テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
………そこからはもうカーヤを叫弾する声は止められなかった………。始めから忌み嫌われていたのもあってかカーヤはフリューゲルの者達から凄まじい制裁を加えられた。感染者ということもあって直接殴ったり蹴ったりなどはされなかったがそれよりも酷く魔術での攻撃を受けることになる。ヴェノムウイルスによる作用でそれらの魔術でカーヤを害することはできないのだがそれでも大勢からの攻撃は彼女の心を簡単に傷付けることは容易かっただろう。
カーヤはフリンク領から逃げ出した。
………私はそれをただ見ているだけしかできなかった………。私には何もできなかった………。カーヤとロベリアの二人がヴェノムウイルスに感染してからの私は何も考えることができなくなっていた………。この世界でのヴェノムウイルスの殺傷率は百パーセントだ。それにかかれば人の命など軽くて脆い紙切れのようだ。これからは三人で支えあって生きていこうと決めた直後にこの事故………。私には大切な娘と孫の命すらも守る力がない。なんて無力なのだ。どうして私はロベリアが死んでカーヤが感染したというだけでこうも何もできなくなるのだ。私はただ三人で仲良く暮らしていきたかった。ただそれだけたったのに………。
そんな望みは私が生きるこの世界では許されることではなかった。私は一族の長の血筋のものだ。私が第一に考えなければならないのはフリンク族の全体のことだ。フリンク族を一人でも多く生き残らせるためには全員の意見を纏めて率いなければならない………。
その場にいたフリンク族の皆はその時意見が一致していた。
フリューゲルを守ろうとしていたロベリアを賞賛し、ロベリアを死なせる原因を作ったカーヤの弾劾………。私は二人の味方のつもりだったが皆の意見はロベリアの味方でカーヤは敵………。皆がそうなってしまうのは理解できる。だがそれでも私はカーヤを………。
そんなことを言っても誰が私の話に耳を傾けてくれようか………?カーヤは既に感染者。死は免れられない。時が来ればその体は朽ち果て粘液にまみれた異形の怪物と化してしまう。そんなカーヤを擁護したところでまたロベリアと他の者達がいがみ合う関係になってしまうだけ………。私一人がカーヤを援護したところで何かが上手く作用する訳ではない………。カーヤの酷評は既にフリューゲルの全体に伝わってしまった。それはもうヴェノムウイルスが世界に蔓延するよりも恐ろしく早く感染していってしまった。その波はもう私一人では治めきることができない。どうすれば………。
ナトル「………」
私一人では無理だ………。私一人ではカーヤを守りきれない。ロベリアがいたからこそ私はカーヤを守っていこうと思えた。そのロベリアがいないのであれば私は一人になってしまう。それにカーヤも時期に死ぬことは確定だ。
それなら余計な荒波を立てることも無いのではないか………?
………そうだ。カーヤはもうじき死ぬんだ。カーヤは死んでロベリアの名誉は回復される。それならこの場では私は余計な口は挟まないでおこう………。よく聞いてみればロベリアが死んでしまった理由は少なからずカーヤにもあるのだ。だったらカーヤにはここは堪えてもらって………。
………もう何かを考えるのはよそう。漸く皆の意見が重なったんだ。今回悪かったのはカーヤなんだ。カーヤがロベリアを死なせたからこんな事態になったんだ。悪いのはカーヤ。皆がそういうならそうなんだろう。
………この場ではそういうことにしておこうか………。
………………そうして私はいつの間にかヴェノム以外の何か良からぬ
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「カーヤッ!!!」
ナトル「……!」
カーヤを呼ぶ声で昔の記憶から現代へと意識が戻ってくるナトル。かなり長い時間記憶を思い出していたと思ったがまだ先程カーヤが自分を刺してからそう時間は経過していなかった。
ナトル「(………どうして私はこんな時にあんなことを思い出していたんだ………。
今はカーヤにいよいよ死が差し迫っている時ではないか。
とうとうこの時が来たのだ………。
カーヤはここで終わり………。)」
『復讐はもう止めにしたの………。』
ナトル「(………何故だ………。
何故またロベリアの声が聞こえてくるんだ………。
私にはまだ何か思い残しでもあるというのか?
………そんな筈はない………。
カーヤが死ぬことでロベリアの仇を………。)」
『カーヤは自分の生きる意味を探して頑張って生きてね………。』
ナトル「(………カーヤの生きる意味………?
………そんな物はありはしない………。
お前を死なせたカーヤに生きる意味など………。
………カーヤには………。)」
カーヤ『おじいちゃん!』
ナトル「………」
ザッザッ………、
アローネ「……!
族長………!?」
カオス「何をするつもりですか!?」
無言でカーヤに歩み寄るとカオスとアローネがナトルの行く手を阻もうとする。
ナトル「…退いてください。
これ以上は貴殿方には何も手立ては無いのでしょう?
それならカーヤはこのままにしていても苦しむ時間が長引くだけです。
………ならば私が………せめて祖父である私が楽にしてあげましょう………。」
そういってナトルはカーヤに手をかざした。
ウインドラ「…本当に殺るつもりか………?
カーヤは貴方の………。」
ナトル「えぇ、分かっておりますよ。
だから私がこうするんです。」
かざした手にマナを込め始めるナトル。そこにいる一同はこれからナトルがカーヤに止めを刺すのだとそう思った。
フラット「アッハハハハハハ!!!
さぁ、殺ってやってください族長!!
貴方の手でロベリアを殺した敵を葬るんです!!
天国にいるロベリアがそれを望んでいますでしょうよきっと!!
アッハハハハハハハハハハハハ!!!!」
ナトル「『ファーストエイド。』」