テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
ラーゲッツ「………は?
急に何を言い出すんだよ。
そりゃ何の冗談だ?」
自分のことを誰も知らない人達しかいない場所、そんな場所がどこにあるのか検討もつかない。今やマテオは大国だ。世界の西にダレイオス東にマテオと分けてダレイオスは九つの部族が集結して国を成しているがマテオはほぼバルツィエが上層部を牛耳っている。他国であるダレイオスでもバルツィエを知らぬ部族などありはしないだろう。もしそんな場所があるのだとしてもダレイオスはあり得ない。マテオも自国ということもありバルツィエの名は全土に広まっている。
アルバート「…ねぇのか?」
ラーゲッツ「真面目に訊いてるのかそれ?」
アルバート「あぁ。」
ラーゲッツ「………ん~………。
考えたことねぇなぁ。
そんなの。
大体逃げ出すって何だよ?
本家の職務はどうするんだ?」
アルバート「………」
ラーゲッツ「………何でそんなこと訊いてきたんだ?
お前どうした?
あんだけ黄色い声援を他方から浴びておきながら今になって怖じ気ずいたのか?
ラーゲッツはアルバートはそんなんじゃないと否定してくると思った。いつもの彼であったら常に強気で他人に弱音を見せたりなんかしなかった。
しかしこの時の彼はラーゲッツに心の隙を見せた。
アルバート「………そうだよ。
悪いかよ?」
ラーゲッツ「は………?」
アルバート「俺が家の当主のことだけじゃなく国の仕事も任されるようになってから俺はずっと今まで仕事を失敗したことなんて一度もねぇ。
俺は与えられた任務は全て完璧にこなす。
そのことを自慢にしてたし誇りだとも思ってた。」
ラーゲッツ「………ん?
自慢?」
弱気な発言をしたかと思いきや突然自分の経歴を振り返り自分が一度も任務を遂行できなかったことが無いと言う。失敗が多いラーゲッツとしては聞いていてあまり気のいい話ではない。
アルバート「お前はいいよなぁ………。
俺と違って任務に失敗したとして誰からも責められない。
失敗しても誰にも気にもされない………。」
ラーゲッん「ん?
喧嘩売ってる?」
アルバートの物言いに少し苛つきが灯る。二十年前から自分はどうも多少の悪口でも本気で受けとってしまう傾向にある。これ以上アルバートが自分を侮辱するようなことを言えば自分はこの怒りを抑えることは出来ないだろう。
アルバート「お前も一度味わえば分かるさ。
自分の実力以上に夢を持たれてそれに応えようと必死にもがいても他人ってのはもっともっと今よりも上を催促してくる。
俺のミスは他の奴等がするようなミスでも同等に扱ってもらえない。
俺のミスだけが期待の分も爆上がりしてやがんだ………。
しかも今では前と同じ様に仕事をこなすことすら出来ない。
前以上に何か特別なこともしなくちゃならない。
俺が月一で新しい何かをやるのが民衆の間じゃ当たり前になってんだ。
………こんな地獄が待ってるなんて思いもしなかったよ………。
………………どこか………俺の名前を知らない人達しかいない土地がどこかに無いのか………?
俺は………このままじゃ………もう………。」
そこまで言ってアルバートはラーゲッツの前から去っていった。一瞬沸点に達しそうになったラーゲッツだったが最後のアルバートの異状とも思える程の心の闇を垣間見て一気に冷えてしまった。
ラーゲッツ「………だから民衆なんかと仲良くすることなんて無理だったんだよ。
弱者ってのはいつも強者に守られておこぼれを貰う曲に時間が経てばそれが当たり前になって対等以上に張り合おうとしてくる。
自分達が守られているってことを忘れて命懸けで戦うのはいつも俺達バルツィエに押し付けて文句ばかり言ってくるんだ。
もうお前も真面目に仕事に取り組むことが間違ってるって気付いたろ?
努力するだけ無駄なんだよ。
いつか絶対に限界は来るんだ。
今お前が感じている絶望は精々調子に乗りまくったツケが回ってきた有名税ってやつだと思いな。
お前が望むような都合のいい場所なんてどこにも有りはしないんだよ。」
………それから暫くして世界にヴェノムが溢れ帰りアルバートが遠方任務に向かって消息を絶った。任務の内容はヴェノムとは関係ない村の近くのモンスターの群れの駆除だった。アルバート程の実力があれば彼がモンスターにやられる筈はないと思われたが消息を絶った周辺地域でヴェノムが目撃されてアルバートはウイルスによって死亡したと判断された。
自分のことを知らない人達しかいない場所………。アルバートが死亡してから彼が言った言葉を思い出したラーゲッツはアルバートが彼の望み通りの世界に旅立てたのだと後になって気付いた………。