ハイスクール・フリート ~新米海曹晴風と共に~ 作:メガネ二曹
お久しぶりです。初めての方は初めまして。
メガネです。三カ月……四カ月ぶりのハーメルンかな?
相変わらずネタが浮かばずやる気も起きず、さらにリアルがそこそこ忙しくてですね、まあいつものようにメインの2作品は全く進行しておりません。ごめんなさい。
さて、今回は「ハイスクールフリート」、はいふりの二次創作になります。はいふりと言えば二周年記念イベントで映画化が発表されましたね。
凄く好きな作品でしたし、丁度書きかけの試作はいふり二次小説と架空艦の設定がありましたので書いてみました。
……関係ない愚痴になりますが俺、大田区住まいでして、産業プラザではいふりのイベントがあると聞いてウッキウキしてたんですが寝坊して行けませんでした(半ギレ)
黒い嵐の海にて
西暦 2020年 8月20日 午後8時32分
小笠原諸島沖
「両舷第二戦速!舵もどーせー!」
「両舷第二戦速アイ!、舵もどーせー!」
「「もどーせー!!」」
陸も光も見えない暗い海の嵐の中を、俺達が乗る一隻の護衛艦が進んでいた。
張り出した巨大艦上構造物、角張った艦橋。
看板に大量のミサイル発射機を積んだその特徴的なフォルムの艦は、俗に言う「イージス艦」という物だ。
DDG-180「りょうかみ」。最新技術を詰め込まれた、日本の技術の結晶。
アメリカが開発した、神の盾の名を冠する強力な艦隊防空システム、「イージス・システム」を搭載し、巨大なフェイズド・アレイレーダーを始めとした強力なレーダーと、音速を超えた弾頭すら撃ちぬく大量のミサイルを搭載した灰色のそれは、海の上の要塞と言っても過言では無いだろう。
……しかし、どんな強力な艦艇でも、自然という物には適わない。
全長177m、基準排水量8200㌧の大型艦ですら、巨大な嵐と波の前では無力な物だ。
りょうかみ艦内は戦闘配置がなされ、クルーは皆、本当に戦争をしているように引き締まって集中している。
舵輪を握る海曹の顔は引きつり、汗が垂れ、艦橋内では怒号のような指示がひっきりなしに飛ぶ。
甲板では嵐に打たれながら運用員達が必死の作業をしており、ウイングに居る俺たちも、数十メートル先も見えない闇を双眼鏡で覗き、近くに艦船が居ないかを必死に確認する。
CICでは電測員達がレーダーに食らいついているだろう。
「デカいの来るぞ!」
「何かに掴まれ!」
隣に居る隊員がそう叫び、ウイングに居る俺たちは支柱や柵、信号探照灯に捕まる。
視界の端に迫る巨大な波が見えたかと思うと艦が縦に大きく揺れ、大量の海水が降りかかった。
ベルトにくくりつけたヘッドセットがウイングの壁に擦れ嫌な音がする。
「日御ォ!無事か!」
後ろでハッチの取っ手に捕まっていた先輩隊員が、俺の被るテッパチを叩いて言った。
「体は大丈夫っす!強いて言えばパンツまでビショビショで気持ち悪い事くらいですかね!」
「そいつは結構!三曹になったんならこのくらい喰らわないとな!気張れよ電測員!」
「俺は射撃管制っすよ!」
そう。俺の本業はここでは無い。
本来、俺は砲雷科の射撃員。CICでミサイルや主砲を運用するというのが仕事である。
ならなぜウイングで航海科に混じって見張り員をしているか?……答えは簡単。
人が足りて居ないのである。
海上自衛隊は、慢性的な人手不足に悩まされている。
艦という逃げ場の無い閉鎖空間で長期間海の上で、プライベートもほとんど無い。
その分給料は良いにしろ、陸空に比べ入隊する人間は少なめだ。
海上自衛隊が動かすのは巨大な「艦艇」。
陸海空の中でもダントツに人数が必要なのだ。それも戦闘を行う護衛艦、電子機器満載のイージス艦となればその人数は1艦に300人は必要になる。
人員不足で定数が満たせず一人あたりの仕事が増えオーバーワークとなり、耐えきれず、または体を壊して退職してしまうといった悪循環まで起きているのだ。
そこでこのりょうかみ含む「しらかみ型」は、必要な人員の削減が行われた。
各部自動化やシステム操作の最適化、作業の効率化により必要な人員を大幅に減らしているのである。具体的に言えば前級である「あたご型」が約300人であるのに対し、「しらかみ型」は約200人。
これは中々の物で、人数が減った事により居住性も良くなった。……しかし良い事ばかりでは無い。
人員が少なくなったという事はダメコン等に不安が残るし、自動化や機械化に関しても、万が一故障やエラー等が起こればただじゃ済まない。最悪まともに戦闘艦として機能し無くなる可能性だって0では無いのだ。
……まあつまり何が言いたいかと言うと、結局人員不足は解消されなかったという事だ。
俺は2時間前まで当直でCICに居て、別の隊員と交代しベッドで寝ていた。
それでウイングの見張りを増員する時に、CICに行っても仕事が無く、待機するしか無い俺が呼びつけられたという訳だ。
見張りは教育隊で訓練しているしこんな嵐の中では初めてとは言え部隊配備された後も数回やっている。出来ない事は無い。
俺はアポロキャップの上から被った、ズレたテッパチを直して立ち上がると、再び双眼鏡を覗こうとする。
すると再び別の見張り員が叫ぶ。
「右前方から大波!……さっきのよりデカいぞ!」
「まずい!ウイング見張り員退避!」
恐ろしく大きい波を見た幹部が血相を変えて指示を飛ばす。ウイングの見張り員達は急いで艦橋に入るも、全員が戻るには時間が足りない。
ギリギリの所で先輩隊員がハッチを閉める。これ以上開けておけば波が艦橋に入る恐れがあるからだ。先輩隊員と一緒にウイングに取り残された俺は信号探照灯の脚に捕まる。
「来るぞー!」
「神様俺様仏様!」
艦が波に突っ込み、甲板がへこむんじゃないかというくらいの両の海水が叩きつけられる。
海面から相当離れているウイングにも海水の塊が落ちてきて、痛いくらいだ。
(よし!耐えた!)
