テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
レイディーにバルツィエのことを聞き絶望したカオスだったがアローネに諭され希望を取り戻す。
タレスにも事情を話し三人の絆はより深まった。
安らぎの街カストル 宿 夜
コンコンッ
「?どなたでしょう?」
「親睦会は済んだようだな、邪魔するぜ?」ガチャッ
「レイディーさん!?」
「不用心な奴等だな、鍵くらいかけろ。
誰に盗み聞きされるか分からねぇぞ?
アタシみたいなやつとかさ。」
「何しにきたんですか……?」
「お?歓迎されてなくね?」
「歓迎するとお思いですか?」
「思うねぇ、アタシの情報のおかげでお前らの仲が深まった訳だろ?
感謝してくれたっていいんだぜ?」
「貴女が何を言うんですか!?」
「会う度うるせぇ女だな。
程度が知れてくるぞ?
な?お前もそう思わねえか?
バルツィエの坊や。」
「!」
「………聞いてらしたんですね。」
「安心しな、アタシ以外は聞いてねぇから。」
「それが一番不安なんですが……。」
「そういうなって、アタシ達の仲だろ?」
「どんな仲なんでしょうかね…。」
「学者様とその他助手。」
「いつから貴女の助手になったのですか!?」
「んなこたぁどうだっていいだろ!
それよりもお前ら王都に行くんだろ?」
「………その予定ですが。」
「だったらここである程度金稼いでから北西にある連絡港に向かいな。」
「連絡港?」
「お前ら地図頼りに移動してるみたいだからこっからまたオリュンポス山越えるつもりだったんだろ?
だったら船に乗って行けば王都まで近道だ。
そっから北東に向かえば街があってその次が王都だ。
船賃は高いからなぁ。
金持たねぇで乗ろうとしたら門前払いくらうぞ。
して王都に着いたら騎士隊長のダリントンって奴を訪ねてみろ。
そいつならお前らに手を貸してくれる筈だ。」
「どうしてそんなこと教えてくれるんですか?」
「アルバート=ディラン・バルツィエ。」
「……」
「坊やの祖父さんらしいじゃねぇか。」
「………そうですが。」
「とんだ有名人の孫が彷徨いてたもんだなぁ。
マテオは狭いぜ。」
「祖父を知っているんですか?」
「逆に知らねぇ奴はいないんじゃないか?
なんせこのマテオの王になっていたかもしれない男だ。
そうなるとお前は生まれない訳だが。」
「祖父が王様に…?」
「何も知らないようだな。
多分ダレイオスでもその名が知れ渡っている筈だぜ?
あの伝説の男のことはな。」
「………レイディーさん、貴女は祖父に会ったことがあるんですか?」
「直接顔を見合わせたことはねぇよ。
だが遠くにいても聞こえちまうんだよ。
奴が残した数々の名跡は今でも語り継がれるくらいには残っているのさ。
バルツィエに生まれた奇跡の聖人だってな。」
「奇跡の………聖人?」
「生まれながらに地位の高いやつは基本平民共を見下すのさ。
貴族にとっては平民なんぞ取るに足らねぇ無限に湧く虫くらいにしか思ってねぇんだよ。
一人二人死んだくらいじゃ騒ぎ立てることもねぇ。」
「………」
「………!」
「だからアタシら平民が何処でどんな目にあってても見向きもしない。
税収はきっちり盗るくせにな。
例えモンスターの群れやドラゴンが街に襲ってきたところで出す兵は零だ。
貴族ならそれが常識だ。」
「おじいちゃんはそんな人達と「だが!!」」
「たった二人いたんだよ。
モンスター被害を聞き付ければ剣一つで駆け付け立ち向かいドラゴンが現れたら町人を先導して打ち倒す二人が。
貴族の、それも王国最高貴族にして歴代当主最強の力を持ちながら平民を見捨てず平民の為にその力を振るい続けた正にマテオの民にとって英雄とも呼ばせるそんな二人が!」
「「!!?」」
「お前の祖父アルバート=ディラン・バルツィエとその弟、現国王で当時の名はアレックス=クルガ・バルツィエだ。」
「おじいちゃんが………英雄だって………!?」
「バルツィエの虎牙破斬と言えば王都じゃあ誰だって知ってる通称だ。
なんせその片割れが現王なんだからな。
生きた伝説だからよ。」
「バルツィエの虎牙破斬………。」
「その虎牙破斬とは何ですか?」
「バルツィエにはバルツィエ流剣術ってのがあってその中の技名からつけられた俗称だ。
上下に斬りつける技だが二人の連携で繰り出した一撃が鋼鉄並の鱗をほこるドラゴンの首を斬り跳ねたっていう伝説もある。」
「ドラゴンの首を?」
「ドラゴンをですか!?
それはとても快挙なことですよ!?」
「そうだろうなぁ。
ドラゴンが現れた日にゃあ街ごと滅ぼされることを覚悟しなきゃならんというのが通だし。」
「おじいちゃんはドラゴン討伐は騎士の見習いの時に何度か参加したことがあるって言ってた……。」
「は?見習い?参加した?
