テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
リスベルン山
ロベリア「そういえばアンタ名前は?」
ラーゲッツ「!
………俺は………。」
暫くロベリアからの叱責を受けた後でロベリアに名前を訊かれる。恐らく自身の名前はダレイオスでも知られていることだろう。
ラーゲッツ「………」
ロベリア「………?
どうしたの?」
ラーゲッツ「………俺の名前は………。」
ラーゲッツは自分の名前を言うか躊躇った。あまり自分のことをダレイオスの者には知られたくはなかったのだ。自分が名乗ってこれまでいい思いをしたことは無い。マテオではバルツィエと聞いて恐怖する者が大半を占めているがそれなりの地位がある者はラーゲッツの名前まで聞くと逆に嘲るような笑みの表情を浮かべる者達もいる。自分の地位は中途半端に高く、そして低い。ある枠組みで括られた中で最も下に位置する者は誰からもその位よりも下に見られてしまう。例え身分が自分よりも劣る者と話す時にもそうした対応をされたことが何度もあった。自分の預かり知らない場所で知られてしまうのは仕方ない。しかし今自分で自分の正体を明かすのは憚られる。
何か名乗らずに済む方法を模索しているとロベリアが………、
ロベリア「………まさか自分の名前が思い出せない………!?
記憶喪失!?」
ラーゲッツ「違ぇよ!!
ちゃんと言えるっつーの!
俺の名前はラ………。」
ロベリア「ラ………?」
ラーゲッツ「………………、
………俺の名前は
ついラーゲッツは自分の名前を逆さに呼んだ名称を名乗ってしまった。
ロベリア「ツッ………ゲーラ………?
聞いたことない名前………。
割りと最近生まれたバルツィエ………?」
ラーゲッツ「………そうだよ。
まだ成人してから
ロベリア「八十年………?
じゃあアンタ世界にヴェノムが現れた時期に生まれたの?
そりゃあ私も知らない筈だわ。
ヴェノムが現れてからマテオとダレイオスってあんまり争わなくなったからねぇ………。」
ラーゲッツ「………そうみたいだな。
俺もダレイオスのことはそんなに来たことは無いしな。」
直ぐにバレそうな嘘だと思ったが案外とすんなり受け入れられた。
ロベリア「それでツッゲーラは何で一人でこんなところにいるの?
バルツィエってだいたいダレイオスに来るときはいつも二人以上で行動していると思うけど?」
ラーゲッツ「そりゃあ………。」
咄嗟に上手い言い訳を思い付かない。下手に情報を差し出せばそこから次々と情報を聞き出す恐れがある。迂闊に質問に答える程ラーゲッツも愚かではない。ここは黙秘に徹すれば事を大事にはせずに………、
ロベリア「………もしかしてツッゲーラがやったの………?
ダレイオスの………西にあるゲダイアンを攻撃したのって………。」
ラーゲッツ「………は?
何言ってるんだよ?
ゲダイアンを攻撃だと?
俺は………俺達は何もしてねぇよ。
西の都市があんなふうになったのはお前達ダレイオス側の自爆だろ?」
何故かゲダイアンの爆発を自分のせいにされそうになり否定する。
ロベリア「はいぃ?
そっちこそ何言ってるの?
ダレイオスが何で自国の街を攻撃するの?
普通に考えてアンタ達マテオがやったとしか思えないじゃない。」
ラーゲッツ「生憎マテオはお前等の街には関与してねぇよ。
アレをやったのはお前達ダレイオス側の誰かだ。」
ロベリア「うちに自分達の街を壊すような人達はいないわ。
アンタが知らないだけで本当はバルツィエの他の誰かがゲダイアンに来てゲダイアンを焼き付くしたんじゃないの?」
ラーゲッツ「残念ながらそりゃ無理だな。
いくらバルツィエの能力が他より優れていたとしてもあの街を見てきた限りじゃたった一度の爆風であの街はあぁなってた。
今のバルツィエにあそこまでの出力が出せる術者はいねぇ。」
ロベリア「じゃあゲダイアンはどうしてあんなことになったの?」
ラーゲッツ「確実とは言い切れないがアレはダレイオス側のどこかの部族がカーラーン教会の奴等を葬るために起きた事件だ。
爆心地が丁度カーラーン教会の残骸が散らばってた辺りにあった。
直接見てきたからこれだけは間違いない。
狙われたのはカーラーン教会のハーフエルフでハーフエルフを疎ましく思った連中が纏めてハーフエルフを消し飛ばすために検証もしないで開発した術を発動させようとして暴発し自分達と街ごと消し飛ばしちまったんだよ。」
ロベリア「それ………本当なの………?
ゲダイアンが燃え上がったのってバルツィエがやったんじゃなくて九の部族のどこかの手によって起きたって………。
…しかも対象がカーラーン教会でハーフエルフを………?」
ラーゲッツ「そうとしか結論が導きだせないだろ。
爆発した場所の中心にカーラーン教会が建ってたんだ。
どうしてそんなところが爆発のど真ん中にあるんだ?
街を消し飛ばす目的で術を放つとしたらもっと別のところになるだろうぜ。
俺達だったらダレイオスの軍がいそうな場所を真っ先に狙う。
………狙ったとしても街全体にまで影響を及ぼすような術は持ってねぇがな。」
ロベリア「………まさかゲダイアンを攻撃したのが私達ダレイオス側のエルフだったなんて………。」
ラーゲッツ「俺達にカーラーン教会を攻撃する理由はねぇな。
カーラーン教会を目の敵にする奴等と言えばお前達ダレイオスのエルフ達だ。
カタストロフ公爵が中立を維持してマテオにもダレイオスにも教会を建ててんのは気にはなるが刃向かってこない奴等にまで一々バルツィエも絡んだりはしない。
やっぱりどう考えてもお前達ダレイオス側の仕業にしか思えねぇ。」
ロベリア「………そのゲダイアンを爆発した人達はどうなったの?」
ラーゲッツ「あれだけの規模の魔術を使ったんだ。
術者は先ず生きてはいねぇだろうよ。
マナを根こそぎ術に奪われて昇天してる筈だ。
術者は自分の術の影響を受けないとは言ってもあんだけの力を使ったんじゃとてもじゃねぇが生き残るのは難しい。
ドラゴンでさえも街一つ消すような術は使わねえ。
術者はそういった観点でも十中八九エルフだ。
エルフであるならもう死んでいる可能性が高い。
あんな爆発はもう起こらねぇよ。」
ロベリア「へぇ~………そんな詳しく分かるんだ………。
………もしかしてツッゲーラって………、
それを調べるためにダレイオスに来たの?」
ラーゲッツ「………」
気がつけばロベリアに洗いざらい全てを話していた。自分が何故ダレイオスに来たのか、ダレイオスに来て何を調べていたのか自分から話してしまっていた。
ラーゲッツ「(何やってんだ俺は………。
さっき自分で言わないように戒めたところじゃねぇか………。)」
自分の犯してしまった過ちを悔いるラーゲッツ。助けられたこともあってついロベリアに訊かれるがままに答えていってしまっていた。そんな自分を後で殴り飛ばしてやろうと予定するラーゲッツであった………。