テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
リスベルン山 六年前
ナトル「ヴェノムだと……!?」
フラット「こんな時にヴェノムが………!?」
「はい………!
他の村の者達が逃げる途中に大群と出くわしたようで………それらを引き連れてきてしまったようです!!」
ナトル「……くっ!」
現在ダレイオス東側のアイネフーレ領でバルツィエが奇襲してきたことに先駆けいち早く避難したというのに今度はヴェノムが出現してしまった。どうにかこの状況を切り抜ける策を打とうとするが………、
フラット「………一先ずここはヴェノムにのみ焦点を合わせた方がよろしいのではないですか族長。
幸いにもバルツィエはまだここには到達していないようですし一旦バルツィエのことに関しては置いておいて今はヴェノムによる被害を防ぐのが先決かと思われます。」
ナトル「………それもそうだな。
では皆に今はヴェノムにのみ警戒するよう呼び掛けてくれ。
バルツィエに出くわす前に全滅してしまってはもともこもないからな。」
「!
分かりました!!」
ナトルは男に伝令を出してこれからのことについてフラットと議論することにした。
ナトル「…不味い事態になったな。
ここでヴェノムか………。」
フラット「どうしますか族長?
ここはもしものことを想定してここも離れることを視野に入れないと………。」
ナトル「…ここを離れるとなるともう行き先は西側しか無くはないか?
西側は………ブルカーンの領地だぞ?
ブルカーンは治安が悪くフリンクを受け入れてくれるかどうか………、
………我等はブルカーンとの折り合いもそう善いとは言えぬし………。」
フラット「それなら南に向かってアインワルドの
アインワルドなら私達も受け入れてくれそうですし………。」
ナトル「アインワルドか………。
確かにあの者達なら受け入れてはもらえるだろうが私達がこうして避難しているくらいなのだ。
アインワルドも私達のようにどこかへと避難しているのではないか?」
フラット「今は非常時です。
選択肢を渋っている時ではないでしょう。
私達の早期決断によってこの先フリンクがどうなるかの命運を握っているのですよ?
本来なら先にアインワルドに事情を話してから移動すべきではありますが使者を送っている間にヴェノムに追い付かれては一大事です。」
ナトル「確かにな………。
………これほどまでの大勢での大移動は滅多にない。
ユミルの森に着くのは大分時間がかかるだろう。
それまでには一応少人数でアインワルドの巫女へと使者を遣いに出そう。
それで体裁上は保たれるはずだ。」
フラット「ではそのように………、
………族長。」
ナトル「どうした………?」
フラット「…こんな時になんですが先程のカーヤの話は………。」
ナトル「本当にこんなときに時だな………。
………その話の続きは全て終わってから話す。」
フラット「………はい。」
ナトル「………どうにかこるからの方針は決まったが………、
………何事も起こってくれるなよ。
どうか一人の犠牲も出さずに事が終わってくれるといいが………。」
……………………………………………………………………
「………と言うわけでこれから皆で南のアインワルド領ユミルの森へと移動することになった!!
遣いの者は並行的に送り出しているので皆も後ろが突っ掛えないように移動を始めてくれ!!」
フリューゲルの伝令を伝えに来た男がそう言って先頭でで皆を先導する。それに従いフリューゲルの皆も移動を始めた。皆は間隔が空かないようにできるだけ詰めて移動している。数が多いため散らばってしまうと後方から来る他の村の者達が追い付いてきた時に身動きが取りづらくなるためだ。
カーヤ「ママ………。」
ロベリア「…ママ達も行こっか。」
カーヤ「うん………。」
集団が移動を開始したためロベリアとカーヤもそれに
カーヤ「………」
ロベリア「どうしたの?
そんな辛気くさい顔して。」
カーヤ「…おじいちゃんはどこにいるの?」
ロベリア「おじいちゃんは………ちょっと忙しくてねぇ………。
他の皆とお話してるんだよ。」
カーヤ「皆とお話………?
………カーヤおじいちゃんのところに行きたい………。」
ロベリア「あー………、
今は止めといた方がいいかなぁ………。
ママ達がおじいちゃんのところに行っても邪魔になるだけだし………。」
カーヤ「でもぉ………。」
ロベリア「………ママだけじゃ頼り無いかな………?」
カーヤ「そんなことはないけど………。」
ロベリア「そう焦らなくてもすぐにおじいちゃんには会えるよ。
今はちょっとの間だけ我慢しよ?
ね?」
カーヤ「………うん。」
ロベリア「………」
娘の手前、強がってはみたが内心ではロベリアも不安が大きかった。これまではどうにか平静を保てていたがすぐ近くにヴェノムが迫っているという緊迫感と過去の一件から憎しみと同時に恐怖を植え付けられた敵バルツィエがやって来ているのではないかという危機感で体が震え出しそうだった。恐らくフリューゲルの住人達の中でもっともバルツィエに恐怖を抱いているのはロベリアだ。なにせ生きている者達の中でただ一人ロベリアだけがその魔の手にかかってしまったからだ。
それでもその恐怖を押さえ付けていられたのは幼き頃より父ナトルから上に立つ者は常に冷静に状況を観察し行動すべしと教育を受けてきたことと隣にいる我が子に母親として恥ずかしいところを見せたくないという意地があったからだ。
ロベリア「(………人生は先が本当に見えないもんだなぁ………。
ラーゲッツにあんな目にあわされてなければ多分私も他の人達のようにあわてふためいて逃げることだけに必死になっていただろうに………。
………でも今は自分が昔と比べて変わったことを実感してる………。
一昔前の自分だったらきっとこんなことは考えたりしなかった………。
今の私は自分が生き延びることよりも………、
カーヤを最優先に考えてるなんて………。
カーヤだけは………なんとしても私が守ってみせる。
そこにはバルツィエの血だとかハーフエルフたとか関係ない。
カーヤは私の娘なんだから………。)」
ダレイオスではどの部族も同族意識が強い。逆にいえば別の部族に対する当たりは激しいのだ。そんな環境下でハーフエルフの娘をもったロベリアはそういった固定観念に疑問を抱くようになった。
生まれがどんな形であろうと、親と子で別々の種になろうとも家族は家族だ。家族に差別をしようだなどとは考えられない。
ロベリアは一人、ダレイオスの古びた風習こそが間違いなのだと思うようになった………。