テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
リスベルン山 山小屋 七日目
ロベリア「ねぇ………、
最近何の準備をしてるの?」
ラーゲッツ「何の準備?
そんなもんここを出る準備に決まってんだろ。」
ロベリア「ここを出る?
迎えが来るってこと?」
ラーゲッツ「迎えは………まだ来ねぇよ。
俺は俺のやるべきことを終えてからだ。」
ロベリア「そのやるべきことって何なの?
この間はカーラーン教会のことを聞いて急に高笑いしてたけどカーラーン教会に行くんだよね?
もしかして船で帰ろうとしてるの?」
ラーゲッツ「お前には関係ねぇだろ。
ってかいつまでここに通い続けるつもりだ。
俺はお前の要望は断っただろうが。」
ロベリア「そうだけどここまで一緒にいたら気になるじゃん!
いい加減教えてよ!」
ラーゲッツ「禁則事項だ。
敵側の奴には教えられん。」
ロベリア「もう!
本当に秘密ばっかりだね!」
ラーゲッツ「お前が言えねぇことばっかり訊いてくるからだろ。」
ラーゲッツが不時着してから七日。ロベリアは毎日欠かすことなくこの山小屋へと通い詰めている。今のところ飽きる様子は無さそうだ。
ロベリア「………ねぇ、
ツッゲーラカーラーン教会に行くつもりなの?」
ラーゲッツ「怪我が治ったらな。
それまではここで療養させてもらう予定だ。」
ロベリア「じゃあまだ当分はここにいるんだね?」
ラーゲッツ「そうだな。
当分はここにいるな。
ここで怪我が治るのを待つだけだ。
だからここに来ても退屈するだけだぞ。
もうここに来たとしても何も面白いもんはねぇし来ても突然いなくなってるかも知れねぇぜ?
お前もわざわざ足を運んでまで俺が不在だったら帰るのが億劫になるだろ?
そろそろここに通うのは止めてフリューゲルでじっとしてたらどうだ?」
ロベリア「そんなの私の勝手でしょ?
私はここに来たいから来てるだけだし。」
ラーゲッツ「一々俺の様子なんか見に来るなよ。
お前家の奴にここになんて言って出てきてるんだ?」
ロベリア「え?
特に何も言ってないけど?」
ラーゲッツ「…俺がここにいるのが知られたら非常にマズイ状況なんだがそんなところへお前がノコノコと何日も続けてやって来てたら流石に不審に思うだろ。
もうお前ここに来るなよ。
お前がここに来ると他のフリンク族までやって来ちまうだろうが。」
ロベリア「それは………そうだね………。
アハハ………。」
ラーゲッツ「笑い事じゃねぇんだけどな。」
ロベリアの様子からこの山小屋に来るのを止める気は無さそうだ。そこまで彼女のダレイオスを脱したい気持ちが高いということなのだが。
ラーゲッツ「…何がそんなに不満なんだ?
ダレイオスの中だけでも十分だろ?
お前がマテオに行きたいのは沢山の料理を食ってみたいからなんだろ?
確かにマテオには幅広い数のレシピはあるが同盟組んでる内はダレイオスでも他の部族の飯にもありつける筈だ。
マテオの飯を知る前にダレイオスの飯を制覇するんだな。」
ロベリア「…残念だけどそれは無理。
同盟もそんなに強い結び付きじゃないの。
他の部族との交流なんて滅多に無いしそういうのは族長だけ。
私なんて一度も他の部族の人達と話したこともないもん。」
ロベリアの顔を影が指した。その顔からは今の環境に相当な不満を抱いている様子が窺える。
ロベリア「………ダレイオスはね。
言ったと思うけど仲間意識がとても強いの。
強すぎて自分達の文化を認めない、新しいことをしようとしない。
どこも同じ。
古い文化を継承することを第一に考えてて今の生活を変えようとしないの。
自分達がすべきことは今の生活をこれから先も変えずに送っていくだけ。
あのフリューゲルにいるとよく分かる。
私はあの村の歯車の一つでしかないんだよ………。」
ラーゲッツ「………」
ロベリア「………だから変わりたいの!
多分私みたいに今の生活に変化が欲しいって思ってる人は沢山いると思う!
長くダレイオスの中でもマテオとも戦争をし過ぎて感覚がおかしくなってるんだよ皆!
誰かが何か新しいことをしないと何も世界は変わらないんだよ!
