テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
カオス「………」
アレックス「兄と私が作り上げてきたものを何故壊すのかと訊いたな。
それは少し違う。
兄は
兄一人がそれまでのバルツィエのイメージを塗り替えていった。
兄は偉大な人だった。
たった一人でバルツィエと民との間に流れていた険悪な空気を変えてしまった。
そんな兄が私は誇らしかった。
兄がいればその先どんなことがあろうとも乗り越えていけるとそう私は信じていた。
兄の支えになれるなら私は何もいらなかった。
兄が側にいてくれたらそれだけでいい。
そう思っていたのだ。
それなのにアルバートは私に何も言わず突然私達の前から姿を消した。
それまでにあいつが作り上げてきたもの全てを捨ててあの愚兄は逃げた。
お前の祖父はその程度の男だだったということだ。
………始めはアルバートがモンスターの群れに襲われ行方が分からなくなったと聞かされた時は耳を疑った。
当時はヴェノムという正体不明の生物が現れだし兄はヴェノムにやられたのだと思った。
だが誰よりも強く逞しいあの兄がヴェノムなぞに遅れをとるとは到底思えなかった。
私はダリントン達と共に兄が消えたとされた現場に向かい兄を数ヵ月に渡り捜索した。
………それでも兄は結局見付からなかった。
それから叔父上達も兄は死んだものと見なし兄の役目を私が引き継ぐこととなった。
バルツィエ当主、騎士団長と多忙で責任のかかる仕事を任された私は兄のことを考える暇もなく職務に全うした。
せめて兄が不在である間は私が兄の代わりになろうと懸命に体を動かした。
もしかしたらその内兄が帰ってくるのではないかと淡い期待を抱きながらも私は兄の代行を勤めた………。
………そこからの日々は私にとっては耐え難い
カオス「地獄のような日々………?」
祖父アルバートがレサリナスを去ってからバルツィエは人との付き合い方をアルバートより以前のものに戻した。カオス達は当主となったアレックスが昔からのバルツィエと同じ考えを持つ人物だったからそうなったのだと思っていた。
アレックス「………
お前は………人は
カオス「自分以外の人物に成り代わる………?」
アレックス「例えばだ………。
お前がこれまで出会ってきた者達の誰かが急にそこからいなくなったとしてその者がそれまでやってきたことを誰かが引き継がなければならない。
お前にはその者の代わりを務めることが出来るか?」
カオス「………その人がどんなことをしていたかにもよりますけどいきなりは………無理ですね………。
少しずつその人がやってたことを覚えていって………………でも完璧に出きるかどうかは………。」
アレックス「………そうだな。
それが普通だ。
それが当然のことなのだ。
人は誰かと同じにはなれない。
他人が積み重ねてきた経験を人はそう一朝一夕で真似することは出来ない。
人はそれぞれ歩んできた人生が違うのだ。
人によっては得意なこと苦手なこともある。
私に出来て他の者には出来ないこと、他の者に出来て私には出来ないことも必ずある。
人として当たり前にそれはあるのだ。
………それが私には許されないことだったのだ………。」
カオス「!」
アレックス「重ねて言うが兄は偉大だった。
兄がレサリナスに在住していた頃は兄は何にでも挑戦しその度に様々な伝説を作った。
バルツィエの歴史の中でも兄ほど名がなんです残る偉業を為し遂げ続けてきたものはいなかった。
そんな兄アルバートの後任に選ばれた私は兄の名誉に恥じぬよう兄のやって来た全てを引き継ぎマテオのために身を粉にして働いてきた。
………が私では駄目だった………。
大衆が求めていたのは兄だけだった。
兄と同じことをしたところで誰にも見向きもされなかった。
私では何をやっても兄の二番煎じにしかならなかったのだ。
兄と私とでは人を惹き付けるだけの魅力に天と地ほどの差があった。
力では追い付けたとしても私には人を惹き付けるだけの能力がなかった。
失踪してからも兄の名声はずっとマテオ中に残り続けていた。
兄が行方不明になったことで兄の残した伝説は一人歩きをしていきいつしか誰も兄の場所へは到達し得ないような領域にまで上っていった………。
………こんな惨めで理不尽なことが他にあるか!!?」
アレックスは激しく言い放つ。アルバートへの憎しみの念を。
アレックス「奴は百年前にマテオから!国の責務から逃げ出した男だぞ!?