その言い方だと騎士団でドラゴンに対応したみたいに聞こえるな。」
「違うんですか?
ドラゴン討伐は騎士団の任務じゃ……?」
「ドラゴン討伐は特別に任務放棄が出来るんだ。
勝てるなんて思わねぇからな。
死ぬ確率が非常に高い。
あのバルツィエの親戚連中もそうだった。
それなのにあの二人は………いや五人だな。
五人がドラゴンが出る度に飛び付いて倒してくる。
アタシ自身その時代に生きてたことが誇りに思えてたよ。」
「五人?」
「後の三名は誰なんですか?」
「アルバート=ディランが特別可愛がってた弟子三人だ。
アルバートは貴族も平民も差別しなかったから部下の中で才能を見抜いたやつをいつも連れ歩いていた。
そいつらまとめてマテオのバスターズとも名付けられてたっけ。
そいつらは三人とも平民の出身でダリントン、クレベストン、ヒューストンって名の騎士だ。」
「クレベストンさん……!」
「ん?なんだ?クレベストンの話は祖父さんから聞いてたのか?
ダリントンはお前らが訪ねる予定の奴な。
この三人は虎牙破斬とは別におまけ三人衆やトントントリオ、トン(騎士)とか言う名前で括られてた。
アルバートは才能を見抜いて選んだとか言ってたらしいが単に覚えやすい三人だったからとも熱狂的なファンから推測されていた。」
「「(汗)」」
「おじいちゃん……………大雑把なとこあったから(汗)」
「最初はアルバートとおまけ三人衆がつるんでたんだがそれにアレックスが加わって五人になってからはよくニュースにはなってたな。
あれを倒しただのこれを倒しただの。
あの五人の話題は当時は毎日飛び交ってたぞ。
その時いた伝説的人気アイドルのリリス=レスなんて目じゃないくらいにな。
とにかく広報は五人の記事で持ちきりだった。」
「おじいちゃん………嘘つきすぎだよ。」
「カオスの話ではそんなに目立った人ではなかった筈ですが………。」
「カオスさんのお祖父さんはダレ………ボクの村でもそんな人がいるというくらいには聞こえてました。
とんでもなく強い武人がいたと。」
「そうだな、戦いに関して究極的なまでに洗練された術技と謎に包まれた医療術でマテオでも比肩を赦さない集団のそのトップを張る男だったやつだ。
行方不明にならなければ王女フィレスと結婚して今頃蛮族集うダレイオスとも停戦条約じゃなく友好条約を結んでいたかもしれねぇ。
そうなってたらお前は………さっき言ったか。」
「おじいちゃんがそこまで凄い人だったなんて………
だったらどうしておじいちゃんはミストに残ったんだろう?」
「さぁな。
孫のお前が知らねぇことは流石にアタシでも分からねぇよ。
バルツィエの公式にはアルバート=ディランは死亡扱いだったんだからよ。
祖父さんに聞けばいいんじゃないのか?
あ!もういねぇのか!
わりーわりー!」
「………レイディーさんはいい話をしに来たんですか?悪い話をしに来たんですか?」
「それは坊やのこれからする話の受け取り次第さ。
まぁ、時期を追ってみれば自然と推測は出来るがな。」
「推測?」
「ヴェノムさ。」
「「「!?」」」
「あいつが死亡、いや失踪した時期は少し前にヴェノムが世界に現れた時だった。
それまで多くの村や街を救ってきた英雄達は当然ヴェノムを狩りに行った。
だが結果は敗走。
それどころか守る筈だった村の人々はヴェノムにやられて全滅。
英雄達に初めて黒星がつく瞬間だった。」
「ヴェノムがおじいちゃん達に………。」
「それからというもの、英雄達は欠かさずモンスターを狩りに行ったがヴェノムの事件だけは解決出来ず英雄と呼び慕ってきた臣民達はヴェノムの餌食にされていった。
ここまで言いやぁ分かるだろ?
お前の祖父さんが何故田舎の村に隠居したか。」
「………」
「アルバートがいなくなる前にワクチンもバルツィエが開発してたんだがなぁ。
アイツも平民よりだったが貴族なりにプライドはあったんだろう。
完璧な自分は自分だけで物事を解決しなければならない。
ワクチンなど不要だ、ってな。
結局それが出来なくて民衆の期待に応えきれない自分に対する失望の眼差しが怖くなって誰も自分のことを知らない田舎にでも消えたかったんだろう。
皮肉な話、坊やの存在がいい証拠だ。」
「………!?」
「人に話を聞かせたきゃ、美味しい話で釣って適度にパンチを挟み更に旨いとこを用意して本題を話すのが基本だぜ?
どうだ?
お前の知らない祖父さんの勇ましい歴史が聞けて。
ついでにお前の存在する意味も知れて。
いい情報が聞けてよかっただろ?」