私がマテオに行って色んなものを見てきてそれを知ってフリューゲルの皆に私が何を見てきたか教えたいの!
部族とか戦争とかももう終わらせるべきなんだよ!
私達は三万年前から何も進んでない!
何も進歩してない!
その間に歩き出してたのはマテオだけなんだってダレイオスの皆に伝えたい!
そのために私は絶対にマテオに渡りたいんだよ!」
ロベリアの熱意は本物だった。本気でマテオに向かいマテオの文化を見聞きしてそれをダレイオスに広めると言うのだ。
ラーゲッツ「…お前は戦争を終わらせるためにマテオに行きたいのか?」
ロベリア「うん!」
ラーゲッツ「…そう簡単な話じゃないぞ?
お前みたいな弱小部族が一人が足掻いたところで何がどうなるってんだ?
お前一人が粋がったところで世界はそう変えられるもんじゃねぇ。
下手すればダレイオスには戻ってこれねぇどころかマテオで命を落とすこともあり得る。
それでもマテオに行きたいのか?」
ロベリア「行く!
絶対に私はマテオに行くよ!
例えどんな目にあっても私はマテオに行きたい!」
ラーゲッツ「………生意気なこと言ってんじゃねぇよ。
フリンク族ごときが戦争を止めさせられる訳ねぇだろうが。」
ロベリア「何よ!?
私には無理だって言いたいの!?」
ラーゲッツ「無理だって言わざるしかねぇよ。
お前戦闘は出来るのか?」
ロベリア「戦闘は………。」
ラーゲッツ「出来ねぇんだろ?
それじゃやっぱりお前をマテオには連れてけねぇなぁ。」
ロベリア「戦えなくたって出来ることだってあるでしょ!?
話さえ出来れば人は皆分かり合え「この世界で人に話を聞かせたけりゃそれなりに立場と力が必要なんだよ。」」
ラーゲッツ「最低でも自分の身を守れる力ぐらいは必要だ。
交渉の場なんてのは対等な力関係にある奴等が開くもんだ。
弱者の要求なんて誰も耳を貸しはしねぇよ。」
ロベリア「弱者って………。
戦争を終わらせたいのに力なんて必要あるの?」
ラーゲッツ「あるに決まってんだろうが。
そもそも力のある奴と無い奴とでは戦争になんかなりゃしねぇ。
一方的に全てを奪われるだけの蹂躙だ。
そこに人と人との会話が成り立つ余地はねぇんだ。
そしてお前には力が無い。
力が無ければどうなるかは言わずとも分かるな?」
ロベリア「………」
ラーゲッツ「ダレイオスとマテオの戦争を止めさせたい………。
志は立派だな。
だが志だけじゃ何も出来ない。
お前に足りないのはそれを実行に移せるだけの実力が備わってない。
そんなんじゃマテオに連れていっても何の意味もねぇ。
お前は先ず強さを身に付けろ。
俺が特別に講師してやる。」
ロベリア「………………え?」
ラーゲッツ「聞こえなかったのか?
俺がお前に特訓してやるって言ってるんだ。
今の状態じゃお前をとても連れて歩くことなんて出来ん。
だからお前が強くなれ。
強くなって一人でどこででも生きていけるだけの力を身に付けてみろ。
俺の傷が治るまでの間だけだが俺もただ治るのを待ってるだけってのもつまらねぇ。
俺がお前を鍛えてやるよ。」
ロベリア「いいの………?
本当に………?
強くなれたらツッゲーラは私をマテオに連れていってくれるの………?」
ラーゲッツ「それはお前次第だがな。
どうだ?
自分がどれ程強くなれるか試してみるか?
強くなれたらマテオへの同行を許可してやるよ。」
ロベリア「うん!
私やるよ!
ツッゲーラに心配されることもないくらい強くなるよ。
それでツッゲーラと一緒にマテオに行く!」
ラーゲッツ「………いい返事だ。
手加減はしねぇぞ?
傷が治るのは大体二ヶ月くらいだろう。
それまでに俺の目に叶わなければこの話は無かったことにするからな。」
こうしてラーゲッツは体の傷が癒えるまでの間ロベリアを鍛えることにした。ラーゲッツ自身が受けた偵察の任務は半年という猶予がある。つまり半年はマテオからラーゲッツを捜索に来る者はいないということだ。その半年の間にカーラーン教会に近付き船に潜り込めばいいのである。
ラーゲッツは気紛れではあったが暇潰しにロベリアへと自分がしてきた修業を施すことにした………。