テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
それをどうして君が………、
君が俺に届けるんだよ………、
それを届けに来たのはおじいちゃんじゃ………、
『馬鹿孫が………、
死んだ俺がお前にあれらを持ってこれる訳ねぇだろうが………。』
カオス「…!」
『……もう少しこの先を見てな………。
まだ終わっちゃいねぇからよ………。』
カオス「………」
子供のウインドラ『………カオス………、
これを持って俺と一緒にレサリナスへ行こう………。』
子供のカオス『ブツブツ………』
子供のウインドラ『今回のことで俺も漸く踏ん切りが着いたよ………。
父さんが死んだのは悲しいけどそれは俺達が弱かったからなんだ………。
弱かったから………大事なものを守れなかった………。
父さんや………君のお祖父さんも………。
だから俺達二人で強くなろう。
強くなって俺達で今度こそこのミストを守るんだ。
そうすればもうこの村は殺生石の力なんて必要なくなるんだ。
そうすれば………君の居場所はこの村にまた出来るんだ。
このことは君以外の人には言ってないけど俺はこの村を出ていくよ。
俺は自分の足でこの村を出ていく。
君がいつもしていたように俺は自分のことを自分で決められる大人になりたい。
君みたいに強くなりたいんだ。』
子供のカオス『ブツブツ………』
子供のウインドラ『……直ぐには無理だろうけど村長はレサリナスに行って王国にミストを統治下に置く申請を出すと言っている………。
次期にここにも騎士団が来るんだ。
………俺達は、
その騎士団が来てレサリナスに戻る時に一緒についていこう。
この村で騎士団に入っても俺達は強くなれない。
ここで強くなるよりもアルバさんがいたようなレサリナスでなら俺達ももっともっと強くなれる。
俺達二人だけでこのミストを守れるくらいに強くなろう。』
子供のカオス『ブツブツ………』
子供のウインドラ『………こんなこと直ぐには決められないよね………。
返事は今はしなくていいよ。
出来る状態でも無さそうだしね………。
けどもし君が俺と一緒にレサリナスに行くって決めた時はまたこの場所で俺と会ってほしい。
俺もちょくちょくここに会いに来るから………。
もし俺と一緒にレサリナスへ行く気になったらまたここで落ち合おう。』
そう言って子供のウインドラは去っていく。
それから子供の俺はウインドラが置いていったおじいちゃんの奥義書と木刀を見て何かを悟りウインドラが去っていった方向とは真逆に歩いていった………。
この後の俺の同行は知っている。
俺はウインドラがミストを去るその日までこの場所に近寄ったことはない。
この付近のモンスターは粗方片付けたからモンスターを探して遠くの方へと行きあの旧ミストを見付けた。
その旧ミストの方にはモンスターが多く生息していたこら暫くはそこでモンスターと戦う日々と修行に明け暮れた………。
ウインドラの話は何一つ頭に記憶として残ってはいなかった………。
ウインドラがまさか俺にだけミストを去ることを伝えていたなど知らなかった………。
…………いや、覚えていなかったのだ………。
それからは急速に時間が過ぎていきこの場へと何度も通うウインドラの姿があったが子供の俺は一度たりともこの場所へと顔を出さずウインドラは足繁く来ては帰っていく日々が続く………。
そしてとうとう………、
子供のウインドラ『………俺はもう行くよ………カオス………。
俺は騎士になりにいく………。』
ウインドラがミストを離れる時がやって来た………。
最後まで俺はウインドラと会うことなくウインドラがミストを去るのを知らずにいた………。
カオス「……ウインドラ………。」
どうして俺はあの時ウインドラの声に反応しなかったんだ………。
ウインドラが俺に話し掛けてきていたのに気付いていればミシガンにそれを伝えてあげられて寂しい思いをさせずに済んだのに………。
『そうだな………、
お前がしっかり今を生きている奴等に目を向けていればあんな寂しい後ろ姿をさせずに済んだんだよな………。』
カオス「………」
『………それにお前が気に病まないといけないのはウインドラだけじゃねぇ………、
あの子もそうだろうが。』
ウインドラが去ったこの場にもう一人の少女が現れた。
その少女はカオスもよく知るあの女の子であった。
子供のミシガン『ファイヤーボール!!』
ボア『フゴコォッ!!?』
カオス「ミシガン………。」
そういえばミシガンはミシガンで俺やウインドラがいなくなってから一人で強くなろうと必死に修行を積んでいたらしいな………。
それがこの場所だったのか………。
子供ってのは不思議と似たような場所に集まるもんなんだな………。
子供のミシガンは一人で森に入り一人でモンスター達と戦っていた。
正直危なっかしくて手助けしてしまいそうになるがここは現実ではない。
現実でないのなら手助けのしようがないのだ………。
それでも頑張り続けるミシガンを見ていると………、
胸が痛くなる………。
彼女が頑張り続けているのは、
いなくなった俺やウインドラのためだ。
そんな俺やウインドラのためにひたすら強くなろうともがく彼女の姿はとても心の奥底に響くものがある………。
彼女は今も現実で………、
『泣かせる話じゃねぇか………。
ウインドラやミシガンはずっとお前のことを想い続けてお前の心を癒すために強くなる努力に励んできたんだ………。
ずっとずっとお前の心の傷が癒えると信じて待ち続けていた………。
………それなのにお前はなんだ………?
とっくに死んじまった俺なんかのことしか見えてないで生きているあの二人の言葉に耳を貸そうともしないで罪を悔いる“悲劇の王子様”ぶりやがって………。
お前が悔いなきゃいけねぇのは俺の死じゃなくてお前を励まそうと健気に側にいてくれたあいつらを今でも待たせちまってることじゃねぇのかよおい?』
カオス「あ………っ………ぇ………………。」
その通りだ。
俺はこんなところで何を立ち止まっているんだ………。
俺はすぐにでもあの二人やアローネ、タレス、オサムロウに追い付かなければならなかったのにそれを………。
『………人は必ずしも絶対の正しい答えを導くことは出来ねぇ………。
お前が間違えたようにミストの大人達連中も間違えた。
大多数にお前が悪だのなんだのと罵られたからと言ってそれがその通りとは限らねぇ………。
多数決が確実な答えだなんて誰が決めた?
あの殺生石のこともよく知らなかった連中がお前を責めたところで何の正当性があるんだよ?
………始めからあの事件は“事故”だったって分かるだろうがよ………。
そんな間違いだらけの事件のことでいつまでも落ち込んでじゃねぇ。
正しい答えを導くことは出来なくても間違いを間違いだと導くことぐらいならお前でも出来るだろ?』
カオス「………ッ………フゥ………!」
この幻影の言葉は結局のところ俺の作り出した幻影なら俺の言葉である筈だ………。俺が俺を慰めているようなものの筈なんだ………。
………それなのに………、
………どうしてかな………?
おじいちゃんの声そのものでこの幻影が語りかけてきているからだろうか………。
俺はこの幻影の言葉に………、
溢れる涙を止めることが出来なかった………。
今はこんなところで泣いている場合じゃないのに………。