お待たせした8話目、どうぞ!
楽と鶫の決闘から暫く経ち、俺たち1年生にとっての楽しみのイベントが始まろうとしていた。
その名も林間合宿。我が家を離れ仲間と協力し共に学びながら過ごすイベントだ。まあ学生の脳内の9割は遊ぶことしか考えてないけどね、俺がそうだし。
「キョーコ先生が班に別れてバスに乗れってよ」
ツカサがそう俺に声をかける。
「おっけー、ツカサとは別の班か…少し残念だな」
ちなみに6人で1つの班なのだが人数の都合上俺たちの班だけ、俺、楽、集、小野寺、桐崎、鶫、宮本の7人になったのだ。
「仕様がないだろ、8人は多すぎるし、1つだけ5人の班が出来ちまうだろ?」
「それもそうだな〜、まあ最も?小野寺がいるだけでどんな不満も帳消しになるんだけどね〜‼︎」
「あっそ…幸せそうで何よりだよ」
キラッキラの笑顔で答える俺と冷めた目つきのツカサ。今回の班決め、男女混合ということだったので当然小野寺や桐崎さんといった美少女の元へ我先にと男子が溢れたのだ。ただ桐崎さんはその時寝ていたので、主に小野寺と鶫に集まったのだが。その中で真正なジャンケンのもと、俺と楽がその座を勝ち取ったのである。ちなみに一時だけ楽も負けろよ思ったのは内緒である。
そんな事はともかく出発のためにバスへと乗車する。
席順は右から鶫、桐崎、楽、小野寺、そして俺。そう、なんと小野寺を俺と楽で挟むことになったのだ。小野寺の隣を手にし思わずガッツポーズをとる俺、恐らく集の采配だろう。集は前の方で宮本と一緒だった。
「よろしくな、小野寺」
「こっちこそよろしくね、立川君」
そして遂にバスが出発した。
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宮本side
「ちょっと舞子君、あれはどういうことかしら?」
私は隣でニヤニヤと一条君達を見ている男に話しかけた。
「んー?なんの話?」
そうとぼけたように笑ってこちらを見る。この男本当に…
「小咲をあの二人の間に入れたことよ。私が小咲の隣の方が良かったんじゃないの?」
そうすればバスの揺れに乗じて小咲を一条君へ突き飛ばすことも出来たのに…そんな不満を持ちながら舞子君を見つめるが彼はより顔をニヤケさせると
「なになにるりちゃーん?俺が隣じゃ不満なの?」
「その顔やめなさい。腹立ってくるから」
「あははっ、ゴメンゴメン。まあいいじゃない、細い事は気にしないでさ。あえて言うなら面白そうだったから…かな?」
「貴方ね…」
本当に…この男は何を考えているのか分からない。どこまでが嘘で、どこまでが本当なのか。ただ、一条君と立川君を見つめる目が一瞬だけまるで見守ってるかのようなものになったのは気のせいでは無いかと思った。
宮本side end
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やばい、小野寺めっちゃいい匂いする。バスって結構隣と距離近いよね、肩が触れ合うギリギリの感じで。こうも近いと緊張して何も話せなくなってしまう。不甲斐ないぞ、俺。何か話すネタはないか?
「うおっ!…」
「きゃっ!…」
バスが急カーブに入り、小野寺がこちらに寄りかかって来る。うおおっ!?…小野寺がこんな近くに…‼︎
たったそれだけのことで顔が紅潮していくのが分かる。…これ目的地に着くまでに心臓破裂するんじゃないか?
そんな心配も杞憂に終わり、バスは無事目的地に到着した。
バスから降りると俺を含めて楽、小野寺、鶫、桐崎、の5人は全員くたくたになっていた。俺は小野寺のことで頭が一杯だったが、あっちはあっちで大変だったらしい。
「どうだった?俺のセッティングしたスバラシィードライブは?」
集が笑いながら話しかける。死ぬかと思いました、いやほんとに。そんな事を思っているとキョーコ先生が声を張り上げる。
「よーし みんな聞けよー! プリントにも書いてるけどお前らは今から近くのキャンプ場で飯盒炊飯とカレー作りだ。楽しんで作れよー!」
「「「「はーい」」」」
その言葉に即反応したのは楽だった。
「小野寺と宮本は薪をもらってきてくれ」
「はーい」
「桐崎、お前はここで俺が指示する。勝手に動くなよ」
凄ェ必死だな…。
「じゃあ俺は味見担当ってことで」
「そんな担当はねーよ。優人は野菜を切ってくれ」
「へーい」
結局味見担当にはなれず、みんなで協力してカレーを作った。楽と采配のおかげか(というか桐崎さんと小野寺をなるべく鍋に近付かせなかった)かなり美味しいカレーが出来上がったのだ。
そして昼食後、俺たちは今夜泊まる旅館へと移動した。
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「おお〜!ここが今日俺たちが泊まる部屋か〜」
「思ったより広いね〜」
「こういうとこウチのガッコ気前いいよな〜」
俺らの部屋は所謂大広間の様な部屋だった。ここなら7人でも余裕そうだ。
「その上ふすま越しとはいえ女子と同じ部屋で寝られるなんて……。俺この学校に入ってホント良かったよ…‼︎」
「…正直なやつだな」
涙を流しながら喜ぶ集に楽が呆れた様にそう呟く。集よ、気持ちは分からなくもないが何で口に出しちゃうかなぁ…
「…ところで舞子くんはベランダと廊下どっちで寝るの?」
「あれ!? 部屋で寝ちゃだめ!?」
ほら、言わんこっちゃ無い。宮本からの冷たい目線と言葉にたじろぐ集。宮本もそんな養豚場の豚を見る様な目は止めてあげて下さい、どんなおちゃらけ男子も一撃で沈む目だから、それ。
「とりあえず寝るときは俺と楽の二人で集を見張るということで」
「そうだな、それがいい」
俺の提案に楽が同意する。
「ええ!?そんなに俺って信用ない!?」
ある意味信用してるんだよ、ある意味ね。
「うぐぐ…まあいいや、そんなことよりさ、まだ時間あるし折角だからトランプでもやんない?」
集が気を取り直してみんなに提案する。
「普通にやってもつまんねぇし負けたやつは罰ゲームってのはどうよ?」
「罰ゲーム?」
「負けた人は自分のスリーサイズ『ガシッ…』…すいません、嘘です…」
集の言葉は肩を勢いよく掴んだ宮本によって遮られる。だから何故そんなに死に急ぐ?
