テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
昔自分のかかった病気を治したい一心で生物のおおまかな造りについて調べたことがある。
生物の大半は頭、胸、手、足があり種類によっては手や足が二本から数十本あるものや背中に羽を持つ昆虫等もいるようだ。
どの生物にも手足は最低でも二本以上は確実にある。手足は事故などによって欠損することはあれどそれらが無くなったとしても生物は絶対に死ぬわけではない。人の場合は痛みでショック死なんてこともあり得るがそれでも手足を失ってでも生きている生物の例は数多くある。
………今度は頭や胸はどうだろうか?
頭や胸はどんな生物にも必ず一つしかない。
その一つを失えばどんな生物も確実な死が待っている。失ってはならない大事な器官だ。
特に頭部なんかは胸または胴体と呼ぶ部分に比べて非常にデリケートで他の胸、手、足が負える傷の半分程度でも死に至ってしまう程のものだ。調べた事例では後ろから小石くらいのものが軽めに当たっただけで死亡してしまうケースがあるとか………。
頭は生物にとっては重要な役割を担っているからこそそれだけ脆いのだろう。頭は生物の体の中では司令塔のようなものだ。そこが破壊されるようなことがあれば他の部分全てを欠損させることなく殺すことが出来る。肉食系生物の狩りでも始めに首筋を狙って噛みつき窒息させようとする知恵の回る生物がいるくらいなのだ。知能が高い生物でなくとも自然と頭部が全生物の一番の急所だということは理解している。
………だとしたら………、
この目の前の生物は………、
一体どこがその頭部にあたると言うのだろうか………。
新ウィンドブリズ山 麓
ジュゥゥゥゥゥゥ!!!!!
カイメラは先程までの変身同様に異臭のする蒸気を纏いながら次の形態へと形を作り替えている真っ最中だ。本当ならこの隙に攻撃を加えるのが手なのだが今度の変身は少し様子がおかしい。変身で発する蒸気がこれまでの比ではない。レッドドラゴンだった体は多少収縮しており蒸気でよく見えないがその奥では今カオス達を狩りとるため新たな体を形成しようしている。
ミシガン「今度はなんなの………?
いつまでコイツと戦ったら私達はコイツに勝てるの……?」
ここまでカオス達はこのカイメラの変身したギガントモンスターの姿を六度も倒してきた。このカイメラという生物が例え何度も倒したとしても復活することは皆十分熟知している。それでも強烈な魔力を持ったカオスが参戦したことによりこの不死身とも思われるカイメラを着実に追い詰めていく手応えは感じていた。
それなのにカイメラはこれまで見せなかったレッドドラゴンという最終変身とおぼしき姿をとりそれすらも屠ってみせたのにまだ変身を繰り返すのか?
カオス「………こうなったらとことんまで付き合ってやる!!
もうコイツの変身した姿は全部倒すことが出来たんだ!!
なら倒しきれるまでコイツの体を削りに削ってコイツとの戦いを終わらせてやる!!」
カイメラの変身出来る姿はこれまでの流れで基本六元素基本六属性に対応した姿だということは理解した。このカイメラにはもう六つの姿以外に切れるカードはないのだ。そのどれも撃ち破ることが出来たのなら後はカイメラが死にきるまでこの変身再生に付き合うだけ、皆そう思った。
そして、
タレス「!!
変身が終わったようです!!
出てきますよ!」
カイメラが纏う蒸気の中の様子を伺いタレスがカイメラが準備が完了したことを皆に告げる。今度の姿はどの姿か………。ジャバウォック、ブルータル、マンティコア、ビッグフロスター、バタフライ、レッドドラゴンどれでもいい。攻略することにかわりない。たった今レッドドラゴンを倒したのだから他の五つの姿のどれかだ。それならレッドドラゴンなんかよりも攻略は容易………。
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!」
突如立ち上る蒸気の中から聞いたことのある雄叫びが上がる。
ウインドラ「ジャバウォックか………。
本当にその姿が好きだなコイツは………。」
「ブルルルルルアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
オサムロウ「むっ!?
この雄叫びは……!?」
アローネ「ブルータルの鳴き声……!?
ジャバウォックからブルータルに変身したのでしょうか………?」
煙の中からは始めにジャバウォックのものと思われる発声がしそのすぐ後にブルータルの声が聞こえてきた。
変身した直後にまた変身したのだろうか………?
皆の思考がそう一つにまとまった直後、
「グゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!」
カオス「!?
今度はマンティコア………!?」
ダイン「カイメラは変身を繰り返して何をしてるの……?」
立ち込める蒸気で中がどうなっているのかは分からないがカイメラは連続で変身行動をとっているのだけは推測できる。
カイメラの雄叫びが聞こえてくる度に中の蒸気が吹き出してその濃さを増していく。奴は何がしたいのだろうか………。
………もしやこれはカイメラが既に絶命寸前で苦しみに悶えているだけなのでは………?
「ゲルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルる!!!!」
次に聞こえてきたのはビッグフロスターの喉を鳴らす音だった。これは順番に六つの変身形態に変身しているようだ。
ミシガン「ねっ、ねぇ………、
これってもうカイメラが最後の力を振り絞ってもがいてるだけなんじゃない………?
さっきから苦しそうな咆哮ばかり聞こえてくるけど………。」
ウインドラ「………」
ミシガンが感じたことは事実だ。先程からカイメラが唸る声は全て今までのように変身した直後の猛々しい咆哮とは違いどこか苦痛を混じらせたような悲痛な叫びのようにも聞こえる。
この吹き出す蒸気もヴェノムが死滅する際に吹き上がる最後の灯火にそっくりだ。
どうかこのまま朽ち果ててほしい。そんな願望が浮かぶ程にその声は聞くに耐えないつんざくような声質がある。
しかし………、
「コオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッ!!!!!!」
「オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォッッッッ!!!!」
今度はバタフライとレッドドラゴンの咆哮が響く。二つの咆哮は前の四つの咆哮よりも間隔が短くなって聞こえてきた。
タレス「………」
これは生物が死ぬ前の断末魔を上げているのだ。苦しい、死にたくない、まだ生きていたい、そんな望みを訴えて今このように最後の力を振り絞って吼えているのだ。そう思いたくて仕方がない。もうこんな声を上げる相手に向かっていきたくない。この声を聞き続けていたら頭がおかしくなりそうだ。吹き出す蒸気の外にいる七人はどうしようもない不快感に襲われる。
早くこの雄叫びが止まればいいのに………。そしたらカイメラももう苦しまずに………、
………やがて蒸気の中から声が聞こえなくなった。カイメラが漸く絶命したのか?七人はそう思った。
そして蒸気の噴出が止まりその中にいたのは………、
カオス「………………………………………………………、
………なんなんだ…………、
この………………、
化け物は…………………。」
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!」「ブルルルルルアアアアアアアアアアアアア!!!!」「グゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」「ゲルルルルルルルルルルル!!!!」「コオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッ!!!!」「オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォッッッッ!!!!」
蒸気が晴れて姿を現した生物は、
巨大な首が六つもある異形の怪物であった………。
この時その六つ首の怪物を目にして感じた悪寒は初めてヴェノムを見たときの悪寒と同じ………、
あるいはそれ以上の悪寒だったかもしれない………。
これが………、
カイメラの真の姿………、
一同はそのおぞましい姿に、
形容しがたい戦慄を覚えるのであった………。