大塚が研究室にやってきたその頃のフレズ達姉妹は、フレズの反撃から何度目かの攻防を繰り広げていた。
三人はそれぞれダメージを受けているものの、HPの半分も減っていない。
FAガールのバトルはHP制である為、手数で一気に押し込むか、一撃で仕留めるような威力の攻撃を当てない限り、極短時間で相手を倒す事は難しかった。
「ぃよ、っと!!」
「くっ!」
ベリルショット・ランチャーを使った近接攻撃を、右手のベリルスマッシャーで受け止めるアーテル。
動きを止めたフレズをルフスは両手のベリルショット・ライフルで狙うが、それに気付いたフレズもルフスに向けて空いている方のランチャーで応戦する。
「このぉっ!」
アーテルも、左手に持つベリルスマッシャーをサイズモードにしてフレズを攻撃した。
しかしフレズは瞬時に上半身を逸らして回避。と同時に、その勢いで回転しながらアーテルを二段キックで蹴り飛ばす。
フレズ達姉妹は武装適性と武器による攻撃力を除いて、防御力や機動力のほとんどが同程度のスペックである。それ故に、フレズに挑む妹達が数の上で有利であっても、攻撃を決めきれない現状では
「いっけぇーっ!」
アーテルがフレズに蹴り飛ばされたのを見たルフスは、両手のライフルを最大出力で撃ち放つ。
「わわっ!?」
防御が出来ないと感じたフレズは、回避を選択する。
だが予想以上の範囲に右手のベリルショット・ランチャーが掠り、その威力で弾き飛ばされる。と同時に、フレズもバランスを崩してしまった。
――今が絶好のチャンス!
体勢を立て直していたアーテルは、ルフスの一撃によって隙が出来たフレズを見て、スラスターを全開にして再び接近する。
「もらったわ!」
アックスモードに変形させた左手のベリルスマッシャーを、最大加速の勢いも乗せた全力で振り下ろす。
幾らフレズと言えども、これは回避出来るタイミングではない。
――もしこの一撃で倒せなくても、すぐに追い撃ちをかければ勝てる……!
ルフスもライフルを構え、再度エネルギーをチャージする。
――消費した分が回復してないからさっきより威力は落ちるけど、アーテ姉の攻撃と合わせたら充分だもんねっ!!
妹達二人は勝利を確信した。本気を引き出せなかったのは心残りではあるが、それでもあの長女に勝てるのだと。
しかし――
「――ベリルスマッシャーッ!!」
そう簡単に“フレズヴェルク”が負けるはずがなかった。
「嘘!?」
自分の目に映るものは幻だろうか?それとも不具合か?と、そんな不具合は有り得ないというのは分かっていても、アーテルはそう思わずにはいられなかった。
フレズは右手のランチャーを失い、右側がガラ空きだった。そんなところを狙ったのに、フレズの手にはアーテルの物と同じ武器が握られていて、しかも完全に攻撃を防がれている。
「えーっ!?
フレズが攻撃を防いだ事に驚いたルフスも、思わずライフルのチャージを中断してしまう。
初めてフレズが使用した際には、調整不足によって持っているだけでエネルギーを消費し、バトルには約一分程度しか耐えられない代物であった。
今はその欠点であった調整も完璧であり、専用にカスタマイズされたアーテルの物に劣らない性能を有している。
「これを轟雷以外に使うつもりは
「え――きゃぁ!?」
アーテルの攻撃を受け止めたフレズは、そのまま力任せにアーテルのベリルスマッシャーを押し返し、即座に返す刃でアーテルを地面へと叩きつけた。
「アーテ姉――わぁっ!?」
それに気を取られたルフスも、フレズはランチャーで狙撃する。
「二人とも強くなっててめっちゃ驚いたよ!だから……久しぶりに見せてやる!!」
そう口にしたフレズは、右手のベリルスマッシャーをサイズモードにして、未だダメージで動けないアーテルへと突撃した。しかしランチャーの一撃を凌いでいたルフスが、アーテルを援護する為に二人の間に入る。
「やぁぁぁ!」
左右のライフルを連射するルフス。
「だから甘いって!」
「きゃぅ!?」
しかし弾幕を避けながら接近したフレズのベリルスマッシャーが、容赦なくルフスに叩きつけられた。
アーテルより更に後ろへと墜落したルフスのHPは残り僅か……。それを見たフレズは、狙いをアーテルからルフスに切り替える。
「これで――」
「させない!!」
「おっと!?」
ランチャーを構えていたフレズ目掛けて、アーテルのベリルスマッシャーが飛んできた。これにフレズは驚きながらも、自身のベリルスマッシャーで弾き飛ばす。
アーテルに目を向けると、左腕の保持用ラックをパージしたのか、パーツが下に落ちているのが見えた。
「危ないなぁ……」
「……当てるつもりで投げたもの」
――せめてランチャーが使い物にならなくなれば万々歳だったけど……。
「でも当たらなかった。残念だったね!しかもそれでアーテルの方は、武器を一つ失った!」
――悔しいけどその通りね……でも!