「じゃあじゃあ今日の下着の色を」ドス!
「自分のセクシャルポイント」ボコッ!ガスッ‼︎
「体を洗うときまずどこから…ギャーーー‼︎」ドコバキズドッ‼︎
止まらない集に黙々と粛正を続ける宮本。…一体何が集をそこまで突き動かすのだろう?
「初恋のエピソードを語るとか…」
「……まあ、そのくらいなら」
ズタボロになりながらも集の罰ゲーム案はようやく宮本裁判官に受理された模様。それに驚いたのはこちら側の集と宮本を除いた5人だった。
(((((は、初恋のエピソード〜‼︎?)))))
不味いな…俺の初恋は小野寺になるんだが…本人の目の前で、しかも他の連中がいる中で話すのは恥ずい…つーか、これ下手すると自動的に一回振られたってことまで話すハメになるんじゃね?…あ、絶対嫌だわそんなの。
(((((絶対に負けられない…‼︎)))))
「では…ババ抜きスタート!」
集の声とともについに絶対に負けられないババ抜きがスタートした。
「はい、次小咲の番」
「う、うん!」
真剣な表情で宮本からカードを引く小野寺。引いたカードを見た瞬間その表情がこの世の終わりの様な表情に変わる。うわ、分かりやす‼︎こんな表情に出るタイプなんだ、小野寺って…でもそこが可愛い。
「つ、次は立川君だよ」
今にも泣きそうな顔でカードをこちらに向ける小野寺。大丈夫か、小野寺?…諦めたらそこで試合終了だよ?
「それじゃあ…」
端っこのカードを取ろうとすると
「………‼︎(パァ〜‼︎」
え、何その嬉しそうな顔!?
試しに別のカードを取ろうとすると
「……(シュン…」
え、何その悲しそうな顔!?
出てる…完全に顔に出てるよ小野寺‼︎
可愛すぎるわ‼︎あーもう、負けてやりたい!今すぐババを引いてやりたい!
ただ俺も負けるわけにはいかないんだよ‼︎
(すまん、小野寺……)
そう心の中で謝り、ババでは無いカードを取る。ああ、そんな悲しそうな顔をしないでくれ、胸が痛い。
….でも正直、小野寺の初恋のエピソードは気になる。恐らく以前聞いた約束の男の子とやらなのかもしれないがそうじゃない場合もあるんじゃないか?そんな事を考えながらもババ抜きは続いていく。そして途中で俺はあることに気付いた。
…待てよ、もし小野寺の初恋が例の約束の男の子だったとして、その男の子とやらが万が一楽だった場合….それをここで話されるのってマズくね?
俺はその状況を想像する…
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「私の初恋は….とある男の子と結婚の約束をしたことです。その子とはある日別れることになってしまったんだけど、その子は錠を私は鍵を、それぞれ持っていつの日か必ず再会して、結婚しようって約束しました。」
「それって…もしかして…‼︎」
「うん、貴方のことだよ…一条君。」
「小野寺…俺と結婚しよう」
「うん…これからもよろしくね、一条君…いや、あなた♡」
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アカン…絶対にアカン。最後の方とか一気に飛躍し過ぎだろとは思うがこんな展開になったら俺がショックで死んでしまう。
「はい、立川君」
丁度良い時に俺の番がまわって来た。直ぐに小野寺の表情を確認してカードを引く、勿論ババをである。ババの呪縛からついに逃れられ安堵からか小野寺は顔を綻ばせた、可愛い。
しかしこっちは大変である。何せ自分の敗北は勿論、小野寺の敗北も許されないのだ。簡単な話、小野寺が引いたババは確実に俺が引く羽目になるし、そしてそれを次の楽に確実に引かせなければならないのだ。
そしてババ抜きもついに佳境、残ったのは………楽と桐崎さんだった。
え、俺?何とか抜けましたよ5番目にね。いやーババの回転率が以上だったね、小野寺が7回目を引いたときは流石にもう無理だと思ったもん。あと余談だが桐崎さんも小野寺と同じくらい顔に出るタイプだった。
それはともかく残るは二人。あとは桐崎さんが楽から引いてそれがババでなければ上がり、楽が罰ゲームで終わりだ。真剣な表情で一枚選び引いた。果たして結果は………
「こらー!集合時間はとっくに過ぎてるぞ!早く集合!」
すると突然襖を開いてキョーコ先生が入ってきた。
「ヤッベ…‼︎みんな、急ごうぜ」
全員大慌てで支度をする。結局罰ゲームを含めて勝負の結果は有耶無耶になり、俺たちのグループはキョーコ先生から長〜い説教を受けるのだった。
次くらいまでは林間合宿の話だと思います。次回もまあ、ゆっくりのんびりお待ちしといて下さい。