テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
醜悪
醜悪とは“醜い”や“歪な”といった何かの表現に使用する際の形容する様子のことである。
一般には醜いと口にすることはなく社会的にもあまり耳にする機会は少ない。
何故なら醜悪とは侮蔑用語で他の人や物の表現に用るのだとしてもそれはその本人に直接聞かせたりすればその相手と険悪な関係に陥る危険を孕んでいるしその者に関与する物が醜いのであれば同じことが言える。
端的に使うのなら余程のことがない限り醜悪は心の中でボソッと囁く程度の言葉の筈だ。
世界には美しい物があるのなら逆に醜い物がある。
人は醜い物よりも美しい物に目を惹かれる。
それもあいまって人は醜いと感じるものに近付こうとせず距離をおく。
当然だ。
優劣、良し悪し、正悪といった二面性があるのなら誰しも良いと思う方へと流れるのだから。
そうして醜い物から遠ざかりいつしか人は醜いと感じたもののことすら記憶から消していく。
醜かったという記憶は残ってもその醜いと感じた姿はだんだんと色が薄れていき次第に醜かったということさえ忘れ無かったものとなっていく。
そして最後には醜さを思い出せなくなりその醜い存在というものがどんな醜さだったのかも表現出来なくなる。
………始めに言った通り醜い、醜悪とは人や物の様子を表すさまだ。
決して人や物の名前などではない。
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!」「ブルルルルルアアアアアアアアアアアアア!!!!」「グゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」「ゲルルルルルルルルルルル!!!!」「コオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッ!!!!」「オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォッッッッ!!!!」
しかし今カオス達が目にしているその生物の姿は、
カオス・アローネ・タレス・ミシガン・ウインドラ・オサムロウ・ダイン「………………!!」
醜い、歪と言ったマイナスの形容に用いる言葉そのもの………、
醜悪を物質化、擬生物化したとしたら、
今正にその生物のことかのように思えた………。
今カオス達は、
この世でもっとも醜悪というものを詰め込んだかのような姿の怪物と対面していた………。
新ウィンドブリズ山 麓
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!」「ブルルルルルアアアアアアアアアアアアア!!!!」「グゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」「ゲルルルルルルルルルルル!!!!」「コオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッ!!!!」「オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォッッッッ!!!!」
ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリッッッッッ………!!!!!
カオス・アローネ・タレス・ミシガン・ウインドラ・オサムロウ・ダイン「!!!!!」
六つの首が同時に吼える。その咆哮は空気を震わせ山を崩さんばかりの声量があった。ウィンドブリズが雪山のままであったらこの咆哮だけで雪崩が起こりえるほどの叫びであった。
今カオス達の前に誕生した生物は見るからに生物として不完全な姿をしている。生物は基本的に五体と呼ばれる頭、手二、足二の五つがある。それらは左右非対称で鏡に映るような形をしているが右と左でほぼ同じ形にはなっている筈だ。
だがこのカイメラが変身した“七番目”の姿は完全に不完全な生物の形をしていた。
体の構造がぐちゃぐちゃで右半身に毛で覆われた太い豪腕や昆虫の枝のような腕が生えている。それに対して逆の右側にはその対になる筈の腕は見当たらず蛙の腕だったり獅子の後ろ足があったりする。手や足だけではない。体の部分には変なところに翼が生えてたり竜特有のの鱗があったり軟体そうな皮膚があったり………、
一言で表すなら継ぎ接ぎの体だ。多種族の生物の体を強引に接合したようなそんな体をしているのだ。
そして何といっても頭の数がおかしい。
このカイメラの七番目の姿は頭と思われる顔が六つあるのだ。
六つの頭はそれぞれこれまで戦ってきたジャバウォック、ブルータル、マンティコア、ビッグフロスター、バタフライ、レッドドラゴンの頭部がありそれらは体………らしき本体の六方に備わっている。それも均等に首があるのではなく多少上部に位置するものから肩………と思われる箇所よりも下にある首………果ては逆さまの首まである。
これらの首はどれが本当の頭部なのか………?どの首がこのカイメラという存在の思考を操る器官なのだ………?探るようにその体の全貌を検閲してもどの首もが自分こそがこの体の本体だと言わんばかりに唸り声を上げて主張しているかのようだ。
恐らくこの首全てがカイメラの頭部ということなのだろう………。このカイメラという生物は一つの体に六つの首がありその六つの首全てがカイメラの頭ということになる。一つの体で六つの首、そして多種の生物の特長を兼ねた体。ざっと哺乳類、両生類、爬虫類、昆虫といった具合の特長を持つ体。
カイメラは以前にスペクタクルズで分類を調べたところ魔法生物という結果が出た。
魔法生物は現時点で三種類が確認されている。
一つは存在するかしないか定かではなかった精霊の存在。カオス達は精霊の力を授かることによって現状魔法生物という生物に変化している。人に力を与えて魔法生物に変化させてしまうのならその大元の精霊も魔法生物という分類にカテゴライズすることが出来るだろう。
二つ目は過去の遺産、遺跡などを守護する魔法生物ゴーレムやエレメント達。彼等は昔の技術者によって作られた人工的な魔法生物だ。自然物にマナを吹き込む術式を加えて擬似的に生物のように動く仕掛けをつくり与えられた命令を忠実にこなす自動人形と化した不朽の生物。
そして三つ目にヴェノム。ヴェノムは始め人をスライムに変化させる未知のウイルスだと思われていたがどうやらヴェノムウイルスに感染するとその感染した生物を魔法生物に変えてしまうようだ。
精霊が関与せずに魔法生物に変えられた生物はよくよく思い返してみれば全てが決まった形をしてはいない。ゴーレムやエレメント達は人が造形したものでありその形は全部生物に似せられて作られた物ばかりだ。ヴェノムに関しても感染してすぐのゾンビと呼ばれる形態の生物は一定期間までは元の生物の形をとり最後には不定形のスライムに変わる。
このカイメラも変身を繰り返す度にそれまで吸収したとされる生物の原型を留めた変身を行ってはいたのだが………、
この七番目の変身した姿に限ってだけはこれまでの例と違う………。
この七番目の姿だけはこの星の歴史史上で既存するどの生物の姿とも全く異なる形状になった………。
………この姿は何だと言うのだ………?
この姿は本当に元が生物であったものの成れの果てだとでも言うのか………。
………生物が………、
どのように進化したらここまで奇形な形に進化出来るのだろうか………。
この姿は最早生きているものの姿ではない………。
物と化した屍を寄せ集めて形をなしているだけの………、
憐れな合成物だ………。