紫色の仮面ライダー大体ヤバいやつ説   作:瀬久乃進

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第3話:Imagineのライダー!

「答えは聞いてない!」

 

ガンフォームはそう言うや否や、右手に構えたデンガッシャーの引き金を何度も何度も引いた。

 

・・・仮面ライダークロニクル紫バージョン。最初の敵は、仮面ライダー電王・ガンフォーム。本来はイマジンであるリュウタロスが野上良太郎に憑依することで変身する電王のフォームチェンジ形態の1つであるが、良太郎が戦いを終えた後は、リュウタロス自身が直接ガンフォームに変身する形で戦いを続けている。時の運行を乱す悪を討つ戦士であるが、・・・彼は、野上良太郎に憑依したイマジンの中でも、一番の問題児であったと聞く。

 

「いえーい!」

 

「危ねっ!危ねえって!」

 

ガンフォームが嬌声を上げながら放つ弾丸は、無軌道に龍玄たちを襲った。龍玄とパラドはステップを踏んでそれを回避する。パラドが非戦闘キャラであることなど、ガンフォームにはお構いなしのようだった。射撃の精度そのものは低い。まるで命中させることを放棄しているようだったが・・・だからこそ、弾の軌道が読めなくて厄介だ。

 

「パラド、入って!」

 

「そうする!」

 

龍玄は、右腕に装着した"バグヴァイザー"をパラドに向けた。パラドの身体は粒子に変わり、その中に吸い込まれてゆく。

 

このバグヴァイザーは、CRから借り受けた装備の1つであった。ゲーマドライバーで変身していない光実は、本来であればバグスター化したボスキャラライダーたちにダメージを与えることは出来ない。しかしパラドのデータを入れたこのバグヴァイザーを装備してさえいれば、龍玄の攻撃はボスキャラライダーたちに届くようになる。

 

「とりあえず準備はOKか」

 

ガンフォームの放つ弾丸の嵐を掻い潜りながら、龍玄は自身の愛銃・・・"ブドウ龍砲"を手に取る。

 

自身も銃の使い手なので、その利点と欠点はよく理解しているつもりだ。問題は、そのどちらを勝負のステージとするか。つまり・・・接近戦に持ち込むか否かだ。

 

『ミッチ、どうする?』

 

「・・・考え中」

 

バグヴァイザーの中から、パラドの声が聴こえてくる。この状態で会話が出来るのは便利だ。

 

龍玄は回避行動の合間を縫って、狙いを澄ました射撃をガンフォームに向けた。しかし、くるくると踊るように動き回るガンフォームを捉えることが出来ない。そうしているうちに次の弾丸が龍玄を襲い、また回避の必要が出る。

 

「くっ!」

 

龍玄の鎧に火花が走る。1発、受けてしまった。龍玄は体制を崩してしまい、また次の銃弾が迫る。咄嗟にサイドステップでそれを躱そうとしたが、・・・避けた先に弾丸が来た。くそ、読めない。

 

・・・昨日の仮面ライダークロニクル紫バージョン対策会にて。永夢は、光実に"攻略本"を手渡した。

 

『これは、僕とパラドで作ったものですが・・・紫バージョンに登場する可能性の高いライダーたちについての情報を纏めてあります。檀黎斗が収集したデータを基に作ったので、ある程度の信憑性はあると思います』

 

電王ガンフォームは、その攻略本の中に記載があった。攻略本によるとガンフォームの弱点は、

 

・お姉ちゃん

 

とのことであった。

 

実際の変身者・リュウタロスは、"お姉ちゃん"に異様な執着を示すらしく、2007年当時の戦いでも、お姉ちゃんが絡んだ際には冷静を失ってピンチに陥ることが多かったようである。

 

・・・つまりどういうことだよ!

 

昨日の時点でこの突っ込みを入れなかった自分を殴りたくなったが、他のもっとヤバそうなライダーたちの対策を考えるので忙しかったのだ。お姉ちゃんってなんだ。多分それはライダーとしての弱点というよりも、リュウタロスの個人的な性癖に類するものだと思う。

 

『ミッチ!電王ガンフォームの弱点はお姉ちゃんだ』

 

「だからどういうことだよそれ!」

 

龍玄は態勢を立て直し、反撃の銃弾をガンフォームに叩き込む。命中した。この隙を逃すわけにはいかない!

