テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
アローネ、タレスと絆を深めたその夜、レイディーが再び話を聞く。
その内容は祖父についてのもので…
安らぎの街カストル 宿の外
「………」
「おはようございますカオス。」
「おはようございますカオスさん。」
「………ん?あぁ、おはよう二人とも。」
「カオスは本当に早いですね。
どのくらい前から起きていたのですか?」
「ん~と、一時間くらい前かな。
二人とそんなに変わらないよ。」
「それにしては外に出るのが早くないですか?」
「ちょっと考え事をね。」
「考え事………昨日のレイディーさんのお話ですよね?」
「うん、少し思うところがあってね。」
「カオスにとってはショックなお話でしたから無理もありません。」
「え?いや今は別にそんなに深刻に捉えてないから大丈夫だよ。」
「本当ですか?無理なさってませんか?」
「平気だって!
本の少し寝るのが遅かっただけだから。」
「ほら!やはり考えすぎて眠れなかったのではないですか!」
「アッハハ、本当に平気だよ。」
「まったくレイディーさんは!
明後日までにもう会わなければいいのですけど。
同じ宿ですからなるべく会わないようにしましょう!
鍵もかけて!」
「その件ならもう大丈夫だよ。」
「大丈夫?
どういうことですか?」
「さっきそのレイディーさんと話をしてたんだ。」
「!!また何か彼女に嫌なことを言われたのではないですか!?」
「いや、普通の世間話。」
「彼女が世間話?」
「後、ちょっと気になったことをね、聞いてみた。」
安らぎの街カストル 宿 一時間前
「………」
「よう、バルツィエの坊や。
随分早いなぁ。」
「お早うございます。」
「衝撃的な話を聞かされて眠れなかったか?
それとも能天気に猿としけこんでたか?
ん?」
「……」
「黙りってコタぁ肯定ととっちまうぞ?
いいのか?」
「」
「………レイディーさんは………」
「ん?」
「レイディーさんはバルツィエが嫌いなんですね。」
「はぁ?何今更言ってんだ。
話聞いてたら分かるだろそんくらい察しろ!
聴力足りてねぇのかお前は?
この国にバルツィエのことを好きになるヤツなんざ…」
「そして………。」
「んあ?」
「貴女はおじいちゃんのことが大好きだったんですね。」
「………どうしてそうとった?」
「昨日の夜の話を聞いてたらそう感じました。
一見俺達に対して皮肉を言っているかのようにも聞こえましたがレイディーさんがおじいちゃんの話をしているときは何だかレイディーさんの心に熱いトキメキのようなものを感じました。」
「トキメキだぁ?
曖昧な言い方だなぁ。」
「アローネに励まされてなければ気付かなかったと思います。
俺が昔夢中になってた騎士という職業はおじいちゃんは誰かを守る為にあるものだと言ってました。
確かに貴方の言う通りバルツィエは皆に酷いことをする人達なのかも知れません。
ですがおじいちゃんはそんな風潮を無視して皆と仲良くやっていたのでしょう?」
「……」
「おじいちゃんがヴェノムに敗けたという話には正直、心を抉られるような痛みがありました。
けど、おじいちゃんは俺がいた村で村の皆をまとめて勇敢にヴェノムと戦っていた。
当事者の俺だから分かります。
おじいちゃんは敗けても戦うことを辞めなかったんだと。」
「アルバートが………。」
「おじいちゃんもレイディーさんの言う通り逃げ出したくなったのかもしれません。
マテオの皆から期待されていたならそれが重荷になって。
おじいちゃんがレイディーさんの期待に応えられなくて申し訳ないとは思います。」
「ふん!じゃあ奴は推測通り期待外れの英「そんなの」」
「そんなの誰だって立場が同じなら一緒だったと思いますよ?
おじいちゃんはバルツィエで英雄である前に普通の心を持った人なのですから。」
「!」
「おじいちゃんだって英雄だなんだと持て囃されても人は人です。
辛くなるときもあります。
人が見る幻想はいつだって現実よりも大きく輝いています。
だけど実際は誰とも変わらない普通の人。
自分の実力以上を求められても応えることなんて出来ない。
いつか崩れる。
それを見越しておじいちゃんは故郷の王都から離れたんだと思いますよ。
自分は誰とも変わらない人なんだって伝えたくて。」
「自分の実力以上ねぇ………。
だが奴は不可能とされたドラゴンの討伐を成し遂げたぞ?」
「それは仲間がいたからでしょう。
仲間がいたから出来たんです。」
「仲間が?」
「はい、おじいちゃんは村でも皆を大切にする優しい人でした。
俺にはよくイタズラを仕掛けてきましたけどそれ以外では毎日欠かさず剣術の指導をしてくれました。
俺が騎士になりたいって言ったからそうなれるように。
そんな優しいおじいちゃんです。
仲間の為なら多少の不可能も可能にしてしまえたんでしょう。」
「じゃあ何故ヴェノム討伐の不可能は可能に出来なかったんだ?」
「単純な話です。
ヴェノムが強すぎただけですよ。
ですからおじいちゃんはヴェノムに対して逃げの一手を使うしかなかったんでしょう。
不可能を可能にしろと催促してくるこの国から。」
「それが英雄と呼ばれたヤツの義務だろう?」