百年前にいなくなった敗残兵にいつまで私は引き摺られなければならないのだ!?
百年間何もしてこなかったアイツと何故私は随時比較されなければならないのだ!!
私はアイツとは違う!!
アイツのように逃げたりなどしていない!
それなのに大衆は常に私と兄とを比較して私に落胆する!
どうしてだ!?
どうしてアイツはまだマテオでも
大公となってもまだ私は兄の弟でしか扱われないのか!!?」
ダンッ!!
アレックスは思いっきり剣を地に振り下ろす。
アレックス「………この先のいつの日かウルゴスは必ずこの世界を破滅へと導く日がやってくる。
ヴェノムでも精霊でもない………ウルゴスこそがここデリス=カーラーンに災いをもたらす。
その時になって死んだ男にすがってなんになると言うのだ?
この場にいない男の影を追ったとして何がどう変わるというのだ?
………何も変わりはしないさ。
所詮は英雄と呼ばれていたのも過去の話だ。
死んでいった者にこの世界を救うことは出来ない。
救うのはこの私だ。
私がこのデリス=カーラーンをウルゴスの魔の手から守ってみせる。
兄の忘れ形見である貴様はバルツィエには不要だ。
………ここで、」
バシュッ!!
アレックスがカオスへと迫る。そして倒れていったアローネ達のようにカオスを………、
ガキィィィィィンッ!!!
アレックス「………!」
アレックスの剣が初めて止められた。カオスはアレックスの剣を受け止めた。
カオス「………おじいちゃんが貴方にそこまで迷惑をかけていたことは代わりに俺が謝ります。
すみませんでした。」
アレックス「…今更そんな謝罪などには何の意味もない。
私は貴様を倒しヴェノムウイルスを世界に放出することに変更はないのだからな。」
カオス「…そうですね。
でも貴方には謝っておきたかったんです。
おじいちゃんのせいでそんな辛い目にあってきた貴方にもうおじいちゃんは謝ったりすることは出来ないから………。」
アレックス「フンッ………、
馬鹿馬鹿しい。
謝ったところでこの百年の私が受けた屈辱の日々は消えはしない。」
カオス「…俺にとってはおじいちゃんはズボラでマイペースなところもあったけどおじいちゃんがそこまでこの国に必要な人だったなんて知りませんでした。
レイディーさんからもおじいちゃんのことは聞いていましたけど俺達は貴方がおじいちゃんのことを本当は邪魔に思ってたんじゃないかと疑っていました。
………でも本当はその逆だったんですね。
貴方が本当は俺と同じくらいおじいちゃんのことが好きだったんだ。」
ガキィンッ!!
アレックス「…!」
カオスは剣を振りアレックスを押し返す。
カオス「…ごめんなさい。
おじいちゃんが死んだのは全部俺が悪いんです。
おじいちゃんが死ぬ切っ掛けを作ったのは俺だから。」
アレックス「………それがどうした。
どうせ奴は生きていたとしても私の元に帰ってくることはなかっただろう。
それなら生きていようと死んでいたようと同じことだ。」
カオス「…だとしても貴方とおじいちゃんがもう一度会える機会を奪ったのは俺です。
俺のせいでおじいちゃんは貴方のところに帰れなくなった。
………だから俺は、
貴方を止めて見せます。
おじいちゃんのせいで貴方がヴェノムを使って世界を滅ぼそうとするなら俺が止めなくちゃいけない。
おじいちゃんを好きだった貴方にそんなことはさせちゃいけないんだ。」