 

龍玄は・・・とりあえず接近戦を挑むことにした。電王の他フォームは、それぞれ剣、杖(?)、斧を武器とする。つまり接近戦に於いては、それらのフォームが選択されることが多かったのではないか?多数フォームを備えたライダー最大の利点は、相対する敵や状況に応じてバトルスタイルを変えられること。中でも電王は、変身者の人格ごとチェンジする。つまりリュウタロスは、接近戦の経験が少ないのではないか。

 

最初から距離はそこまで離れていない。龍玄は大地を蹴って一気にガンフォームに肉薄すると、装甲の薄い首元を狙って手刀を放つが・・・危険を察知したガンフォームはくるっとターン。そのままブレイクダンスの要領で高速回転し、龍玄に後ろ回し蹴りを直撃させた。

 

痛い!それは龍玄の仮面の右頬の部分にクリーンヒットし、龍玄はそのまま横薙ぎに吹き飛ばされた。ガンフォームは倒れた龍玄に容赦なく射撃を叩き込む。ブドウアームズに命中する分はまだマシだが、鎧に守られていないライドウェア部分に当たるとまあ痛い。ガンフォームは相変わらずの嬌声を上げながら、狂ったように引き金を引き続けた。

 

「それそれー!」

 

・・・こいつ、ヤバいやつだ。光実は戦慄する。

 

 

 

『これまでの傾向を見ると、檀黎斗が再現したボスキャラライダーたちは・・・誇張されてるんです』

 

光実は、昨日の永夢の言葉を思い出す。

 

『誇張?』

 

『ゲームのキャラクターとして落とし込むために、その特徴が誇張されてるようなんですよ。その能力も、人格も。ライダーといえど、大体は人間です。色んな一面がありますよね?』

 

『それはまあ・・・そうですね』

 

光実は、自分の胸に手を当てて考えた。確かに。

 

『ボスキャラライダーたちは姿形こそ現実の彼らに限りなく近いものですが、基本的には"そのライダーについての最も普遍的なイメージ"を基に構成された、別物です。最も目立つ一面だけを切り取っている。例えば、赤バージョンで僕が相手にした仮面ライダーカブト。・・・一度実際にお会いしたことがあるんですが、変身者の天道さんは、俺様系に見えて非常に思いやりの深い人物でした。ただ、僕が戦ったボスキャラライダーとしてのカブトは、まさに傲岸不遜な俺様キャラで、一切の容赦のない冷徹な戦士でした。つまり、極端なデフォルメがされてるんですよ』

 

それに当て嵌めて考える。・・・つまり、目の前にいる電王ガンフォームは、光実がリュウタロスに対して事前に抱いていたような印象・・・つまり、"話の通じないトリガーハッピー"というイメージが具現化した存在というわけだ。それは非常にタチが悪い。

 

とにかく、リュウタロスは接近戦も出来るタイプらしい。・・・考えてみれば、あのダンス技術だ。身体能力が低いわけがない。接近戦は愚策だったか。なんとかして距離を取りたい。龍玄はブドウ龍砲で撹乱の射撃を行いながら、今度は後方へ。ガンフォームは距離を詰めてくることはなく、ただデンガッシャーから放たれる銃撃が龍玄を追ってくるようだった。

 

『ミッチ、どうするんだ?』

 

「距離を取る。・・・僕と電王との間に遮蔽物がある状況を作りたい。真っ向からやるには危険すぎる」

 

いつの間にか、リュウタロスの前に現れたバグスターウイルスのダンサーたちは姿を消していた。ただの演出であったようだ。・・・もしかしてこいつらも敵なのかと思っていたので、そうでなかったことは正直ありがたい。あくまでもゲームはライダーとの一騎打ちということか?

