テイルズオブフィナーレ ~未来を形作るRPG~ 作:モニカルビリッジ
ウインドラとの一件で街中を追われたカオスはカーラーン教会のカタスティアのもとへと辿り着く。
そこで暫く教会で身を隠すことになり…。
王都レサリナス 東北部 カーラーン教会 数日後
「………よっこらせッと。
こんなもんでいいですか?」ガタッ
「それでいいわよ。
人手があると助かるわね。
こうして模様替えまで出来ちゃうんだから。」
「お世話になっている身ですからこれくらい当然ですよ。」
「カオスさんは紳士的でいいわね。
こんな息子がいたら私も楽しくなるわ。」
「………有り難うございます。」
「それじゃあさっさと済ませちゃいましょうか。」
「はい。」
「ふぅ………。」
「御苦労様、お茶でもどうかしら?」
「…いただきます。」
「では入れてくるわね。
少し待っていて。」
「はい…。」
「はい、紅茶でよろしかったかしら?
今これしかなかったのを忘れていたわ。」
「大丈夫です。」
「そう。」カタッ
「「………」」
「カオスさんは何か思い詰めてることでもあるのかしら?」
「え?」
「そんな顔をしているわよ?
ここに来てからそんな顔ばかりしてるから私も気になってたのよ。」
「………ここに匿ってもらっているのは助かりますが本当にこのままでいいのかなって…。」
「カオスさんは教会がお嫌いかしら?」
「そんなことはありません。
ここには善良な方が集まってきますからそれを見て俺もここの人達を見習わなければならないなって思いますし。」
「それでは別のことで悩んでいるのかしら?」
「………俺は………昔たくさん人を死なせたから、
誰かに迷惑をかけた分これからの人生を誰かの助けになれる人生にしようって決めてました。
けどアローネに出会って思い付きで旅をしてきたけど俺がやって来たことなんてモンスターと戦ってたくらいで………。
アローネやタレスと上手くやって来たつもりだったけど俺は………
無責任に出来ないことを引き受けて、二人に迷惑をかけて…
自分ではその問題を解決できなくて………
無力感が心の中を駆け巡るようで………
もうこの先どうしたらいいのか………。」
「大分堪えているようね。
この街の人達に追い回されたことが…。
それとも…ウインドラのことかしら?」
「…はい。」
「人の罪というものはそう簡単には消えないわよね。
罪を犯した本人がこうして後悔の念に苛まれているのですもの。
ウインドラが貴方を許していなかったのはそれほどのことだったのでしょうね。」
「そうですね………」
「一体何があったのか私にも話してもらえるかしら?
貴方とウインドラの間で起こったことを。」
「あまり聞いてても楽しい話ではないですよ…。」
「これは別に興味本意ではないわ。
私が知るウインドラのイメージと貴方への報復………と呼んでいいのかしら?
私の中の彼への印象がなんだか結び付かないわ。
とにかく彼の何がこの事態を引き起こしたのかを知りたいのよ。」
「………」
「………そう言うことだったの………。
貴方達の村でそんなことが………。」
「それ以来ウインドラとは会っていなくて………。
この間会ったのが嬉しすぎて昔のことがすっかり頭から抜けていました…。
俺はミストの人達に散々なことを仕出かしたというのに………。
ウインドラだけは俺のことを無条件に許してくれていたと勘違いしていたんです。
ウインドラもあの時のミストの………被害者だってことを忘れていたなんて………。
馬鹿なんです俺は…。」
「カオスさん………。」
ギュッ
「…!」
「貴方は………よく今日この日まで一人で頑張ってこれたわね。
偉いわ。」ナデナデ
「え?
あの…?」
「貴方だってその時大切な人を失ったというのに…、
今まで一人で孤独を抱えながら戦ってきたのでしょう?
十歳の少年がそんな考えに至れるなんて大したものだわ。
世の中には人を殺めても何とも思わない人達がいるというのに…。
貴方は自らの罪を真摯に受け止め償おうと懸命に頑張っている…。
カオスさん程罪と向き合える人は見たことがないわ。」
「………俺は取り返しのつかないことをしてしまったんだから当然です。
そこに子供だの大人だのは関係ありませんよ。」
「タレスさんもだけど貴方も少し早熟なのかしらね。
誰も頼れなかった独りの環境がそうさせてしまったのでしょう。
アローネは貴方のことを最初に話したときは落ち着いた大人の男性のような人だと思ってたらしいけど接していくうちにその認識が全く逆のものだったと言っていたわ。」
「………」
「カオスさんは………
誰かに甘えたことはあるのかしら?」
「………甘える…?」
「ご両親は既に他界なさっていて幼い頃からアルバートと二人っきり………。
そのアルバートも亡くなってしまった………。
アルバート以外で貴方が心の拠り所にしていたウインドラとそのミシガンという子も疎遠になってしまって………。
貴方は心休まる環境とは程遠い人生をおくっている…。
貴方の話を聞いているととてもまともな人の精神が耐えられるような人生ではないわ。」
「それは………俺がまともじゃないってことですか?
殺生石に触れてからヴェノムに触れても感染もしない俺が化け物だって………。」
「………そう卑屈になるのは止しなさい。
私はそうは言っていないわよ。
私が言いたかったのはカオスさん、貴方が今まで出会ってきた人の中で誰よりも強い人だってことよ。」
「俺が………強い?」
「私はそう感じたわ。
人はね、一人になるとそれはもう弱くなる生き物なのよ。
仲間がいると強気にはなるけど一人になった途端それまで出来ていたことが出来なくなるものなの。
人が本当に力を発揮できるのは誰かがいてくれるから、
その誰かがいなくなると人はなんの力も出せなくなるわ。
カオスさんはそんな孤独な環境におかれながらも一人で戦い続けてきた。
ミストの人達を陰ながら支えてきた。
その努力を私は賞賛するわ。」
「別にそんな凄いことはしてないですよ…。
俺のせいで村が襲われたんですから、
俺が村のために戦わないといけなかったんです。」
「そう考えられることが凄いのよ。
普通の人ならその力を利用して善からぬことを画策するもの…。
今のバルツィエのようにね。
貴方は見返りもなしにひたすら人のために使おうとする………。
最もその心の内は罪を犯したことへの償いなどではないみたいですがね。」
「!」
「そこだけはまだ幼さが残っているようね。
アローネが言っていたのでしょう?
顕示から来るものだと…。」
「………そうですね。
旅を始めたときにアローネに言われました…。」
「子供は叱られてでも構ってほしいというような子がいます。
貴方の場合だと悪戯ではなく人助けでそうしているのでしょう?
素直に甘えられないから人助けをして人に構ってほしい…。
違うかしら?」
「………どうしてそこまで分かるんですか?」
「この数日観察していれば自然と見えてきたわ。」
「………そこまで分かりやすいのかな俺。」
「さぁねぇ…、
それは貴方を見ていた人だけにしか分からないと思うわ。
それに気付いたのはアローネと私だけでしょう?」
「………そうですね。」
「貴方の在り方は純粋で真っ直ぐなもの………
それこそが貴方の強み。
しかしそれが貴方の弱いところでもありますよ。
人に頼らずに力を発揮出来ること。
けれども貴方が力を発揮するのは誰かがいてこそ…。
カオスさん、貴方はもう少し自信を持ちなさい。
貴方に救われた人は必ずいるわ。
現にあの二人がそうでしょう?
救えなかった人は貴方一人が抱え込む必要なんてないの。
報われないこともこの世の中には多くあるわ。
それよりも先ず貴方は貴方を救ってあげなさい。」