ニセコイ〜小野寺に恋する少年〜   作:冬の桜餅

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梅雨入りしたのかしてないのか梅雨中なのか梅雨明けしたのかもうよく分からない今日この頃。気づけば話数も2桁いって驚いています。では第10話、どうぞ!




10.オイワイ

林間合宿も終了し、数日が過ぎた。実はその間に楽と桐崎さんとの間で少し変化があったことに気づいた。

 

「おーい、楽〜!この日誌ってどこに持っていくんだっけ?」

 

「ああ?さっき先生が準備室だって言ってたじゃねーかよ」

 

「あー、そっかそっか」

 

「おい、千棘!理科室の方の準備室だぞ。また音楽室の方と間違えるなよ」

 

「りょうかーい」

 

そう言って理科準備室の方へと向かう桐崎さん。そう、いつの間にか二人はお互い名前で呼び合うようになっていたのだ。何でも結構長く付き合ってるのに下の名前で呼ばないのは変だと言われたからだとか。

俺もいつか小野寺を下の名前で呼びたいな〜とか思っていると鶫が教室の扉を開いて出てきた。

 

「おい、一条楽。貴様お嬢を見ていないか?」

 

「ハニーなら、さっき理科準備室に行ったぞ」

 

鶫の質問に楽がそう答える。どうやらハニー呼びも健在らしい。

 

「そうか、それは都合がいいな。ちょうど皆さんもお揃いのようですし」

 

鶫がホッとしたようにそう言う。鶫の言う通り周りには俺とツカサ、楽、小野寺、宮本の5人が揃っていた。…あ、集がいないじゃん。

 

「いや、集がいないけど」

 

楽も当然気づいており鶫にそう言ったが

 

「皆さんお揃いのようですし」

 

…どうやら集は居なかったことにされるらしい。日頃の行いって大事だよね。

 

鶫の話によると何と今日は桐崎さんの誕生日でその為サプライズパーティーを計画中だとか。そして俺達にもそれに参加してほしいらしい

 

「皆さんが来てくださればお嬢も大変お喜びになられると思うので」

 

断る理由なんか勿論無いのでその場の全員が了承する。

 

「….それじゃあプレゼントが必要だな、どうする?」

 

楽が俺達に聞いてくる。だが俺達が答えるより先に宮本が

 

「よし、じゃあ小咲と一条君、二人で選んで来なよ」

 

そう言い放った。…いきなり何言い出してんのこの人!?

 

「る、るりちゃん!?」

 

「み、宮本!?お前は来ないのかよ!?」

 

「ごめーん、実は朝からお腹の調子が悪くて…」

 

言われた当の二人もかなり困惑している様子だ。顔真っ赤だし。しかしこのまま本当に二人で行ってもらうのはこちらとしても面白くないので…

 

「じゃあ俺も一緒に…」

 

行こうか?と言おうとした直後宮本に足を踏みつけられる。どう考えてもお腹の調子が悪い人の威力じゃないです。超痛い。

 

「ほら、二人で相談した方がプレゼントも早く決められるでしょう?」

 

表情一つ変えずにそうまくし立てる宮本。何なのこの人?ポーカーフェイス過ぎるだろ…しかし俺はこれ位ではめげないぞ?

 

「いや3人の方がもっと早く…」

 

言いかけた所で今度はツカサからボディブブローが入る。…いや、お前に関しては何でだよ!?もはや妨害通り越して暴力なんだけど!?予想外の一撃に思わず胸を抑えながら膝をつく俺。

 

「おい、どうした?優人?…そうか!パーティーが楽しみでもう既に胸がドキドキしてるんだな?」

 

「げふっ………いや、どっちかって言うとズキズキするんだけど…」

 

いけしゃあしゃあとまくし立てるツカサをいつか絶対シメようと俺はその時誓ったのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

〜放課後〜

 

結局楽の妨害に失敗し二人は無事二人きりでプレゼント選びすることになり、それとは別で俺とツカサはプレゼントを選びに商店街に来ていた。

 

「宮本はまだ分かるとして、何でお前まで俺を邪魔したんだよ?邪魔つーか単純に殴られただけみたいなもんだけど」

 

プレゼントを選んでる最中にツカサにそう質問する。それを聞いたツカサはため息混じり答えた。

 

「お前なぁ、好きな女の子が他の男と二人きりになるのが嫌なのは分かるがもうちょっと余裕持てよな。小野寺からしたら意中の相手とのデートみたいなもんかもしれねーんだからな。それをただの友人であるお前なんかに邪魔されたらお前、一生嫌われるぞ?」

 

何故「ただの」の部分をやけに強調した?….しかし、言っていることは事実だった。思ったよりずっと真面目な理由だったので閉口していると

 

