テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
トーディア山脈で感染したタレスを助け、タレスはヴェノムによって回復した声で術技の練習を始めアローネが新しい技を習得する。
ルルカ街道 夜
「アローネ。」
「カオス…、タレスとの特訓はもういいのですか?」
「それはもう一段落したから。
昼頃から元気ないね、どうしたの?」
「……」
「浮かない顔してるけど何か気になることでもあったの?」
「いえ……、何でもありません……。」
「そう?それにしてはなにか思い悩んでいるように見えるよ?」
「……」
「アローネにはいつも助けられてばかりだからたまには相談にのるよ。」
「……」
「もしかして話せないこと?」
「……カオスは。」
「ん?」
「カオスは……ウルゴスが本当に何処かにあると………そう思いますか?」
「何言ってるんだよ。
アローネはウルゴスからきたんだろ?
ウルゴスはあるに決まってるじゃないか。」
「ウルゴスというのも私が一人であると言っているだけなのですよ?」
「それじゃあ、アローネはウルゴスがないと思ってるの?」
「そうではありません!
ウルゴスは確かに実在して今も何処かに……」
「ならあるんだよウルゴスは。」
「………どうしてカオスは私のことを信じられるんですか?
私は……」
「アローネは僕のことを頼ってくれた。
一緒にいてくれた。
それだけで信じられるのは十分だよ。」
「それだけで?」
「あの日アローネが森にいて、ミストに行ったとき僕を選んでくれた。
あの短い時間だったけど……あの日から僕にとってアローネは家族みたいなものだよ。
家族を信じるのは当然じゃないか。」
「カオスが……家族……。」
「僕はアローネのことをそう思ってるよ。」
「私は……」
「アローネはどう思ってるかは分からないけど僕はアローネの助けになりたい。」
「私だってカオスの助けになりたいと思ってますよ!
ですが!」
「それが聞けてよかった。」
「カオス…。」
「どんな悩みかは聞けなかったけど話せるようになったらいつでも言ってね。
それまでは僕とタレスがアローネを支えるよ。」
「(……本当はカオスにも打ち明けたいんです。
私が思っていることを。
けれどそれを言ってしまったとき返ってくる答えが違ってしまったら私は……
私の旅は………)」
ルルカ街道
「地図によるとこの先にパルコーって街があるみたいだけど今日中にはつくかな。」
「パルコー?
少し地図を見せてもらっていいですか?」
「いいけどどうしたの?」
「………随分古い地図ですね。
今は街の名前が変わってカストルになっている筈ですよ。」
「そうなの?」
「カオスさん達はずっとこの地図で旅してきたんですか?」
「ミストにはこれしかなくてね。
これを頼りに進んでたんだよ。」
「……ボクが一枚持参してるので今度からこれを使ってください。
三年前に更新されたもののようですからその地図よりかはあてにはなります。」
「有り難うタレス。
………なんだかこっちの地図と比べると街は大きくなってるけど全体的に数は少なくなってるね。」
「それも仕方ないことなんです。
ダレイオスでもマテオでもヴェノムの襲撃で多くの街が無くなっているみたいですから。」
「おじいちゃんの話には聞いていたけどそんなに酷いんだね。」
「未だ停戦中とはいえ両国が敵国を放置してもヴェノムへの対策に手が追い付いてない状況にあるので封魔石の建設に間に合わない村や街はそうなってしまうんです。」
「ヴェノムは世界規模にまで上ってあるんだね。
ダレイオスでもやっぱりいるんだ。」
「ダレイオスではヴェノムによって人のいる街だけではなく森林や川などの自然もダメージを受けて生態系が大きく崩れ荒れ果てた荒野が国の四分の一にも広がっています。
」
「そこまでヴェノムの影響を受けているの!?」
「ダレイオスでは当初ヴェノムに対してマテオからの生物兵器作戦とも言われていたくらいです。」
「マテオが!?
そんな筈ないよ!
