えられなかった。右手から発せられる光は自分の中に確かに感じるマナに感応して自在に光の光度を強くしたりも弱くしたりも出来た。
と言うか………自分の中にあるこの言い様のない物は何だ………?これがマナなのか………?今まで全く感じることが出来なかったが何か自分の中に違和感がある。何か………今までは無かった自分の体にもう一つ別の何かが新しい気管が出来たような………。
カオス「………これがマナ………。
これが………魔の力………?」
手に宿る光は自分の指のように自在に動かせ自らが念じた通りに形状を変えられた。
今自分は生まれて初めてマナを感じることが出来ている………。
これが皆が当たり前に持っていた力………。
五年前の事故から自分がずっと欲していた力………。
これが………。
カオス「………よし。」
カオスは試しに魔術を撃ってみようと考えた。もしこれが本当に自分に流れるマナなのだとしたら他の者達のように魔術が使えるようになっている筈だ。今この時まで自分には無かった筈の魔力が自分の中に宿っているのを実感している。これなら問題なく魔術が使える。
そう思って術を発動させてみる。
「『火炎よ………我が手となりて………、
敵を焼き尽くせ!!!
ファイヤーボール!!!』」
結果だけを伝えればカオスの魔術は成功した。これまで懸念していたマナの枯渇によるショック死は起こらずマナにも余裕がある。
カオスは常人のように………、
常人以上に強い魔術を行使することが出来た。
………ただ一つ失態だったのはカオスが選んで発動した魔術はエルフ達の間でも最もメジャーな火の魔術ファイヤーボールだったことだ。基本六元素、基本六属性と分類される魔術の中で雷と火は扱うにしても危険度が高く場所を選んで発動させなければ災害が起こる恐れがある。それでも火の魔術は多様性に長け扱いに注意しなければいけないことを鑑みてみても一番誰もが多用する魔術である。
………故にカオスは火の魔術を発動させたのだが現在カオスがいるのは森だ。こんな森の中で火の魔術など発動させればどうなるか。それも常人以上の火力で放ったとなると………、
当然辺り一面が一瞬で火の海と化した。
カオス「うっ、うわ!?」
少し考えれば直ぐに気付けたことだったがそんなことよりも自分が本当にマナが安定しているのかということと本当に魔術が使えるようになったかを確かめられずにはいられずこの場がどのような環境だったかを失念していたカオス。燃え盛る炎はみるみる内に木々を焼いていく。このまはま放置すれば森は焼け野原と化すだろう。
それはどう考えても不味いと思い火には水で消さねばと水の魔術を発動させる。
カオス「アクアエッジ!アクアエッジ!アクアエッジ!!」
詠唱込みの火の魔術に対して水の魔術を詠唱無しで相殺しようにも威力が足りないためスピードと数で燃え広がる火を消そうと必死に水をかける。
最初のファイヤーボールはただ発動させただけであったので思っていたよりも火の範囲は広くはなかった。カオスが発した水は直ぐに燃えていた部分を消火し危うく大火災になることは未然に防げた。………カオスの回りの木々は消し炭となったが………。
カオス「………魔術が使える………?
マナが………本当に………僕の中にあるのか………?」
過去何度も願った。自分に人並みのマナが戻ることを。あの事故さえ無ければ自分は普通に生きていられた筈。自分の身に起こってしまった不幸はその後の五年間を惨めな日常へと変えた。そしてその日常は強く逞しく騎士のように気高くあろうとしていてもやはり少年の心を少しずつ傷付け続けていた。カオスの心の中は常に他人への劣等感で一杯だった。その荒みきった精神は他人を視界に入れたら妬まずにはいられない程であった。
そんなカオスが魔術を使えるようになったとなればそこから辿り着く次の行動は単純なものだった。
今まで自分を見下し辱しめてきた者達への復讐だ。
カオス「あいつら……、
絶対に許さない!!
この“俺”が魔術を使えるようになったんだ………。
あの増長仕切った豚共に一泡吹かせてやる!!!」
剣術の稽古を始めるようになってからいつも祖父に礼儀を気を付けるように言われてきたが実のところカオスは相当に口が悪い性格をしている。その悪さ具合はカオスを苛めてきたザック達とほぼ同じレベルの悪さだ。
いや………、ザック達のように徒党を組むことも出来ず一人で足掻いてきた分カオスの底意地の悪さはザック達とは比較にならない。
孤立してなお折れない心と他人に甘えることが出来なかった環境のためか他人に対する慈しみを一切持たないカオスはずっと世界を憎んできた。
この憎むべき世界でずっと自分の世界と戦うことを考えて生きてきた。
人を守る騎士にもなりたかったがその反対の世界の破壊者にもなりたかった。人を守るということはその守るべき人達を傷付ける敵がいるということ。その敵を圧倒的な力で捩じ伏せて這いつくばらせて赦しを請わせる………。カオスはいつも最強の自分をイメージし努力を積み重ねてきた。
この世界にとって守るべきは己と祖父。それ以外の者達は………、
カオスにとっては敵………。
あのミストの者達はカオスにとってはずっと敵だった。内心で敵と認定しいつか見返してやると決めた相手達………。
その敵達から正式に敵と認められた………。
自分を追放したということはそうなのだな………?
………だったらもうミストがどうなろうが構うこともないよな………?
あの村にはもう祖父はいないのだ………。
しからばカオスはもうこの憎しみの剣を手に取ったとしても誰も責めることは出来な………。
アルバ『カオス………。』
カオス「…!」
復讐を決意しいざミストへ向かわんと足を進めようとした時祖父の呼び止める声が聞こえた気がした。
その声はカオスに思い留まるように諭すような声だった。
カオス「………」
その祖父の空耳であろう声のせいで興が削がれてこれから復讐という気分でもなくなりカオスは取り合えず手当たり次第に森の中のモンスターを狩りにでも行くことにした………。