テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~   作:モニカルビリッジ

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ラーゲッツは見ていた

消滅都市ゲダイアン 深夜 残り期日九日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カオス「…じゃあレイディーさんはその病気を治したくてマテオとダレイオスを旅していたんですね。」

 

 

レイディー「明確には病気じゃねぇがな。

 精神障害の一種だ。

 ワクチンを服用し過ぎたせいでアタシの感情は歪んでんだよ。

 

 

 ………周囲の奴等が笑ったり泣いたりしてる時にその感情を共有出来ないのは中々胸の奥底に来るもんがあるぞ。

 そいつらが何でその場面でそんなふうになるのか理解はしていてもその感覚を感じることが出来なくなった。

 ワクチンを飲むまではそういう感情がアタシにもあった筈なんだけどな。

 その感情がアタシの中から消えちまってんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アタシは自分の心を取り戻したい………。

 取り戻してアタシはアタシがパウラムをどう思っていたかを思い出したいんだ。

 今の状態じゃ何をしても心のどっかでそれを本気で好きになれねぇ。

 全力で何かに熱を入れてたあの頃のような楽しいって感情が沸いてこないんだ。

 ……こんな人として大事な感情が無いまま生き続けるのは地獄にいるのと同じだぜ。」

 

 

カオス「………レイディーさんがファンクラブを抜けたのってもしかして………。」

 

 

レイディー「………そうだよ。

 アタシはアルバートのことが憧れてた。

 アイツのように多くの人のために頑張る奴を見てたらアタシも頑張って誰かのためになることをしたいと思った。

 ヴェノムが現れてアルバートがレサリナスを去った後もアタシはその思いを忘れずにひたすらワクチンを改良する研究を続けていた。

 ………そして感情が欠落したんだ。

 その後は何もかもがどうでもよくなった。

 そんでファンクラブから逃げたんだ。」

 

 

 レイディーはレサリナスを去ったアルバートを嫌って自ら結成したファンクラブを退会したのではなかった。大切に思っていた自分の居場所を大切に思う気持ちがワクチンの影響で消えてしまっていたのだ。だからレイディーは自分がいるべき居場所を見失ってしまった。

 

 

レイディー「アタシは誰かと一緒にいるとな。

 そいつが楽しそうにしてるのを見ると嫉妬しちまうんだよ。

 アタシは好感を持つことが出来ねぇ。

 好感がねぇんならそいつに対しての思いやりを持つことも出来ねぇ。

 アタシは誰かと一緒にいるとそいつを無意識に気ずつけちまう。

 そうしてアタシはファンクラブがアタシが空気を悪くするせいで無くなるのが恐かった。

 だからカタスに全部丸投げしてレサリナスから逃げ出した。

 あそこにいると嫌でもファンクラブの奴等の顔があるからな。

 今のアタシじゃアイツらの場所には戻れねぇ。」

 

 

カオス「………」

 

 

レイディー「………世界が精霊に破壊されると言ったな。

 アタシにとっては世界も大事だが何よりアタシはアタシのいた世界が無くなるのは耐えられねぇ。

 アタシはいつか絶対にあの世界へと帰るんだ。

 アルバートがいなくなろうとも………既にアルバートが語り継がれるだけの伝説になろうともアイツらはアルバートやお前のような救世主になれる奴が現れるのを信じて待っている。

 アイツ等にはアタシが必要なんだよ。

 そんでアタシにもアイツ等が………。

 

 

 だからアタシはこの精霊の力を一旦放棄する。

 放棄してアタシは自分の心を元に戻す。

 今の体質だと力を手に入れた時の感情が欠落したままのアタシがデフォルトみたいだからな。

 放棄した後はどうやって治しゃいいのかまだ検討はついてないが今よりかはうんと薬とかも効きやすいだろうからアタシは力を棄てる。」

 

 

カオス「そういうことだったんですね………。

 レイディーさんの旅の目的が失った感情を取り戻すことだったなんて………。

 だからそんなに性格が悪いことばかり言ってるんですか?」

 

 

レイディー「…どうかな。

 前のアタシはもっと素直だった気がするがもう百年近くも前のことだから今のアタシが素なのかどうかも忘れちまった。

 早いとこアタシはアタシの気持ちを治したいよ。」

 

 

カオス「出来れば性格も治して欲しいですね。」

 

 

レイディー「………この野郎が。

 アタシに冗談なんか言ってもまともに返すことが出来ねぇって言ってるだろうが。」

 

 

カオス「フフフフ………。」

 

 

レイディー「………この話は終いだ。

 明日はバシバシ使ってやるから覚悟しておけ。」

 

 

 レイディーは廃れた夜の街の中をカオスに背を向けて歩いていった。就寝は一人でするようだ。

 

 

カオス「………明日は失敗は出来ない………。

 俺も早めに寝るか………。」

 

 

カーヤ「あの人と一緒にやればアローネさん達は助けられるの?」

 

 

 レイディーの目的を聞き出していた辺りから静かに話を聞いていたカーヤがカオスにそう訊いてくる。

 

 

カオス「………うん、

 大丈夫だよ。

 あの人に任せていればアローネ達は助かるから。」

 

 

カーヤ「そう………。」

 

 

 それから二人は適当な寝床を探して眠りについた。明日の夜まではアローネ達が殺されることはない。なら今は全力で体を休めることに努めるべきだからだ。アローネ達をイフリートに殺させはしない。そう誓って二人は荒廃した街で意識を闇へと沈めた………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ローダーン火山 東 深夜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラーゲッツ「………クヘヘヘ!

 奴等とうとうブルカーンの奴等に捕獲されたみてぇだな………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この時を待ってたぜ………!

 生まれ変わった俺の力でカオスも偽カオスも焼き鳥娘もブルカーンも何もかもを皆皆………焼き付くしてやる!!」


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