※すいません、ちょっと気になるところがあって書き直しました。
冒険者
夜の会合の次の日。
涼夜達は脱出手段を話し合った結果、1番危険はないが可能性が最も低い方法をとることになった。正直、涼夜としては国王の暗殺未遂で国外追放か、死亡偽装にしようと思ったのだが、それを2人に言うと全力で反対された。
「「そんな危険な事はさせない!」」と、鬼気迫る表情で言われたので涼夜は諦めるほかなかった。処刑されたり本当に死ぬ可能性もあるので、それは当然だといえる。
そんな事情があったので涼夜は当初考えていたやり方を諦め、新しい方法のやり方を考えるのに四苦八苦していた。
その方法は『メルドさんに言って合法的に出してもらう』という、ほぼ不可能な方法だ。それ以外は認めないと2人から言われているので涼夜は死ぬ気で確率を上げようとしている。
………2日経った。涼夜はあれからなんとか考え、一応なんとかなりそうなレベルまで策を練った。そうしてようやく今日、メルドに言うつもりだ。根回し的なものは完了している。
〜メルドとの会談中〜
涼夜はメルドと話した結果、条件付きで出ることができるようになった。
話の内容はほぼ涼夜の提案で、メルドが首を縦に振るまで行われた。
まず、涼夜が王国を出たいと言い、メルドが引き止める。なら、と涼夜がハジメを引き合いに出し、アーティファクトの話を伝える。さらにそのアーティファクトを国に寄付し、今作ってある薬や武器の提供を行うという条件までつけた。
それでも渋るのでクラスメイトや官僚、国王への対策を書いた紙をメルドに渡した。これを行えばほとんど無理なく説得できるように考えたものだ。
これを渡して涼夜の意思が固いのを感じてようやく折れてくれた。多少脅迫紛いの事をしたかもしれないが気にしない。
…まあ、一応宿に3ヶ月に一回は絶対に顔を出せと言われているのでそれは守るつもりだ。
これで晴れて涼夜は遠征とともに王国の外に出られることとなった。
***************
早朝、涼夜はホルアドの街を歩いていた。ホルアドとはオルクス大迷宮の近くにある街で、涼夜達が遠征で泊まっていた宿がある街だ。
ホルアドの景観に新鮮さを味わっていたが、その足はある場所へと一直線に進んでいた。
「よし、ついた」
涼夜が足を止めたのは冒険者ギルドの前だ。冒険者ギルドという響きに惹かれてやってきた。異世界物だったら、間違いなく冒険者ギルドに行くよね!というテンプレをしてみたかっただけである。
涼夜は冒険者ギルドの扉を開ける。やっぱりというか何というか、ところどころ汚れが目立つ床や壁に酒場、そしてガラの悪い連中がいるという完全なテンプレがここにあった。
涼夜がテンプレを噛み締めて感動していると、後ろからドンとぶつかられ、「邪魔だ」と言われるというまたもよく見る光景を見て、涼夜はニヤニヤし出した。
それをみて、他の冒険者はドン引きしたのだが気にせず、そのまま受付に向かった。受付の人も引いていたがそこは仕事、なんとか取り繕おうとしていた。まあ、顔は引き攣っていたが。
「…えっと、今日はどのようなご用件で?」
受付嬢は美人だった。ここでもテンプレだ。涼夜はさらに引かれてはまずいと思い、ニヤニヤしそうな顔を抑えて用件を伝える。
「……冒険者になりたいんだが」
「冒険者の登録ですか?千ルタとステータスプレートの提示が必要ですがよろしいですか?」
「大丈夫だ」
そう言って涼夜は懐から千ルタとステータスプレートを取り出した。これはメルドに頼んで涼夜が作った武器やら防具やら薬やら異世界の道具を模したものを買ってもらい、二千ルタを手に入れていた。まあ、多少法外な値段だった気もするが気にしないでおこう。メルドに感謝である。
ステータスプレートは勿論隠蔽してある。さすがに技能欄のやつを見せてしまっては勇者一行の1人だと確実に身バレする。
受付嬢はそれを受け取ると奥でなにか作業を行ってからこっちに戻ってきてステータスプレートを返却する。ステータスプレートにはきちんと冒険者と書かれており、その隣には冒険者のランク、青色の点が付いていた。当然だが高ランクのお約束などないのだ。
「どうも」
受付嬢にお礼をいって、掲示板の前に行く。
(さて、まずは情報収集か。グリューエン大火山への行き方とライセン大迷宮のことを聞いてみるか。ちょうど情報集めの定番がここにあるんだから)
結構、定番に浮かれている涼夜である。
掲示板の依頼の中で目ぼしいものを数件確認しておく。使えそうな物を頭にインプットし、その場を離れる。使うかどうかはわからないが。
1時間、酒場で色々聞いた結果、最も楽な行き方は高速馬車を乗り継ぎながら街を経由してグリューエンに行く感じらしい。その途中にライセン大峡谷があるのだが、大迷宮の情報はゼロ。やはり出回ってはいないらしい。
期待はそこまでしていなかったのでショックは受けなかった。だがここからが問題だ。
そう、お金がない!
