テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
アインワルド族の住む村アルター 夜 残り期日六十日
カオス「ん………………?」
クララ「………」
カオス「あ…………その…………。」
じっとカオスのことを潤んだ瞳で見詰めるクララ。女性と二人きりの状況でお互いに黙り混んで見詰め合うこの状況は人付き合いに慣れていないカオスにとってはとても気まずい。クララはアインワルド族の巫女という他でいう族長の立場のものであることは理解していた。その事もあってカオスはクララは自身とはある程度遠い身分の者と感じていた。自分はマテオの辺境の地の一国民、相手はそのマテオの敵国ダレイオスの九ある部族の中の一人の長。そんな相手と自分との距離はどうしても彼等の手に負えないモンスターを通りすがりの旅人が旅のついでに彼等の代わりに倒してそれで終わるだけの薄っぺらな関係、その程度に思っていた。
それが先程クララに自身の過去の話から始まって長々と彼女と接していく内に彼女が年相応でどこにでもいる普通の女性であると思うようになった。自分との身分の差はあるものの会話で返ってくる返事はどれもどこででも聞けるありふれた日常会話で地位が高いからと言っても彼女が本や人伝に聞いたことのあるそれこそ王族や貴族のようなプライドの高い感性で話をする女性でないことは分かった。と言うよりもここでの会話では彼女は自身のことをカオスと対等、もしくは自身をカオスと同じ平民の立場に置いて話をしている気さえする。彼女との会話は人見知りなカオスでも特に嫌な気はしなかった。それどころか彼女とは精霊を体に宿すシャーマン同士で親しみすら湧いてくる。
彼女とは………クララとは仲間のアローネ達と同じくらい仲良くなれるのではないかと思い始めていた………。
カオス「………ク、クララ………さん………?」
クララ「………」
カオス「………」
そんな感情を抱き始めた時にこの空気である。親しくなれそうな相手と感じ始めたと言っても彼女とはまだそれほど長く一緒にいたわけではない。彼女と会うときはいつも周りに誰か他の人がいる時だけで話の内容もヴェノム関連か精霊関係についてだけだ。ここでこうしてカオスの昔話で盛り上がりはしたがそこで黙られると他に話題の呈示しようがない。それでもなんとかこの空気から逃れるため話題を出そうとカオスが模索していると、
クララ「………カオス様………、
私は貴方様にこのアルターで「カオス」……!」
アローネ「ここにいらっしゃったのですねカオス。
部屋にいなかったので探しましたよ。」
カオス「アローネ………、
ど、どうしたの………?
俺に何か用事?」
アローネ「いえ特に私用があるわけではありませんが明日も早いというのに中々部屋にお戻りになられないのでどちらにいかれたか気になりまして………。
………クララさんとお話をなさっていたのですね。」
カオス「そっ、そうなんだよ。
ちょっと散歩してたらクララさんが来て話をしてただけなんだ。
今戻ろうかと思ってたところなんだけど……。」
アローネ「そうでしたか。
では明日支障がないよう早めに就寝なさってくださいね。」
カオス「分かってるよ。
もう寝るって。
…それじゃあクララさん俺はこの辺りで………。」
ザッザッ………、
アローネ「………それで彼女とはどのようなお話を?」
カオス「え?
普通に話をしてただけだけど………。」
アローネ「ですからその話の内容を聞いているのです。
クララさんとはどのような話をなさっていたのですか?」
カオス「…別に聞いても面白い話じゃないけど………。
それにアローネが知ってる話だし………。」
アローネ「私が知ってる?」
カオス「うん、
俺の子供の時のことを聞かれたからそれに答えてただけだよ。
子供の時どんなふうに過ごしてかーとか。」
アローネ「…何故彼女がそのようなことをカオスに訊くのですか。」
カオス「同じシャーマンとして俺がどんな生活をしていたか気になったんだって。
クララさんもシャーマンだから他のシャーマンのことが知りたいんだと思うよ?」
アローネ「………本当にそれだけなのでしょうか?
