僕の姉たちはなんだかんだ過保護だ   作:チキチキネズミ

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 この小説を開いていただきありがとうございます。
こちらは自分が初めて書いたオリジナル作品になります。
至らぬ点などがあると思いますが、どうぞご覧ください。


僕という男

 僕には両親という人がいない。僕が小学生の時に事故で亡くなったらしい。そして、僕には小学生以前の記憶がない。なぜなら、僕も事故にあって記憶を失ったからだ。事故当日の朝、僕と両親は草津温泉に向けて自家用車で家を出た。父の運転は本職がタクシードライバーということもあってとても上手かったらしい。そんな父がなぜ事故を起こしたか、それは未だに解明されていない。何しろ生存者は僕一人、そしてそんな僕が記憶を失っていたからだ。僕たちを乗せた車は、県道から150メートルほど外れた崖の下で見つかった。外見では何かわからないほどくちゃくちゃだったらしい。

 

 父と母の葬式は身内だけで簡単に行われた。望まれない結婚だったそうだ。当時のことは知らないが、親戚一同はとても葬式とは思えない空気を出していたそうだ。そして、父は二度目の結婚だったそうで元妻にも葬式の案内はされたが、元夫妻の娘二人だけが参加した。娘二人は既に自立しており、しっかりと生計を立てていた。骨になった父を見てその二人は黙って涙を流したそうだ。そんな弱みを出したからだあろうか、親戚一同は彼女らにこの夫妻の間にできた息子、僕の話をした。当時の二人はまだ20代だった。なのに彼女らは快く僕を預かることにした。単に良心で預かったのか、親戚一同のただならぬ気配で察したのかは未だにわからない。ただ、二人にはとても感謝している。親戚一同が僕を預かったとしたら、碌なことが起きなかっただろう。最近知ったのだが、彼女らはその時に親戚一同と縁を切ったらしい。

 

 そんなことがあり、僕が病室で目覚めると知らない女性二人が病室におり退院すると僕を家に連れて帰った。僕が目覚めたのは事故からおよそ1年後の冬だった。その時のことは今でもしっかりと覚えている。起きると知らない女性が二人僕のことを見つめており、僕が見つめ返すと目を開き驚いてナースコールを押していた。その時僕の勘違いじゃなければ彼女たちは泣いていたと思う。しかし、その涙はすぐに枯れることになる。医者の問診によって僕に記憶障害の可能性があることが分かったからだ。そして、その後の詳しい検査によってそれが明らかになった。記憶障害と分かった僕を彼女たちは心変わりせず、快く連れて帰ってくれた。もちろん当時の僕はまさかこんなことがあったなんて知らない。彼女たちはあえて黙っていてくれたのだ。彼女たちは自分たちのことを姉だと言い、両親は病気で亡くなったと言っていた。そして親戚一同はもうすでにいないと言った。僕はそれを鵜呑みにして二人に世話されてすくすくと育っていき、男らしくなるはずだった。そうだったのだ。

 

 「おいおい、冬夜(とうや)お前いつになったら男らしい体になるんだ?もう成人なんだよな?」

 

 「僕だって好きでこんなチビなわけないじゃん!見てろよ、僕だって成人式が終わったらすぐにがっしりした体形になるさ!」

 

 「それは無理だろwまず飯も女より食えねぇやつが男らしくなれるか!いっそ幼女でも目指してみたらどうだ?www」

 

 「うるさいな!それは秋姉さんが大食いなだけだろう!僕だって毎日食べれる量が増えてるんだ、大食らいの秋姉さんだって抜かして見せるさ!」

 

 「なるほどね、冬夜はボテ腹幼女になりたいと。これはまたアブノーマルな趣味の人に好かれそうね。どう?今度のイベントで女装でもしてみる?」

 

 「春姉さんまで!僕には女装なんて趣味は無いし、アブノーマルな人からも好かれたくない!」

 

 「でも、あんたみたいなチンチクリン全く男には見えないわよ?まだ秋ちゃんの方が男らしいわ」

 

 「おい春姉それはどういう意味だ?喧嘩なら買うぜ?」

 

 「そんな喧嘩なんて野蛮なことしないわよ、女の子は。そんなことするのは馬鹿な男ぐらいよ?」

 

 「く、言わせておけば!おい冬夜気が変わった、俺が男らしくしてやろう。今から筋トレするぞ、グダグダするな!」

 

 「えぇ、そんな・・・とんだ飛び火だよ」

 

 これは義理の姉達に拾われた男らしくない弟の日常の物語。




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