 

「ねえ、逃げるの?」

 

ガンフォームが、デンガッシャーをメガホンに見立てたようなジェスチャーで大声を出す。話しかけられているようだが、どうせ答えるだけ無駄だ。

 

「・・・逃がさないけど!」

 

 

 

バンバンと引き金を引きながら走って追いかけてくるガンフォーム。改めて、この手の仮面ライダーは敵にすると非常に怖い。特に電王は恐ろしい相手だ。イマジンたちは揃って好戦的だし、ともするとふざけているような素振りで本気の攻撃を仕掛けてくる。今回の相手はリュウタロス1人だが、実際の電王を敵に回した者は、これが4人組で襲ってくるのだ。とても恐ろしいことである。

 

ここに来るや否や戦いが始まってしまったので、検証が出来ていない部分が多かった。例えば、このゲームエリア内で他のロックシードの使用は可能なのか。・・・永夢から聞いた仕様だと、恐らくアームズチェンジは不可能だ。では、ロックビークルの召喚はどうか?

 

充分な間を取ることが出来れば使用を試みたいところではあるのだが、今それをやっている暇はない。とりあえずは戦いやすいフィールドへの移動を優先する。土地勘のない街ではあったが、なんとなくの雰囲気でわかる。・・・駐車場がベストだ。程よく遮蔽物があり、横に広い空間。龍玄は、駐車場を探して逃げ回っていた。

 

・・・見付けた。大きめの施設に付随した駐車場に、龍玄は飛び込む。場内には何台もの自動車が駐車されており、龍玄は姿勢を低くして身を隠しながら走った。遮蔽物になりそうな大きめの柱も複数見られる。このフィールドなら、身を隠しながら射撃を行うことでアドバンテージが得られそうだ。先ほどの肉弾戦の結果を見るに、恐らく身体能力ではガンフォームに勝てない。となれば・・・銃使いとしての利点。遠距離攻撃のステージで勝負するしかない。

 

「あれ?・・・ねーえ、どこ隠れてんのー?」

 

ガンフォームの声が駐車場内に木霊する。龍玄の姿を見失ったらしい。好都合だ。自動車の陰に身を隠した龍玄は物音を立てないよう慎重に、ガンフォームの動向を伺う。光実は、ガンフォームの立てる音でその位置と動きを把握しようとした。

 

「・・・つまんないの。まあ、いっか」

 

・・・あれ、もしかして、逃げ切れてしまったパターンか?

 

話に聞くリュウタロスは、かなり気まぐれな性格だ。気分良く戦っていたところ敵に逃げられてしまい、その姿を見失った・・・となれば、戦いに飽いて帰ってしまう可能性も考えられる。

 

どうだろう。もしこのまま隠れてやり過ごせるのであれば、無理にここで決着を付けなくてもいいのかもしれない。ゲームエリア内で検証したいことは幾つかあるし、とりあえずボスキャラライダーの1人が電王ガンフォームであることはわかった。交戦し、注意すべきポイントも何点か把握した。となればここは一旦戦闘を打ち切り、然るべき対策を立ててから再戦を、

 

『フルチャージ』

 

今、すごく不吉な音声が聞こえたぞ。

 

『光実、なんか、すごくヤバい気配がするんだけど・・・』

 

パラドが声を潜めて言う。そうだね。必殺技が来るね。

 

 

「全部吹き飛ばしちゃえば関係ないし」

 

 

リュウタロスがそう続けた次の瞬間、電王ガンフォームの必殺技・・・フルチャージ"ワイルドショット"が駐車場内で発動した。巨大なエネルギー弾は、何台もの乗用車を巻き込んで爆炎を巻き起こす。直撃は免れたものの、龍玄はその風圧に吹き飛ばされた。吹き飛ばされている最中、龍玄は・・・立ち込める炎の向こう側で、ご機嫌にステップを踏むガンフォームの姿を見た。

 

さっそくヤバいぞ、これ。




お読み頂きありがとうございます!
ガンフォームは電王基本4フォーム中最強スペックだそうですね。
電王最終話、最後の変身でのスターティングを飾ったフォームでもあります。
ご意見ご感想お待ちしております!
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