テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
アインワルド族の住む村アルター 残り期日三十五日
カオス「(………どうしよう………。
あれだけの啖呵きったのに何も思い浮かばなかった………。)」
二日前にクララやアローネ達の前でアインワルドの者達に洗礼の儀を施さずにトレント達をどうにかしてみせると言い切っておきながら未だどうすればいいのか分からずじまいなカオス。
カオスが洗礼の儀を拒むのは洗礼の儀がこの二ヶ月で違う効果に変化したからだ。それまではただヴェノムに感染しなくなるだけだったのだがカーヤやアインワルドのビズリー、ダズがアローネ達と同じ力が付与されたことによってそれを知った。
カオス「(何で急にこんなことになったんだよ……。
シーモス海道じゃアローネ達にしかあの力は渡さないとか言ってたって聞いてたのに………。)」
カオスに憑依するマクスウェルは自身が何者かに狙われていることを危惧しあまり自身の力が多くの者に知れ渡ることを避けるようにアローネ達に忠告した。もし彼がその何者かに捕まるようなことにでなれば善からぬことを企てるからとのこと。
だがそれでもカオス達がダレイオスを旅してダレイオスのほぼ大半の者達に彼の力のことが伝わってしまっている。マクスウェルもカオス達が正直にダレイオスの者達に彼の力のことを説明してきたためこれ以上自身の存在を秘匿することは無理と判断してアローネ達に付与した力を他の者達にも付加するようにしたのか………。
それはさておき、
カオス「どうすればトレント達を一気に片付けることができるんだろう………?」
昨日の時点でトレント達は一ヶ所に集めたと思ったのだがカオス達が半日その場を離れていただけでトレント達はそこらじゅうにまた散らばって行ってしまったようだ。雨が降って活発になったせいで今度はトレント達が待ち伏せして獲物を捕らえる習性から獲物を探して徘徊する習性に切り替わってしまっている。雨の日に晴れていた日のようにトレント達を狩ることは禁止されている。風も吹くようになって森を元気に徘徊するトレント達を焼却して倒そうとするとそのままユミルの森全体が大火事になる危険があるのだ。
カオス「(………また一昨日みたいにトレント達を集めてきてからその後俺がそこに壁を作って囲って………、
………だけどそれだとユミルの森の地形が大分変わっちゃうよなぁ………。
ラタトスクにはあまり森を壊さないように言われてるし………。
………どうしたら………。)」
カオスは本来正々堂々と戦うことに特化したスタイルだ。真正面からぶつかって勝つことにのみ力をおいている。精霊が憑依していることもあってカオスの魔力は常人のそれではない。だからこうして細かなことを考えるのには向いていない。そういうことは仲間達の方が得意で仲間達に知恵を貸してほしいところだが仲間達の意見もクララ同様にアインワルドと共に協力してトレントとアンセスターセンチュリオンに立ち向かう方針だ。今回のことに関してはカオスに味方はいなかった。
カオスはどうしてもアインワルド族の者達全員に術を付加することをしたくはない。一度付加してしまえばそれを解く方法はアローネ達の様子を見るか限り存在しない。カオスが付加した術は永続的にその効果を発揮し続ける。即ち付加する前と後でその者の今後を大きく左右してしまう恐れがある。付加する前であればその者がヴェノムに倒されるようなことがあれぼその者の責任だが付加した後にヴェノムではなくそれ以外の方法で倒れるようなことにでもなればそれは高い確率でカオスが付加した術の作用のせいだろう。術の効果を納得した上で興味本意で付加してほしいと言ってくるものがいれば付加してもいいとは思うのだがアインワルドの者達はカオス達の旅の事情の巻き添えでトレント達を倒すためだけにその後の人生を大きく変える選択を迫られている。
そんなことはカオスも容認できない。星の命運の責任は自分達だけのものだ。自分がマクスウェルを目覚めさせたことによってデリス=カーラーンが存続の危機に見回れている。それに好感を抱く彼等を巻き込むつもりはない。
しかしもうそれしか方法は思い付かない………。それしかマクスウェルの課した期日に間に合う方法は………。
カオス「………この雨が早めに止んでくれればいいのにな…………。」
ザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア………!!!
カオスの心情と同じ様に空の色を染めて雨は降り続く。この天候という問題さえなければカオス達の旅は足止めを食らうことなくトレントとアンセスターセンチュリオンを倒して最後のヴェノムの主レッドドラゴンへと挑めたというのに………。
マクベル「お客さんこんなところで何してるでやんすか?」
カオスが悩んでいるところへアルターでの初日に出会ったうさにんのマクベルが話しかけてきた。
カオス「マクベルさん………。
そういえばまだアルターにいたんですね。」
マクベル「そりゃそうでやんすよ。
俺っち一兎じゃこの森から出ることなんてできないんでやんすから。」
カオス「…そうなんですね………。」
マクベル「でも今出るのが無理なだけで俺っちこの雨が止んだら一度里に戻るでやんすよ。
お客さん達のおかげで森にもトレントがいなくなってきたみたいでやんすし里にもそろそろ帰らないと嫁達が俺っちの帰りを待ってるでやんすから。」
カオス「何だかんだで一ヶ月以上ここに大罪してたことにもなりますよね。
早く家族の人達のところに帰ってあげてくださいよ。」
マクベル「そうするでやんす。
ここでの収穫も社長達に報告しないといけないでやんすから。」
カオス「報告………?
…マクベルさんは何しにここに来たんでしたっけ?」
マクベル「ダレイオスで仕事を再開できるかの確認でやんすよ。
お客さん達の頑張りのおかげでダレイオスからヴェノムが減少しているみたいでやんすからどうにかいい吉報を持って帰れそうでやんす。」
カオス「その報告をしたらダレイオスにまたうさにん達が往き来するようになるんですか?」
マクベル「そうなるでやんす。
けどまだ完璧に安全になったとは言い切れないものでお客さん達もまだこれからブルカーン族のところに行ってレッドドラゴンを倒してくるでやんしょ?
仕事を再開するのはそれが終わって暫く経ってからになるでやんす。」
カオス「そうなんですね………。」
六年前まではこのダレイオスにもうさにんがいたという話は聞いていた。それが国が機能しなくなって部族間での交流が無くなりダレイオスからうさにんが撤退した。
それがまたうさにん達がダレイオスにやって来るようになる。カオス達の旅の成果が出てきた証拠だ。だとすればここで立ち止まっているわけにはいかない。ダレイオスをかつての姿に戻さねばならない。それだというのにトレント達の問題をどう解決すればいいのか分からない。
カオス「………あの………、
一つ相談にのってもらえませんか………?」
カオスは猫の手も借りる思いでマクベルに自分達がぶち当たっている問題を打ち明けた。初日の出会いから頼りになりそうにない相手だとは思ったがそれでも彼は他の者達とは立場が違う。彼なら何か有力な作戦のヒントだけでも得られないかと本の少しの期待を込めてカオスは話し出した………。