春。折しも日本の学校は新学期を迎え、エイミーも小学校に編入した。一方通学が困難と判断されたベスの勉強は毎週末に家庭教師の淳貴に見てもらい、平日はミチルや研究所のスタッフが交代で教える事になった。
「あの才賀先生、ベスはいかがでしょうか?」ある土曜日授業が終わり、メアリーは帰りがけの淳貴にベスの学力について尋ねる。
「ええ、問題ないです。理解も早いし、授業態度もいい。生徒としては満点といえます、ただ…」
「と、おっしゃいますと?」
「勉強には直接関係ないんですが、性格がやや内向的なのが気になります。って僕がいう事じゃありませんね、では失礼します」まだ午後の早い時間だが淳貴は真空管アンプの専門店でのバイトもあるので帰路につく。
一方義務教育は終了しているメグとジョオは高校編入を薦められた、メグの方は結局断ったがジョオは編入する事に決めた。
「日本語ってややこしいわねえ」高校に通いだして一ヶ月、古文の授業が終わった後ため息を吐くジョオ。
「アメリカには英語の古文とかないの?」隣の席に座るカナが尋ねる、彼女は編入して最初に仲良くなった友達だ。
「国自体に歴史がないもの、イギリスにはあるかもしれないけど」ジョオは両手を頭の後ろに回して、椅子にもたれながら答える。社交界の存在しない日本ではこんな姿を咎めるクラスメートはいない、その点では気楽な学生生活を過ごせていた。
~ある日のジョオと淳貴の会話(エイミー視点)~
ジョオと私は日本の学校に通う事になった。メグとジョオの二人にその話がきたのを知った時、私の中ではメグはともかくジョオは絶対行きたがらないと思っていた。そのジョオが学校へ行くと言い出したのは意外だった、実はベスの家庭教師に薦められたらしい。
「学校へ行くなんて嫌、それだったら部屋で小説を書いていたいのよ」
「小説家を目指すなら人付き合いも大事だと思う」
「必要ないわ、アイディアは頭の中にあるもの」原稿用紙にペンを走らせるジョオに淳貴は背中越しにこう言った。
「手書き?パソコンは使わないのか」
「あんな高いモノ買えないわよ、使い方もサッパリだし。それよりこれを早く書き上げて売り込みに行かなきゃ」
「ここには幾らでもあるだろ?俺の高校でも無料で使わせてくれるし。ネット掲載すれば素人でも多くの人に読んでもらえる機会も増える」ジョオは『ただでパソコンが使える』という話に釣られて才賀先生と同じ高校に通う事にした、全く!動機が不純なんだから。
~視点なし~
北軍が所属する『合衆国』大統領リンカーンと南軍を指揮する『連合国』のデイヴィス大統領が会談する事になった。恐竜帝国が横槍を入れてきたせいで現在両軍は冷戦状態にある、合衆国としてはアメリカ人同士手に手を取り合いたいと願っているが連合国からすればそうはいかない。終戦になれば奴隷も全て解放しなければならないし、連合国も解散させられて合衆国に吸収されてしまう。その為何としても恐竜帝国の力を借りたい、ネイサン一派は既にゴールへ使者を送っているが帰ってくる者は当然いない。
会談は平行線を辿るばかりで少しも先に進まない、やがて時間が過ぎて終了となりリンカーンは連合国の息のかかったホテルに宿泊する事になった。
「やはりアメリカ内部はボロボロのようだな、始末した使者の言う通りだったぜ」
「けどヤツを生かしておくのはマズい、今夜中に殺ってしまおう」二人の恐竜兵士が下卑た笑いを浮かべながらリンカーン暗殺を企てていた、ホテルに着くとまっすぐ彼の部屋を目指す。
翌朝、目覚めたリンカーンは自分の側にトカゲの骸が転がっているのを見て仰天した。おそらく寝込みを襲われるところだったのだろう、ガタガタ震えながらも命が助かったので一安心したリンカーン。だが一体誰が?しかも入ってきたのは二人、もう一人はどこへ?
その頃、指令部では光一が一番に起きて竜馬と隼人の朝食を作る準備を始めようとしていた。まずは今日の天気を確認しようとドアを開けて外に出る、すると一人の恐竜兵士が拘束されて地面に転がされていた。
「君達ではないのかね?」この事態に気づいた北軍の兵士達が続々と集まってきた、ウォーレス将軍はゲッターチームに問い質すが
「知らねえよ、昨夜は俺達グッスリ寝ていたぜ」竜馬は何も知らなかった。
「ヤツらに裏切り者がいるのか?それは考えづらいな」首をかしげる隼人。
「将軍、私は彼らと同室です、昨夜抜け出した様子はありませんでした」フレデリックも証言した。
「では一体誰が?」
「私だ」意外な人物がウォーレス将軍の問いに答えた。
誰なんでしょうね?