そう思って俺がゆっくり立ち上がると、顔面に激痛が走る。
飛んできた何か。
銀色のしたそれは、紛れもなく、魚だった。
波にのまれた魚が宙を舞い、偶然にも俺の顔に直撃したのだ。
あまりの痛みと突然魚が飛んできた驚きで、俺は手を離してしまう。
直後艦が激しく揺れ俺はバランスを崩し、黒い作業靴が、ウイングの甲板から離れてしまった。
「あ」
今度は俺の体が宙を舞う。咄嗟に先輩隊員が手を伸ばすも、その手は一歩届かない。
俺の体は灰色の巨大な艦から離れ、黒い海へと落ちてゆく。
浮遊感が体を包み込み、時間がスローモーションになったように感じながら海面へと落ちてゆき、そして俺は、嵐の海へとダイブした。
「日御ぉぉぉぉぉ!!!!!」
ウイングに残された先輩隊員の絶叫は、嵐にかき消された。
――――――
『よう、日御。相変わらずシケたツラしてんさばゃねーか。』
ー教官!浜谷!……なんで?
『バディを追い返しにきてやったんだよ。感謝してくれよ?』
ー追い返す?どういう事だ?
『そのまんまだよ。宗太郎、お前はまだこっちに来るのは速すぎるって事だ。』
ーこっち?おい浜谷、一体何を言ってる?
『じゃあな日御。俺らの分も、頼むぜ』
ー教官!待ってくれ!何処へ行くんだ!浜谷!置いて行かないでくれ!行くな!
「待ってくれッ!!」
俺はそう叫びで飛び起きた。
いつの間にか俺は白いベッドの上に寝かされていたのだ。
作業服やカポック、帽子は脱がされている。
呼吸は乱れ、寝汗が酷い。
……どうやら俺は夢を見ていたようだ。……まあ、夢でも無ければ死んだ二人が居るはず無いだろうが。
呼吸を落ち着かせ、シャツの袖で顔の汗を拭う。
周りを見ると、どうやら何処かの船の医務室のようだ。
見た感じでは、少なくとも「りょうかみ」では無い。別の海自の艦か民間の船か、はたまた他国の軍艦か。なんにせよ助かったのだ。あの高さから落ちて体がどこも痛くないし、俺は相当運が良いらしい。
……もしかしたら、二人が俺を生かしてくれたのかもしれない。
そんな事を考えていると、扉が開く音がして、「失礼しまーす」と、女性……というより女の子の声がした。
声の感じ的に高校生くらいだろうか。
普通の日本語だし、どうやら日本の民間船か何かに救助されたのだろう。俺はほっとため息をつき、ベッドを降りる。
靴下も脱がされており、直に床に触れ、足の裏がひんやりと冷たい。
ベッドを覆っていたカーテンを開き、外に出ると、そこにはセーラー服にエプロンを着た女の子が居た。
俺と目が合うと、女の子は笑顔で医務室のドアから身を乗り出す。
「みなみさーん!助けた人が起きたよー!」
久しぶりに女性を見たというのもあって、彼女の笑顔は、非常に眩しく、可憐に見えた。
如何でしたでしょうか。
何しろにわかレベルのミリオタな為、おかしい所もあるでしょうから、感想やメッセージなどで優しく指摘して頂けると幸いです。
感想なども頂けると嬉しいです。
ではまた次回、何時になるかは解りませんが読んで頂けると幸いです。
ではでは。