「ま、今回は敵に塩を送った形になったわけだが、どっかで見返りがあるかもよ」

 

「本当かよ…」

 

見返りはともかく、サプライズパーティーの時間も迫っているので俺たちはプレゼントを選ぶと桐崎さんの家へと向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

プレゼントも用意し終わり、俺たちは桐崎の家の前で集合した。すると何処から嗅ぎつけてきたのか不明だが集もそこにいた。不快感を露わにする鶫だったが全く気にしない集はきっとカッチン鋼製のメンタルをしているのだろう。

 

「えっと、ここが千棘ちゃんのお家?」

 

「そうなるな…随分と大きな家なことで」

 

目の前には大きな屋敷。豪邸と言っても差し支えない建物が建っていた。俺たちが呆然立ち尽くしていると門の向こうで同じようにポカンと突っ立っている人物がいた。今回のパーティーの主役の桐崎千棘である。彼女は俺たちが来ていることに驚いている様だった。う〜ん、一応サプライズ成功って事になるのかな?

桐崎さんはふと我に帰ると楽を呼びつけ何やら話し込んでいる。内容は聞こえないが桐崎の不安そうな顔がチラチラと目に入った。

 

「お〜い、皆。実はこいつの家さ…」

 

桐崎さんと話し終えた楽が急にこちらに声をかけてくる。何事かと思えば何時ぞや楽から聞いた桐崎さんのお家柄の話。今更何だと思ったがよく考えれば小野寺と宮本は知らなかったなと思い返す。

 

「へぇ〜、やっぱり千棘ちゃんってすっごいお嬢様だったんだ!」

 

怖がるどころか納得した様に感心する小野寺、流石です。逆に桐崎さんは驚いていたが…多分、親がギャングだから拒絶されるかもしれないと不安だったのだろう。その後、俺たちは桐崎さんに連れられ家の中に招待され遂にパーティーが始まった。

 

広い部屋に並んだ豪勢な食事を食べながらパーティーは続いていく。厳つい顔のおっさんがやけに多いのがたまに傷だが…。

 

「おや、君もお嬢の御友人で?」

 

やけにイケボな声の方を向くと銀髪に四角い眼鏡を掛けた男が立っていた。

 

「ええ…まあ、そんなとこです。桐崎さんにはいつもお世話になっているので」

 

「成る程そうでしたか…いやはやお嬢も大変良い御友人を持ったものだ。改めて礼を言わせて貰います。」

 

そう言ってその男は頭を軽く下げてきた。随分と礼儀な正しい人だな….そんな風に思っていると

 

「時にお伺いしますが…お嬢とはどういう関係で?」

 

「はい?…今友達って言ったと思いますが…?」

 

質問の意味がよく分からず聞き返すと男の眼鏡の奥で目がキラリと光った。

 

「本当にそうですか?もしやお嬢の何かしら良からぬ感情をお持ちなのでは?あれだけ美しいお方だ…貴様等の様な年頃の雄共にはさぞ眩く見えるだろう…‼︎」

 

あ、危険な人だこの人…もしくは残念なイケメン。

 

「誠に信じ難いが…‼︎というか信じるつもりは全く無いが…‼︎お嬢は一応あの貧弱軟弱虚弱モヤシクソ餓鬼小僧と付き合っているらしい…‼︎‼︎だからお嬢と付き合えるかもとかいう甘い考えは捨てるように」

 

元から考えてないから!何だこの危ないオッサンは?すっげームカつくんですけど…とりあえず楽の事をかなり憎んでいるのは伝わった。眼鏡のオッサンは言うだけ言ってそこから離れていった。

 

そんな折宮本や小野寺が桐崎さんにプレゼントを渡し始めたので俺も渡すことにした。俺が渡したのは最近家の近くに出来た和菓子屋のお菓子だ。他には宮本が小説、小野寺が文房具セット、厳つい顔したオッサン達がバナナと演歌、…よく分からないチョイスだが何でも桐崎さんはバナナと演歌が好きらしい。そしてさっき絡んできた眼鏡のオッサンが高級車、だったが免許を持たない桐崎さんからいらないとはっきり言われてしまった。ははっ、ざまぁ(嘲笑)

そして彼氏の楽の選んだプレゼントは金髪にリボンを付けたゴリラの縫いぐるみというかなりハイセンスなプレゼントだった。女の子にそんな物選ぶなんてどんなセンスしてんだ楽のやつ…?しかし意外や意外、桐崎さんには思いの外好評、ゴリラを抱きしめながらクスリと彼女は微笑んでいた。

 

 




誕生日パーティーはまだ終わりじゃないぞ、もうちっとだけ続くんじゃ

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