何か他に別の目的があってカオスの昔の話をお訊きになられたのでは?」
カオス「別の目的って………例えば?」
アローネ「……例えば………、
カオス「………………………………、
………それって何か困ることでもないんじゃないかな?」
アローネ「そうではありません!
この間の話から彼女はあわよくばカオスと仲良くなろうとしている節がありました!
クララさんはカオスとの距離を詰め寄ろうとしているかもしれないのです!」
カオス「………?
別に俺は仲良くなるのはいいことだと思うけど………。」
アローネ「そういうことではありません!!
彼女は貴方をアインワルドに取り込もうとしている可能性があるのですよ!?」
カオス「あぁ~あの話かぁ………。
結婚だとか子供だとか………。
あの話はちゃんとしっかり断ったじゃないか。
そんな出会ってよく知らない人とは結婚なんてできないって。」
アローネ「だからですよ!
だから彼女は貴方がそう仰って断ったから貴方のことを知ろうとしているのではないのですか!?
貴方のことを貴方から直接お訊きして貴方との関係をより深くしていこうと!」
カオス「アローネは考えすぎだよ。
純粋に俺がシャーマンとしてどうやって過ごしていたかを知りたかっただけかもしれないじゃないか。
そんなにクララさんのことを疑ったりしたら可哀想だよ。」
アローネ「………確かにそういう見方も出来るかもしれませんが私はそうはとても………。」
カオス「………大丈夫だよ。
俺は結婚なんてしないしここにだって後
ここに滞在してる期間はその時間を合わせても一ヶ月もないんだし一ヶ月もいなかった相手に本気で結婚してほしいだなんて言ってこないだろ? 」
アローネ「………だと宜しいのですが………。」
カオス「…ってか俺の結婚の話はアローネには無関係なんじゃ………。」
ザッザッザッザッザッザッ………、
クララ「………」
ケニア「邪魔が入ったな。」
クララ「………お父様………。」
ケニア「彼はどんな様子だ?
何か分かったのか?」
クララ「………カオス様は故郷を追われた身のようです。
バルツィエにも追われているようですが故郷は政治的な話ではなく十年前に精霊の力を暴発させてしまいそれで住人の方々とは袂を分かったようで………。
そして様々な要因が重なって数ヵ月前に故郷の近くにあった住居すらもいられなくなったそうです。」
ケニア「そうか………、
では彼はマテオ、ダレイオスに明確な居所はないのだな?」
クララ「えぇ、
でもカオス様はマテオとの決着後はカーラーン教会に身を寄せるつもりのようでして………。」
ケニア「この間もそのようなことを言っていたな。
………あのアローネという娘がカーラーン教会の関係者らしいが恋人か何かなのか?」
クララ「そうでもないようです。
彼女とはそういった関係ではなく彼女が切っ掛けで故郷を出ることになったようでそこからはずっと一緒にいるようですが関係性については他のお仲間の方達と同等で彼女にも他に想い人がいるとか………。」
ケニア「それなら心配はなかったな。
初日の様子から何かしら親しい仲だと疑っていたがそういうことなら何も遠慮することはないな。」
クララ「はい、
………ラタトスク。」
ラタトスク『何だ?』
クララ「カオス様方がトレントを狩り尽くすとしたら予定では二週間後とのことでしたが
ラタトスク『……俺の予測では
クララ「………そうですか………。
それは………、
ケニア「彼等には少し長くこのアルターにいてもらえそうだな。」
クララ「えぇ、
カオス様はヴェノムの主を全て討伐し終えたら確実にスラートやクリティアから招集され王選定の会議に出席されることでしょう………。
ですから機会はカオス様がいらっしゃる
今を逃せばカオス様はアインワルドの手の届かぬところへと行ってしまいます………。
そうなる前に私はカオス様方がアルターにいる間に、
カオス様の
それがデリス=カーラーンの存続に繋がるのならどんなことをしてでもカオス様を私のものに………………。」