では3話目をご覧ください。
「よしよし、大量だ。これならアイツも喜ぶぞ」
「腑に落ちねぇ…何故ツカサばかりあんなに取れるんだよ」
今日は土曜日。特に用事が無かった俺はツカサを誘い町に遊びに出ていた。そこでゲームセンターに立ち寄るとツカサがUFOキャッチャーを始めた。
どうせ無理だろと思っていたら…まあ取るわ取るわ。店員も他のお客もギョッとした様子で見ていた。そこで俺も負けじと挑戦したが見事に惨敗。
さらば今月のお小遣い…あーあ、何やってんだか。
ツカサは十分賞品を取って満足したらしく最後に大きな熊のぬいぐるみを手に入れるとその後はめっきりしなくなった。そしてある程度他のゲームを遊び尽くすと二人でゲームセンターを離れ、現在に至る。
「アイツって誰だよ?…彼女か?」
両手に賞品を抱え隣を歩くツカサに問いかける
「違ぇよ、妹だよ。ゲーセンに行くなら何か取って来てくれって頼まれてな。」
ああ小雪ちゃんか、四つ違いのツカサの妹。仲良いんだよなこの兄妹。
「それより知ってるか?楽と桐崎さんの噂」
今度はツカサが俺に聞いて来た。
「噂?最近よく一緒にいるってやつのこと?」
実際は楽のペンダントを一緒に探してただけみたいだけど。
「そうそれ、もしかしたら付き合ってるんじゃないかってまで言われてるぞ」
「え〜!そりゃないだろ…転校して来て直ぐだぜ?そりゃあ確かに仲良しには見えるけどさ」
「だよな、やっぱり噂って信憑性薄いな」
そこまで言うとツカサの電話が鳴った。
「もしもし、どうした?……あー、分かった直ぐ行くよ」
ツカサは通話を終えると妹を迎えに行く事になったとこちらに言ってきたので
「お兄ちゃんは大変だねぇ〜」
そう言ってからかうと
「…次お兄ちゃんって言ったらコブラツイストな」
そう言い残して帰っていた。…コブラツイストは勘弁して欲しいな、アイツマジで出来るし…
ツカサと別れ、特にすることも無いので街をぶらつくことにした。
しかし、楽と桐崎さんか…
お似合いに見えなくも無い、実際今の所クラスで一番桐崎さんと話しているのは楽だと思う。喧嘩してるにしてもあんなに一緒にいられるのは何かしらあるのかもな…。俺も小野寺とあれくらい一緒にいれたらな〜、喧嘩は絶対しないけどね(謎の自信)
「あ、立川君。こんにちは」
「お、小野寺!?何してんだ?」
ビックリしたぁ〜…小野寺の事考えてたらまさか本人に出くわすとは…これが運命か?そうであって欲しい…切実に!
「私は友達と買い物に行った帰りだよ…立川君は?」
「ああ、俺はツカサと一緒に遊んだ帰りだよ。所用でツカサはさきに帰っちまったけど」
何気なく答えたが実際は小野寺に見惚れていた。私服の小野寺を見るのは初めての様な気がするし、何よりとても可愛いかったのだ。
「そうだったんだ……あれ?あそこにいるの一条君?」
小野寺が向いた方向を見ると確かに楽だった。少し疲れた様子でベンチに座っている。何やってんだあいつ?
楽はこちらに気づいていない様で完全に一人の世界に入っている。そこであることを思いつき小野寺に話しかける。
「なあなあ小野寺?少ぉーしずつ楽に近付いてさ、いきなり声掛けて驚かさないか?」
提案したのはちょっとした悪戯。休み時間に小学生がやる様なくだらない内容だ。それを聞いた小野寺はクスリと微笑んだ。
「いいね、ちょっと面白そうだし…一条君どんな反応するかな?」
おお、流石は小野寺。可愛いだけじゃなくユーモアも持ち合わせている。もう無敵だな…
そんなことを考えながら楽に近付き、驚かそうとした直前、楽がぼそりと呟いた。
「これが小野寺とのデートだったらな………」
…what?……今なんて言ったコイツ?まさか楽の奴…小野寺のことが好きなのか!?…こんな近くに恋敵がいやがるとは…,どうする、消すか?俺の青春の為にも此処で消した方が良いか?
「お、小野寺?どうしてこんな所に?」
思考が危ない所に向かう手前で楽の声で我に帰る、危うく大切な友人に手をかけるところだった。
小野寺の方を見ると少し困惑してる様だった。楽の呟きに自分の名前が出て来た所に驚いたらしく、肝心な内容までは聞き取れなかったらしい。…あー良かった、聞かれてなくて。何となく、本当に何となくだが小野寺は楽のことを好いている様な気がするのだ。
これが事実でさっきの楽の呟きをしっかりと聞かれていたら即敗北、灰色の青春にゴールインである、それだけはゴメンだ。
「つーか楽よ、何でお前こんな所にいるんだ?」
個人的には先程の呟きについて言及しいが小野寺の前ではマズイので別の質問をすることにした。
「いや、俺はその……」
言葉を濁す楽。何だそんなに言い辛いことなのか?楽の次の言葉を待っていると
「ダーリンお待たせ‼︎ゴメンね〜〜思ったよりずっと時間かかっちゃって〜」
そう言いながら桐崎さんが走って来ると俺と小野寺の顔見て驚いたような顔をした。…ダーリンって誰のことだ?もしかして楽?
