テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
トーディア山脈でタレスがヴェノムに感染するもカオスとアローネの能力で一命をとりとめる。
ルルカ街道
「山を降りてみたら随分道が整った場所に出たね。」
「このルルカ街道は王都の統治下に入ってから長いので商人や騎士が舗装しているんですよ。」
「あれ?手帳は?」
「事実を述べるだけなら感情は込めなくてもいいですから。」
「……タレスが喋れるようになってから逆に淡々としてて冷たくない?」
「あの年頃の子供はもう少しはしゃいでいるのが普通ですからそう感じるのでしょう。
それだけタレスが心を殺して過ごしてきたということです。
今は様子を見てあげてください。
タレスも悪気があってあのしゃべり方ではないのですから。」
「どうしました?」
「なんでもないよ。」
「カオスが疲れたから休もうと提案してきたんですよ。」
「分かりました。夜営の準備をします。」
「……馴れないなぁ喋れるようになったのに無感情な口調だから。」
「ダメですよ!タレスだって練習中なんですからそんなふうに言ってはいけません!」
「分かってるんだけどなぁ…。」
【カオスさんはぼくがしゃべらないほうがいいとおもいますか?】
「え!?どっ、どうしてそんなこと思ったの!?」
「そうですよ!カオスはただ戸惑ってるだけで怖がってなんて…!」
【マテオにきてからおとなをおこらせないようにしてきました。
なのでひとのかんじょうのきふくをよみとるのにはなれています。
カオスさんはぼくがしゃべるたびになにかおもうところがあるのではないですか。】
「カオス!」
「ご、ゴメン!そんなに露骨だった!?別にタレスのことが悪いとかじゃないんだ!」
「では何を考えていたんですかカオス!」
「大したことじゃないんだよ?本当に!
ただ…、タレスの口調が………ミストの村の人達にそっくりだったからさ、それだけのことなんだ。」
「!」
【ミストのむらのひとたちと?】
「うん、ちょっとした………知り合いと喋ってる気分になっただけなんだ。
そのうち馴れるからタレスはどんどん喋ってもいいんだよ。」
「…」
「……分かりました。」
「カオス。」
「うん?」
「スミマセン。」
「どうして謝るのさ。」
「私は……貴方とミストの方々の会話を聞いておきながら気付けませんでした。」
「アローネが謝ることじゃないよ。
アローネだって聞いていたのはあの見張りとのほんの一、二分程度の会話だけだし。」
「あの方のようにカオスに向けられる無機質な言葉をタレスと重ねてしまうのも無理はないことです。
思えば確かにタレスの喋り方はあの方と……恐らくあの村の殆どがあの口調なのでしょう。」
「…」
「やはりそうなのですね。
私は愚か者ですね…。
幼いタレスのことばかり気にかけてすぐ隣にいる貴方の心の傷に気付かずに……。」
「ダジャレ?」
「話をそらそうとしなくてもいいのですよ。
貴方はそうやって自分よりも誰かを優先しようとすることは今日まで一緒に過ごしてきて分かっています。
タレスの心のケアの他にもカオスのケアも必要です。」
「僕は別にケアなんて……」
「カオスは隙を隠そうとしますから気付けませんでした。
カオスもタレスや義兄と同じ孤独を味わっていることを。」
「タレスの方がもっと辛い目にあってるよ。
お義兄さんだってそうでしょ?
僕だけが辛いんじゃない。」
「……あのトーディア山脈でタレスが死にかけてカオスが自分を傷つけたとき。」
「…」
「カオスの絶望を知りました。
貴方の心の闇が相当なレベルにまで膨れ上がっていることに。」
「そんな大層なものじゃないよ。」
「いいえ、とても大事なことです。
カオスの心の中が……いつも悠然としていた貴方が初めて見せた本当の弱音。」
「あの時は………見苦しいものを見せちゃったね。
謝るよ。」
「そんなことはいいんです。
おかげでカオスをまた一つ見つけてあげられたのですから。
カオスが心のうちではあのようなことを考えていてああいう喋り方をするのだと知ってあげられたのですから。」
「…」
「あの喋りでもいいんですよ?
私達に合わせて朗らかにしなくても男性なら少しくらいワイルドな方がいいです。」
「……もうこの口調に馴れちゃったから今更かな。」
「まだまだ貴方との仲が浅いということですね。
いつか本当な貴方を見せてください。」
「………その時が、きたらね。」
「お話は終わりましたか?」
「はいお待たせしてしまいましたねタレス。」
「いえ、いい練習の時間になりました。」
「練習ですか?」
「さっきモンスターが一匹現れたので退治しておきました。」
「まぁ、お一人でですか?」
「お二人がお話中だったので。」
「言ってもらえたら私達も加勢しましたのに。」
「危ないことはしちゃダメだよタレス。
タレスは昼間死にかけたんだから。」
「大丈夫です。
試したいことがあったので。」
「試したいこと?」
「声が出せるようになったので魔術が発動するかどうか気になったんです。
結果は問題ありませんでした。」
「魔術?タレス魔術使ったの?」
「まだ大した威力はだせませんが一応は発動できました。これでお二人を御守りする力が上がりました。
それから魔技も使えます。」
「「魔技?」」
「魔技は魔術の接近専用に編み出された技です。アローネさんもご存知なかったのですか?」
「初めて聞く技法ですね。」
「お義兄さんからは教えてもらわなかったの?」
「義兄は過保護でしたから私が屋敷を外出するのも心配してました。
接近専用と聞く限り義兄は私にモンスターに近付き過ぎないように魔術だけを教えたのかもしれませんね。」
「サハーンのときはアクアエッジを間近で撃ってたけどね。」
「遠距離用の魔術を間近で?」
「私は集中力があるので詠唱を邪魔されても平気なんですよ。
ですから前衛にでてもいいんです。」
「アローネさんはあまりうたれづよいようには見えませんけど…。」
「それでその魔技ってどう使うの?」
「使える魔術によって変わるんですけどボクは地属性のストーブラストが得意なのでまず地属性の詠唱を唱えてからそれを手に集約して大地に放つだけです。
このように…グレイブ!」ドゴォッ!!