「義務でもないし英雄でもありません。
おじいちゃんはおじいちゃんです。
村の皆はおじいちゃんのことを一人の人として見ていました。
それならおじいちゃんがあの村に残るのも頷けますね。
おじいちゃんはレイディーさん達のような理想や幻想を押し付けてくる人達に見切りをつけて新しくおじいちゃんをおじいちゃんとして見てくれる人たちのところに行ったんですきっと。」
「職務怠慢じゃねぇか?」
「もう十分働いていたでしょう?おじいちゃんは村では誰よりも働いていました。
自分に責任がなくても。
そこは認めてあげてください。
おじいちゃんはそういう人だから。」
「居心地のいい村に逃げたやつをか?」
「それは誰もが望むことです。
居心地のいい場所があるのならは誰だって飛び付きたいでしょう?」
「じゃあ王都はやつにとって地獄だったとでも言いてぇのか?」
「望まないことを望まれればそうなりますよ。
理想は自分の中だけにあって人に望むものじゃない。」
「アタシはアルバートに幻想を抱いてたってことか。」
「過度な期待はレイディーさんだってされたくないでしょう?」
「ちげえねぇなぁ。
「なぁ、坊や。」
「何ですか?」
「お前の祖父さんは………アルバートはアタシ達のことを嫌いだったと思うか?」
「………」
「アタシやアタシのような期待だけして本人を知ろうともせずアルバートなら出来て当たり前と勝手に勘違いしてた押し付けがましく勝手に失望していったファンは。」
「さぁ、どうなんでしょうか。
でもおじいちゃんは嫌いな人のために何かをしてあげようとするほどお人好しではなかったと思いますよ?」
「本当か?」
「ずっと側で見てきた孫の言葉ですから。」
「………ハハッ。」
「?」
「そりゃあ、信憑性抜群だな。
アタシみたいなにわかなファンの考察よりも信じ甲斐があるぜ。」
「でしょう?」
「最もお前が本当にアルバートの孫かどうか不透明なとこだがな。」
「そこは信じてくださいよ。」
「仕方ねぇだろ。
アタシは誰かを本気では信じたことがなかったんだ。
アルバートに会うまではな。」
「おじいちゃんに会ったんですか?」
「昨日も言ったろ?
アタシはただ遠くで眺めてた追っ掛けだったんだよ。
モンスター狩りに忙殺されてる本人と顔合わせするなんざアタシみたいなはしっこの研究者じゃとても出来なかったんだ。」
「おじいちゃんなら会ってくれたかもしれませんよ。」
「あ?どうしてだ。」
「誰かの為に何かをしてあげられることが俺やおじいちゃんの生き甲斐でしたから。
俺はそうおじいちゃんに教えられてきました。」
「………そうか。」
「なぁ、坊やこの街が何で安らぎの街なんて言われてるか知ってるか?」
「いえ知りませんけど…。」
「この街はな、王都の統治下にありながらあまり騎士も来ない程よく王都に近い位置にあってな。
冒険者達が気を休めるのにうってつけの街なんだよ。
アルバートも遠征したときはよくこの街を拠点にしていた。」
「おじいちゃんが…。」
「王都が国の中心ではあるが大陸的にはここが中央だ。
ここからならマテオのどこにだって行ける。
でかい街だからな。
王都からワザワザ移住してくるやつもいるくらいだ。」
「確かに賑わい方が凄いですからね。」
「坊やも疲れたときにはここに休みに来ればいいさ。」
「そうしますね。」
「アタシも十分羽を伸ばしたしそろそろ行くか。」
「?出発は明日では?」
「丁度リトビアへの亀車が来ててよ。
これ逃すと次は来週になるんだ。
山越えするなら亀車が安全だぜ?
小さいが封魔石積んでるおかげでヴェノムに襲われねぇし。
まぁ、お前らには関係ないか。」
「お一人で大丈夫何ですか?」
「心配してくれるのかい?
嬉しいねぇ。
けど甘く見んなよ?
アタシにはこの指輪とワクチンがあるからな。」
「指輪が?」
「ガキや猿も装備してたエルブンシンボルと同じで装飾者のステータスを底上げしてくれるんだ。
おまけに魔力の増幅もするしよ。
燃費は上がっちまうがそこは気にしねぇ。
ここまで一人で旅してきたんだ。
なんとかなるさ。」
「ではお元気で…。」
「………もう一ついいか?」
「何ですか?」
「お前のその力、バルツィエには邪魔くさいがお前もバルツィエなら連中がどう動くか分からねぇ。
連中には要心しとけ。」
「………そうします。」
「………アルバートは世界を救えなかったが、………ヴェノムに勝てるお前ならアルバートに遂げられなかった世界統合も果たせるかもな。」
「おじいちゃんの出来なかったことを…。」
「坊やは別にアルバートにならなくてもいい。
奴の名は偉大だ。
仮に坊やがバルツィエに祭り上げられても最初は鬱陶しく感じると思う。
追い越すには相当苦労するぜ。
でももしお前がアルバートを越えたい、世界を救いたいなんて思うならば、アルバートの血を継いだお前がその力を使いこなせば民衆は必ずお前を認めてくれる。
坊やは第二のアルバートじゃあなく第一のカオスに慣れる筈だぜ?」
「あまり期待はしないで下さいよ?
俺は道のりで困っている人がいたら助けたいだけですから。」
「坊やはそれでいいさ。
アルバートもそうだったからな。
おっとワリーな。
つい奴と重ねちまった。」
「別にいいですよ。
気にしませんから。」
「それじゃあな。
元気でやれよ!」