テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
フリンク族の都市フリューゲル 北東部近辺 夜 残り期日八十九日
カオス「魔神剣・双牙!!」
プチプリ「クギャッ!?」ズバッ!!
カオス「……今のは魔神剣だけでもいけたなぁ……。
………にしてもこれじゃあ全然戦った気にすらならないなぁ………。」
カオスはあれから皆と別れてフリンク族の都市フリューゲルの近くのモンスターがいそうな草原で一人で軽く訓練がてら周囲の警戒に来ていた。バルツィエの先見隊はまだフリューゲルに到達してはいないようだがウインドラの話では今日明日にでも来てもおかしくはないらしい。なのでこうして見回りに来たのだがフリューゲルの周りにいるのは普通のモンスターしか見当たらない。
まるでこの辺りだけ世界から隔絶された平和な土地のように………。
カオス「………」
………しかしそんなことが有り得るのか?いくらこのフリンク族の領地にヴェノムの主がいなかったのだとしてそれで普通のヴェノムまで一匹もいなくなることが有り得るのだろうか?ヴェノムがいないことは良いことだとは思うがそれでヴェノムの主がいないだけでヴェノムが全くいなくなるのはどこか腑に落ちない。ここまでの道中でヴェノムがいたという過去の痕跡すらも残っていなかった。フリューゲル程治安が良さそうなのであればいつまでもヴェノムが残した障気や腐った土などは清掃するとは思うが………。
それでいてバルツィエの先見隊が来ないのは何故だ?バルツィエならダインや自分のような温厚なバルツィエであればフリューゲルを攻めなくても不思議ではないがウインドラの調査ではこの地方に来ているとされるバルツィエは少々気が粗そうなバルツィエが来ているようだ。それも
火の属性を得意とする者は少なからずバルツィエ程ではないが気の強い者が多い。サハーンやラーゲッツがその例だろう。………カタスティアは炎使いなのかは分からないがダインのように例外なのだろう。
とにかく炎使いのそれもバルツィエなら様子見などせずにとっくにフリューゲルを攻めていてもおかしくはない。あの水使いのランドールでさえダレイオスで一、二を争うセレンシーアインをたった一人で攻めてくるぐらいなのだ。それであったらこの地方のバルツィエは………。
カオス「……ちょっと心配になってきたな………。
広い街だけど外周だけでも様子を見てみようかな。」
カオスはバルツィエが攻めてこないか心配になりフリューゲルの周りを回ってみることにした。
フリンク族の都市フリューゲル 西部近辺 夜 数時間後
カオス「……はぁはぁ………、
ちょっとこの街大きいなぁ………。
外回りだけでもかなり時間かかるなぁ………。」
軽い気持ちで街の周りを一周しようと思ったのだが予想よりも大分時間が経過してしまった。それでなおまだ半周もしていない。
カオス「……本当に何も無かったなぁ………。
ヴェノムもバルツィエもいなさそうだけど………、
もうそろそろ帰ろうかな………。」
特に不審な要素も無くカオスは泊まる予定の宿に戻ろうとした。これ以上回ってみても
カオス「……怪しいところと言えば………
カオス達五人はカイメラに続く激戦になるであろうフェニックスに向けて気を引き締めてこの地方に踏み行ってきた。それなのにヴェノムの主のフェニックスもいなければバルツィエの先見隊も来ていない。
なんならヴェノムすらいない、ヴェノムに困ってすらいない。自分達の計画には乗り気なフリンク族。計画がスムーズに進められるのは良いのだが………。
カオス「………何か悪いことを期待するのはちょっと不謹慎過ぎるかな………。
このフリューゲルのように世界がこんな平和な世界だったら良いのに………。」
気付けばこのフリンク族の景色はあのミストでヴェノムが出現してしまったミストのかつての景色に似ている。ヴェノムが現れなければミストもこのようなフリューゲルのような姿のままだったろうに………。
ザッ………、
カオス「!」
ふと誰かの気配を感じ後ろを振り返る。その気配は唐突ではあったが只者ではない気を感じた。カオス自身モンスターやヴェノムを警戒しながらここまで歩いてきたが瞬間的に自分の背後を取るモンスターなどこの辺りにはいなかった。
この気配は人の気配だ。それもこの見晴らしの良い場所で自分に覚られずに背後を取る人物などバルツィエくらいしか思い付かない。
しかもこの背後の取り方には覚えがある。ウィンドブリズでダインがカオスの背後から話し掛けてきた時とそっくりだ。十中八九この気配はバルツィエで間違いない。バルツィエであるとしたら例の気性の激しい炎使いのバルツィエで確かの筈。そんな奴に後ろから先制攻撃を許してしまったら………!
………と瞬間的に多くのことを考え付き身構えて振り返ったカオスだったがバルツィエからの攻撃は来ず、
???「………」
ポロポロ………、
そこにいたのは、
フリューゲルの街を眺めながら涙を流す謎の少女の姿があった。
カオス「………?
君は………?」
???「……!?」ビクッ
どうやら彼女もカオスの存在に今気がついたようだ。ここまで接近しておきながら御互いに気が付かなかったとは………。
しかし見たところバルツィエではなさそうだ。彼女の風貌からしてフリューゲルのフリンク族だとは思う。恐らく街の住人なのだろう。服装もフリンク族達と………、
………よく見れば少々汚れが目立つ服を着ている。長いこと同じ服を使用しているのではないか?洗濯などはしていないのか?外見的にはまだミシガンよりも少し幼い程度の女の子だ。それならまだ家族と一緒に暮らしていると思うが先程の涙は家族と喧嘩でもして家出でもしたのだろうか?それでもやはり服ぐらいなら新しい物に取り替えてもらえるだろうに。この子の親は何をやっているのだろうか?
???「ヒッ………!」
カオス「あっ、ごめん………。」
あまりにカオスがジロジロ観察しすぎたせいで少女が小さな悲鳴を洩らす。こんな夜更けに大の男が幼い少女に変な目を向けていれば怖がられるのも当然だろう。
しかし本当にこの子はこんなモンスターがいるようなところで一人でどうしたのだろう?子供なら家に帰った方が安全だと思うのだが………。
ドゴォッ………!!!!
カオス「…何だ!?」
突然カオスと少女のいる場所からずっと西の山の方で爆音が響いた。見れば山の中間付近で火でも燃えているかのように明るい場所が見えた。
何かがあそこで暴れているのか………?
カオス「………何か危なそうだな………。
君も早く家に帰った方が………、
………ってあれ?」
一瞬山の方に目を向けた隙に目の前にいた少女が消えてしまった。時間帯的に薄暗いとはいえ本の数秒目を離しただけなのだが彼女の姿はもうどこにも無かった。まるで最初から少女はいなかったかのように………。
カオス「………何だったんだろう………あの子………。
………それにしても妙な気配がしたんだけどなぁ………。
あの子は………多分バルツィエじゃないと思うけど………。
あの気配は絶対にバルツィエのものだと思ったんどけどなぁ………。」
カオスは不思議な少女との出会いに妙な気分にはなったがそのまま帰途に着くのであった。
この時のカオスが感じたことの正体はカオスは単なる気のせいだということにして納得することにしたのだが………。