「「!!」」
「これはグレイブという技で地にマナを送り込んで操り相手を串刺しにする技です。」
「こんな技が……!」
「これはどこで覚えたんですか?」
「魔技はダレイオスにいた頃は皆使ってましたよ?
この技自体はサハーンが使ってたのを見て見よう見まねでやってみました。」
「見よう見まね……ってことは僕たちに会う前から使えたの?」
「いえ、魔技と魔術はあくまでも声に出して呪文を唱える必要があるのです。
大気中に含まれるマナ……属にいう精霊と言われるものに干渉させなければならないので。」
「精霊?」
「基本六元素のそれぞれを司る六体の霊的存在のことですね。」
「はい、ウンディーネ、ヴォルト、シルフ、ノーム、イフリート、セルシウスの六の精霊がいるとされていてその精霊の力を借りてボク達は魔術を使えると言われています。」
「そんなのがいるんだね。」
「実際に存在するかは定かではありませんけどね。」
「精霊は昔からの神話やお伽噺の存在とされています。
ですから本当にそんな精霊達に力を借りているかどうかも判明していません。
話を戻しますがそういうわけでボクは先程ストーブラスト、グレイブを使えることが分かりました。」
「この短時間でそんなすぐに技が使えるなんてタレス凄いね。」
「……」
「どうしました?」
「ボクはこんな生い立ちですが特別才能があったとかではないんです。
回りと比べても埋もれてしまうような凡人で……。」
「そうは思わないけどなぁ。」
「そうです、タレスは優秀な子ですよ。」
「……この技は恐らく魔術を使える人がエルブンシンボルを装備すれば誰でも使えます。」
「え?そうなの?」
「魔術を覚えてさえいれば出来ますよ。
ボクが出来たくらいですから。」
「アローネも?」
「は、はい、ではやってみますね。……グレイブ!」ドゴォッ
「出来た!……けどタレスよりも迫力がないね。」
「人には得意系統があるんですよ。
ボクは地属性で、アローネさんは…」
「私は風属性です。」
「今後ボクは地属性の能力を高めていこうと思います。」
「私は一応は六属性使えますが…。」
「時間がおありでしたらそれでもいいのですがアローネさんも得意の風属性を極めていった方がいいですよ。」
「そ、そうなのですか?」
「一つのことに集中して鍛えていけば成長も早いですしマナの消費も抑えられますよ。
得意系統の属性とそうでない属性とでは火力、速度、効力、燃費、操作性、発展性といったステータスに開きが出ます。
なのでバランスよく全てを鍛えるよりかは一つに絞って上限を伸ばしていくのがいいでしょう。」
「……なんかタレス戦闘マニアだね。」
「戦闘を学ぶことは生きることに繋がっていましたからね。
魔術もなしに武器だけで戦っていましたから、戦いの知識と工夫に関しては自信あります。」
「そ、そうだね、この話の時えらく饒舌だったもんね…。」
「私も戦闘知識は義兄から教わっていましたがタレスはそれ以上ですね。」
「……才能が無かった分、強さへの憧れが大きかったんですよ。
知識だけはどんどん吸収していってそれに対して実力が伴わない。」
「何を言っているんですか!タレスは戦えているじゃないですか!」
「ボクの力はこのエルブンシンボルの力が大きいです。
これがあるから戦える。
これがなければ魔技だって……グレイブ!」ドゴォッ!
「……今エルブンシンボル外したけどさっきと変わってなくない?
さっきと違った?」
「……?」
「タレスはエルブンシンボルなしでも強いってことですね。」
「……おかしいです。」
「おかしいって、何か変なところでもあった?」
「エルブンシンボルを外したのに……術が使えた………。」
「!?」
「術を?
それってつけてないと使えなくなるものなの?」
「一度これを装備したら分かります。
体の中にあるマナをまるで手足のように……むしろ新しく手足が生えたかのように扱うことが出来てました。
これを装備したらそれまでの自分は丸腰で戦っていたんだなと思えてしまうほどに。
」
「…」
「今はエルブンシンボルを外しても何も感じない。
それどころかエルブンシンボルを外した方がマナを操りやすい気がします。」
「……タレスもなんですか。」
「アローネ?」
「カオスには言ってませんでしたね。
私もエルブンシンボルを装備していたんですが今は外しています。」
「エルブンシンボル装備してなかったの?」
「はい、あの日目覚めてからずっと着けていたのですけどある時私は私の成長具合を知りたくなって一度外して術を発動させました。
そしたら……。」
「今のタレスのようにない方が強かった?」
「…はい。」
「どうしたんでしょうか…?
カオスさん達に助けられてから自分の体が自分のものじゃないように錯覚してしまいます。」
「けど今は特にどこか困るとか言うことでもないんでしょ?」
「それはそうですが。」
「僕達も僕達の異変について調べるために旅をしているんだ。
そのうちいいお医者様のところに行って診てもらうつもりでいるから今は強くなって助かったくらいに思っとこうよ。」
「……そうですね、今は体に不調どころか絶好調ともいえるくらいですしね。」
「カオスのいう通りですね。
私も後々でいいと思います。
私達だけで考えても先に進めないでしょうから。」
「今はもう休もうよ、今日も忙しかったからね。」
「そうしましょうか。」