「え、ダーリンってことはってその、えっとつまりその付き合ってて……」
俺の隣では小野寺が戸惑いながらもなんとか言葉を絞り出していた。…やっぱダーリンって楽のことなの?
なんだろうこのちょっとした修羅場に巻き込まれた感じは。帰りたくなってきたんですけど…と思っていたら
「いやいや、違う違う違う、なんでこんな奴と!」
「そうよ誰がこんな!」
今度は二人で交互に否定してきたのだ。…よく分からない二人だな、どっちが本当なのか分からないんだが。
すると突然桐崎さんが楽に抱きついた。
「そうなのよ!実は私たち付き合いたてのラブラブカップルなの‼︎もう、彼ったら私にゾッコンでぇ〜‼︎」
あ、やっぱり付き合ってたの?転校して直ぐに彼氏を作るとは凄いな、楽も楽で凄いけどもとりあえず爆発しろ。
しかし二人が付き合っているなら俺と小野寺がいたら邪魔になるかもな。そう判断した俺は小野寺と一緒にその場を離れることにした。
「ええっと…お幸せに…で合ってるのか?とりあえずまあ、誰かに言ったりはしないから安心してくれ。一応、お似合いだぜとだけ言っとくよ。…ほらっ帰ろうぜ小野寺、邪魔しちゃ悪いしな」
「わわっ、ちょっと立川君!…ええっ〜と一条君、桐崎さんまた学校でね‼︎…その、私もお似合いだと思うよっ‼︎」
小野寺の手を引っ張って行く。小野寺の言葉を聞いた瞬間楽がうなだれた気がするが石にでも躓いんたんだろう。そうしてそのまま二人が見えなくなる所まで行ったところで手を離した。
「びっくりしたなぁ〜、まさか二人が付き合ってるとはな…」
「うん、本当に…。でも二人ともとっても仲良かったもんね。」
俺の言葉に小野寺は少し寂しそうにそう答えた。…小野寺ってやっぱり楽のこと…
「それじゃあ私、もう帰るね。またね、立川君。」
「…ああ、またな小野寺」
そう言ってその場で別れ、今日一日のことを振り返りながら帰った。楽が言っていた「このデートが小野寺とだったら」という言葉が頭の中で何度も繰り返し流れていた。
…………そういや帰るとき俺、小野寺の手を握っていたっけ。…やばい、もう洗えないぞこの手。
◆◆◆◆◆◆◆
その日の夜
〜ツカサ宅〜
「えへへ、本当に可愛いクマさん!ありがとお兄ちゃん!」
「何、それくらい大したことないよ。…まあ、お前に喜んでもらえて何よりだ」
優人と別れ、妹を迎えに行き家に帰り着くとゲーセンで入手した賞品を妹にプレゼントした。特にクマのぬいぐるみはかなり気に入ったらしく、渡してからずっと抱きしめている。そんな妹を眺めていると不意にポケットの中のケータイが鳴った。取り出して見ると優人の名前と共に着信の通知。自分の部屋に戻り通話にすると優人は疲れた様子で言った。
『友人が恋敵だった件について…』
『………切っていいか?』
面倒臭そう、真っ先に頭の中にそう浮かぶ。開口一番何言ってるか意味が分らないし、分かりたくない。
ケータイの向こうから待て待て切らないでくれと声がするが凄く関わりたくない、こういう時の優人は何かと面倒臭いのだ。しかし切ったら切ったらで明日の朝もっと面倒臭いので仕方なく答えることにした。
『….で何?言ってる意味が解らんのだが?』
そこから優人が説明を始めた。俺と別れた後小野寺に会ったこと。そして楽を見掛けて驚かそうとした所を逆に楽の呟きに驚かされたこと。
なるほどねぇ…恋敵とは楽のことか。
『どうしようツカサぁ、やっぱ若い芽は摘んどいた方がいいかな?』
『うん?あー…そうだな、俺は散った花を処理した方が良いと思うな』
『散った花ってのは俺の事か?てか俺のことだろ?まだ散ってねーから、咲き乱れてるから』
どーでもいいよと思ったが口から出る前に引っ込める、1言うと100返してくる男だからなこいつは。
『別に楽が小野寺を好いていよーとどうでもいいだろ?お前の愛は誰にも負けないんじゃなかったのかよ』
『うぐっ、……確かにそうだな、ツカサの言う通りだ。楽が小野寺のことを好きだとしても俺はその1億倍は小野寺のこと好きだからな!この想いだけは絶対に負けねぇ‼︎』
『ああ、てかそういうこと一々声に出して言うなよ。聞いてる側はめちゃくちゃ気持ち悪いぞ。』
本当、いつも言っててよく飽きないよなと少しだけ感心する。
『そういうなよ、あ!もうひとつ言っときたいんだけどよ…』
『まだあんのか?もう切りたいんだが…』
くだらない内容だったら直ぐ切ろうとも思いながらそう言うと
『いや、帰るときにさ….うっかり小野寺の手を握っちまってさ‼︎もうヤバくね!?感激過ぎて手ェ洗えねェんだけど!?どうすればいい?』
『どうでもいい』
プツリと電話切るとそのままベットに横になり俺は夢の世界へ旅立った。
ツカサには妹が、優人には兄がいますが出番はほぼないので殆ど要らない設定だったりします(笑)