おじいちゃんも百年前にはヴェノムと戦っていたって言ってたからマテオもヴェノムに被害を受けているんだよ!」
「分かってますよ。
リトビアでも封魔石というヴェノムに対する処置がなされているのでこっちにきて知りました。
ヴェノムが現れたのはもっと昔ともされています。
マテオで判明しているだけでもこのデリス=カーラーンが出来た原初時代からです。」
「そんな大昔から?」
「一部の科学者では隕石が落ちてそこに含まれたウイルスがそのまま在留して後にデリス=カーラーンに生物が生まれてから漏れだして今に至るという人もいるそうです。」
「そんなに昔からあるのによく滅びなかったね。」
「いえ、何度か滅んだそうですよ?」
「滅んだの!?」
「大昔の祖先の遺跡が見つかって文明を築き上げてはいたようですがその辺りにヴェノムの遺骸から発生する障気が充満していたみたいです。」
「あれかぁ、盗賊のいた森にも漂ってたね。」
「そうですね。
本来は有害性気体なので近づいてはならないんですがそのお陰でいい隠れ蓑にしてました。
障気のせいで詳しくは調べられなかったそうですが今の文明を遥かに凌ぐ科学技術を持っていたみたいです。」
「遥かに凌ぐ技術かぁ。
そんなに凄い文明だったらヴェノムを世界から消すことも出来なかったのかなぁ。」
「世に出ているあらゆる技術は全てその時代にいる一人の天才から広まっていくそうですよ。
そこを最先端にしてから少しずつ開発が進みます。
最初の延び上がりは急上昇してある段階から平面に近い状況を続けるようで。
ですから原初時代もヴェノム対策は今とそう変わらなかったのではないですか?」
「だから何処かでヴェノムにやられて滅んだと…」
「それが今想定できる当時の状況ですね。」
「ヴェノムかぁ。
僕やアローネのような力はなかったのかなぁ。」
「無かったのではないですか?
あったとしても一人二人いるかいないかでヴェノムの駆逐よりも先に人類が駆逐されてしまったとしか。
カオスさんとアローネさんは特別な存在だと思いますよ?
その力はダレイオスでもマテオでも聞きませんから。」
「僕はともかくアローネの力は誰かに与えられたものだと思うんだよなぁ。」
「アローネさんの力がですか?」
「僕はこの力を手にする切っ掛けがあったんだけど、アローネには空白の時間があってその際に誰かが何かしたみたいでね。
だからそんなことが出来るならアローネの他にも同じような人がいるかもしれないよ。」
「それでしたらもっと多くいそうな気がしますけど。」
「できない理由があったとか?」
「適正があるか、その処方に限度回数があるか、もしくは……」
「もしくは…?」
「実験の段階で現実的な段階には至ってないとか…。」
「けどアローネは特に悪いところなんて無さそうだけど…。」
「それはボクにも分かりませんよ。
偶然の産物でたまたま成功しただけでこれから徐々に実験を重ねていくんではないですか?」
「嫌な話だね。
アローネが実験動物みたいで。」
「それもどうかは分かりませんよ。
何処の誰がやってる実験なのかも判明しませんし。
アローネさんが成功例なのか、実験段階なのか、それすら分かりませんし。」
「分からないことだらけだね。」
「ボク達では限界がありますね。
少なくともアローネさんに力を与えたという人がいるのならその人は相当の生体学者だということがうかがえます。」
「生体学者?」
「今マテオにあるワクチンや封魔石は王都の……ある貴族がお抱えの生体学者達が百年前に少しずつ開発したんですよ。
その学者たちでさえも一時的なワクチンを作るのがやっとなんです。
それを凌ぐ能力を人に付与出来るとなるとその人は生体学者以外には考えられません。」
「もしかしてその王都の生体学者の人達がアローネを…。」
「今このデリス=カーラーンでは最もヴェノムに精通している人達です。
可能性は高いですがそれだとアローネさんのような対ヴェノム要員となりうる人をこのような辺境の地に送る理由がありませんよ。」
「……ということはウルゴスの誰かってことなのかな。」
「アローネさんに心当たりはないのですか?
今日はあまりお話になりませんが。」
「昨日の昼からなんだか思い詰めてるようでね。
アローネも分からないんだって。
街につくまでそっとしておこう。」
「そうですね……大きい街ですしそろそろ見えてくる頃ですが……。」
「あ!あれがそうじゃない?」
「地図だと………丁度あれですね。
あれが旅人が絶対に訪れる旅の安らぎの街カストルです。」