テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
ランドールに飲みに連れていかれてから一ヶ月ラーゲッツは度々同じ店や別の店へと足を運んでいた。ランドールが一緒の時もあればそうでない時もあった。ランドールは自分を出し抜こうとさえしなければ結構面倒見のいい性格だった。要は自分よりも確実に格下しか可愛がらない質なのである。
ランドール「おらラーゲッツ!
もう一件行こうぜ!」
ラーゲッツ「ハハハ!
そうだな!
まだまだ飲み足りねぇなぁ!」
すっかりとランドールのノリに流されるようになってしまったラーゲッツ。レサリナスに帰ってきてから修練場にも通わなくなり剣を握るのも任務の時だけ。ロベリアと一緒にいた時は時折モンスターと遭遇していたためロベリアのいないところで剣の稽古だけはしていたがそれももうしなくなった。
ランドール「おし!
今日はお前を俺が見付けた秘蔵のところに連れて行ってやる!」
ラーゲッツ「秘蔵?
何だよそりゃ?
酒は飲めるのか?」
ランドール「酒か?
飲めたり飲めなかったりするが一応は部屋には完備しとくように言ってあるから心配すんな。
これからお前を天国に連れて行ってやるぜ?」
ラーゲッツ「天国だぁ?
お前天国の行き方知ってるのかよ?」
ランドール「本物の天国の行き方は知らねぇがまさに天国みたいなところではあるぜ?
どうだ?
お前にそこへ行く勇気はあるのか?」
ラーゲッツ「舐めんなよ?
それくれぇあるに決まってんだろ!」
ランドール「よし!
よく言った!
それじゃあお前を案内してやるよ!
この俺様についてきやがれ!」
ラーゲッツ「おうよぉ!!」
ラーゲッツが連れていかれたのは娼婦の店だった。金で体を売る女性が働く大人だけの店だ。
ラーゲッツ「おっ、おいここは………。」
ランドール「俺も気が向いた時しか来ねぇんだがな。
当たり外れが多くてしょっちゅう外ればっかりと当たった時は暫く行かねぇ。
けど最近新人が入ったとかで評判らしいからな。
お前こういうところ来たことねぇだろ?」
ラーゲッツ「俺は………こういう金払って女とやるのは………。」
ランドール「かぁー!
だからお前は真面目過ぎるんだって!
男ならたまにはハメを外すくらいしとかねぇと瞑潰れるぞ!?」
ラーゲッツ「ハメを外すって言うなら今でも………。」
ランドール「今お前フリーなんだろ?
何を気兼ねする必要があるってんだ?
お前にはこういう店行って悪いと思う相手でもいんのか?」
ラーゲッツ「………!」
一瞬ラーゲッツはロベリアのことを思い出す。ロベリアの顔を思い出して自分が彼女を裏切るようなことをして彼女が嘆く姿を想像するが………、
ラーゲッツ「んな奴いるかよ!
いいじゃねぇか!
行ってやるよ!
それでいいんだろ!」
ランドール「だろ!?
そうこなくっちゃいけねぇ!
今日は朝までコース行ってみっかぁ!!」
ラーゲッツは欲望に忠実になることにした。心の奥底に写る彼女の姿は水面の波紋のように揺らめいて見えなくなっていった。
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フェデール「………なぁ、
最近全然修練場に来ないがまだ調子が戻らないのか………?」
ある日フェデールから呼び出されてそんなことを言われる。
ラーゲッツ「あぁ?
あぁ………まだちょっと気分が乗らなくてな。」
フェデール「…ここ数日様子を伺っていたがラーゲッツお前ランドールと一緒によくいるみたいじゃないか。」
ラーゲッツ「まぁ………そうだな。」
フェデール「いつの間にそんなに仲良くなったんだ?
前までお前達はそんなに仲良くはなかったじゃないか。
犬猿の仲って言うか顔を見合わせればすぐにケンカするほどだったのに………。」
ラーゲッツ「別にどうだっていいだろ?