由々しき事態だ。情報収集の関係でお金が減ったし、移動手段も持っていない。移動用の乗り物は、製作しているが材料が足りないのでまだ乗れない。なので護衛依頼で馬車に乗るしかできない。
つまり、楽な移動ができない。
涼夜はこの事実に気づいて愕然とした。「嘘やん」と。
力を見せる上で面倒なことが起きるのは明白なのでナーバスになる。しかもライセンは魔法が使えない。クソゲーにも程がある。
(あーあ、まじかぁ。仕方ねえ、乗り物の製作時間を作る間が出来たと考えよう。そうしよう)
涼夜はため息を吐きつつ、掲示板にある依頼の中で乗せてくれそうで、尚且つ戦闘をなるべく回避できるものを探し受付に持っていく。
「……これを受けたいんだが」
「かしこまりました。ではこちらが詳細になります」
そう言って渡されたのは日時と場所が書かれた紙だ。
紙によるとどうやら2時間後らしい。
涼夜は受付嬢の人にお礼を言ってギルドを出た。
(……道具、使わなくていいように準備しておこう)
ポーションとかの消耗品を補充、及び調合してから依頼で指定された街の門の前にいく。そこには既に何人もの冒険家がいて、何やら話している最中だった。
「あの、依頼を見て来たのですが……」
「ん?……ああ、お前の事は聞いている。新人なんだってな。俺はカーズ、この護衛チームのリーダーという事になっている。よろしくな」
涼夜がその集団に話しかけるとその中から1人、背が高く引き締まった筋肉を持つさわやかなおじさんが出てきた。なんとなくメルドに似ている。
その男の人ーーカーズが涼夜に自己紹介をしながら手を差し出してきた。涼夜はその手を握り返す。
「私は涼夜と言います。ご存知の通り、新人ですがよろしくお願いします」
涼夜は微笑を浮かべ、涼夜を知っているものが見ればなんとも似合わない挨拶をする。だが顔立ちは整っているので
かなり様になっている。それは他の冒険者からの好意的な視線が証明している。
「ああ、よろしく頼むよ、……で、お前はどれくらい戦える?」
「………基本的に後衛職だと考えていただければと」
涼夜は自分の技能、アイテムを使わないで戦うために後衛職だと錬成で作った弓を見せながら嘘を言う。涼夜の本来の戦い方はかなり特殊なので見せるわけにはいかない。
「……そうか、なら基本は後方で牽制してくれ。」
「わかりました」
「じゃあ、他のメンバーを紹介しよう。
ーーーみんな、話は聞いていたよな」
カーズは後ろにいた冒険者達に声をかける。すると話をちゃんと聞いていたらしく、全員が頷く。
「なら、こっちの自己紹介から入るぞ。右からダスト、ルース、レイズ、リーン、ファナだ。こっちの4人は俺と一緒のパーティーで、ファナはお前と同じ依頼での人員だ」
それぞれ、チャラそうで槍を持った男、小柄で杖を持った男、怠そうにしている甲冑姿の男、姉御と呼びたくなる長剣を持った女性、小柄な同い年くらいの少女で口々に挨拶をしてくる。
(なるほど、タンク1人にディーラー2人、遊撃1人、後衛1人か。バランスがきっちり取れているんだな)
涼夜は改めてパーティの連携の重要性が高そうだと感じた。
一応、同じ雇われで同い年くらいのファナという少女に声をかけたのだが、何故か涼夜を敵視?していて、「……よろしく」というだけの素っ気ない態度を取られた。これが素なのだろうか。
何故だろうと涼夜が唸っていると、前の方にある荷台から声が聞こえてきた。その方向に目を向けると恰幅がよく、40代くらいの顎髭を蓄えた男がいた。カーズさんがその人と話しているところを見るに、どうやら依頼主らしい。
その男は涼夜のことをみて、見下した表情になった。
「……ふん、こんな奴が役に立つのか?」
開口一番、物凄く失礼なことを言ってきた。涼夜は少しイラッときたが顔には出さない。依頼を断られたら大変なことになる。
「ええ、大丈夫でしょう。依頼の条件に『後衛ができて回復魔法が使える』ということを書いていたので戦闘有る無しに必要な人材でしょう」
(……そうなんだよなぁ。結構条件厳しめだったんだよな)
涼夜だからこそ条件に合致したのであり、普通だったら魔法職になるのでこのライセンは鬼門だろう。
「……ならそいつをしっかり見ておけ」
「わかりました」
顎髭男は鼻を鳴らすと馬車に戻っていく。カーズが「すまんな」と言ってきたので涼夜は「大丈夫です」と返した。
「よし!出発だ。各自、馬に乗れ!」
(馬車だと書いてあったんだけど……俺たちは乗れないのか)
カーズの号令でそれぞれが馬車の近くに用意されていた馬に乗る。どうやら馬車に乗っていくのではないようだ。当てが外れた。
「涼夜!お前はそこの馬に乗れ!」
そういってカーズが指差した先には立派な馬がいた。
「お前の荷物は多いから、大きめの馬だ」
どうやら涼夜の荷物を考慮してくれたらしい。
ちなみに涼夜の装備は短剣を腰に二本つけ、その横にポーチ、肩に弓をかけてある。さらに背中にバックパックとかなりの重装備だ。後衛職にしか見えない。
「ありがとうございます!」
涼夜はそう言って馬に近づくが非常に困っていた。
(どうしようか……馬に乗れるかわからないし、同年代の女の子には嫌われたっぽいし、依頼主は舐めてるし……
はあ、前途多難だな……)
涼夜は深いため息を吐き出した。
すいません、前回のヒロインという話、あれ、この移動中に「1人とか寂しくね?」と思って聞いてみたという話です。
既存のヒロインは雫ですよ!そこは変わりません!
おそらくヒロイン化するとしたらファナ(オリキャラ)だけです。
TS化希望は活動報告へ。正直書く気は無い……多分。