「それでも私は勝つのを諦めないッ!!」
「へぇ……んじゃ、ボクも遠慮なく勝とっかな!!」
再びフレズが突っ込んでくる。
アーテルはグレイヴモードにしたベリルスマッシャーで迎え撃つが、フレズはそれを軽々と回避。アーテルの上を飛び越えると同時に、彼女の背部を斬りつけながら一回転して着地した。
「それだけダメージを受けて、ボクに勝てるかなっ!?」
反転したフレズは一気に踏み込んで、ベリルスマッシャーを振り下ろす。アーテルも振り返って同じくベリルスマッシャーで受け止める。
「最後までどうなるか分からないわよ……!」
「いーや、ボクの勝利は揺るがないね!なんたってボクは最強なんだから、さァッ!!」
更に左手のランチャーも振り下ろすフレズ。そのパワーに、堪らずアーテルは片膝を付いてしまう。
――流石にこれ以上抑えきれない……。
「そろそろ終わりにしようか!」
フレズはそう言いながら、再度ベリルスマッシャーを振り上げる。
「ッ!そこ!!」
この一瞬の隙を見逃さないアーテルは、左手で背面に装備されているダガーを取り、フレズへと投げつけた。
「またぁ!?」
距離が近かった事で回避がギリギリだったフレズは肝を冷やす。しかし今度のアーテルの狙いは、ダガーを当てる事ではなかった。
驚いて動きを止めたフレズのベリルスマッシャーを左手で、そして右手でランチャーを掴む。
「あっ、ちょ、離せよアーテルー!」
「ふふっ、離さないわよ!姉さんはここで……私と一緒に負けるもの!」
「は?何言って――……ッ!?」
初めはアーテルの言葉の意味が分からなかったフレズだが、先ほど叩き落としたルフスの存在を思い出す。後ろを振り返って見ると、そこには再びライフルのエネルギーをチャージしていたルフスの姿があった。
「またあの一撃を受けたら、流石の姉さんでも耐えられないでしょ?」
「このっ!」
フレズはアーテルを引き剥がそうとするが、近接戦用に特化している彼女のパワーもあり、すぐには離脱出来ない。
――姉さん、こういう時は自分から武器を離すのが早いのよ?
アーテルは心の中でアドバイスをする。当然それはフレズに聞こえるはずもなく、強引に力でどうにかしようとしていた。
「あーもうめんどくさい!」
そう叫んだフレズは右膝のスラスターユニットで膝蹴り。更にアーテルが怯んだところを、普段なら絶対にしないであろう頭突きで額同士を打ちつける。
「うぐっ……!」
アーテルの手が緩んだ瞬間にフレズは飛び上がり、彼女に背を向けて離脱しようとした。だが背後から引っ張られたかのような感覚がしたかと思うと、それ以上飛行出来ない。
不思議に思ったフレズが背後を見ると、背部ユニットの基部にサイズモードにしたベリルスマッシャーの刃が引っ掛けられていた。
「逃がさないわ!」
その視線の先で笑顔を見せているアーテル。その表情は、
そして遂に――
「よーし、今度は当てるよっ!いけぇー!!」
ルフスの一撃がフレズに向けて、撃ち放たれた。