ケンカしてたんならしなくなって良くなったってことじゃねぇか。
いい傾向だろ?」
フェデール「顔を見合わせる度にケンカを仲裁しなくていいのはいいんだがお前が修練場に来なくなりだしてランドールも前みたいにお前に対抗意識をもやさなくなった。
………いつになったらお前は修練場に戻るんだ?」
ラーゲッツ「元々好きにやってたことだ。
お前にとやかく言われることじゃねぇ。
もうどう頑張っても俺が上に上れることはねぇんだからな。
最低限騎士団の演習だけで十分だろ。」
フェデール「十分って………。
………考え直せ。
今ならまだこの間の結果のことも俺が急ぎすぎてお前が本調子じゃなかったって言い分けが通る。
また俺が話をつけてランドール達よりも上に上がれるようにしてやるから。」
ラーゲッツ「いいっての。
俺は今のままで満足してんだよ。
前みたいに剣だけに生きるのは辞めたんだ。
もう俺は真面目に剣なんて」ガッ!
フェデール「ダレイオスに飛び立つ以前のお前はどこに行ったんだよッッ!!?」
フェデールが胸ぐらに掴みかかってきて叫ぶ。
フェデール「一体どうしたんだ!?
ダレイオスで何があった!?
何があったらこんな別人のように変わり果てるんだ!?
前までのお前だったらこんなふしだらな生活とは程遠かったじゃないか!!
それが何でこんなことになるんだ!!
何でお前は………!!
………こんな熱が冷めてしまったかのように情熱を失ってしまうんだ………!」
フェデールは口では怒りを顕にしているがその目はどこか悲し気に涙を訴えていた。
ラーゲッツ「…うっせぇな………。
俺は始めから何も変わっちゃいねぇよ………。」
フェデール「………何?」
ラーゲッツ「お前が勝手に俺に理想を押し付けてただけのことだろ?
俺がどうしようがお前にとやかく言われる筋合いは無い。」
フェデール「ラーゲッツ!!
目を覚ませ!!
変わってない筈がないだろ!?
お前は八十年も剣を振り続けてきたんだぞ!?
それが何でここで諦めるんだよ!?
まだお前には希望はあ「希望なんて要らねぇよ。」」
ラーゲッツ「俺が本当に欲しかったものは出世とかじゃないんだ………。
俺はお前になりたかった………。
お前のような眩しい奴に俺はなりたかった………。
………でも俺にはそれが無理だってことをやっと分かったんだ………。
八十年も俺は下らない幻想にしがみつき続けてきた。
俺はお前のようにはなれない。」
フェデール「ラーゲッツ………!」
ラーゲッツ「………話はそれだけか?
だったら俺は行くぜ。
あばよ。」
フェデール「………もうお前が帰ってくることはないんだな………。
俺の知るラーゲッツはダレイオスで死んでしまったんだな………。」
それから時間を空けてフェデールと会った時彼はラーゲッツに対してユーラスやランドールに接するように嘲笑や挑発、建前などの言葉を並べ立てるようになりフェデールから本心からくる言葉を聞くことは無くなった。
ラーゲッツ「………そういやアイツからアイツが敵視する相手が誰なのか聞けずじまいだったな………。
………ん?」
「うわっ!
凄い大きな屋敷だな!
どんな奴が住んでるんだここ?」
「知らねぇのか?
この国で一番の権力者の家バルツィエがここに住んでるんだよ。」
「バルツィエ!?
ここが!?」
「あぁそうだよ。」
「はぁ~………!
やっぱすげぇな!
こんなでかい屋敷なんか建ててまるで城みたいじゃねぇか!」
「バルツィエならこれくらい普通だけどな。」
「こんなもん建てられるくらいなら大概のものは手に入りそうだな。」
「そうなんだろうな。
欲しいと思ったら多分手に入らないものなんて無いんじゃないか?」
「違ぇねぇな。」
屋敷の近くにいた二人組の男達がそんな会話をしてるかのがラーゲッツの耳に入ってきた。会話からしてどこか違う街の住人なのだろう。
ラーゲッツ「………欲しければ何でも手に入るか………。
………俺には手に入れられたものなんて何一つないけどな………。」